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イータウン冒険編
11話 険しきSランク冒険者への道!そして、四聖獣との出会い
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杏里沙達は水龍が棲む海岸に来ていた。
ここまでの道中の魔物狩はリュウセイさんが全てやってくれた。息一つ乱さず余裕で魔物達を一掃していた。
圧倒的だった。黒龍との戦いの時は近くで見る事が出来ず、リュウセイさんの戦いをまともに見るのは初めてだった。
そのおかげで私達は無傷で水龍に戦いを挑む事が出来るのだ。
さあ、お前ら、奴が水龍だ。気を引き締めろよ!
水龍は首が5つもあったのだ。杏里沙達はまずそこに驚いた。さらに水龍は杏里沙達をみて威嚇したのだ。その影響で海や森の魔物達が血相を変えて逃げ出したのだ。
リュウセイが話す。
ほう、水龍が威嚇したか。水龍は自身よりも強いと判断した相手を威嚇する。つまり杏里沙達は水龍よりも強い。しかし、水龍のパワーは俺ですらまともに攻撃を受けたいとは思わない程のものだ。
経験値の差であったり、一瞬の隙が勝敗を分けるこの戦い。
ハイレベルな戦いになるほど、「やられる前にやる」が常識化してくる。
このクラスの魔物になると一撃で相手を追い詰める様な攻撃手段を持っている。
小細工は通用しない。さあ杏里沙達よ、どう戦うのかじっくりと見物させてもらうぞ。
杏里沙達3人は水龍の威嚇に驚かなかった。何故なら、リュウセイとの地獄の修行を経験しているからだ。リュウセイの戦闘時の迫力は黒龍に近い。黒龍を目の当たりにし、リュウセイの修行にも耐えた杏里沙達にとって水龍の威嚇は可愛いものに思えたのだ。
そんな杏里沙達に対し水龍は焦っていた。
その為、いきなり本気の一撃を繰り出したのだ。
水龍は海水を大量に吸い込み、一気に吐き出した。その海水の量は辺り一体を飲み込むほど。
杏里沙達はいきなり大きなダメージを受けることになる。
水龍はブレス攻撃をする時に魔力を粒子の様にして一緒にとばすのだ。
魔力粒子の混ざった海水を高水圧で吐き出すとどんな事が起こるか。それは切れ味の鋭い水圧カッターとなり、金剛石をも切り裂く。
しかし、この攻撃を受けた杏里沙達はダメージを負ったものの、冷静だった。
あ、あっぶねー!死ぬかと思ったー!てかあの攻撃は普通死ぬよ?生きてんの奇跡だよ!
あいつのブレスには魔力がこもってるよ。
杏里沙様、それだけではありません。奴は膨大な魔力を身に纏ってるようにも見えました。
え?そんな事が可能なのか?
杏里沙様。リュウセイ殿も魔力を鎧の様にして纏っていましたよ。気づかなかったのですか?
い、いやー私って意外に鈍感でさー笑
ラ、ランもそれ気づかなかったのですー。
リュウセイ殿はその力の存在は教えてくれましたが極意までは教えてくれませんでしたね。まあ、それどころではなかったのですが。
そういえばさ私、リュウセイさんにあの技を見せたじゃん?リュウセイさんがめっちゃテンション上がってたあの技。
あの技は魅力的で素晴らしいけど、試験で使ったら不合格にするって言われてさー。
あの技が使えたら相手が黒龍でもあの時よりはマシな戦いができると思うんだよね。こんな水龍如き簡単に倒せると思うよ。
けどさ、所詮はスキルなんだ。スキルは格上が相手なら無効にされかねない。スキルに頼って戦う内は強くなれない。そう思うんだ。
リュウセイさんが教えてくれたあの魔力集中。もっと精度をあげよう。私達には既にかなりの魔力が秘められている。信じよう。
この魔力集中のおかげで私達はさっきの攻撃を耐えられた。大きなダメージを受けたけど致命傷にはならずに済んだ。
今、実感としてわかるけど、長い時間魔力集中していると基礎身体能力が徐々に上がってるんだ。この戦闘中の僅かな時間内でも基礎身体能力は上がってる。
きっと次同じ攻撃を食らっても先程よりもダメージは小さくなるはず。魔力集中は途切らせずに頑張ろう。
レイとランは杏里沙の言葉に力強くうなずく。
