爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
4 / 408

第3話 決意

しおりを挟む
 実地調査を終えた、その日の夜。ゴードンが屋敷へと来た。時間も時間なので、「一緒に食事はどうだ」と誘うことにした。
 エリスは、非常に料理上手だ。少ない食材で、多くの料理を作ってくれる。僕が料理に不満を漏らさないのは、エリスの料理の腕によるところが大きい。

 「本日は、お招きいただき感謝します。ゴードンめは、非常に感動しております」

 ゴードンは、感極まっている。先代からずっと、住民をまとめていただけに、周りからの突き上げが辛かったのだろう。今まで、誰にも相談できずに可哀想なことをした。

 「まずは、食事をしよう。話はそれからだ。それと……エリス、これからは、一緒に食事をしよう。君も食卓に着きなさい」

 これにはエリスはもとより、ゴードンもびっくりしている。人間至上主義だったロッシュの変わり身に、だ。これからは僕も皆と汗水を垂らし、村を良くしていかなければならない。そのためには、亜人だからと区別していては、駄目だ。亜人も村の一員なんだから。

 食事を終え、僕はエリスにコーヒーを持ってくるように頼んだ。なぜか知らないが、この屋敷にはコーヒーが大量に保管されている。どうやら父上の仕業らしいのだが、どこかでコーヒーと出会って、すごく気に入ったようだ。それを領都でも流行らそうとしたけど、全く受け入れられず、この屋敷に在庫として大量に保管されている。
 この量は、一生分はあるんじゃないかって量だよな。この屋敷に来た人たちには、是非コーヒーの消費にご協力をしてもらいたいな。

 コーヒーを飲みながら、話をする準備が出来た。酒といいたいところだが、在庫がないのだ。まぁ、僕は13歳だ。せめて15歳の成人までは我慢しなければならないのは辛いところだ。

 「ゴードンよ。すまんな、こう言う時は酒でも出してやりたいところだが……おっと、エリスの顔が怖いな……さて、今日の食事について、どう思った。忌憚のない意見を聞きたい」

 ゴードンは話の意味がよく分かっていなかったのか、首を傾げていた。

 「どう、とおっしゃられても、とても素晴らしい食事でした。エリスさんの料理は、前々から美味しいと評判でしたから。我が家の食卓にも並んでほしいものです」

 ……困ったな。皆、現状に満足しようとしている……たしかに、今日の食事は、今の最善と言えるような料理だった。しかし、普通なら、乞食が食べるような料理だ。言い過ぎか? 

 「僕はね……この料理で満足してほしくないんだ。飢えないというのは大事だけど、美味しい食事を皆が、たくさん食べられる様にすることが僕の宿命だと思っている。そのためにゴードン、そして、エリス……その実現のために協力してほしい」

 「もちろんでございます! ロッシュ様……先代の頃のような、皆が笑い、子供が重労働に苦しまないような、そんな時代に戻していただけるのですね」

 ゴードンは、男泣きをしてしまった。

 「無論だ。先代の時代なんかより、もっと良き時代を築けるだろう。それには、皆の協力が必要だ。さらには、亜人と言われる者たちの協力が不可欠だ。皆の中には、亜人に対してよく思わないものもいるだろう……しかし、そこは、粘り強く説得していかなければならない。ゴードン、頼むぞ」

 ゴードンは、泣きながら強く頷いた。

 「早速だが、明日の朝、皆をこの屋敷前に集めて欲しい。今後の方針について、皆に報告したいと思う。皆の協力あってこその村作りだ」

 エリスもゴードンも頼むぞ……

 次の日の朝、ゴードンは約束通り、皆を屋敷前に集めてくれた。

 「皆の者、朝からすまなかったな。知らぬ者はいないと思うが、僕はロッシュだ。ここの領主をしている。しかし、王家は形骸化し、何の力もない。そんな中で、辺境伯などの名は無意味だ。我々はこの地を村とし、村長として、皆を引っ張っていきたいと思う。異論はあるか?」

 皆は一様に、納得したような面持ちで頷いてくれた。ゴードンが説得してくれていたのだろうか? ゴードンの方を見ると、軽く頷いていた。

 「僕が村長となり、やることは一つだ。それは、皆が飢えに苦しまず、笑って過ごすことができる村にすることだ。ただ、この一つが長く険しい道程になることだけは確かだ。そのためには、皆の協力が必要不可欠なんだ。僕に是非協力してくれ!!」

 皆が、大きな歓声をあげ、ロッシュ様! ロッシュ様! と口を揃えていた。しばし、僕は場が静まるのを待ち、皆の熱狂する目を眺め回した。

 「これから、やらねばならないことを伝える。来月から長雨の時期となる。その前に、皆を旧都の高台に移動してもらいたいと考えている。これは、川が氾濫した場合に備えるためだ。まだ使える建物もあるから、そこを修復して住んで欲しい。しっかりとした住居はおいおい整備していくことを約束しよう。次に、川の氾濫を予防する必要性がある。そのための堤防作りに協力して欲しい。まずは、この二つの事から始めていこう。詳細については、ゴードンと相談して決めたいと思う。意見があるものは、どんどん言って欲しい。皆で、この村を良くしていこう」

 また、大歓声があがった。幸先は良さそうだ。しかし、まだまだ不安は尽きないだろう。結果が先延ばしになればなるほど、皆の心は僕から離れていくだろう。なにか、すぐに結果が出せる方法はないだろうか……。優先すべきは、堤防づくりだが、来月までに目処を立てるとして、人員は足りるのだろうか……。
 だめだ! 僕が、悩むことを見せるわけにはいかない。

 こういうときは、相談するに限る。僕には、エリスとゴードンという力強い味方がいるのだから。

 その日の夜……屋敷に戻ってから、エリスに相談してみた。

 「堤防を作るのに、どうしても人手が必要となるんだけど、必要な人数を動員してしまうと、どうしても移住や畑の管理に人が割けなくなるんだ。どうしたらいいだろうか」

 エリスが悩んでいる。ふと、エリスが僕の顔を見上げた。

 「ロッシュ様って……魔法、使えないのですか?」

 えっ⁉ 魔法……? 

 しばらく、沈黙が流れた。

 そういえば、婆さんが、魔法を使えるようにした、とか何とか言っていたな。どうやって、使えるんだ? 

 「使えると思うぞ……ただ、使い方がわからないな……」

 「私もそこまでは……前のロッシュ様も使えてたみたいですけど。何か、手をかざしたら火が出てましたけど。それが魔法だと思います」

 手をかざすか……やってみるか。……何も起きないなぁ。どうしよう?

 ん⁉ そういえば、婆さんが、ステータスを見ろとも言っていたな。

 どれどれ……ステータス! と頭の中で考えると、頭の中に変な表示が出てきた。おお、これがステータスというやつか……ふむ……いろいろと表示されているが、いまいちわからないな……今日は、色々あったせいで、眠いな。

 「エリス。もしかしたら、何とかなるかもしれない……が、今日は寝よう。明日の朝から、また頑張ろう」

 エリスは嬉しそうに、はい! と返事をくれた。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...