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第3章
波乱を呼ぶ甘いキス(4)
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「今度からは場所も考えないといけないな。じゃあ、花梨をいつまでもここで引き留めとくわけにもいかねぇし、そろそろ帰るな」
「うん、気をつけて」
角を曲がるまで、何度も私の方を振り返って手を振ってくれる奏ちゃん。
私はそんな彼の姿が見えなくなるまで、手を振り続けてから家へと入った。
「今日はいつもより遅かったじゃないか」
家に入るなり耳に入ったのは、お父さんの小言。
声の方を見ると、ちょうど二階からお父さんが降りてくるところだった。
え、何でいるの……!?
そんなに長いこと立ち話してたのかな……?
そう思って、視線だけ下に落としてさりげなく腕時計を見る。
だけど、やっぱり普段ならまだお父さんの帰っていない時間だった。
今日、お父さんいつもより帰ってくるの早かったっていうの……!?
「え……っと、ちょっと、そこで学校の友達に会っちゃって……」
お父さんの雰囲気から、さすがに奏ちゃんと話してたとは言えなかった。
だからといって上手な嘘が思いつくわけでもなく、私は苦し紛れにそうこたえていた。
「お父さん、何言ってるのよ。いつもと大して変わらないじゃない」
お父さんのあとから玄関に出て来たお母さんが、お父さんをなだめる。
「とは言ってもだな、夏期講習中で塾の終わりが早いとはいえ、もう夜なんだぞ? 日も暮れてきているというのに、外で男と立ち話だなんて、けしからん」
「え……」
ちょっと待って!?
今、お父さん、男って……。
まさか私が奏ちゃんと一緒に居たの、見られてたの……?
「そんな男だなんて、お父さんったら」
お父さんの言葉に、クスクスと笑うお母さん。
「ワシはこの目で見たんだ! まだ高校生の男女が……」
「はいはい、分かったから。花梨が無事に帰って来たんだから、もういいじゃない。お父さんも花梨も、これから夜ご飯にするから。花梨は部屋に荷物置いてきなさい」
「……はい」
二階のお父さんの部屋の窓からなら、見ようと思えば私たちが話していた位置は丸見えだ。
だけど、まさか、キスも見られてたとか……?
や、やだ……。
良からぬ不安が胸を過ぎって、一瞬身震いした。
だけど、私がそそくさと自分の部屋にカバンを置きに行こうとしたとき──。
「花梨、悪いことは言わない。あの男だけはやめておきなさい」
お父さんの厳しいその言葉が、背中に刺さった。
「……え?」
「やだ、お父さんったらやきもち妬いてるのね?」
お父さんの言葉に、笑いながらそう言うお母さん。
「そんなんじゃない。ワシはただ、花梨が心配なだけだ」
お父さんはそれ以上、何も言う様子はなくて……。
お父さんが窓から見たのであろう奏ちゃんのことが気に入らなかったのか、お母さんの言う通り、ただやきもちを妬いてるだけなのかはわからないけれど。とにかく今度からは家の傍で奏ちゃんと話すのはやめておいた方が良さそうだと思った。
私は、お父さんにそれ以上何も言われなかったことを良しとして、今度こそカバンを置きに自分の部屋へ向かうのだった。
「うん、気をつけて」
角を曲がるまで、何度も私の方を振り返って手を振ってくれる奏ちゃん。
私はそんな彼の姿が見えなくなるまで、手を振り続けてから家へと入った。
「今日はいつもより遅かったじゃないか」
家に入るなり耳に入ったのは、お父さんの小言。
声の方を見ると、ちょうど二階からお父さんが降りてくるところだった。
え、何でいるの……!?
そんなに長いこと立ち話してたのかな……?
そう思って、視線だけ下に落としてさりげなく腕時計を見る。
だけど、やっぱり普段ならまだお父さんの帰っていない時間だった。
今日、お父さんいつもより帰ってくるの早かったっていうの……!?
「え……っと、ちょっと、そこで学校の友達に会っちゃって……」
お父さんの雰囲気から、さすがに奏ちゃんと話してたとは言えなかった。
だからといって上手な嘘が思いつくわけでもなく、私は苦し紛れにそうこたえていた。
「お父さん、何言ってるのよ。いつもと大して変わらないじゃない」
お父さんのあとから玄関に出て来たお母さんが、お父さんをなだめる。
「とは言ってもだな、夏期講習中で塾の終わりが早いとはいえ、もう夜なんだぞ? 日も暮れてきているというのに、外で男と立ち話だなんて、けしからん」
「え……」
ちょっと待って!?
今、お父さん、男って……。
まさか私が奏ちゃんと一緒に居たの、見られてたの……?
「そんな男だなんて、お父さんったら」
お父さんの言葉に、クスクスと笑うお母さん。
「ワシはこの目で見たんだ! まだ高校生の男女が……」
「はいはい、分かったから。花梨が無事に帰って来たんだから、もういいじゃない。お父さんも花梨も、これから夜ご飯にするから。花梨は部屋に荷物置いてきなさい」
「……はい」
二階のお父さんの部屋の窓からなら、見ようと思えば私たちが話していた位置は丸見えだ。
だけど、まさか、キスも見られてたとか……?
や、やだ……。
良からぬ不安が胸を過ぎって、一瞬身震いした。
だけど、私がそそくさと自分の部屋にカバンを置きに行こうとしたとき──。
「花梨、悪いことは言わない。あの男だけはやめておきなさい」
お父さんの厳しいその言葉が、背中に刺さった。
「……え?」
「やだ、お父さんったらやきもち妬いてるのね?」
お父さんの言葉に、笑いながらそう言うお母さん。
「そんなんじゃない。ワシはただ、花梨が心配なだけだ」
お父さんはそれ以上、何も言う様子はなくて……。
お父さんが窓から見たのであろう奏ちゃんのことが気に入らなかったのか、お母さんの言う通り、ただやきもちを妬いてるだけなのかはわからないけれど。とにかく今度からは家の傍で奏ちゃんと話すのはやめておいた方が良さそうだと思った。
私は、お父さんにそれ以上何も言われなかったことを良しとして、今度こそカバンを置きに自分の部屋へ向かうのだった。
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