水龍の攻撃はまだまだ終わらない。5つある頭から海水ブレスを同時に放ち、杏里沙達を追い詰めようとするがそれを全てかわす3人。
水龍は攻撃パターンを変えた。水龍の体から複数の触手が現れ、鞭のようにして振り回す。その鞭にも当然魔力がこもっていた。
魔力融合。リュウセイもこの技術を持って黒龍と戦っていた。
魔力融合とは、肉体に魔力を融合させることにより肉体レベルを飛躍的に上昇させる技術である。
しかし、魔力融合は常に全身の至る所に負担をかけてしまい、普通の人間は長くは出来ない。
魔力融合時の負担を減らすために普段から魔力集中により肉体をならしておき、魔力融合時の負担をごく小さくする事で長時間の活動を可能にする。
だが、魔物達は人間とは違う。Sランク以上の魔物はほどんどが魔力融合を使えるが、肉体に負担などかからない。
水龍は現状で魔力融合を使用出来ない杏里沙達は時間経過により少しずつ不利になっていく筈だと考える。
水龍の狙いは時間を稼ぎ杏里沙達を消耗させる事。全力の攻撃を休む間もなく繰り出す。
杏里沙達は防戦一方となりつつある。
だが、リュウセイには考えがあった。
杏里沙達が人間ではなく魔物であると言う事を前提に全てを計画していた。
リュウセイは杏里沙達がこの戦いの中で魔力融合に耐えられるだけの基礎身体能力を手に入れられると考えていた。リュウセイは杏里沙達の吸収速度を計算し、魔力融合すらも水龍の戦いを見て学び覚えてしまうと。
魔物である杏里沙達なら魔力融合を使えれば自分以上の冒険者になると確信していた。
今、杏里沙達は追い詰められてはいるが目には余裕がある。この状況でも逆転の道が見えていた。
実は戦いが長引いていたのは苦戦していたからではない。杏里沙達は様々な優秀なスキルを持っている。それらを駆使して戦えば水龍には引けを取らない。
しかし、あえてスキル未使用という縛りプレイをして戦う理由は、時間をかけて戦う事で魔力集中による基礎身体能力のアップ。水龍の実力の全てを引き出し、それらを経験値として吸収していく、そして杏里沙達の1番の狙いは、「魔力融合」を覚える事。時間をかけて戦う事で水龍の使う魔力融合をじっくり観察していく。
水龍の考えは間違っていたのだ。時間を稼げば有利になるどころか、逆に水龍不利の状況になってしまったのだ。
この事も、全てリュウセイの計算通りだった。
追い詰められている様に見えた3人はいつの間にか魔力集中により基礎身体能力が上がっていき、もう水龍の攻撃は殆ど通用しなくなっていた。
そして杏里沙3人は遂に「魔力融合」を覚えた。
その瞬間、逃げてばかりいた杏里沙達が強気になり、攻勢に出る。
はっはっはっー!見よ!この力を!水龍よ、お前の命運はここで尽きるのだ!
お前の攻撃はもう一才通用しないぞ、覚悟しろ!
魔力融合を覚えた私はさっきとは別人だからねー!
えーと、技名何にしようかな?
よーし決めた!
私の剣技、とくと見よ!
魔剣!流星斬り!
魔力融合した事により杏里沙の全身から青白いオーラが纏い、目にも止まらぬ速さで居合斬りが炸裂。
それはまさに、夜空に輝く流星そのものだった。
腹に命中し、水龍はその場にうずくまる。
そしてレイは魔力融合により、格段に器用になった。簡単な形をした魔法ではなく、魔法で複雑な形の武器を作る事ができる様になり、レイは魔法で複数の槍を作る。さらに水龍の周りを魔法陣だらけにし、その魔法陣を使って跳弾により水龍を滅多撃ちにする。
エメラルド色に輝くオーラを纏ったレイの姿は神々しい。
くらえ!連火魔翔撃!
水龍は完全にダウンし、畳み掛けるようにしてランが攻撃に出る。
ランは赤いオーラを纏って一直線に水龍の頭に向かう。
以前よりも遥かに集中力が増したランの攻撃は凄まじい威力になっていた。
ランは赤いオーラを纏いながら突進していき、水龍を縦に貫通していった。
それはまさに彗星の如し!
杏里沙達は水龍を倒した。
やったー!水龍を倒したー!リュウセイさん、見ましたか?そろそろ私に惚れました?
お前たちの戦い、しかと見届けた。惚れてはいないが見事な戦いだった。
3人ともSランク冒険者として認める!
よっしゃー遂にSランク冒険者だー!
っとっと!あれ?体が重い。た、立てない!
