爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
89 / 408

第88話 魔牛の導入

しおりを挟む
 春がついに訪れた。雪が溶け始め、屋外でようやく行動が出来る時期となった。今年から、新たに村で導入したことがある。鋼製の農具に魔牛だ。鋼製の農具は、村人にすぐに受け入れられた。刃が欠けるのが減ったり、伸びたり、曲がったりすることが少なくなったと大変評判となった。問題は、魔牛の導入である。

 元々魔牛は性質がおとなしく、人の言うことには逆らう魔獣ではない。そのため、村での導入は簡単に行くものだと思っていたが、性質云々ではなく、存在そのものに畏怖を感じているため、難航していた。なにか、村人たちを安心させるようなものがあればと、常々模索していた。

 それが、ついに見つかったのだ。僕の従属魔法だ。この魔法を使えば、僕が指定した命令者の言うことを魔牛が素直に聞くという効果が出る。これがあれば、村人の畏怖はかなり薄れるだろうと思った。そこで、農業に従事する村人を集め、魔牛の実演を兼ねて、畑の耕作を行った。百人で一日かかる場所を三頭の魔牛で一日でやってしまうのだ。村人も大いに感心して、魔牛導入には前向きになってくれていた。しかし、魔牛は恐ろしいものだからと、反対の声を上げる者もいた。

 「確かにすごいな。でもよ、魔獣はおっかないって昔から言われてるだ。村に魔獣がいて、大丈夫なもんかな。ロッシュ村長の魔法を疑うわけじゃねぇが、おら怖くてな」

 僕は、反対する者を止めたりはせずに好きなように発言を許した。そのうえで、魔牛の導入を賛成してくれるものに魔牛の利用をさせるつもりだった。村人の間で、賛成派と反対派で意見がぶつかり合い、ついに決着を見ることは出来ななかった。僕もこうなるのではないかと思っていたが、魔牛の有用性は村人全員が認めるところだ。あとは、恐怖心をどれだけ克服できるかだが……

 「皆のもの、話はだいたい分かった。僕は、魔牛導入は推進したいと思っているが、反対する者に無理に使わせるつもりはない。ただ、僕に時間をくれないだろうか。今年、新たに増やす畑がある。まずは魔牛で使ってみて、それからまた意見を聞きたいのだ。それでいいだろうか」

 僕の言い方は少し卑怯な気がしたが、時間を貰わなければ魔牛の良さを伝えることは出来ない。そこだけは、反対派の同意を得ておかなければならない。反対派からは、文句は出なかったので、ホッとした。とはいっても、僕だけで魔牛を使って、畑を耕すなど無理なことである。そのため、賛成派の人達に魔牛の管理を任せ、耕してもらうことにした。

 「魔牛の管理は、僕が指名する者に管理を任せたいと思っている。皆でも魔牛を管理できることを知ってもらいたいのだ。もちろん、僕が安全を保証する」

 魔牛牧場から、魔牛を十頭ほど借りて、それぞれに世話をする村人をつけ、魔法で命令者に設定した。初めて、魔法をかけられた村人は全員不思議そうにしていたが、村人の出す命令をすべて魔牛が従っていたので、ビックリした様子だった。これについても、逐一反対派の人達の耳に入るようにしておいた。

 「これはすごいですね。こんな巨大な魔獣が私の言うことを聞いていますよ。あっ、こんなことまで……私はロッシュ村長を信じているので、安心していますよ。この魔獣をうまく管理して、反対派の意見を変えてみせますよ」

 「頼もしい限りだ。僕も魔牛の地位向上のためなら何でも協力するつもりだ。何か、問題があればすぐに言って欲しい。出来る限り、対応させてもらうぞ」

 魔牛の導入は、農業革命に近いほど衝撃的だった。100メートル × 100メートルの畑が一日で四枚近くが耕されたのだ。人の手でやれば、100人で三日もかかる仕事をだ。今年、新たに増やす畑は、80枚ある。魔牛で20日耕作を続ければできるだろう。水田もやらなければならないので、魔牛には春の間、ずっと働いてもらわなければならないな。

 魔牛は、魔牛牧場から朝一でミヤの眷属達に引っ張ってきてもらって、夕方に戻してもらうことを繰り返すことにした。やはり、魔牛だけあって、魔素のない土地に長時間いると体調を崩してしまい、場合によっては人を傷つける恐れがあると言うので、そのやり方をお願いした。

 一ヶ月間、ひたすら魔牛は村人の指示に従い、黙々と作業を続け、ついに目標の畑を耕し終えた。ものすごい達成感を感じる瞬間だった。魔牛も心なしか喜んでくれているように見えた。そのときに、反対派だった面々が畑に来ていた。

 「ロッシュ村長!! 私の考えは間違えだったようです。ずっと見ていましたが、魔牛が怖がるような存在でないことがよく分かりました。是非とも村に魔牛を導入して頂きたく、お願い申し上げます。恥ずかしながら、私が一番最後の反対者でした。どうも、年を取るといけませんね。考えをなかなか変えられないものですね」

 「なかなか考えを変えられないのはよく分かるぞ。魔牛の利用を理解してくれて本当にありがとう。君のおかげで、この村の農業は大きく変わることが出来るだろう。これからも、農業は変わっていくだろう。その時も気になることがあれば、どんどん言ってくれ。君のように意見を言ってくれる人は貴重だ。よろしく頼むぞ」

 「ロッシュ村長。若いのに爺臭いことをいいますね。分かりました。しっかりと意見を言わせてもらいます」

 これで、魔牛導入の村の総意を得ることが出来た。
 魔牛の管理は、引き続き同じ人に任せることにした。耕す工程を省略できることで、種まきや収穫に多くの村人を割くことが出来るようになり、より大きな面積で作物を栽培することができるようになった。新規の畑も順調に終わらせることが出来たので、従来の畑も魔牛で耕すようになった。畑を耕すのが早く終わらせることが出来たので、水田も去年より40枚増やすことが出来たのだ。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...