転生女王蟻は生態系の頂点を目指す

赤羽凍矢

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イータウン冒険編

13話 クリスタルウルフの誇り

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黒龍とクリスタルウルフの戦い。

これは近年で起こった事件の中でも1番と言える程の大事件だ。

この世界で決して怒らせてはならない生物がいる。

まずは「四魔龍」と呼ばれる四体の魔龍だ。黒龍はその四魔龍の一角で、中でも1番危険度が高い。

そして、「四聖獣」と呼ばれる四体の聖獣だ。クリスタルウルフはその四聖獣の一角である。

クリスタルウルフは温厚で賢く、人々や自然環境に危害を加える様なことはないが一度怒らせると死ぬまで戦い続ける。

今回、黒龍はクリスタルウルフの妻を殺した事で逆鱗に触れてしまい、現在に至る。

クリスタルウルフは家族や仲間の死を決して許さない。

対する黒龍にも戦う理由がある様だ。

クリスタルウルフに子供がいる事を知った黒龍は子孫繁栄を恐れた。
黒龍は強い。しかし、クリスタルウルフが数匹で攻めてきた場合、流石の黒龍も手に余るようで、クリスタルウルフの子供を殺そうとしたが、母が必死に守り抜き、命と引き変えにして子供を守ったのだ。

クリスタルウルフは半年で大人になる様で、体格はかなりでかい。ライオンの2倍以上はある。

しかし、黒龍は更にでかい。クリスタルウルフを背に乗せられる程、体が大きい。

これ程の体格差を物ともしない戦い振りを披露するクリスタルウルフ。

クリスタルウルフは生態系トップクラスの足の速さを持つ。それは黒龍でも嫌気がさすほどの速さだ。

時々冒険者の報告にある「キラキラした物体が通り抜けた」という話し。これの正体はクリスタルウルフである。

波の冒険者では何かが光ったとしか思えないほどの速さであるわけで、魔物達の中でも知らない者はいない。クリスタルウルフに喧嘩を売る様なバカな魔物はいない。が、黒龍は喧嘩を売ったがバカではない。確実に勝てる自信があるから喧嘩を売ったのだ。



実は近年、魔物達の強さが急激に増してきているのだ。

ギルドの500年前の歴史にこう記されている。

「空が真に赤く染まる時、魔の本領が発揮され世界を混沌に陥れる」

杏里沙も魔物達の力が増大していることに気付いていた。


私がこの世界に来た時はまだ空は綺麗な青空だったんだ。

なんかさ、初めて黒龍に襲われた時のあの後くらいから空の色が昼間でも夕焼けの様な色でさ、最初はあまり気にしなかったんだけど、私自身の体にも変化が起こり始めて色々気になってきたからギルドに空の色について聞いてみたんだ。

正直さギルドの人達から話を聞いた時、他人事ではないと思ってさ。

空が真に赤く染まると魔の本領発揮ってやばくね?私の種族はデビルアントなのよ?思いっきり魔族ですよ!空が真に赤くなったら私達はどうなるの?なんかさ良くアニメとかで見たことあるパターンでさ、本領発揮したら自我を失うみたいな事が起こらないとも限らないじゃん?

だから怖くてさー!他人事だと思いたかったんだけどー!

だから、きっと黒龍も赤い空の影響を受けているはずだから。元々とんでもない奴がこれから更に空の影響で強くなる事を想像したらとんでもない事だ。

ギルドも空の色の話に関しては伝承が曖昧ではっきりした事はわからないらしい。

ギルドの管理する書物の最後の文章は、こうだ。

空を真に赤く染めた元凶を封印した英雄は後に、東西南北にギルドの設置をし、多くの冒険者を育て上げた。

と、書いていたのはこれだけだ。

その元凶の正体とか、空の色とかこれでは情報が少な過ぎる。しかし、その元凶というのは黒龍の言う「あの方」と捉えて良いと思う!

色々と考え込んでいる内にようやくリュウセイが到着!

