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第5章
忍び寄る影(4)
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「花梨、眉間にシワ寄ってるよ? どうしたの? そんなにスマホの画面睨み付けて」
「え? あのね」
私がスマホの画面を傾けると、美波が画面を覗き込む。
「うっわ。何コレ、気持ち悪っ!」
「でしょ? ここ数日のことなんだけど、続いてて」
「思いきって番号変えたら?」
「それも考えたんだけど、もし私の知ってる人だったら変えたところで同じことの繰り返しだろうし……」
「花梨のこと、知ってる人なの?」
「一度だけ電話に出たときに、ね。私の名前、知ってるみたいだった」
そう話しているうちにも、再び画面が光り出す。
着信:非通知
「花梨……」
「まただ」
一体、誰なの……?
「え、花梨。出るの……?」
“通話”のところに指を持っていこうとした私に、美波が言う。
「うん……。無視してようかなって思ったけど、あまりにしつこいし、誰なのか聞いてみる。今なら美波もいるし」
「そんなのこたえてくれるなら、最初から非通知でかけてこないって! それに私がいるからって、何もできないかもしれないよ?」
「大丈夫。一人で受けるより、ずっと心強いから」
私は、思いきってその電話に出てみた。
「もしもし」
『……』
だけど、この前と同じように何も聞こえてこない。
“非通知”と表示されてる以上、必ずしもこの前と同じ人からかかってきてるとは言い切れないけれど、この状況に、この前の人からかかってきてるんだと確信した。
「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」
『…………』
だけど、返ってくるのは相変わらずの無言。
美波と顔を見合わせて、首を横に振る。
『……さっきまで塾だったから仕方ないにせよ、毎回毎回無視するな』
「……え?」
『…………もう電話はやめにする。だけど近いうちにこの手で消してやる、岸本花梨』
この前と同じ、殺気を帯びた低い声。
今回もボイスチェンジャーで加工したような機械的な声で、やはりこれだけで性別を判別することは難しい。
電話はすでに切れてしまったようで、ツーツーツーという機械音が鳴り響いている。
美波の顔を見ると、明らかに青ざめている。
「花梨、その電話、ヤバくない?」
「でしょ? 何の意味があってやってるのか。でも、もう電話はやめにするってことは、かけてこないってことなのかな?」
それなら本当に助かるんだけど、と半信半疑でスマホをカバンに入れる。
「そうじゃなくてさ。なんでそいつ、今まで花梨が塾の授業受けてたって知ってるのよ」
……言われてみれば、そうだ。
「どこかから漏れた情報でかかってきてるイタズラ電話にしては、花梨のこと、知りすぎてるんじゃないかな?」
「……じゃあ、やっぱり」
「花梨が勘づいてるように、私もその電話の相手は、花梨の知ってる人なんじゃないかなと思う。それも、花梨が塾に通ってるのも把握してる人」
私が塾に通ってることは、同じ学校で同じクラスだった人は結構知ってると思う。
いつも朝の時間とか利用して、教室で塾の課題をやってたし……。
でも、だとしたら、本当に誰がどんな理由で……。
私、学校で誰かに恨まれるようなことしたかな……?
「花梨のところも学校明日からなんだよね」
「……うん」
「花梨のことだから、あまり大事にしたくないんだろうけど、ちょっと警戒して周りを見てた方がいいかもしれないね。あまりに酷いようなら、親とか先生とか、最悪、警察に相談するとかさ」
「……うん」
美波の言うとおり、そんな大人を巻き込むような大事になんてしたくない。
ましてや、警察沙汰なんて……。
「本当に心当たりないのよね? ほら、元カレの柳澤くんとか」
「奏ちゃんは、そんなことする人じゃないよ」
「ごめんごめん。でも、可能性だよ。恋愛のこじれでおかしな行動する人もいるじゃない」
そりゃ美波の言うとおり、テレビのニュースなんかでは、そんな物騒な事件を時たま耳にするけれど。
奏ちゃんに限っては、そんなことないと思いたい。
「まぁ、とにかく気をつけてね。学校は違うけど、困ったことがあったら相談くらいのるからね」
「ありがとう、美波」
「え? あのね」
私がスマホの画面を傾けると、美波が画面を覗き込む。
「うっわ。何コレ、気持ち悪っ!」
「でしょ? ここ数日のことなんだけど、続いてて」
「思いきって番号変えたら?」
「それも考えたんだけど、もし私の知ってる人だったら変えたところで同じことの繰り返しだろうし……」
「花梨のこと、知ってる人なの?」
「一度だけ電話に出たときに、ね。私の名前、知ってるみたいだった」
そう話しているうちにも、再び画面が光り出す。
着信:非通知
「花梨……」
「まただ」
一体、誰なの……?
