上 下
35 / 81
*第3章*

炎天下のハプニング!?(1)

しおりを挟む
 照り付ける陽射しに、めまいさえ覚える。


「あっつ~」

「ほんと、何も期末テスト終わったからって、この時期に球技大会なんてね……」

 一週間前に期末テストを終えたあたしたち。

 夏休みを目前として、桜ヶ丘高校ではクラス対抗の球技大会が行われていた。


 球技大会は、各クラストーナメント方式で行われ、種目はバレーボール、バスケ、サッカー。

 あたしと結衣はバレーボールの部に出ていたんだけど、早くも初戦敗退。

 だから、有り余った時間を、こうして体育館の軒下でダラダラと過ごしていた。


「でも、テストもなんとか赤点なしでパスできて良かったよぉ~」

「優芽、生徒会長からスパルタ授業受けてたもんね」

「思い出すだけでも恐怖だよ……」

 まあそのおかげで赤点免れたんだけど……。

 ふふふと笑う結衣は、あたしたち一年生の成績トップ。

 美人で、頭もいいなんて……、あたしにどっちか分けてほしいくらいだよ。


 そのとき、体育館の中から、キャアアアっと割れんばかりの黄色い歓声が響く。 

 気になって体育館の中を覗くと、溢れんばかりの女子生徒。


「な、何事?」

「二年生の男子バスケの試合じゃないかな。会長と副会長の居る二年八組と、書記の笹倉先輩の居る二年五組の試合が、ちょうど今行われてるって」

 結衣は球技大会のタイムテーブルを見ながら言う。


「それでか……」

 そういえば、妹尾先輩以外の三人は、バスケに出るって言ってたもんなあ。

 改めて、生徒会の皆さんの人気を実感する。

 こんな有名人と一緒に生徒会やってるなんて、不思議な感じがするよ……。


「優芽は見なくていいの?」

「え……、だって、絶対すごい人だよ」

「ちょっとだけ、行ってみよう?」

 結衣って、入学当時、生徒会の皆さんには興味ないって言ってなかったっけ?

 あたしは結衣に手を引かれながら、しぶしぶ人混みの中へと足を踏み入れた。


「やっぱりすごい人だし、これ以上無理だよ~」

 やっとバスケの試合の行われているコート付近まで来たものの、ここから先輩たちの姿を確認できないくらいの人だかり。


「きゃあああ!! 蓮サマすごーいっ!!」

 瞬間、ものすごい盛り上がりを見せる。

 雰囲気的に、神崎先輩がシュートでも決めたのかな……?

 ここからじゃ、全く以って分からないけれど。


「お二人さん」

 そのとき、背後からあたしと結衣の肩にポンと手を乗せられる。

 この人混みの中、誰だろうと振り向くと……。


「せ、妹尾先輩!?」

 そこには、爽やかな笑みを浮かべた妹尾先輩が立っていた。

 妹尾先輩は、シーッと口元に人さし指を立てる。


「……この試合がよく見えるいい穴場知ってるねん。良かったら、お二人さん、どうや?」

 妹尾先輩の提案に、あたしと結衣は顔を見合わせて、妹尾先輩のあとに続いた。



「わああ!! すごいですね!!」

 ガラスばりの窓越しに見えるのは、先程の神崎先輩たちの試合。

 それが、真上から綺麗に見えていた。


「体育館の二階に併設された運動部のトレーニングルームからは、体育館の一階が綺麗に見渡せますからね」

 結衣もなるほどといった感じに、ガラスばりの窓の外を見つめる。


「せやろ? 何やみんなの出る試合はギャラリーが多いからな、でもやっぱり勝敗は気になるし、俺はいつもこっから見てるねん」

 妹尾先輩も隣に来て、バスケの試合に視線を落とす。


「ここの鍵の管理は基本的に生徒会が管理しとるからな、俺らの特権やで?」

「でも、よくあたしたちが体育館に居るのが分かりましたね」

 得意げに笑う妹尾先輩に、結衣が口を開く。
しおりを挟む

処理中です...