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第1章
そこは別世界(2)
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私の姿を一目見るなり、柳澤くんは堂々と歌っていた表情から一瞬で表情を変貌させる。
そして柳澤くんはすくっと立ち上がって私の方へ身体を向けると、勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさいでした!」
「へ……?」
ごめんなさいでした……?
何を謝られているのか分からない私は、頭を下げ続ける柳澤くんをただ茫然と眺めることしかできない。
むしろ、素敵な歌を聴かせてくれてありがとうって感じなんだけど……。
私が何も言わずに戸惑っているからか、恐る恐るといった感じに頭を上げる柳澤くん。
下向き加減の顔でこちらを見る柳澤くんの目は、若干上目遣いになっていて、男の子だというのに思わず可愛いと感じてしまった。
すると、柳澤くんは小さく口を開いた。
「……俺のこと、注意しに来たんじゃねーの?」
「……注意? どうして?」
あまりピンとこなくて首をかしげる。
「ほら、ここ、立入禁止だし……」
なるほど。真面目で堅いイメージのついてしまっている私が突然現れたから、柳澤くんは注意されると思ったのだろう。
私って、どこまで堅いイメージ持たれてるんだろう……?
思わず心の中で、小さく肩を落とす。
「注意なんてそんな、私はただ綺麗な歌声が聴こえたから、何ていうか……」
一言、素敵な歌声に惹かれてここに来たと言えばいいものの、なんだか恥ずかしくてたどたどしい口調になる。
そんな私を見て、柳澤くんはホッとしたようにハハッと笑った。
「え、そうなんだ。俺、てっきり委員長にここに居たこと注意されて、先生に告げ口されると思ったわ」
「そ、そんなことしないよ!」
私のイメージって……。
「放課後ここに居るのが見つかったの、委員長が初めてなんだ。だからマジで焦った」
「……そうなの?」
「ここに俺が居たこと、俺と委員長の秘密にしてくんね?」
ね? と両手を合わせて頭を下げながら、私を見つめる柳澤くん。
……だからその顔、反則だって!!
「……うん」
そんな可愛くお願いされると、断るなんてできないじゃない……。
「やった!」
ぱぁぁと表情を明るくして、柳澤くんは無邪気にガッツポーズなんて決めた。
「いや、マジで委員長、神! サンキューなっ!」
白い歯を見せて笑う、柳澤くん。
「う、うん……」
……可愛い。
思わず、トクンと胸が脈打った。
「ってか、委員長、そんなところに突っ立ってないで、座れば?」
ほら、と彼自身の隣の空間をポンポンと手の平で叩いて合図をする柳澤くん。
隣に座れってこと……?
私は遠慮がちに柳澤くんに近づき、そっと隣に腰を下ろした。
あまり男の子とこんな風に話すことなんて経験なかったからなのか、何だか緊張する……。
だけど、
「ちょっと、遠くね? 俺と委員長の心の距離?」
柳澤くんは、私と柳澤くんの間に空いた人ひとり座れそうな空間を見て、口を尖らせた。
「いや、そういうつもりじゃ……」
「あ、もしかして、嫌とか……?」
シュン……といった感じに、手元のギターに視線を落とす柳澤くん。
「嫌じゃない、けど……」
うぅ……。
何だかこれじゃあ、私が悪いことしてるみたいじゃない。
「じゃあ、来て……?」
甘えた感じにクルリとした瞳に見つめられて、逆らうことができなかった。
さっきよりも柳澤くんとの距離が近づく。
触れてなくても伝わってくる柳澤くんの温もりに、心臓の音がうるさい。
その心臓の音を柳澤くんに悟られないように、私は必死で言葉を探した。
「それにしても、柳澤くんはどうやって屋上に……?」
『立入禁止』の札がかかってるくらいだ。ここに繋がる鍵も厳重に管理されているはず。
「あー、ここね。委員長のこと信じて特別に教えるけど、これも秘密だからな」
そう言って、柳澤くんはポケットから銀色に光る鍵を取り出した。
「まさか、スペアキー?」
それを使って、柳澤くんはここへの扉の鍵を開けて入ってきていたということなのだろう。
でも、こんなのどうやって手に入れたのだろう?