急に疲れが。
3人ともご苦労だったな。それは魔力融合をして体に負担をかけた影響だ。筋肉痛と似たようなものだ。ゆっくり休んで超回復させればまた、強くなれる。
あーもうお家に帰りたーい、眠たーい!
お腹すいたー!
よしお前ら、Sランク昇給祝いにまた俺が奢ってやろう。
やったー!
3人は喜ぶ。そして試験が終わり、ノータウンに帰ると。
私はメガ盛りカツカレー!
私はメガ盛り野菜炒め!
私はメガ盛り唐揚げ定食ー!
まったくお前らは相変わらず凄い食欲だな。
そして例によって3人はまたレベルが上がった。デビルアントの最大レベルは100である。
杏里沙達のレベルはもう90を超えた。
たらふく食べた後、杏里沙達はあっという間に眠りについた。
よっぽど疲れていたのか、翌日の朝は起きるのが遅く、既に昼近くなっていた。
いやー、良く寝たなー!
ここまで疲労するほどの活動は初めてですね。
ランはもう死ぬかと思ったよー!
なあ2人とも。Sランクになって早速Sランククエストを受けたい所ではあるんだが、今日は息抜きに付近の森を探索しないか?魔物素材以外の自然素材も欲しくてさ。ずっと魔物との戦いばかりだったからこういうのもありだなって思ってさ。
それは良い考えですね杏里沙様!
ランも賛成ー!
じゃ、3人で森へ探索しに行こう。
こうして3人は探索目的で森へ向かう。
杏里沙達は、素材回収をしていると見たことのない珍しい生き物に遭遇した。
ウルフか?体毛がクリスタルのように綺麗に輝いている。しかし、見た事のない生き物で、今のところ敵意を感じないが、どうやら怪我をして困っているようだった。
近づこうとした次の瞬間、同じく体毛がクリスタルのように綺麗に輝くウルフが現れた。どうやらこの子の親のようだ。しかし、どういうわけか、親の方は私達に敵意を向けている。
おいおい!待てよ!私達は何もしていないぞ。まさか、私達がこの子を襲ったと勘違いしているのか?
すると親ウルフは言葉を発した。
我々は四聖獣と呼ばれる内の一角。クリスタルウルフだ。
私の息子と妻がつい先程黒龍に襲われた。私が留守をしたほんの数分のうちにだ。妻は殺された。息子を守るために。私の妻も息子も決して弱くない。しかし、黒龍はの強さは別格だ。
黒龍に襲われたってわかってるならなぜ私達を襲う?
お前らは黒龍の仲間だろう?
はあ?何故そんな話になるんだ?
とぼけるな!お前らには黒龍の匂いが染み付いている。黒龍とともに行動してるという事だ。仲間だと疑って当然だ。
聞いてくれ!私達も先日黒龍に襲われて戦ったんだ。匂いが染み付いてるのはそのせいだよ。
ほう、黒龍と戦ったにも関わらず生きているとはな。お前らもただ者ではないという事だな。
ならばお前らのその強さを見込んで頼みたい事がある。
妻を殺された仇をとりにいく。私は殺されるかもしれん。
もし、私が死んだら息子を頼む。
おいおい待てよ!そんなに死に急ぐなよ。大体1人で戦って勝てるような相手じゃないぞ。
我々は誇り高きウルフの頂点に立つクリスタルウルフだ。
妻を殺されて仇を取らずに黙っているのは一族の恥だ。
たとえ負けると分かっていても戦って死ぬ道を選ぶ。誇りだけは捨てるわけにはいかない。
止めても無駄なんだな。
ああ!私は1人で立ち向かう。手を出すなよ。
じゃあな。息子を頼んだぞ。そう言うとクリスタルウルフはとんでもない速さで走り去って行った。
それにしてもこのクリスタルウルフの子供さっきまで酷い怪我をしていたはずなのにもう殆ど治ってる。なんて回復力だ。
杏里沙が触ろうとするとクリスタルウルフの子供はかじりついた。
警戒して当然である。
クリスタルウルフは杏里沙を威嚇した。
杏里沙は驚いた。威嚇に驚いたわけではない。こんな生まれて一年も経ってないような子供がこれほどの強さを持っている事に驚いたのだ。
私は正直、四聖獣の事を良く知らない。
この子も父親が私達に頼んだ以上、渋々受け入れている感じで心までは許せないようだ。一応行動を共にしてくれるようで、なんだか仲間になったみたいだ。まだ子供だしこれからの成長が楽しみだ。
けど、母親を失い、父親とは別れた。きっと寂しいだろうな。黒龍との戦いから無事に帰ってくるといいのだが。
杏里沙はクリスタルウルフを慰めた。
君のお父さんは必ず戻る。強いお父さんたがら、負けないよ。帰りを待とう。
次回 杏里沙様帝国建築開始
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さあ、お前ら、奴が水龍だ。気を引き締めろよ!
