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第116話 変貌した街へ
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マグ姉に呼び出されたゴードンに事情を説明し、儀式を行う段取りをしてもらうことにした。
「ロッシュ村長。村に戻ってきて早々、御神体を設置する相談をされるとは思ってもいませんでしたよ。でも、喜んで引き受けさせてもらいます。村も大きくなりましたから、御神体を設置するのも良い機会でしょう。御神体もなく女神のご加護がないのではと皆も不安がっていましたから」
僕は、そういうものなの? と聞くと、マグ姉もゴードンも信じられないと言う表情を浮かべていた。まだ、この世界の常識についていっていなかったんだな。
「それはそうと、エリスさんとリードさんのご懐妊おめでとうございます。遅らばせならば、お祝いを申し上げます。この吉報は村人全員が喜んでおりましたよ。そろそろ収穫祭もあることですし、それについてもお祝いいたしましょう。今年は、去年より賑やかになることでしょう。その時、村人には御神体の正式なお披露目ということにいたしましょう」
話がまとまり、ゴードンは儀式の手配するために屋敷を後にした。御神体設置の儀式は然程難しいものではなく、五穀豊穣の女神なので、土地の中央にご神体を設置する祠を築き、そこに今年採れた作物をお供えするだけのものらしい。村の中心ということは、巨石に隣あたりに設置するのが良いだろう。祠と言うが、どういったものなのだ? 僕は神社のようなものを思い浮かべたが、マグ姉が言うには、最低限の小屋があればいいらしい。もっとも王都では、教会があったので、そのど真ん中に巨大なご神体が鎮座していたようだ。
ゴードンが帰った後、部屋からエリスとリードが居間に入ってきた。僕は、心配になり付き添おうとしたが、二人から止められた。
「ロッシュ様。ありがたいのですが、私達は大丈夫ですよ。これは病気じゃないんですから」
そういって、エリスは愛おしそうにお腹を擦っていた。僕もつい、エリスのお腹に耳を当てたが、エリスの心音しか聞こえなかった。エリスは、静かに笑っていた。
エリスとリードがキッチンに向かって夕飯の料理をし始めた。僕は、心配で心配で、キッチンの周りをウロウロしていた。その行動が、女性陣からの怒りを買ったようで、静かにするように窘められた。落ち着かない気分を酒で紛らわそうとして、ミヤに酒を出すように頼んだ。酒となると、ミヤの機嫌は否応にもなく良くなる。僕の分だけでなく自分の分まで持ってきて、一緒に飲み始めた。これは……米の酒だ。完成していたんだな。この口の中で爽やかな香りが広がり、飲み込むと腹の中がすこしポカポカする感覚。旨いな。ミヤは相変わらず魔酒だな。マグ姉にも勧めると、少しだけならと飲み始めた。エリスとリードに妊娠中だからアルコールは厳禁だ。
マグ姉も米の酒は気に入ったみたいで、少しと言っていたが、料理が来る前にかなりの量を飲むことになってしまった。料理が来てから、僕とマグ姉とミヤで宴会が始まってしまって、結局、エリスとリードには迷惑を掛けてしまった。次の日の朝、三人で反省をしていた。
朝に皆を集めて、今までの経緯を説明した。僕は採掘を冒険譚風に語った。特にゴブリンとの遭遇はなかなか盛り上がったな。それでもシラーの話をすると、皆が少し不機嫌になるんだ。
その日、久しぶりにライルと会い、共にラエルの街に行くことにした。今や、ラエルの街は村以上の人口がいて、建設ラッシュになっているらしい。農地もどんどん拡大していっており、種は村から調達しているらしい。魔牛の使用も検討されたらしいが、やはり魔素のない土地での長時間の利用は、魔牛への負担が大きく、最悪、危害を加える恐れがあったため利用禁止となっていた。それでも、人口が多いおかげで、大きな面積でもなんとか出来ているようだ。ラエルの街は、今ルドが完全に仕切っているらしく、休みもなくせっせと働いているようだ。その仕事が一段落つくまでは調査隊の解散はしないということだ。
