絶対にスパダリと結婚します~玉の輿を目指す営業男子の婚活BL~

nuka

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本編

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「うわァァァァ!?」

 俺は驚きのあまり、真上に飛び上がって着地できずにフローリングの床に尻餅をついた。ひどい音が響く。しかし今はその痛みを感じる余裕もない。

 だ、誰!? そういえば俺、帰ってきたときに玄関の鍵、かけ忘れてたかも!? 

 震える俺に、大男は白い歯並びを見せつける。

「やっと会えたね! ずっと会いたかったんだよ!」

 その声には聞き覚えがあった。

「ゆ、ゆゆゆ、ゆゆゆゆ、誘!? 誘だよな!? …………な!?」

 大男は返事をしない。

 転んだままの俺を見おろしながら喉元のチャックに指をかけ、勢いよく前を開けた。

「ひぃっ!?」

 中は裸だと!? やっぱりこいつ変態だ! 

 半裸姿になった大男は、盛り上がった胸筋と六つに割れた腹筋を俺に見せつけながら近づいてくる。俺は這いつくばって後ろに下がるが、出口は反対だ。このままじゃ襲われるぅ!!

 俺を追い詰めて満足したのか、大男はフードをおろした。隠れていた顔が見える。サイド分けの髪型に、鼻筋の通った端正な顔立ち……。

「ふぅ、暑かったっ。雨降ってたから、カッパ着てチャリに乗ってきたらもう汗だく~」

 やっぱり誘じゃん! 会わなかった間にカットモデルのバイトでもしたのか髪が短いけど、間違いない。

 バ・カ・ヤ・ローッッッッ!!!!!

 だから俺は、最初に誘かって聞いたじゃん!! なのになんでお前はちゃんと返事しねーんだよ! そもそも勝手に入ってくんな、ピンポンくらい押せよバカッ。俺は心臓が止まりかけたんだぞっ。ヘラヘラ笑ってないで、いますぐ土下座して俺に謝れ!!

 しかし今は口がカラカラで声にならない。

 ほんとのほんとに怖かった。俺はもう二度と戸締まりを忘れない!!

「透くんどーして泣いてるの? 1ヶ月俺と会えなかったのがそんなに寂しかったの? へへっ、俺もだよ~。こんなに離れてたの初めてだもんねっ」

 ちげーよ!! それ以上調子に乗ったらマジでぶっ殺すぞ!!

 だがバカ誘だから、俺の気持ちなんて何にも伝わらない。

「思ったより簡単に仲直りできて良かったぁ~!」

「うぐっ!?」

 無邪気な笑顔とともに半裸で抱き締められ、俺は白眼を剥いた。


「実は、俺のアパートはもう戻れなくなっちゃったんだ。だからしばらくここに泊めてね?」

「ぶはぁっ!?!? 」

 人に落ちつけと水を飲ませたところでまた驚かすな! おかげで飲んでいた水を盛大に吹いた。

「絶対無理! ここは俺専用!! こんな狭いワンルームで誘となんか暮らせるか!!」

 俺が住んでるこの部屋は、都心の駅チカに位置するだけあって、会社の家賃補助がなければ借りれないほど家賃が高く、面積は誘のアパートの半分もない。二人暮らしなんて、常にくっついて過ごすことになる。

「そう言わないでさ……。とりあえずコレ」

 誘は持ち込んだ特大バッグパッグから、俺が誘のアパートに置きっぱなしにしていたゲーム機とお泊まりセットを取り出して、俺に返した。

 バッグの中には他に、誘の着替えやスケッチブックなどアパートにあったものが大量に詰められている。

「なんだよ、マジで追い出されたの!?  こんな時間に!? 家賃滞納とか!?」

「人聞き悪いな、不可抗力だよ」

 屋根に入ったヒビが原因の、雨漏りと漏電らしい。誘はその片付けに1日がかりになったうえに、ボロアパートはこれを機に取り壊すと、強制退去になったそうだ。

「そんなぁ……」

 俺としても残念でならない。あのアパートは確かにボロかったけど、柔らかい日の光と清々しい風が入る、俺の憩いの場所だったのに……。

「そういうわけで、俺ってばこんな雨の中放り出されて、行くところがないんだ。絶対イイコにするから、ここに住まわせてっ?」

 お願いとすり寄ってくる誘に、俺は問答無用のチョップをお見舞いした。

「断るっ! 今すぐ出てけっ」

「痛てー」

 と言いながら、俺に余裕の笑みを見せた。

「透くんのためにも、絶対に俺と住んだほうがいい自信があります。ほら……」

 窓辺に立ち、閉じていたカーテンの隙間から俺に外を見るようにうながす。

「何だよ……?」

 気になって近づく俺に「そーっとね」と誘が注意する。

 マンションを取り囲む植木の向こうで、スーツ姿の男がこちらを見上げていた。傘を差していて顔は見えないが、微動だにせず、全身から不気味な雰囲気をかもしている。

 今度こそ正真正銘の変質者。さっき駅で声をかけてきた酔っぱらいか? 誘いを断ったのを根に持って後をつけてきた!?

「透くんは下がってて」

 誘がベランダに出た。半裸のまんま。そして吠えた。

「わんわん! ワンワンワン!!」

 頭おかしいんじゃねぇ……? ただし効果は絶大で、男が慌てたように去っていった。誘がドヤ顔で部屋に戻ってくる。

「サ、サンキュ……」

 一応、礼を言った。

「アイツ、俺がここに来た時からじっと透くんの部屋を見てたんだ。ストーカーじゃない? また来るかも。ねぇ本当に一人で大丈夫?……」

「う…………」

 いくら1ヶ月無視した上、居候を拒否したとはいえ、親友の俺を脅して楽しいか。

「俺はいい番犬になるよ!」

 不本意だが仕方ない。身の安全のため、俺は犬を飼うことにした。
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