3 / 52
本編
1
うるさい目覚ましを止めると、俺はもう一度布団を被り直した。
今日は朝イチから会議があって、早く起きなくちゃ遅刻するし、遅刻したら上司に怒られるけど……それがどうした!?
俺はずっとここにいる。もう会社にはいかない。会社なんてキツくて辛いことばっかりで……。
「行きたくないっ!! 行きたくないよぅゥゥゥゥ!!!!」
ダダをこねる俺に、さっき止めた目覚ましのアラームが再び鳴り響く。センサーで俺がベッドから出るまでは止まらないように親友が勝手に改造したせいだ。アイツはいつだって余計なことをする。
「…………うう」
ベッドから追い出された俺は洗面所へ。今日も朝からいやな雨だ。一人暮らしのワンルームは、梅雨のどんよりとした空気が充満してる。
顔を洗い、出勤用のスーツに着替えた。鏡に映るのは、顔色の冴えない童顔の男。社会人も二年目なのに、童顔のせいで全然スーツが似合ってない。
「…………。はぁぁ…………」
行きたくないけど行かないと遅刻する。今が電車が一番混む時間帯で、よく痴漢にあうけど今日は大丈夫かな。
俺の尻を触った知らないおじさんの顔と手のひらの感触を思い出して、ぶわっと鳥肌が立った。
「くそっ」
痴漢なんて死んでしまえ!! ああいう奴がいるから、真面目に恋してる俺の肩身まで狭くなるんだ────。
俺、木原 透(きはら とおる)は2年前に有名大学を出て、大手化学メーカーに就職した。
内定が出たときは、一流企業の正社員になれたことに大満足だった。
しかし、上手く行ったのはここまで。
法学部卒で法務部希望だったのに、全く向いてない営業部に配属され、毎日残業の社畜の日々が始まった。同じように希望が通らずに営業部に来た同僚と励まし合ううちに、俺はその同僚を好きになってしまった。
必ず同性を好きになる俺にとって、告白するときはフラれるのは覚悟の上だ。だが同僚は俺をふっただけでなく、俺がしつこく言い寄ったと、あらぬことをいいふらして他の部署に異動していった。
以来、俺は会社で一人ぼっち。上司にはイヤミばかり言われてる。
いっそ俺が辞表を出していなくなれば、みんなせいせいすることだろう。
だが俺はなんの取り柄もなく、有名私立の幼稚舎から大学へとエスカレーター式に進学して新卒で今の会社に入った人間だ。つまり、ここで辞めてしまうとそう簡単に次の仕事に就けるわけもなく、ニートになって、必死の思いで学費を捻出してくれた両親に親不孝する事になってしまう。
だから俺はどんなにイヤでも我慢して、出勤するしかないんだ。
準備を終え、最後につけっぱなしのテレビを消すため振り返った。今日から同性婚がスタートすると、美人アナウンサーが朗らかに伝えていた。
同性婚……。嫉妬なのか胸がチクッと痛む。
法案が通った時は、俺も結婚を夢見て浮かれたけど、よく考えてみればフラれてばかりの俺なんかには無縁の話だった。
さっさと消してしまえ。手元のリモコンをかざす。電源ボタンが指に触れる寸前で画面が切り替わった。
『特集・婚活最前線! 同性婚スタートで、婚活も新時代へ突入です!』
手からリモコンが滑り落ち、床で大きな音がなった。だが俺はそんなことよりも、テレビ画面に食い入っていた。
────これだ! これしかない! 俺も婚活して、誰かいい男性と結婚するんだ!!
目指すは誰もが羨むような玉の輿。そうなれば専業主夫として会社も辞めれて、両親も喜ばせられて、これからの人生がラブラブ結婚生活と良いこと尽くし!!
そうと決まれば善は急げ。俺はスーツの胸ポケットからスマホを取り出し、同性婚を扱っている結婚相談所に登録した。
希望は年収1500万以上の男性で俺を専業主夫にしてくれる人、これだけ。出勤前なので慌ただしくプロフィールを埋め、自撮りの写真を掲載した。
誰か一人でも、声をかけてくれると良いな。
淡い期待を抱いて家を出た。────が、異常事態発生。出勤中の電車の中で、怖くなるくらいじゃんじゃん申し込みメッセージが届き始めた。そして一日中途切れることがないまま、23時過ぎに残業から帰宅した頃には、件数は100通を超えていた。
まさかこんな事になるなんて。
応募者の数が多すぎて、見ても見ても終わらない。いままでフラレてばかりだったけど、この世に俺の事を良いと思ってくれる男性がこんなにいたんだ……。嬉しくて涙まで出てきた。
こうなったら、今年中に結婚が目標だ!
今日が金曜で良かった。明け方、俺はへとへとになって寝た。
今日は朝イチから会議があって、早く起きなくちゃ遅刻するし、遅刻したら上司に怒られるけど……それがどうした!?