私とクリスタルウルフの子供とリュウセイで現場に直行した。


すると、黒龍の姿が少し以前と違っていた事に杏里沙達は驚く。

体を覆っていた黒い鱗が辺りに散らばっているのを確認。その鱗はクリスタルウルフの攻撃を受けて剥がれていたのだ。

杏里沙もリュウセイも黒龍が押されているのだと考えた。しかし、それは勘違いだった。

フハハハハ!もしもダメージを受けた事で私の鱗が落ちたと思っているならばそれは勘違いだ。

鱗の内側は魔力で覆われている。我が魔力を使う程に鱗が落ちていく。つまり鱗が全て剥がれ落ちた時が、我の本領発揮だ。鱗は一つ一つが金属の様に重く頑丈だ。全て剥がれれば身軽になる。

そして!仰ぎみよ!私の鎧は鱗ではない。
この全身をみなぎる魔力こそが我の本当の鎧だ!

これを突破出来なければ貴様に勝ち目は万に一つもない!どうだ、絶望したか?

絶望だと?我々を侮るなよ。貴様と戦う事を決めた時点で死ぬ覚悟は出来ている。未来も見えている。例え負けると分かっても、冒険者達が成長し、必ず貴様らを倒すと信じている。

私は此処で誇りを持って戦い抜く。家族に手を出した事を決して許さない!

と、そう強い口調で言うとクリスタルウルフは傷付いた体で全魔力を込めた。ウルフ魂、生命力、全魔力をのせた命懸けの一撃。


もう私には長く生きる体力は残っていない。この一撃に全てをのせる!

そして激しく両者の攻撃がぶつかり合い、辺り一体の森の木々が吹き飛び、平原と化した。


土埃が舞いその中から両者の姿が見え始めた。

黒龍は前足の爪が数本欠損、更に片目に傷。

有効的なダメージが入り、黒龍も少し驚いていた。

クリスタルウルフは、ほぼ全てを使い果たしもう戦えない。

黒龍がトドメをさそうとするがそこに杏里沙達が飛び込み、クリスタルウルフを守る。

久しぶりだなぁ黒龍よ!随分と傷を負っている様だな、鱗が全て剥がれ落ちて丸裸とは笑えるぜ!

リュウセイか。ふん、ぬかせ!我はこの状態こそがベストなのだ。

貴様らでは身軽になり、全魔力を放出できる様になった今の私には勝てん。大人しく家に帰ってミルクでも飲んで寝てるがよい。

へへ、強がるなよ。俺達も確実に強くなっている。あの時と同じだと思うなよ!


我の目的は果たされた。そのウルフは時期に死ぬ。長居は無用だ。我々も暇ではない。あの方の元へ行かねばならんのでな、さらばた。

おい待て!逃げんのか!


フハハハハ!逃げる?貴様らの方が逃げた方が良いぞ!空の色をみろ!あの方の復活は近いのだ!まぁ、あの方が復活したら逃げ場など無いがな。

黒龍は高笑いをしながらその場を去っていった。

杏里沙達はクリスタルウルフに近づき、心配そうに見つめる。もう長くはないと悟るクリスタルウルフは遺言を話した。

お前達2人とも優秀な冒険者なんだな。見ればわかる。しかも杏里沙よ。お前は魔族だな。ならばこの空の色の影響を受けているはずだ。

私は2000年生きた。様々な戦いを経験して来たがこの戦いが1番激しかった。

私は以前にも黒龍と戦っていてな、しかし奴ら魔族は500年周期で強くなるのだ。

「大魔龍」の復活。奴ら四魔龍達は大魔龍を復活させ、空を真の赤に染めて力を得る事を目的としている。

人間側にも500年周期で英雄が現れる。
大魔龍は人間の英雄にこれまで何度か封印されて来た。

その名を「デス.ノア」。大魔龍の名前だ。誰も奴を倒す事は出来なかった。幾度と戦いを挑みながらも、封印する事しか出来なかった。命を代償として払い英雄達はこの世界を守ってきた。

その英雄の封印は500年で破られる。

過去の英雄達が可哀想でならん。

2000年以上続いたこの戦いにどうか終止符を打って欲しい。頼む。

息子よ!杏里沙を信じるのだ。この者は生きて世界の英雄となる。死して英雄となった者達の魂が浮かばれるように、これからの世界の平和のために、共に戦うのだ。我が名「月黄泉」、最愛の妻、「十六夜」
息子の名は「天牙」

杏里沙よ、天牙を頼んだぞ!

