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第4章
◆真剣勝負の行方-広夢Side-(2)
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「まっ、その場合、ヒメが二人のどちらにもなびかない可能性もあるけどさ」
う……っ。
その通りと言えばそうなんだけどさ。
「で、どうすんの? 今なら俺が証人になってあげるけど……」
俺と持田を交互に見る結人。
ここから先が、本当の勝負なのかもしれない。
こんなところで、持田に負けてたまるか!
「おう! 俺は、いいぜ?」
「僕こそ、易々と篠原さんから身を引くつもりはないよ?」
再びあのときと同じように火花を飛ばす俺と持田。
そのときだった。
「……わ、私が、どうしたの?」
いつの間にか、数枚のプリント持った美姫が驚いたような表情を浮かべてすぐそばに立っていた。
「み、美姫。いつからそこに居たんだよ」
「篠原さんこそ、どうしたの?」
俺だけでなく、持田も柄に合わずびくりと反応している。
唯一、余裕の笑みを崩さずにその場に立っているのは、結人のみだ。
そりゃそうだろう。
こんな話の核心に触れていたところで、当の本人が現れるだなんて、驚くなって方が無理がある。
だけど美姫の様子から自分の名前が出されたところは聞いていたようだが、俺らの会話の中身まで聞いてた訳ではなさそうだった。
「あ、これ。生徒会の方のなんだけど、さっきそこで先生と会って、次の学級委員会で話し合ってほしいことだって渡されて……」
美姫の持っているプリントをちらりと覗き見てみると、どうやら生徒会の方のプリントのようだった。
美姫は修学旅行実行委員の仕事も完璧にこなしてるけど、生徒会の仕事もあるんだもんな。
テストでは学年一位だし、何より良いのはそれを全く鼻にかけないこと。
「うん。わかった。ありがとう」
今目の前でやり取りされてるのは、機械的な会話。
だけど、俺には入れない内容に、疎外感さえ感じる。
「ヒメ、広夢から聞いた? 広夢、頑張った結果、今回のテスト学年二位だったんだよ」
「ちょっ、お前っ!」
うああああ!
結人の奴、美姫と持田の会話が途切れた瞬間に、何言ってやがる!
慌てて結人の口を塞ぐも、時すでに遅し。
「え!? そうなの!? 広夢くん、すごく頑張ってたもんね。おめでとう」
「お、おう……っ」
おめでとうって、美姫の方がすごいんだけどな。
でも、嫌みっぽくもなく、純粋に俺の努力を評価してそう言ってくれる美姫に、思わず胸がドキンと跳ねた。
「あ、ちなみに僕は負けたわけじゃないから。夏川くんと同点二位。僕は今回はうっかりミスもあったからね、危うく二位の座を持ってかれるところだったよ」
はぁあ!?
何だよ、その負け惜しみみたいなセリフは!?
聞かれてもないのに、まるで“うっかりミスがなければボクの方が上でした~”みたいな言い方しやがって。
聞いてるだけでイライラする……!
ほら見ろ、美姫だってそんなこと言われて反応に困ってるだろうが!
「同点とはいえ、俺は広夢の跳躍ぶりを評価すべきだと思うけどな。まず、今まで学年100位以内に入ったことさえなかったのに」
「うるせっ! これ以上言ったら、いくらお前でも許さねぇからな!?」
「はいはい」
そんな風に笑う結人は、完全に俺のことをからかって楽しんでるようだった。
そんな感じに俺たちの期末テストは幕を閉じ、いよいよ修学旅行の日がやってくる。
修学旅行先は、沖縄。
現地までは飛行機での移動になる。
俺らの学校の生徒は基本的にこの飛行機の後方部分の3分の2ほどを使わせてもらっているから、一般の人ももちろん乗り合わせているが、俺の周囲は知った顔だらけ。
座席は、各クラスごとにまとまって座るのが基本なのだが……。
二人の間に通路を挟んでるとはいえ、何であいつが美姫の隣なんだよ……。
飛行機の中は、通路をそれぞれ挟んで、二人席、三人席、二人席と並んでいる。
結人、俺と窓際から詰めて座っている中、美姫は二列前方の三人席の、俺に近い方の端に座っている。
最初は美姫の隣に座る宮園たちと話してる風だった美姫だが、どういうわけか、今美姫はちょうど俺の二列前に座る奴と話してるんだ。
隣のクラスの持田と。
「広夢、せっかくの修学旅行なのに顔が怖いよ?」
「うるせぇ! ほっとけ!」
だけど結人がそう簡単に俺の言うことをハイハイと聞くわけもなく、おもむろに隣で修学旅行のしおりをパラパラとめくりながら再び口を開く。
「ところで、この修学旅行の冊子って広夢もイラスト描いたんだっけ? どれ? まさか裏表紙の新種のモンスター?」
「だああ! さっきから何だよ。お前、ケンカ売ってんのか!? どっからどう見てもシーサーだろうが!」
俺ってそんなに絵心ないか?
