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8.まさか気づいてないですよね?
(4)
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ドキドキと鳴り止まない心臓。
本郷店長といると、やっぱりこうなってしまう。
ドキドキしてるのに何だか切なくて、でも温かい、そんな気持ち。
ステンレスの流しに映る自分の姿は、梨緒の姿。
本郷店長が見てくれているのは、決して高倉奈緒ではないとわかっているのに、ドキドキしてバカみたいだ。
リビングのイスに座って何かしら仕事関係の書類に目を通している本郷店長を見て、気づかれないくらいの小さなため息を吐き出した。
チキン南蛮のチキンを揚げる油の温度も適温に上がってきた頃、衣をつけたチキンを手に取り、油の中へと入れる。
そのとき、ジュワジュワジュワと揚げる音が響くと同時に、私の右手の甲に焼けるような痛みが走った。
「……痛っ」
それほど大きな声ではなかったのに、本郷店長には聞こえていたようだ。
「あ? どうした?」
本郷店長は、心配そうにこちらへとやって来る。
「す、すみません。チキンを油の中に入れた拍子に、油が跳ねてしまったみたいで……。大丈夫ですので、……ひゃっ」
心配しないでください、と言い終える前に、私はやけどした方の腕をつかまれて、流しの方へと引っ張られる。
そして、本郷店長は水道のコックを捻ると、慌てた様子で私のやけどした部分に冷水に当てた。
「やけどしたならぼやっとしてねぇで、早く冷やせ。せっかく綺麗な手をしてんのに、痕になっちまうだろ」
「す、すみません……」
ザーッという流水の音。
水の冷たさに、少しずつやけどの痛みもわからなくなってくる。
手の感触がなくなるまで冷水にさらされて、水道の水を止めた。
「そろそろ、大丈夫か?」
「はい……」
冷水から解放すると、少しヒリヒリした感触は残っているものの、大丈夫そうだ。
「俺のためにこうやって頑張ってくれるのは嬉しいけど、気をつけろよな」
本郷店長は私の頭をくしゃりと撫でると、再びリビングの方へと戻っていった。
ハプニングがあったものの、チキン南蛮等々の出来は良好だった。
本郷店長も満足そうに食べてくれた。
「少し痕になっちまったな……」
本郷店長の視線の先にあるのは、さっきやけどした私の右手の甲。
かなり早い段階で冷やしてもらったものの、その親指の下辺りがうっすらと赤くなってしまっていた。
「すみません。でも、本郷さんが急いで対処してくれたおかげで、この程度で済んだんだと思います」
やけどをしたときは冷やした方がいいとは知ってたけど、いざとなったら判断が遅れてしまっていた。
だから、本郷さんがいなかったら、きっともっと処置が遅れてしまっていたと思う。
「……まぁ、そうだったかもしれねぇな。そうだ、ちょっと来い」
腕を引かれて、リビングの奥にあるドアの中へと連れて行かれる。
「ちょっとそこに座ってろ」
「は、はい……」
通されたのは、本郷店長の寝室、だと思われるところだった。
程よく整理された室内。
パッと目に入った本棚には、私にも見覚えのある社内研修で使う資料なんかも立っていた。
本郷店長に言われた通り、壁際に置かれたベッドの端に腰を下ろす。
本郷店長は、私の目の前に見える木製の机の下から救急箱を取り出してくる。
救急箱の中から出てきたのは、うちの店舗にも置いてある、やけど痕用の軟膏だ。
「これ、やけど痕に効くって薬なんだ。どこまで綺麗に治るかわからないが、よかったら使ってみるか?」
梨緒がやけどをしたとき、私も買ったことのあるお薬だ。
確か、梨緒はこれで今ではわからないくらいに綺麗にやけど痕が治ったんだ。
「はい。じゃあ、お願いします……」
そう言った直後、本郷店長に手を取られる。
私の傷痕を労るように、優しく指先で触れるように軟膏を塗ってくれる。
