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第2章
幸せな日々(2)
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「でもさぁ、なんで二人とも付き合ってんのに委員長とか、柳澤くんとか、他人行儀なんだよ! 名前で呼べよ、名前で!」
福田くんに言われて、思わず柳澤くんと顔を見合わせる。
言われてみれば、そうだ。
柳澤くんは、相変わらず私のことを委員長って呼ぶし、私も柳澤くんのことを柳澤くんって呼んでる。
「まぁ、タイミングがつかめないっつーか、なんつーかだな……」
照れ臭そうに困ったように頭を掻く柳澤くん。
私もそれにつられるように、身体が熱くなった。
「お熱いねー! ただでさえ暑い季節なのに、余計暑くなるわ!!」
福田くんはゲラゲラと笑い出してしまった。
でも、柳澤くんもタイミングって……。
一般的なお話に出て来るカップルって、確かにお互いに名前で呼び合ってるイメージはあるけれど、どのタイミングで名前で呼び合うようになるんだろう……?
そう考えると、一見簡単そうなことなのに、ものすごく難しいことのように感じる。
まぁ、柳澤くんの「いいんちょー」って呼び方も可愛くて好きだから、私はこのままでもいいんだけどね。
福田くんの話があったからと言っても、あれから私と柳澤くんの呼び方は特に変わることもなく日は過ぎていく。
付き合いはじめてからは、柳澤くんと昼休みに屋上で過ごす時間も復活していた。
七月も半ばになると、影になっているところでも外は暑い。
特に屋上は空に近い分、余計に暑く感じるんだと思う。
この日のお昼休みも、柳澤くんと二人、屋上で過ごしていた。
「いいんちょー、今日も眠そう」
目をこする私に、クスリと笑う柳澤くん。
「お腹がいっぱいになると眠くなるのは、人間の自然現象なの」
「俺と居ると安心するからじゃなくて?」
冗談っぽく言う柳澤くん。
「それもあるかも」
「……ほへっ!?」
私が素直な返事をすると思ってなかったのか、柳澤くんは変な声を上げて、照れ臭そうに笑った。
「……とか言っちゃって、また勉強し過ぎで寝不足なんじゃね?」
「あはは、そうでもないよ」
勉強してない、って言ったら嘘になるけどね。
前回の学力テスト以来、お父さんの機嫌は相変わらずだし。
また次の学力テストが近づいてきてるし、また成績が下がったときには、今度は何を言われるかわからない。
でも柳澤くんと過ごすようになってから、本当に心に少し余裕ができたような気がするんだ。
「あと少しだね、修学旅行」
「もう明後日だもんな! あっと言う間だったな。修学旅行実行委員の仕事も案外ちょろかったし!」
「たった一ヶ月ほどの委員だからね。柳澤くんが引き受けてくれて、本当に助かったよ。ありがとう」
「まぁ、下心ありまくりだったけどな」
柳澤くんはそう言って、悪戯っ子のようにべーっと舌を出した。
私がそれにクスクスと笑っていると、そっと肩を抱かれる。
「でも、そのおかげで、今をこうして居られるんだから、結果オーライだな!」
「そうだね」
緩やかなあたたかい風が優しく私と柳澤くんを包んだ。
まるで、この幸せな穏やかな時間は、永遠に続くんだと錯覚させられてしまうくらいに……。
怖いくらい、今、この瞬間を幸せだと感じていた。
福田くんに言われて、思わず柳澤くんと顔を見合わせる。
言われてみれば、そうだ。
柳澤くんは、相変わらず私のことを委員長って呼ぶし、私も柳澤くんのことを柳澤くんって呼んでる。
「まぁ、タイミングがつかめないっつーか、なんつーかだな……」
照れ臭そうに困ったように頭を掻く柳澤くん。
私もそれにつられるように、身体が熱くなった。
「お熱いねー! ただでさえ暑い季節なのに、余計暑くなるわ!!」
福田くんはゲラゲラと笑い出してしまった。
でも、柳澤くんもタイミングって……。
一般的なお話に出て来るカップルって、確かにお互いに名前で呼び合ってるイメージはあるけれど、どのタイミングで名前で呼び合うようになるんだろう……?
そう考えると、一見簡単そうなことなのに、ものすごく難しいことのように感じる。
まぁ、柳澤くんの「いいんちょー」って呼び方も可愛くて好きだから、私はこのままでもいいんだけどね。
福田くんの話があったからと言っても、あれから私と柳澤くんの呼び方は特に変わることもなく日は過ぎていく。
付き合いはじめてからは、柳澤くんと昼休みに屋上で過ごす時間も復活していた。
七月も半ばになると、影になっているところでも外は暑い。
特に屋上は空に近い分、余計に暑く感じるんだと思う。
この日のお昼休みも、柳澤くんと二人、屋上で過ごしていた。
「いいんちょー、今日も眠そう」
目をこする私に、クスリと笑う柳澤くん。
「お腹がいっぱいになると眠くなるのは、人間の自然現象なの」
「俺と居ると安心するからじゃなくて?」
冗談っぽく言う柳澤くん。
「それもあるかも」
「……ほへっ!?」
私が素直な返事をすると思ってなかったのか、柳澤くんは変な声を上げて、照れ臭そうに笑った。
「……とか言っちゃって、また勉強し過ぎで寝不足なんじゃね?」
「あはは、そうでもないよ」
勉強してない、って言ったら嘘になるけどね。
前回の学力テスト以来、お父さんの機嫌は相変わらずだし。
また次の学力テストが近づいてきてるし、また成績が下がったときには、今度は何を言われるかわからない。
でも柳澤くんと過ごすようになってから、本当に心に少し余裕ができたような気がするんだ。
「あと少しだね、修学旅行」
「もう明後日だもんな! あっと言う間だったな。修学旅行実行委員の仕事も案外ちょろかったし!」
「たった一ヶ月ほどの委員だからね。柳澤くんが引き受けてくれて、本当に助かったよ。ありがとう」
「まぁ、下心ありまくりだったけどな」
柳澤くんはそう言って、悪戯っ子のようにべーっと舌を出した。
私がそれにクスクスと笑っていると、そっと肩を抱かれる。
「でも、そのおかげで、今をこうして居られるんだから、結果オーライだな!」
「そうだね」
緩やかなあたたかい風が優しく私と柳澤くんを包んだ。
まるで、この幸せな穏やかな時間は、永遠に続くんだと錯覚させられてしまうくらいに……。
怖いくらい、今、この瞬間を幸せだと感じていた。
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