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*第1章*

生徒会の紅一点!?(2)

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「……そうです。だから高校では違う部活をって思うんですけど、どの部活も中学からやってるって子結構多いから、何か入りづらくて……」

 あたしの話し方のせいか、どことなくしんみりとした空気が流れる資料室。


「って、こんな話を先輩たちにしても仕方ないですよね! なんかすみません」

 あたしは慌てて、なるべく明るい口調でそう言った。

 だって、こんなこと言ったって、先輩たちにとってはただの迷惑じゃん……。
 
 再び静まり返る資料室。

 その沈黙を破ったのは、神崎先輩だった。


「おまえの言いたいことはだいたいわかった」

「え……?」

 神崎先輩が発した意外な言葉に、あたしは神崎先輩を見る。

 だって、神崎先輩だったら、あたしのこんな話なんて、もっと鼻で笑ってのけると思ったんだもん……。


「つまりは、自分が入りたい部活も、入るべき部活もわかんねーんだろ? じゃあ、俺が決めてやるよ」

「へ……?」


 神崎先輩の言葉に、さっきよりも一層間の抜けた声が出た。

 だって、神崎先輩があたしの部活を決めるの……!?


「そのかわり、ちゃんとその部に入れよ? 返事は?」

「は、はい……」

 言われるがままに返事をすると、神崎先輩は満足げに口端を上げて、あたしに言った。


「今日付けで、おまえをこの生徒会メンバーに入れてやる」


 ええええーっ!?


「あ、あたしに生徒会とか無理ですよ」


 どう考えたって、あたしにはまず向いてない。

 それ以前に、何でそうなるの!?

 神崎先輩は、あたしの部活を選んでくれるって言ってたよね……?


「何言ってんの? おまえに拒否権なんてねえだろ?」

 あたしの反応に、思いきり顔をしかめる神崎先輩。

 確かにさっき神崎先輩の決めた部活に入れって言われて、うなずいちゃったけど……。


「……で、でも、生徒会だなんて……。まず、部活じゃないじゃないですか!」

 すると、神崎先輩は不敵な笑みを見せる。


「知らねえの? この学校では、生徒会は生徒会執行部っていう名前で、形の上では部活と同じ扱いになってんだよ」

「で、でも……っ」

「とにかく決まりな! ちょうど補佐役が欲しかったんだよ」


 神崎先輩は勝ち誇ったようにニッと笑った。

 あたしが小さく肩を落とすと、妹尾先輩が口を開く。


「俺は、優芽ちゃん入るの歓迎やで?」

「え……?」

「だって、生徒会に女の子の意見も必要やと思うし。そういった点では男だけしかおらんより、ずっといい生徒会にしていけると思う」

「確かに陸人の言う通りだな! 蓮の言い方は強引過ぎるけど、優芽ちゃんさえ良かったらさ、考えてみてよ!」

 妹尾先輩の言葉に、広瀬先輩も身を乗り出してあたしに言う。


「そういうことだ。普通に女の補佐役を募集したって、ろくな奴が集まらないのだって、あの入学式の光景を見たら想像つくだろ?」

 二人の言葉に付け加えるように、神崎先輩はそう言った。

 そういうことだ、って……。

 何だか、さも神崎先輩も同じようなことを思ってたみたいな言い方だけど……。

 でも、確かに、あの入学式の先輩たちの登場に対する熱気はすごかったもんね……。


「わかったなら返事は?」

「……はい」

 すると、神崎先輩は口角をニッと上げて、入学式の日に壇上に立ったときと同じ柔らかい笑みを見せた。

 か、かっこいい……。

 不覚にもドキドキと胸が高鳴る。

 性格はともかく、顔は良すぎるくらいにかっこいいんだもん……。

 その顔でその表情は反則だって!!
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