街に到着するまでの間に、様々な報告を聞き、街の現状を理解しようとした。それでも話があまりにも以前と違いすぎて、想像をするのが難しかった。人口が一万人だもんな。
ラエルの街が見えてきた。なるほど、中心地から放射線状に町並みが広がっている。まだ、立派な掘っ立て小屋と言った感じで、住むには不便そうだが、町の住民達の顔には暗さは見受けられなかった。僕は住民にルドの居場所を聞くと、物凄く怒られた。
「ルドベック様に対して、何という口の聞き方だ。お前のような小僧においそれとお会いになるわけがないだろ。まずは、ゴーダ様にお伺いを立てるんだな」
ライルが腹を立てて、僕の正体を話そうとしたので、僕は止めた。この者に悪気はないのだ。事を荒らげるのも面白くないだろう。そんな状況を住民は不思議そうな顔で見て、その場から去って行った。その後、ライルの機嫌を直すのに苦労した。住民が言っていた通り、ゴーダを探すことにしよう。
違う住民に声を掛けると、すぐにゴーダのもとに案内してくれた。その住民は僕に話しかけてきてくれたが、どうやら僕を新たな移住者だと思っていたみたいで、この街の良さをたくさん話してくれた。僕は内心嬉しく思い、話を聞いていた。でも、この住民たちは、ルドを神様のような扱いをしている感じがした。ふむ。なにやら面倒くさいことにならなければいいが。
住民がゴーダのいる小屋をノックして、新しい住民が来たようですと言うと、中からゴーダが現れた。少し顔がやつれているな。相当疲れが溜まってそうだ。そう思っていると、住民が僕に頭を下げろと言ってきたのだ。その時、ゴーダと僕の目があった。一瞬の沈黙が流れた。
「ロ、ロッシュ村長。どうして、ここに。あれ? 新しい住民というのは……」
ゴーダは話が見えてくると、その住民をにらみ、怒りを発し始めた。
「このお方は、ロッシュ様だぞ。我々の主君と崇めるお方だぞ。その方に向かって……」
住民はすっかりと怯えている。権力者にそう言われたら、反応は一つしかないよな。僕は、住民を許すようにゴーダを説得し、住民を帰らせた。もちろん、案内してくれたお礼をして。ゴーダは、すぐにルドの下に案内をしてくれた。ルドの下に行く間に、ゴーダが僕に対して謙った態度を取っているものだから、住民からは奇異な目で見られていた。少しやりづらかった。ライルは誇らしげな顔をしていたのでそっとしておいた。
「ゴーダ。そういえば、僕のこと、さっき主君って言ってたけど。どうゆう意味?」
「どうゆう意味も何もそのままの意味ですが?」
「いや、僕は村長だよ? 主君なんて言葉を使う対象じゃないと思うだけど」
ゴーダは少し考えてから、話し始めた。
「皆は知りませんが、私はロッシュ村長を主君と思って接しておりました。ロッシュ村長はどう思っているかは分かりませんが、村は小国並の規模にまで成長しています。いや、生産力や軍事力をみても小国を有に超えているかもしれません。その頂にいるのがロッシュ村長なのです。名称はともかく、ロッシュ村長は国王に準ずる方と思い私は仕えているつもりです。ライルさんも同じ気持ちではないのですか?」
ゴーダがライルに話を振ると、その通りだと胸を張って答えていた。
「おそらく、ルドベックさんからも同じようなことは言われると思います。正直、一万人もの人がいる街を統治するためには村長という肩書では足りないと思われます」
ゴーダの言ったことを、僕はそういうものかなと、結構簡単に聞き流していた。僕は統治なんか向いているなんて思わないし、農業担当みたいな役職くらいがちょうどいいとさえ思っている。ルドがトップとして存在するのも面白いかもしれないな、なんて思ったりしていた。
ルドの小屋の前には、衛兵と思われる男が二人立っていた。僕の顔を見ると、驚いた表情で、頭を下げ始めた。僕は、とりあえずルドのところまで案内してくれるように頼むと、衛兵はキリッとした表情に戻って、小屋の中を案内してくれた。