水龍は首が5つもあったのだ。杏里沙達はまずそこに驚いた。さらに水龍は杏里沙達をみて威嚇したのだ。その影響で海や森の魔物達が血相を変えて逃げ出したのだ。
リュウセイが話す。
ほう、水龍が威嚇したか。水龍は自身よりも強いと判断した相手を威嚇する。つまり杏里沙達は水龍よりも強い。しかし、水龍のパワーは俺ですらまともに攻撃を受けたいとは思わない程のものだ。
経験値の差であったり、一瞬の隙が勝敗を分けるこの戦い。
ハイレベルな戦いになるほど、「やられる前にやる」が常識化してくる。
このクラスの魔物になると一撃で相手を追い詰める様な攻撃手段を持っている。
小細工は通用しない。さあ杏里沙達よ、どう戦うのかじっくりと見物させてもらうぞ。
杏里沙達3人は水龍の威嚇に驚かなかった。何故なら、リュウセイとの地獄の修行を経験しているからだ。リュウセイの戦闘時の迫力は黒龍に近い。黒龍を目の当たりにし、リュウセイの修行にも耐えた杏里沙達にとって水龍の威嚇は可愛いものに思えたのだ。
そんな杏里沙達に対し水龍は焦っていた。
その為、いきなり本気の一撃を繰り出したのだ。
水龍は海水を大量に吸い込み、一気に吐き出した。その海水の量は辺り一体を飲み込むほど。
杏里沙達はいきなり大きなダメージを受けることになる。
水龍はブレス攻撃をする時に魔力を粒子の様にして一緒にとばすのだ。
魔力粒子の混ざった海水を高水圧で吐き出すとどんな事が起こるか。それは切れ味の鋭い水圧カッターとなり、金剛石をも切り裂く。
しかし、この攻撃を受けた杏里沙達はダメージを負ったものの、冷静だった。
あ、あっぶねー!死ぬかと思ったー!てかあの攻撃は普通死ぬよ?生きてんの奇跡だよ!
あいつのブレスには魔力がこもってるよ。
杏里沙様、それだけではありません。奴は膨大な魔力を身に纏ってるようにも見えました。
え?そんな事が可能なのか?
杏里沙様。リュウセイ殿も魔力を鎧の様にして纏っていましたよ。気づかなかったのですか?
い、いやー私って意外に鈍感でさー笑
ラ、ランもそれ気づかなかったのですー。
リュウセイ殿はその力の存在は教えてくれましたが極意までは教えてくれませんでしたね。まあ、それどころではなかったのですが。
そういえばさ私、リュウセイさんにあの技を見せたじゃん?リュウセイさんがめっちゃテンション上がってたあの技。
あの技は魅力的で素晴らしいけど、試験で使ったら不合格にするって言われてさー。
あの技が使えたら相手が黒龍でもあの時よりはマシな戦いができると思うんだよね。こんな水龍如き簡単に倒せると思うよ。
けどさ、所詮はスキルなんだ。スキルは格上が相手なら無効にされかねない。スキルに頼って戦う内は強くなれない。そう思うんだ。
リュウセイさんが教えてくれたあの魔力集中。もっと精度をあげよう。私達には既にかなりの魔力が秘められている。信じよう。
この魔力集中のおかげで私達はさっきの攻撃を耐えられた。大きなダメージを受けたけど致命傷にはならずに済んだ。
今、実感としてわかるけど、長い時間魔力集中していると基礎身体能力が徐々に上がってるんだ。この戦闘中の僅かな時間内でも基礎身体能力は上がってる。
きっと次同じ攻撃を食らっても先程よりもダメージは小さくなるはず。魔力集中は途切らせずに頑張ろう。
レイとランは杏里沙の言葉に力強くうなずく。
水龍の攻撃はまだまだ終わらない。5つある頭から海水ブレスを同時に放ち、杏里沙達を追い詰めようとするがそれを全てかわす3人。
水龍は攻撃パターンを変えた。水龍の体から複数の触手が現れ、鞭のようにして振り回す。その鞭にも当然魔力がこもっていた。
魔力融合。リュウセイもこの技術を持って黒龍と戦っていた。
魔力融合とは、肉体に魔力を融合させることにより肉体レベルを飛躍的に上昇させる技術である。
しかし、魔力融合は常に全身の至る所に負担をかけてしまい、普通の人間は長くは出来ない。
魔力融合時の負担を減らすために普段から魔力集中により肉体をならしておき、魔力融合時の負担をごく小さくする事で長時間の活動を可能にする。
だが、魔物達は人間とは違う。Sランク以上の魔物はほどんどが魔力融合を使えるが、肉体に負担などかからない。
水龍は現状で魔力融合を使用出来ない杏里沙達は時間経過により少しずつ不利になっていく筈だと考える。
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だが、リュウセイには考えがあった。
杏里沙達が人間ではなく魔物であると言う事を前提に全てを計画していた。
リュウセイは杏里沙達がこの戦いの中で魔力融合に耐えられるだけの基礎身体能力を手に入れられると考えていた。リュウセイは杏里沙達の吸収速度を計算し、魔力融合すらも水龍の戦いを見て学び覚えてしまうと。
