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第1章
◆同居人は学校の……!?-広夢Side-(1)
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「──は?」
高校2年生の5月の半ば。
顔を合わせても滅多と口を効かない父さんから突然投げかけられた言葉に、思わず耳を疑った。
「だから今週末から3ヶ月、海外出張で家を空けるから。しばらくの間、父さんの知り合いの家で一緒に住んでほしいんだ」
どうやらさっき聞こえた言葉は聞き間違えではなかったようだ。
「なんだよ、突然。たかだか出張ごときで……」
母さんは俺が7歳の頃にこの家を出ていって、現在俺は父さんと二人暮らしをしている。
だけど今朝みたいに父さんとこうして顔を合わせることのほうが珍しい。仕事が忙しいのか女と遊んでるのか知ったこっちゃないが、父さんは朝晩構わず家を空けていることが多いんだ。
そんな俺にとって、父さんが出張で家を空けようが大して日常に変化ないだろう。
なのに、いきなり誰かの家に居候だなんて……。
「だから言ってるんだ。その間、父さんは家を完全に空けることになる。近所に身寄りもないお前を一人残して行けるわけないだろ」
良く言うわ。
いつも散々俺のことなんて放ったらかしのくせに。
頭の中を過るのは、今までの父さんの裏切りの行為。
父さんが海外出張でしばらく家を空けるとなれば、この家はいわば俺だけのパラダイスってことだ。
パラダイスを目の前にして、そう簡単に首を縦に振ってやるものか!
「何だ。嫌ならお前も一緒に海外に連れていくまでだが」
そうは思ったものの、それは無駄な抵抗だったようだ。
やっぱり俺はまだまだ子どもなんだと思い知らされる。
たかだか出張で日本を離れるからって、俺を一緒に連れて行くなんて……。
学校だってあるのに、この人は何を考えているのか。
そんなこっちが無理だと言うことをわかってて言ってくるところが性格悪い。
「わーったよ。住みゃいいんだろ? その誰がしかの家に」
「そうだ」
投げやりに言葉を放つと、当然のごとく返される父さんの言葉に余計に腹が立つ。
「で、いつから?」
「今週の金曜からだな。一応業者には、金曜の夕方にはお前の荷物を運んでもらうように頼んでいる」
「金曜、って。明後日じゃねーか!」
いくらなんでも急過ぎだろ!?
勝手に俺の知らないところで居候の話をつけて、業者を頼むなんて……。
この人の身勝手さはよくわかってるつもりだけど、ここまでとはな。
怒るのもアホらしくなってきた。
「どうせ父さんが帰る頃にはお前はまた寝てるだろうから、今晩帰ったときにお前が世話になる篠原さんの家の地図を書いて机の上に置いておく」
居候先は、篠原さんっていうのか。
あまり父さんの知り合いとか会ったことねーから、俺にとってはハジメマシテなんだけどな。
適当に返事をして会話を終えて自分の部屋に戻ったときには、どっと疲れが出るようだった。
そんなこんなで言い渡された、篠原さん宅の居候。
引っ越し当日も、家に帰ると俺の全ての荷物はすでに篠原さん宅に送られていて、仕方なしに篠原さん宅に向かったのだった。
「──あれ? ここに住んでる篠原さんって、もしかしてヒメのことだったの!?」
だけどそこで俺が出くわしたのは、学園のお姫さま的存在の篠原美姫、通称“ヒメ”の姿だったんだ──。
おいおい、マジかよ……。
同居人って、まさかヒメ!?
俺の父さんもヒメの親も何考えてんだ!?
聞けば、ヒメはここで一人暮らししていたらしく、これから俺はヒメと二人で暮らすことになるそうだ。
ヒメも、よくここで俺と住むことを許可したよな。
いや、ヒメも俺の顔を見て驚いているみたいだったし、ヒメもまさか同居人が俺だなんて思っていなかったのだろう。
高校2年生の5月の半ば。
顔を合わせても滅多と口を効かない父さんから突然投げかけられた言葉に、思わず耳を疑った。
「だから今週末から3ヶ月、海外出張で家を空けるから。しばらくの間、父さんの知り合いの家で一緒に住んでほしいんだ」
どうやらさっき聞こえた言葉は聞き間違えではなかったようだ。
「なんだよ、突然。たかだか出張ごときで……」
母さんは俺が7歳の頃にこの家を出ていって、現在俺は父さんと二人暮らしをしている。
だけど今朝みたいに父さんとこうして顔を合わせることのほうが珍しい。仕事が忙しいのか女と遊んでるのか知ったこっちゃないが、父さんは朝晩構わず家を空けていることが多いんだ。
そんな俺にとって、父さんが出張で家を空けようが大して日常に変化ないだろう。
なのに、いきなり誰かの家に居候だなんて……。
「だから言ってるんだ。その間、父さんは家を完全に空けることになる。近所に身寄りもないお前を一人残して行けるわけないだろ」
良く言うわ。
いつも散々俺のことなんて放ったらかしのくせに。
頭の中を過るのは、今までの父さんの裏切りの行為。
父さんが海外出張でしばらく家を空けるとなれば、この家はいわば俺だけのパラダイスってことだ。
パラダイスを目の前にして、そう簡単に首を縦に振ってやるものか!
「何だ。嫌ならお前も一緒に海外に連れていくまでだが」
そうは思ったものの、それは無駄な抵抗だったようだ。
やっぱり俺はまだまだ子どもなんだと思い知らされる。
たかだか出張で日本を離れるからって、俺を一緒に連れて行くなんて……。
学校だってあるのに、この人は何を考えているのか。
そんなこっちが無理だと言うことをわかってて言ってくるところが性格悪い。
「わーったよ。住みゃいいんだろ? その誰がしかの家に」
「そうだ」
投げやりに言葉を放つと、当然のごとく返される父さんの言葉に余計に腹が立つ。
「で、いつから?」
「今週の金曜からだな。一応業者には、金曜の夕方にはお前の荷物を運んでもらうように頼んでいる」
「金曜、って。明後日じゃねーか!」
いくらなんでも急過ぎだろ!?
勝手に俺の知らないところで居候の話をつけて、業者を頼むなんて……。
この人の身勝手さはよくわかってるつもりだけど、ここまでとはな。
怒るのもアホらしくなってきた。
「どうせ父さんが帰る頃にはお前はまた寝てるだろうから、今晩帰ったときにお前が世話になる篠原さんの家の地図を書いて机の上に置いておく」
居候先は、篠原さんっていうのか。
あまり父さんの知り合いとか会ったことねーから、俺にとってはハジメマシテなんだけどな。
適当に返事をして会話を終えて自分の部屋に戻ったときには、どっと疲れが出るようだった。
そんなこんなで言い渡された、篠原さん宅の居候。
引っ越し当日も、家に帰ると俺の全ての荷物はすでに篠原さん宅に送られていて、仕方なしに篠原さん宅に向かったのだった。
「──あれ? ここに住んでる篠原さんって、もしかしてヒメのことだったの!?」
だけどそこで俺が出くわしたのは、学園のお姫さま的存在の篠原美姫、通称“ヒメ”の姿だったんだ──。
おいおい、マジかよ……。
同居人って、まさかヒメ!?
俺の父さんもヒメの親も何考えてんだ!?
聞けば、ヒメはここで一人暮らししていたらしく、これから俺はヒメと二人で暮らすことになるそうだ。
ヒメも、よくここで俺と住むことを許可したよな。
いや、ヒメも俺の顔を見て驚いているみたいだったし、ヒメもまさか同居人が俺だなんて思っていなかったのだろう。
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