持田に怪物って言われたときより地味にへこむのだが。
う……っ。
その通りと言えばそうなんだけどさ。
「で、どうすんの? 今なら俺が証人になってあげるけど……」
俺と持田を交互に見る結人。
ここから先が、本当の勝負なのかもしれない。
こんなところで、持田に負けてたまるか!
「おう! 俺は、いいぜ?」
「僕こそ、易々と篠原さんから身を引くつもりはないよ?」
再びあのときと同じように火花を飛ばす俺と持田。
そのときだった。
「……わ、私が、どうしたの?」
いつの間にか、数枚のプリント持った美姫が驚いたような表情を浮かべてすぐそばに立っていた。
「み、美姫。いつからそこに居たんだよ」
「篠原さんこそ、どうしたの?」
俺だけでなく、持田も柄に合わずびくりと反応している。
唯一、余裕の笑みを崩さずにその場に立っているのは、結人のみだ。
そりゃそうだろう。
こんな話の核心に触れていたところで、当の本人が現れるだなんて、驚くなって方が無理がある。
だけど美姫の様子から自分の名前が出されたところは聞いていたようだが、俺らの会話の中身まで聞いてた訳ではなさそうだった。
「あ、これ。生徒会の方のなんだけど、さっきそこで先生と会って、次の学級委員会で話し合ってほしいことだって渡されて……」
美姫の持っているプリントをちらりと覗き見てみると、どうやら生徒会の方のプリントのようだった。
美姫は修学旅行実行委員の仕事も完璧にこなしてるけど、生徒会の仕事もあるんだもんな。
テストでは学年一位だし、何より良いのはそれを全く鼻にかけないこと。
「うん。わかった。ありがとう」
今目の前でやり取りされてるのは、機械的な会話。
だけど、俺には入れない内容に、疎外感さえ感じる。
「ヒメ、広夢から聞いた? 広夢、頑張った結果、今回のテスト学年二位だったんだよ」
「ちょっ、お前っ!」
うああああ!
結人の奴、美姫と持田の会話が途切れた瞬間に、何言ってやがる!
慌てて結人の口を塞ぐも、時すでに遅し。
「え!? そうなの!? 広夢くん、すごく頑張ってたもんね。おめでとう」
「お、おう……っ」
おめでとうって、美姫の方がすごいんだけどな。
でも、嫌みっぽくもなく、純粋に俺の努力を評価してそう言ってくれる美姫に、思わず胸がドキンと跳ねた。
「あ、ちなみに僕は負けたわけじゃないから。夏川くんと同点二位。僕は今回はうっかりミスもあったからね、危うく二位の座を持ってかれるところだったよ」
はぁあ!?
何だよ、その負け惜しみみたいなセリフは!?
聞かれてもないのに、まるで“うっかりミスがなければボクの方が上でした~”みたいな言い方しやがって。
聞いてるだけでイライラする……!
ほら見ろ、美姫だってそんなこと言われて反応に困ってるだろうが!
「同点とはいえ、俺は広夢の跳躍ぶりを評価すべきだと思うけどな。まず、今まで学年100位以内に入ったことさえなかったのに」
「うるせっ! これ以上言ったら、いくらお前でも許さねぇからな!?」
「はいはい」
そんな風に笑う結人は、完全に俺のことをからかって楽しんでるようだった。
そんな感じに俺たちの期末テストは幕を閉じ、いよいよ修学旅行の日がやってくる。
修学旅行先は、沖縄。
現地までは飛行機での移動になる。
俺らの学校の生徒は基本的にこの飛行機の後方部分の3分の2ほどを使わせてもらっているから、一般の人ももちろん乗り合わせているが、俺の周囲は知った顔だらけ。
座席は、各クラスごとにまとまって座るのが基本なのだが……。
二人の間に通路を挟んでるとはいえ、何であいつが美姫の隣なんだよ……。
飛行機の中は、通路をそれぞれ挟んで、二人席、三人席、二人席と並んでいる。
結人、俺と窓際から詰めて座っている中、美姫は二列前方の三人席の、俺に近い方の端に座っている。
最初は美姫の隣に座る宮園たちと話してる風だった美姫だが、どういうわけか、今美姫はちょうど俺の二列前に座る奴と話してるんだ。
隣のクラスの持田と。
「広夢、せっかくの修学旅行なのに顔が怖いよ?」
「うるせぇ! ほっとけ!」
だけど結人がそう簡単に俺の言うことをハイハイと聞くわけもなく、おもむろに隣で修学旅行のしおりをパラパラとめくりながら再び口を開く。
「ところで、この修学旅行の冊子って広夢もイラスト描いたんだっけ? どれ? まさか裏表紙の新種のモンスター?」
「だああ! さっきから何だよ。お前、ケンカ売ってんのか!? どっからどう見てもシーサーだろうが!」
俺ってそんなに絵心ないか?
持田に怪物って言われたときより地味にへこむのだが。
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