夏のニライカナイ

真朱マロ

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夏のニライカナイ 4

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 青色が 赤みを帯びて
 空は透明な青を失って
 海も夜の藍に染まっていく

 ゆっくりとゆっくりと
 太陽の姿が隠れていくから
 なぜか追いつけそうな気がして

 夢中で車を走らせたけど
 結局は太陽には追いつけなくて

 真っ暗な海にふと現実に返って
 ここがどこかわからなくなって

 初めての場所で途方に暮れているから
 これは日常の私そのままだと苦笑した

 海岸沿いにいることは確かだけど
 すっかり迷っていたから
 宿を取っていなくて良かったなんて
 バカげたことを思いながら砂浜に降りたけど

 サラサラした細やかな砂が見えなくて
 思ったよりザクザクとした
 小石混じりの浜に驚きながら
 ぼんやりと立ちつくしていたけど

 星がそのまま降ってくるような
 海にそのまま宇宙が降りたような
 きらめきに 輝きに 息ができなくて

 空も 風も 夜も
 宇宙と同化するのだと
 ただ思い知るばかりで 
 迷っていることすら 忘れてしまった

 ここへ来るために
 生まれてきたと勘違いするほど 美しい夜
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