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しかし、あえてスキル未使用という縛りプレイをして戦う理由は、時間をかけて戦う事で魔力集中による基礎身体能力のアップ。水龍の実力の全てを引き出し、それらを経験値として吸収していく、そして杏里沙達の1番の狙いは、「魔力融合」を覚える事。時間をかけて戦う事で水龍の使う魔力融合をじっくり観察していく。
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この事も、全てリュウセイの計算通りだった。
追い詰められている様に見えた3人はいつの間にか魔力集中により基礎身体能力が上がっていき、もう水龍の攻撃は殆ど通用しなくなっていた。
そして杏里沙3人は遂に「魔力融合」を覚えた。
その瞬間、逃げてばかりいた杏里沙達が強気になり、攻勢に出る。
はっはっはっー!見よ!この力を!水龍よ、お前の命運はここで尽きるのだ!
お前の攻撃はもう一才通用しないぞ、覚悟しろ!
魔力融合を覚えた私はさっきとは別人だからねー!
えーと、技名何にしようかな?
よーし決めた!
私の剣技、とくと見よ!
魔剣!流星斬り!
魔力融合した事により杏里沙の全身から青白いオーラが纏い、目にも止まらぬ速さで居合斬りが炸裂。
それはまさに、夜空に輝く流星そのものだった。
腹に命中し、水龍はその場にうずくまる。
そしてレイは魔力融合により、格段に器用になった。簡単な形をした魔法ではなく、魔法で複雑な形の武器を作る事ができる様になり、レイは魔法で複数の槍を作る。さらに水龍の周りを魔法陣だらけにし、その魔法陣を使って跳弾により水龍を滅多撃ちにする。
エメラルド色に輝くオーラを纏ったレイの姿は神々しい。
くらえ!連火魔翔撃!
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ランは赤いオーラを纏って一直線に水龍の頭に向かう。
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ランは赤いオーラを纏いながら突進していき、水龍を縦に貫通していった。
それはまさに彗星の如し!
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やったー!水龍を倒したー!リュウセイさん、見ましたか?そろそろ私に惚れました?
お前たちの戦い、しかと見届けた。惚れてはいないが見事な戦いだった。
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よっしゃー遂にSランク冒険者だー!
っとっと!あれ?体が重い。た、立てない!
急に疲れが。
3人ともご苦労だったな。それは魔力融合をして体に負担をかけた影響だ。筋肉痛と似たようなものだ。ゆっくり休んで超回復させればまた、強くなれる。
あーもうお家に帰りたーい、眠たーい!
お腹すいたー!
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やったー!
3人は喜ぶ。そして試験が終わり、ノータウンに帰ると。
私はメガ盛りカツカレー!
私はメガ盛り野菜炒め!
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まったくお前らは相変わらず凄い食欲だな。
そして例によって3人はまたレベルが上がった。デビルアントの最大レベルは100である。
杏里沙達のレベルはもう90を超えた。
たらふく食べた後、杏里沙達はあっという間に眠りについた。
よっぽど疲れていたのか、翌日の朝は起きるのが遅く、既に昼近くなっていた。
いやー、良く寝たなー!
ここまで疲労するほどの活動は初めてですね。
ランはもう死ぬかと思ったよー!
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それは良い考えですね杏里沙様!
ランも賛成ー!
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すると親ウルフは言葉を発した。
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はあ?何故そんな話になるんだ?
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聞いてくれ!私達も先日黒龍に襲われて戦ったんだ。匂いが染み付いてるのはそのせいだよ。
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