「ロッシュ村長。村に戻ってきて早々、御神体を設置する相談をされるとは思ってもいませんでしたよ。でも、喜んで引き受けさせてもらいます。村も大きくなりましたから、御神体を設置するのも良い機会でしょう。御神体もなく女神のご加護がないのではと皆も不安がっていましたから」
僕は、そういうものなの? と聞くと、マグ姉もゴードンも信じられないと言う表情を浮かべていた。まだ、この世界の常識についていっていなかったんだな。
「それはそうと、エリスさんとリードさんのご懐妊おめでとうございます。遅らばせならば、お祝いを申し上げます。この吉報は村人全員が喜んでおりましたよ。そろそろ収穫祭もあることですし、それについてもお祝いいたしましょう。今年は、去年より賑やかになることでしょう。その時、村人には御神体の正式なお披露目ということにいたしましょう」
話がまとまり、ゴードンは儀式の手配するために屋敷を後にした。御神体設置の儀式は然程難しいものではなく、五穀豊穣の女神なので、土地の中央にご神体を設置する祠を築き、そこに今年採れた作物をお供えするだけのものらしい。村の中心ということは、巨石に隣あたりに設置するのが良いだろう。祠と言うが、どういったものなのだ? 僕は神社のようなものを思い浮かべたが、マグ姉が言うには、最低限の小屋があればいいらしい。もっとも王都では、教会があったので、そのど真ん中に巨大なご神体が鎮座していたようだ。
ゴードンが帰った後、部屋からエリスとリードが居間に入ってきた。僕は、心配になり付き添おうとしたが、二人から止められた。
「ロッシュ様。ありがたいのですが、私達は大丈夫ですよ。これは病気じゃないんですから」
そういって、エリスは愛おしそうにお腹を擦っていた。僕もつい、エリスのお腹に耳を当てたが、エリスの心音しか聞こえなかった。エリスは、静かに笑っていた。
エリスとリードがキッチンに向かって夕飯の料理をし始めた。僕は、心配で心配で、キッチンの周りをウロウロしていた。その行動が、女性陣からの怒りを買ったようで、静かにするように窘められた。落ち着かない気分を酒で紛らわそうとして、ミヤに酒を出すように頼んだ。酒となると、ミヤの機嫌は否応にもなく良くなる。僕の分だけでなく自分の分まで持ってきて、一緒に飲み始めた。これは……米の酒だ。完成していたんだな。この口の中で爽やかな香りが広がり、飲み込むと腹の中がすこしポカポカする感覚。旨いな。ミヤは相変わらず魔酒だな。マグ姉にも勧めると、少しだけならと飲み始めた。エリスとリードに妊娠中だからアルコールは厳禁だ。
マグ姉も米の酒は気に入ったみたいで、少しと言っていたが、料理が来る前にかなりの量を飲むことになってしまった。料理が来てから、僕とマグ姉とミヤで宴会が始まってしまって、結局、エリスとリードには迷惑を掛けてしまった。次の日の朝、三人で反省をしていた。
朝に皆を集めて、今までの経緯を説明した。僕は採掘を冒険譚風に語った。特にゴブリンとの遭遇はなかなか盛り上がったな。それでもシラーの話をすると、皆が少し不機嫌になるんだ。
その日、久しぶりにライルと会い、共にラエルの街に行くことにした。今や、ラエルの街は村以上の人口がいて、建設ラッシュになっているらしい。農地もどんどん拡大していっており、種は村から調達しているらしい。魔牛の使用も検討されたらしいが、やはり魔素のない土地での長時間の利用は、魔牛への負担が大きく、最悪、危害を加える恐れがあったため利用禁止となっていた。それでも、人口が多いおかげで、大きな面積でもなんとか出来ているようだ。ラエルの街は、今ルドが完全に仕切っているらしく、休みもなくせっせと働いているようだ。その仕事が一段落つくまでは調査隊の解散はしないということだ。