「そんなものかな。あ、そんな目で見なくても、俺が作ったんじゃないからな」
よっぽど私の目が柳澤くんを責め立てているように見えたのか、慌てて弁解を始める柳澤くん。
そして柳澤くんはすくっと立ち上がって私の方へ身体を向けると、勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさいでした!」
「へ……?」
ごめんなさいでした……?
何を謝られているのか分からない私は、頭を下げ続ける柳澤くんをただ茫然と眺めることしかできない。
むしろ、素敵な歌を聴かせてくれてありがとうって感じなんだけど……。
私が何も言わずに戸惑っているからか、恐る恐るといった感じに頭を上げる柳澤くん。
下向き加減の顔でこちらを見る柳澤くんの目は、若干上目遣いになっていて、男の子だというのに思わず可愛いと感じてしまった。
すると、柳澤くんは小さく口を開いた。
「……俺のこと、注意しに来たんじゃねーの?」
「……注意? どうして?」
あまりピンとこなくて首をかしげる。
「ほら、ここ、立入禁止だし……」
なるほど。真面目で堅いイメージのついてしまっている私が突然現れたから、柳澤くんは注意されると思ったのだろう。
私って、どこまで堅いイメージ持たれてるんだろう……?
思わず心の中で、小さく肩を落とす。
「注意なんてそんな、私はただ綺麗な歌声が聴こえたから、何ていうか……」
一言、素敵な歌声に惹かれてここに来たと言えばいいものの、なんだか恥ずかしくてたどたどしい口調になる。
そんな私を見て、柳澤くんはホッとしたようにハハッと笑った。
「え、そうなんだ。俺、てっきり委員長にここに居たこと注意されて、先生に告げ口されると思ったわ」
「そ、そんなことしないよ!」
私のイメージって……。
「放課後ここに居るのが見つかったの、委員長が初めてなんだ。だからマジで焦った」
「……そうなの?」
「ここに俺が居たこと、俺と委員長の秘密にしてくんね?」
ね? と両手を合わせて頭を下げながら、私を見つめる柳澤くん。
……だからその顔、反則だって!!
「……うん」
そんな可愛くお願いされると、断るなんてできないじゃない……。
「やった!」
ぱぁぁと表情を明るくして、柳澤くんは無邪気にガッツポーズなんて決めた。
「いや、マジで委員長、神! サンキューなっ!」
白い歯を見せて笑う、柳澤くん。
「う、うん……」
……可愛い。
思わず、トクンと胸が脈打った。
「ってか、委員長、そんなところに突っ立ってないで、座れば?」
ほら、と彼自身の隣の空間をポンポンと手の平で叩いて合図をする柳澤くん。
隣に座れってこと……?
私は遠慮がちに柳澤くんに近づき、そっと隣に腰を下ろした。
あまり男の子とこんな風に話すことなんて経験なかったからなのか、何だか緊張する……。
だけど、
「ちょっと、遠くね? 俺と委員長の心の距離?」
柳澤くんは、私と柳澤くんの間に空いた人ひとり座れそうな空間を見て、口を尖らせた。
「いや、そういうつもりじゃ……」
「あ、もしかして、嫌とか……?」
シュン……といった感じに、手元のギターに視線を落とす柳澤くん。
「嫌じゃない、けど……」
うぅ……。
何だかこれじゃあ、私が悪いことしてるみたいじゃない。
「じゃあ、来て……?」
甘えた感じにクルリとした瞳に見つめられて、逆らうことができなかった。
さっきよりも柳澤くんとの距離が近づく。
触れてなくても伝わってくる柳澤くんの温もりに、心臓の音がうるさい。
その心臓の音を柳澤くんに悟られないように、私は必死で言葉を探した。
「それにしても、柳澤くんはどうやって屋上に……?」
『立入禁止』の札がかかってるくらいだ。ここに繋がる鍵も厳重に管理されているはず。
「あー、ここね。委員長のこと信じて特別に教えるけど、これも秘密だからな」
そう言って、柳澤くんはポケットから銀色に光る鍵を取り出した。
「まさか、スペアキー?」
それを使って、柳澤くんはここへの扉の鍵を開けて入ってきていたということなのだろう。
でも、こんなのどうやって手に入れたのだろう?
「そんなものかな。あ、そんな目で見なくても、俺が作ったんじゃないからな」
よっぽど私の目が柳澤くんを責め立てているように見えたのか、慌てて弁解を始める柳澤くん。
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