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4*コイツ、俺のやから
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そう思ってたときだった。
──コンコン。
洗面所の扉が不意にノックされる。
こ、こうちゃん……?
「は、はい……」
どうしよう、と困惑を隠せないまま、返事を返す。
「ちぃ? リビングにバスタオルが落ちててんけど、もしかして忘れて入ったんとちゃう?」
リビングに!?
そんなところに落として来てたなんて……。
「う、うん。そうなの。すごく、困ってて……」
恥ずかしいけど、すぐそこまでこうちゃんがバスタオルを持ってきてくれてるなら、それを渡してもらうしかない。
「そんなことやろうと思ったわ。ほな、これ、洗面所持って入っとくな?」
こうちゃんがそう言った瞬間、目の前の洗面所のドアノブが下がる。
「ま、ままま待って! 開けないで!」
わずかに開いて、そのまま静止する扉。
「なんやねん。バスタオル、ないと困るんやろ?」
「そ、そうだけど……」
でも、こうちゃん相手に今裸だって言うのも気が引けるし……。
っていうか、そのくらい察してよ!
「その、隙間からちょうだい、バスタオル」
少しの間の後、ドアの隙間から差し出されるバスタオル。
や、やった!!
だけど、それを手に取ろうとした瞬間。
──バンッ。
「ひゃっ!?」
何につまずいたのか、あたしは勢い余って、前のめりに倒れてしまった。
その衝撃で、開いてしまうドア。
あたしの素肌に感じる、衣服の感触とあたたかい温もり。
「うわっ! ち、ちぃ! だ、大丈夫か?」
かなり焦った様子のこうちゃん。
あたしの身体は、幸いにもこうちゃんの身体に支えられていて……。
って、えっ!?
まるであたしからこうちゃんに抱きつくような格好に、あたしの素肌に触れるこうちゃんの手の感触。
「ほんま、ちぃはおっちょこちょいさんやな。ケガないか?」
そう言いながら、あたしを立たせて、あたしの頭にバスタオルを乗せてくれるこうちゃん。
「あ……」
その瞬間、こうちゃんの視線の先があたしの顔から下へとおりたのが、はっきりわかった。
「いやあぁぁぁあ! み、見ないでよ、変態っ!!」
「うわっ!」
その瞬間、やっと今の状況を把握したあたしは、そのままドカッと両手でこうちゃんの顔を突き飛ばして洗面所のドアを閉めた。
──ドキドキドキドキドキ。
鳴り止むことを知らないかのように、早鐘を打つ心臓。
み、見られた……。
こうちゃんは、悪くない。
今回に限っては、こうちゃんが意地悪したからじゃなくて、あたしの不注意であんな風になったのに……。
こうちゃんに裸を見られたという事実だけで、あたしは完全に冷静さを失っていた。
こうちゃん、さっきのはさすがに怒ったよね……?
心配してくれてる風だったのに。
あぁ~、もう!
次からどんな顔して会えばいいのよ!
湯船に浸かっていたときよりも明らかに火照った顔をバスタオルに埋めて、あたしは悶々と一人頭を悩ませることとなった。
*
「光樹ぃ~、そのほっぺたの腫れ、どうしたのぉ~?」
「ん~、まぁ不慮の事故ってやつや!」
次の日、あたしの真後ろの席でそんな会話が何の遠慮もなく交わされる。
昨日あたしが思わず殴ったこうちゃんの頬は、想像以上に腫れてしまった。
罪悪感から、あのあとあたしが渡した湿布をこうちゃんが素直に頬に貼り付けてくれたのはいいものの、明らかに目立っている。
文句のひとつやふたつ言われると思っていたけど、意外にもこうちゃんにその様子はなく、今朝もまるで何事もなかったかのように聞いてもないたわいない話をペラペラと話していた。
案外気にしてるのはあたしだけで、こうちゃんはあたしの身体を見たことについては何も思ってないのかもしれない。
それはそれでいいんだけど、乙女心としてはちょっと複雑だ。
──コンコン。
洗面所の扉が不意にノックされる。
こ、こうちゃん……?