「え、花梨。出るの……?」
“通話”のところに指を持っていこうとした私に、美波が言う。
「うん……。無視してようかなって思ったけど、あまりにしつこいし、誰なのか聞いてみる。今なら美波もいるし」
「そんなのこたえてくれるなら、最初から非通知でかけてこないって! それに私がいるからって、何もできないかもしれないよ?」
「大丈夫。一人で受けるより、ずっと心強いから」
私は、思いきってその電話に出てみた。
「もしもし」
『……』
だけど、この前と同じように何も聞こえてこない。
“非通知”と表示されてる以上、必ずしもこの前と同じ人からかかってきてるとは言い切れないけれど、この状況に、この前の人からかかってきてるんだと確信した。
「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」
『…………』
だけど、返ってくるのは相変わらずの無言。
美波と顔を見合わせて、首を横に振る。
『……さっきまで塾だったから仕方ないにせよ、毎回毎回無視するな』
「……え?」
『…………もう電話はやめにする。だけど近いうちにこの手で消してやる、岸本花梨』
この前と同じ、殺気を帯びた低い声。
今回もボイスチェンジャーで加工したような機械的な声で、やはりこれだけで性別を判別することは難しい。
電話はすでに切れてしまったようで、ツーツーツーという機械音が鳴り響いている。
美波の顔を見ると、明らかに青ざめている。
「花梨、その電話、ヤバくない?」
「でしょ? 何の意味があってやってるのか。でも、もう電話はやめにするってことは、かけてこないってことなのかな?」
それなら本当に助かるんだけど、と半信半疑でスマホをカバンに入れる。
「そうじゃなくてさ。なんでそいつ、今まで花梨が塾の授業受けてたって知ってるのよ」
……言われてみれば、そうだ。
「どこかから漏れた情報でかかってきてるイタズラ電話にしては、花梨のこと、知りすぎてるんじゃないかな?」
「……じゃあ、やっぱり」
「花梨が勘づいてるように、私もその電話の相手は、花梨の知ってる人なんじゃないかなと思う。それも、花梨が塾に通ってるのも把握してる人」
私が塾に通ってることは、同じ学校で同じクラスだった人は結構知ってると思う。
いつも朝の時間とか利用して、教室で塾の課題をやってたし……。
でも、だとしたら、本当に誰がどんな理由で……。
私、学校で誰かに恨まれるようなことしたかな……?
「花梨のところも学校明日からなんだよね」
「……うん」
「花梨のことだから、あまり大事にしたくないんだろうけど、ちょっと警戒して周りを見てた方がいいかもしれないね。あまりに酷いようなら、親とか先生とか、最悪、警察に相談するとかさ」
「……うん」
美波の言うとおり、そんな大人を巻き込むような大事になんてしたくない。
ましてや、警察沙汰なんて……。
「本当に心当たりないのよね? ほら、元カレの柳澤くんとか」
「奏ちゃんは、そんなことする人じゃないよ」
「ごめんごめん。でも、可能性だよ。恋愛のこじれでおかしな行動する人もいるじゃない」
そりゃ美波の言うとおり、テレビのニュースなんかでは、そんな物騒な事件を時たま耳にするけれど。
奏ちゃんに限っては、そんなことないと思いたい。
「まぁ、とにかく気をつけてね。学校は違うけど、困ったことがあったら相談くらいのるからね」
「ありがとう、美波」
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