街に到着するまでの間に、様々な報告を聞き、街の現状を理解しようとした。それでも話があまりにも以前と違いすぎて、想像をするのが難しかった。人口が一万人だもんな。
ラエルの街が見えてきた。なるほど、中心地から放射線状に町並みが広がっている。まだ、立派な掘っ立て小屋と言った感じで、住むには不便そうだが、町の住民達の顔には暗さは見受けられなかった。僕は住民にルドの居場所を聞くと、物凄く怒られた。
「ルドベック様に対して、何という口の聞き方だ。お前のような小僧においそれとお会いになるわけがないだろ。まずは、ゴーダ様にお伺いを立てるんだな」
ライルが腹を立てて、僕の正体を話そうとしたので、僕は止めた。この者に悪気はないのだ。事を荒らげるのも面白くないだろう。そんな状況を住民は不思議そうな顔で見て、その場から去って行った。その後、ライルの機嫌を直すのに苦労した。住民が言っていた通り、ゴーダを探すことにしよう。
違う住民に声を掛けると、すぐにゴーダのもとに案内してくれた。その住民は僕に話しかけてきてくれたが、どうやら僕を新たな移住者だと思っていたみたいで、この街の良さをたくさん話してくれた。僕は内心嬉しく思い、話を聞いていた。でも、この住民たちは、ルドを神様のような扱いをしている感じがした。ふむ。なにやら面倒くさいことにならなければいいが。
住民がゴーダのいる小屋をノックして、新しい住民が来たようですと言うと、中からゴーダが現れた。少し顔がやつれているな。相当疲れが溜まってそうだ。そう思っていると、住民が僕に頭を下げろと言ってきたのだ。その時、ゴーダと僕の目があった。一瞬の沈黙が流れた。
「ロ、ロッシュ村長。どうして、ここに。あれ? 新しい住民というのは……」
ゴーダは話が見えてくると、その住民をにらみ、怒りを発し始めた。
「このお方は、ロッシュ様だぞ。我々の主君と崇めるお方だぞ。その方に向かって……」
住民はすっかりと怯えている。権力者にそう言われたら、反応は一つしかないよな。僕は、住民を許すようにゴーダを説得し、住民を帰らせた。もちろん、案内してくれたお礼をして。ゴーダは、すぐにルドの下に案内をしてくれた。ルドの下に行く間に、ゴーダが僕に対して謙った態度を取っているものだから、住民からは奇異な目で見られていた。少しやりづらかった。ライルは誇らしげな顔をしていたのでそっとしておいた。
「ゴーダ。そういえば、僕のこと、さっき主君って言ってたけど。どうゆう意味?」
「どうゆう意味も何もそのままの意味ですが?」
「いや、僕は村長だよ? 主君なんて言葉を使う対象じゃないと思うだけど」
ゴーダは少し考えてから、話し始めた。
「皆は知りませんが、私はロッシュ村長を主君と思って接しておりました。ロッシュ村長はどう思っているかは分かりませんが、村は小国並の規模にまで成長しています。いや、生産力や軍事力をみても小国を有に超えているかもしれません。その頂にいるのがロッシュ村長なのです。名称はともかく、ロッシュ村長は国王に準ずる方と思い私は仕えているつもりです。ライルさんも同じ気持ちではないのですか?」
ゴーダがライルに話を振ると、その通りだと胸を張って答えていた。
「おそらく、ルドベックさんからも同じようなことは言われると思います。正直、一万人もの人がいる街を統治するためには村長という肩書では足りないと思われます」
ゴーダの言ったことを、僕はそういうものかなと、結構簡単に聞き流していた。僕は統治なんか向いているなんて思わないし、農業担当みたいな役職くらいがちょうどいいとさえ思っている。ルドがトップとして存在するのも面白いかもしれないな、なんて思ったりしていた。
ルドの小屋の前には、衛兵と思われる男が二人立っていた。僕の顔を見ると、驚いた表情で、頭を下げ始めた。僕は、とりあえずルドのところまで案内してくれるように頼むと、衛兵はキリッとした表情に戻って、小屋の中を案内してくれた。
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