絶対にスパダリと結婚します~玉の輿を目指す営業男子の婚活BL~

nuka

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本編

28

 入学して半年後、誘が司法試験に合格した。毎日一緒にいたにも関わらず、俺はそのことを他の学生の噂話で知った。

「なんで俺に言ってくれなかったの?」

 昼の学食で俺は誘に率直に不満を伝えた。

「言わなきゃいけなかった?」

 誘は学食で一番安い醤油ラーメンをすすっていて、ろくにこっちを見ない。

「いけないっていうわけじゃないけどさ……。とりあえず、おめでとう」

「ありがとう」

 ペコリと頭を下げる。

「すごいね。いつ勉強してたの? 俺、全然気づかなかったよ」

「まぁ暇なときに……」

「それで受かっちゃうなんてさすが雨宮家の御曹司ぃ~!」

「…………」

 いつもと違ってテンション低いのは謙遜してるのかな。

「そういえば昨日、雨宮法律事務所の新規事業のニュース、見たよ。テレビに映ってた代表取締役の雨宮総司さんって、誘のお父さんだよね? 渋くて格好良かったな~。グローバル事業が今後の経営の柱ってことは、誘も卒業後は国際取引法を専門にするの? それだったらゼミは……」

「……どうかな。まだ決めてない」

 いつの間にか誘はラーメンを空にし、コップに水を注ぎに席を立った。昼休みの学食は混んでるからなかなか戻ってこない。お祝いしたかった俺は一人ぼっちのテーブルで待ちぼうけとなり、不完全燃焼だった。

 その後も、いつもは優しい誘が少しだけ俺に冷たくなる瞬間があった。俺がちょっと誘の家のことに触れると、顔色が変わる。他の奴が興味津々に聞いてきても笑顔で対応してるのに。

 俺は、誘との話題に気を付けるようになった。誘の家の話はしないこと。

 冬休み、二泊三日のスノボ旅行で俺は誘に告白をして、盛大なため息とともに断られて恋は終わった。予想通りだった。誘は入学直後から、とっかえひっかえ美女とデートしてたから。俺はそれをすぐ近くで見てるのが辛くて自ら死にに行っただけだし、誘はスキー場から帰ってきた後も平然と俺の横にいてくれたから、俺はフラれても満足だった。


 卒業後、俺は一流企業の新入社員になり、誘は留学の準備に入った。

 その頃、誘の実家の雨宮総合法律事務所は新規のグローバル事業が順調で、一部から批判を受けるほど、世界中の優秀な人材をかき集めているところだった。

 跡継ぎの誘も、卒業と同時に渡米して、国際弁護士になるというから、俺は親友として快く見送った。

 ──一人で泣いた俺の涙を返せ。2ヶ月後、アメリカにいるはずの誘は、新宿の外れのボロアパートに俺を迎え入れた。

「俺がここにいること、誰にも言っちゃダメだよ~!」

 誘いわく、渡米寸前に父親と大喧嘩。誘は予定していた飛行機に乗るのを止めて、急遽、家出したらしい。

「さっさと謝ってアメリカに行ってこい!」

「やだ~!! 俺はここにいる~~~!!」

 子供かよ。大げさに地団駄を踏んでみせた誘は、すぐに目を輝かせて俺を見た。

「良いところでしょ!? ここは俺と透くんの家だよ! 好きなだけゆっくりしてってね!!」

 部屋の中はまだ誘によるリフォーム前で、あちこち崩れていた。ほんの1ヶ月前までは高級マンションの広すぎる部屋で一人暮らししてたのに。センスのよい家具や家電もない、服もこれまでのハイブランドからファストファッションになっている。

 何一つ持たずに家出して、収入は工事現場での肉体労働だけだった。それも人手が足りないときに呼ばれるだけのバイトだ。この1ヶ月の間に色々試したものの他はどれも長続きしなかったらしい。

「そんなんで本当にやっていけるの?」

「まあ、親父に見つかるのは時間の問題だと思うけど、俺は絶対に帰らないよっ! ……ほら、これね、透くん専用!」

 ボロボロの部屋の中で唯一、真新しい座椅子を向けられたが、俺は座らなかった。

「……家出の話、もっと詳しく教えてくれない」

「それは……」

 言い淀んでからの作り笑い。俺はもう、誘に線を引かれる瞬間が察知できる。

「大丈夫だから、心配しないでね。それよりも今日は泊まってって? 布団もちゃんと透くん用を……」

 やっぱり誤魔化された。なら、俺はここにいられない。

「待ってよ」

 踵を返した俺を誘が引き留めた。

「どうして帰っちゃうの? せっかくまた会えたのに」

「家出の共犯なんてごめんだよ」

 それまで笑っていた誘の表情が曇った。

 俺だって誘とまた会えて嬉しいし、こんなボロボロな家でも、誘と一緒に過ごしたい。でも、誘のお父さんが探してるのに、二人で気ままに暮らしていいわけないだろ。一生の親友なら、お互いの家族のことも大切にしないと。

「頼むから家に帰れよ。誘は俺と同じで一人っ子なんだから、親にはちゃんと恩返ししなきゃ……」

 俺の肩を捕まえていた誘の手が離れた。何か話してくれるのかと期待して振り向くと、ハァ、とため息がかかった。目つきがいつもと違っていた。

「透くん家とは違うんだよ。一緒にすんなよ……」

「…………っ」

 それって誘がセレブで俺が庶民だってこと? それはその通りだけど、今までずっとそんな風に俺を見下してたのか?

「マジで見損なったっ。誘なんかもう絶交だ!!」

 バカ誘を蹴り飛ばし、俺は一目散に自分のマンションへと帰った。だが情けないことに、その後すぐに俺は季節外れのインフルエンザにかかって、誘に助けを求めて仲直りしてしまった。

 結局、誘の家出は現在も継続中だし、理由も聞いてない。
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