まるで本郷店長の大きな両手によって、私の手が包み込まれているようで、ドキドキする……。
本郷店長といると、やっぱりこうなってしまう。
ドキドキしてるのに何だか切なくて、でも温かい、そんな気持ち。
ステンレスの流しに映る自分の姿は、梨緒の姿。
本郷店長が見てくれているのは、決して高倉奈緒ではないとわかっているのに、ドキドキしてバカみたいだ。
リビングのイスに座って何かしら仕事関係の書類に目を通している本郷店長を見て、気づかれないくらいの小さなため息を吐き出した。
チキン南蛮のチキンを揚げる油の温度も適温に上がってきた頃、衣をつけたチキンを手に取り、油の中へと入れる。
そのとき、ジュワジュワジュワと揚げる音が響くと同時に、私の右手の甲に焼けるような痛みが走った。
「……痛っ」
それほど大きな声ではなかったのに、本郷店長には聞こえていたようだ。
「あ? どうした?」
本郷店長は、心配そうにこちらへとやって来る。
「す、すみません。チキンを油の中に入れた拍子に、油が跳ねてしまったみたいで……。大丈夫ですので、……ひゃっ」
心配しないでください、と言い終える前に、私はやけどした方の腕をつかまれて、流しの方へと引っ張られる。
そして、本郷店長は水道のコックを捻ると、慌てた様子で私のやけどした部分に冷水に当てた。
「やけどしたならぼやっとしてねぇで、早く冷やせ。せっかく綺麗な手をしてんのに、痕になっちまうだろ」
「す、すみません……」
ザーッという流水の音。
水の冷たさに、少しずつやけどの痛みもわからなくなってくる。
手の感触がなくなるまで冷水にさらされて、水道の水を止めた。
「そろそろ、大丈夫か?」
「はい……」
冷水から解放すると、少しヒリヒリした感触は残っているものの、大丈夫そうだ。
「俺のためにこうやって頑張ってくれるのは嬉しいけど、気をつけろよな」
本郷店長は私の頭をくしゃりと撫でると、再びリビングの方へと戻っていった。
ハプニングがあったものの、チキン南蛮等々の出来は良好だった。
本郷店長も満足そうに食べてくれた。
「少し痕になっちまったな……」
本郷店長の視線の先にあるのは、さっきやけどした私の右手の甲。
かなり早い段階で冷やしてもらったものの、その親指の下辺りがうっすらと赤くなってしまっていた。
「すみません。でも、本郷さんが急いで対処してくれたおかげで、この程度で済んだんだと思います」
やけどをしたときは冷やした方がいいとは知ってたけど、いざとなったら判断が遅れてしまっていた。
だから、本郷さんがいなかったら、きっともっと処置が遅れてしまっていたと思う。
「……まぁ、そうだったかもしれねぇな。そうだ、ちょっと来い」
腕を引かれて、リビングの奥にあるドアの中へと連れて行かれる。
「ちょっとそこに座ってろ」
「は、はい……」
通されたのは、本郷店長の寝室、だと思われるところだった。
程よく整理された室内。
パッと目に入った本棚には、私にも見覚えのある社内研修で使う資料なんかも立っていた。
本郷店長に言われた通り、壁際に置かれたベッドの端に腰を下ろす。
本郷店長は、私の目の前に見える木製の机の下から救急箱を取り出してくる。
救急箱の中から出てきたのは、うちの店舗にも置いてある、やけど痕用の軟膏だ。
「これ、やけど痕に効くって薬なんだ。どこまで綺麗に治るかわからないが、よかったら使ってみるか?」
梨緒がやけどをしたとき、私も買ったことのあるお薬だ。
確か、梨緒はこれで今ではわからないくらいに綺麗にやけど痕が治ったんだ。
「はい。じゃあ、お願いします……」
そう言った直後、本郷店長に手を取られる。
私の傷痕を労るように、優しく指先で触れるように軟膏を塗ってくれる。
まるで本郷店長の大きな両手によって、私の手が包み込まれているようで、ドキドキする……。
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