俺はずっとここにいる。もう会社にはいかない。会社なんてキツくて辛いことばっかりで……。
「行きたくないっ!! 行きたくないよぅゥゥゥゥ!!!!」
ダダをこねる俺に、さっき止めた目覚ましのアラームが再び鳴り響く。センサーで俺がベッドから出るまでは止まらないように親友が勝手に改造したせいだ。アイツはいつだって余計なことをする。
「…………うう」
ベッドから追い出された俺は洗面所へ。今日も朝からいやな雨だ。一人暮らしのワンルームは、梅雨のどんよりとした空気が充満してる。
顔を洗い、出勤用のスーツに着替えた。鏡に映るのは、顔色の冴えない童顔の男。社会人も二年目なのに、童顔のせいで全然スーツが似合ってない。
「…………。はぁぁ…………」
行きたくないけど行かないと遅刻する。今が電車が一番混む時間帯で、よく痴漢にあうけど今日は大丈夫かな。
俺の尻を触った知らないおじさんの顔と手のひらの感触を思い出して、ぶわっと鳥肌が立った。
「くそっ」
痴漢なんて死んでしまえ!! ああいう奴がいるから、真面目に恋してる俺の肩身まで狭くなるんだ────。
俺、木原 透(きはら とおる)は2年前に有名大学を出て、大手化学メーカーに就職した。
内定が出たときは、一流企業の正社員になれたことに大満足だった。
しかし、上手く行ったのはここまで。
法学部卒で法務部希望だったのに、全く向いてない営業部に配属され、毎日残業の社畜の日々が始まった。同じように希望が通らずに営業部に来た同僚と励まし合ううちに、俺はその同僚を好きになってしまった。
必ず同性を好きになる俺にとって、告白するときはフラれるのは覚悟の上だ。だが同僚は俺をふっただけでなく、俺がしつこく言い寄ったと、あらぬことをいいふらして他の部署に異動していった。
以来、俺は会社で一人ぼっち。上司にはイヤミばかり言われてる。
いっそ俺が辞表を出していなくなれば、みんなせいせいすることだろう。
だが俺はなんの取り柄もなく、有名私立の幼稚舎から大学へとエスカレーター式に進学して新卒で今の会社に入った人間だ。つまり、ここで辞めてしまうとそう簡単に次の仕事に就けるわけもなく、ニートになって、必死の思いで学費を捻出してくれた両親に親不孝する事になってしまう。
だから俺はどんなにイヤでも我慢して、出勤するしかないんだ。
準備を終え、最後につけっぱなしのテレビを消すため振り返った。今日から同性婚がスタートすると、美人アナウンサーが朗らかに伝えていた。
同性婚……。嫉妬なのか胸がチクッと痛む。
法案が通った時は、俺も結婚を夢見て浮かれたけど、よく考えてみればフラれてばかりの俺なんかには無縁の話だった。
さっさと消してしまえ。手元のリモコンをかざす。電源ボタンが指に触れる寸前で画面が切り替わった。
『特集・婚活最前線! 同性婚スタートで、婚活も新時代へ突入です!』
手からリモコンが滑り落ち、床で大きな音がなった。だが俺はそんなことよりも、テレビ画面に食い入っていた。
────これだ! これしかない! 俺も婚活して、誰かいい男性と結婚するんだ!!
目指すは誰もが羨むような玉の輿。そうなれば専業主夫として会社も辞めれて、両親も喜ばせられて、これからの人生がラブラブ結婚生活と良いこと尽くし!!
そうと決まれば善は急げ。俺はスーツの胸ポケットからスマホを取り出し、同性婚を扱っている結婚相談所に登録した。
希望は年収1500万以上の男性で俺を専業主夫にしてくれる人、これだけ。出勤前なので慌ただしくプロフィールを埋め、自撮りの写真を掲載した。
誰か一人でも、声をかけてくれると良いな。
淡い期待を抱いて家を出た。────が、異常事態発生。出勤中の電車の中で、怖くなるくらいじゃんじゃん申し込みメッセージが届き始めた。そして一日中途切れることがないまま、23時過ぎに残業から帰宅した頃には、件数は100通を超えていた。
まさかこんな事になるなんて。
応募者の数が多すぎて、見ても見ても終わらない。いままでフラレてばかりだったけど、この世に俺の事を良いと思ってくれる男性がこんなにいたんだ……。嬉しくて涙まで出てきた。
こうなったら、今年中に結婚が目標だ!
今日が金曜で良かった。明け方、俺はへとへとになって寝た。
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
束縛彼氏から逃げたのに、執着が想像以上に重すぎた
鱗。
BL
愛されても、満たされない。
それでも彼は、相手を手放さない。
空虚な社会人、湊と。
彼に執着する、後輩の悠真。
そして二人の関係を見抜く占い師、榊。
三人の想いは交錯し、やがて静かに壊れていく。
選ばれるのは、愛か、それとも支配か。
——誰のものにもならない男が、最後に選んだのは。
歪んだまま成立する、逃げ場のない関係。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。