「は、はい……」
どうしよう、と困惑を隠せないまま、返事を返す。
「ちぃ? リビングにバスタオルが落ちててんけど、もしかして忘れて入ったんとちゃう?」
リビングに!?
そんなところに落として来てたなんて……。
「う、うん。そうなの。すごく、困ってて……」
恥ずかしいけど、すぐそこまでこうちゃんがバスタオルを持ってきてくれてるなら、それを渡してもらうしかない。
「そんなことやろうと思ったわ。ほな、これ、洗面所持って入っとくな?」
こうちゃんがそう言った瞬間、目の前の洗面所のドアノブが下がる。
「ま、ままま待って! 開けないで!」
わずかに開いて、そのまま静止する扉。
「なんやねん。バスタオル、ないと困るんやろ?」
「そ、そうだけど……」
でも、こうちゃん相手に今裸だって言うのも気が引けるし……。
っていうか、そのくらい察してよ!
「その、隙間からちょうだい、バスタオル」
少しの間の後、ドアの隙間から差し出されるバスタオル。
や、やった!!
だけど、それを手に取ろうとした瞬間。
──バンッ。
「ひゃっ!?」
何につまずいたのか、あたしは勢い余って、前のめりに倒れてしまった。
その衝撃で、開いてしまうドア。
あたしの素肌に感じる、衣服の感触とあたたかい温もり。
「うわっ! ち、ちぃ! だ、大丈夫か?」
かなり焦った様子のこうちゃん。
あたしの身体は、幸いにもこうちゃんの身体に支えられていて……。
って、えっ!?
まるであたしからこうちゃんに抱きつくような格好に、あたしの素肌に触れるこうちゃんの手の感触。
「ほんま、ちぃはおっちょこちょいさんやな。ケガないか?」
そう言いながら、あたしを立たせて、あたしの頭にバスタオルを乗せてくれるこうちゃん。
「あ……」
その瞬間、こうちゃんの視線の先があたしの顔から下へとおりたのが、はっきりわかった。
「いやあぁぁぁあ! み、見ないでよ、変態っ!!」
「うわっ!」
その瞬間、やっと今の状況を把握したあたしは、そのままドカッと両手でこうちゃんの顔を突き飛ばして洗面所のドアを閉めた。
──ドキドキドキドキドキ。
鳴り止むことを知らないかのように、早鐘を打つ心臓。
み、見られた……。
こうちゃんは、悪くない。
今回に限っては、こうちゃんが意地悪したからじゃなくて、あたしの不注意であんな風になったのに……。
こうちゃんに裸を見られたという事実だけで、あたしは完全に冷静さを失っていた。
こうちゃん、さっきのはさすがに怒ったよね……?
心配してくれてる風だったのに。
あぁ~、もう!
次からどんな顔して会えばいいのよ!
湯船に浸かっていたときよりも明らかに火照った顔をバスタオルに埋めて、あたしは悶々と一人頭を悩ませることとなった。
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「光樹ぃ~、そのほっぺたの腫れ、どうしたのぉ~?」
「ん~、まぁ不慮の事故ってやつや!」
次の日、あたしの真後ろの席でそんな会話が何の遠慮もなく交わされる。
昨日あたしが思わず殴ったこうちゃんの頬は、想像以上に腫れてしまった。
罪悪感から、あのあとあたしが渡した湿布をこうちゃんが素直に頬に貼り付けてくれたのはいいものの、明らかに目立っている。
文句のひとつやふたつ言われると思っていたけど、意外にもこうちゃんにその様子はなく、今朝もまるで何事もなかったかのように聞いてもないたわいない話をペラペラと話していた。
案外気にしてるのはあたしだけで、こうちゃんはあたしの身体を見たことについては何も思ってないのかもしれない。
それはそれでいいんだけど、乙女心としてはちょっと複雑だ。
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