絶対にスパダリと結婚します~玉の輿を目指す営業男子の婚活BL~

nuka

文字の大きさ
43 / 52
本編

41

 ホットドッグ屋の片付けが終わり、ゴミ出しへ行った誘を、俺はぼんやりと日陰のベンチで待っている。

 俺は「先に帰る」って言ったんだけど。誘が絶対に十分で戻るし、その後は俺を駅まで送るって言うので、仕方なく。

 すぐ目の前が大手カフェの運営するドッグランで、腰くらいの高さのフェンスの向こうに、走り回ってるワンコが見えている。公園の周囲は高級住宅街なだけあって、どの子も血統書付きみたいなきれいな姿のワンコばかりだ。でもそれより何より、大好きなご主人と無邪気に遊んでいる姿がたまらなくかわいい。

 子供のころはよく犬が飼いたいとダダをこねて両親を困らせたっけ。ペット不可のマンション住まいで叶わなかったから、大人になったら犬の飼える家に住んでお迎えするって決めてたのに、現実の俺は狭いワンルームの社畜で、犬ではなく誘が住んでる……。

 青色のフリスビーがドッグランのフェンスを越えて飛んできた。丁度俺の足元に落ちたそれを拾って顔を上げると、追いかけてきた、持ち主と思われる男性と目があった。

「どうもすみません……」

 俺より年上で、四十歳くらい? 婚活で俺に申し込んでくる男性もこのくらいの年齢が一番多い。

「どうぞ……」

 フリスビーを差し出す。彼はぎこちなく受け取った。

「ありがとう」

「どういたしまして……」

 用事は済んだはずなのに、彼はなかなか立ち去らない。

「あの、少しだけいいですか?」

 首を傾げる俺に、彼はおずおずとフェンスの向こうの自分の愛犬を指差した。白と黒のフワフワした毛とクリクリの目のかわいいボーダーコリーで、こっちにいる飼い主を尻尾を振って待っている。

「リオくんと言って、二歳の男の子です。とても賢いし人懐こいんですよ」

「へー、可愛いですね」

 目が合ったリオくんにこんにちはと言うと「ワン!」と返事してくれた。

「良かったら、撫でてあげてくれませんか?」

 ちょっと驚いたけど、リオくんは俺を新しい友だちと思っているようで、フェンスから必死で頭を出して、遊ぼうとアピールしてくる。

「じゃあちょっとだけいいですか? ……」

 リオくんの頭にそっと触れた。フワフワと柔らかい。よしよしとなでると、リオくんは尻尾をブンブン振って、もっともっとと、自分からすり寄っておねだりしてくれる。

 ああもうっ可愛い! ナデナデしてるだけで、癒されるぅ~っ。

 膝を地面についてそこらじゅうなで回し、リオくんが飼い主の彼を振り返ったのと一緒に俺も顔を上げると、飼い主の彼が優しく俺を見つめていた。

「良かったです。勇気を出して、あなたに声をかけてみて」

「あ、あは。お陰で癒されました……」

 急いで立ち上がる。お礼を言って去るつもりが、リオくんにキュンキュン鳴かれて引き留められ、飼い主さんもそんなリオくんをよしよしと褒めた。

「失礼ですが、あなたに元気が無いように見えたので……」

「そ、それは……」

 もしかして清一郎さんのことを考えて涙ぐんでたの見られた? きっと、それで心配して声をかけてくれたんだ。

「ちょっと失恋して……。えへへ、そんなに暗かったですか……」

 苦笑すると、彼もつられて笑ってくれた。

「そうですか……。分かりますよ。僕がリオくんお迎えしたのもそういう理由でしたから」

 癒し犬・リオくんは、ドッグランの柵から俺たちの方へ来たがって、フェンスを乗り越えそうなくらい、ジャンプしてる。でも彼がお座りと言うとお利口にお座りをした。

「僕は篠田といいます。この公園のすぐ近くで、父と二人で内科のクリニックを開いている医師です」

「お医者さんですか。すごいですね」

 篠田さんはちょっと照れた顔をした。

「すごくはないですが、見直していただけたなら良かった。君みたいな若い子に、こんなおじさんがいきなり話しかけたから、怪しく思われてましたよね」

「そんなまさか!」

 謙遜だとは思いつつ、全力で否定せずにはいられない。

「最初から、怪しくなんて思ってなかったですよ! むしろ優しそうな人だなって……」

「それはどうも……お世辞でも嬉しいです」

 お世辞じゃないのに。微笑む篠田さんは、すごく清潔感があって、特に眼がきれいで、全然おじさんって感じじゃない。

「俺は木原透です。化学メーカーで営業をしてます」

 フツーの自己紹介のつもりが、驚かせてしまったようだ。

「てっきり学生さんかと思ってました」

「ハハ……良く言われます。童顔で……」

 とくに今日みたいなTシャツにジーンズだと、ますます幼く見えてしまう。

 キューンと、自己主張するように、リオくんが鳴いた。そうだ。いつまでも俺がいるとリオくんが遊べないよな。図々しく思われないうちに、去るべきタイミングだろう。誘もそろそろ戻ってくるし。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

ただのハイスペックなモブだと思ってた

はぴねこ
BL
 神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。  少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。  その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。  一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。  けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。 「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」  そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。  自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。  だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……  眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。

愛を感じないのに絶対に別れたくないイケメン俳優VS釣り合わないので絶対に別れたい平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
 平凡顔・ヒモ・家事能力無しの黒は、恋人であるイケメン俳優の九条迅と別れたがっている。それは周りから釣り合ってないと言われたり、お前の事を愛してない人間なんて止めておけと忠告されたからだ。だが何度黒が別れようとしても、迅は首を縦に振らない。  迅の弟である疾風は、兄は黒の事を特別扱いしてると言うが――。黒は果たして迅と別れることが出来るのか!?

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。