そして月黄泉は安らかな顔で永遠の眠りについた。

天牙は少し寂しそうな顔を見せたが、涙を堪えながら言った。

杏里沙様!これからも貴方について行きます。
これまでは心を許す事が出来ませんでしたが、父があの様におっしゃったのです。貴方を信じています。

黒龍は父の仇!そして大魔龍「デス.ノア」は我らの最終目標です。自分はまだ微力ですが、父の様に立派になり、杏里沙様と共に英雄となる道を進みます。

いやーしかし杏里沙よ、お前はすごい奴だな。まさか四聖獣を仲間にするとはな。俺も四聖獣のうちの残りの3種との出会いがあればもしかしたらパートナーになってくれるのかもなー!全く羨ましい限りだぜ!
杏里沙の才能には嫉妬しちまうな!

あ、あのーリュウセイさん。ちょっとどうしても聞きたい事があったんですけど、そのー...えっと、、

なんだよもじもじして。言いたい事があるならハッキリ言えよ。

その、前世は結婚してましたか!?

あ?前世?なんでそんな事聞くのか知らんが、俺はごく普通の人間として普通の世界を暮らしていてあの子と結婚したんだ。まあ、不運なことに新婚初夜に地球が滅んじまって気付いたら異世界の英雄の魂と入れ替わっていたんだよ。
いやーあん時は大変だったぜ!どうやら元々かなりの実力者だったらしいが地龍にフルボッコにされてあの世行きとなった魂と入れ替わったらしくてな。その場で目が覚めた俺は全くの別人だからな、何が何だかわからず、周りの冒険者は俺が記憶喪失したと言うことで納得した。

リュウセイさんも転生者だったんですね。

あ?リュウセイさんもとは。まさかお前も転生者なのか?

はい!私も同じくその世界で地球がなくなり異世界に転生しました。前世の名前は大黒杏里沙です。旦那の名前は大黒龍青。

なにー!!?お前あの杏里沙なのか?

ちょっと待て!こんな事あるのかよ、奇跡だ!

リュウセイは杏里沙に抱きついた。そして杏里沙は嬉し涙を流した。

いやーそれにしてもお前、蟻に転生したのかよー。だーはっはっはっはっは!
人間じゃなくよりによって蟻ってそんなのアリかよー!ぶわーはっはっはっはー!

杏里沙の怒りが込み上げる。

くーそうだった。龍くんはこうやって良い雰囲気をぶち壊すのが得意な男だったわ!喧嘩の理由の殆どがこのパターンだよ!何度も喧嘩したせいで付き合って別れてを繰り返してやっとの思いで結婚したのに。地球がなくなってさ。異世界に転生して感動の再会をして良い感じのラブストーリー展開を想像したのにさー!
この男はー!

杏里沙の怒りが爆発した!

おいおい落ちつけ杏里沙!森を破壊するな!うおー危ねー!杏里沙お前俺を殺す気かー!

私の涙をかえせやー!魔力融合!切り刻んでやるー!


おー!ちょ!待てお前、人間相手に魔力融合すんなやー!

龍くんは人間離れしとるだろーがー!!
杏里沙は完全に我を失い、言葉が汚くなっていた。これが杏里沙の素であるのだ。
2人の喧嘩は夜まで続いた。

その後杏里沙は、リュウセイにカツカレーを奢ってもらい機嫌を取り戻したのである。

これが2人の前世の日常だった。

今回の任務で森がかなりの被害を受けた。ギルドからは生態系変化に注意せよとの声がかけられていた。

それにしてもイータウンは無傷で助かったよ。私達の杏里沙様帝国を壊されたらたまったもんじゃないからねー!

私が任務に出ている間に随分と建築が進んだよなー。
娘達に差し入れを沢山持っていこうではないか。

杏里沙は甘い飲み物、甘い食べ物を中心に、ランの大好きな肉系や、レイの大好きな野菜類なども沢山買って行き、皆んなに配ってその日の杏里沙の活動は終わったのだ。


次回 遂に完成!杏里沙様帝国の命名式

















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