爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第130話 三年目の麦の種まきと祭の準備

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 秋の農業で最後の大仕事である麦の種まきをする時がやってきた。今年は、人口の増加で予定よりも大きく畑を広げることになったのだ。去年より10倍以上だ。面積に比例して、やることも同じだけ増えるということだ。しかも限られた時間で行わなければならないのだ。そうゆう訳で、ラエルの街から多くの人を手伝いとして呼ぶことにした。ただ、街の方でも冬までに家などのインフラを整備しなければならないという理由で、思ったよりも人数は少な目になってしまった。冬に凍えてしまわれても困るので、こちらでなんとかしなければならない。

 今年の麦の種まきはゴードンに指揮を取るように言ってあるので、僕は畑に出向いて手伝いをしに行くことにした。エリスとリードも軽い運動をしたいと言うので、散歩がてらに畑に行くことにした。エリスのお腹は少しずつだか大きくなってきているのが分かるようになってきた。リードはまだその兆候は見られない。まだ、動くのに支障はなさそうだが、ゆっくりと行くことにした。

 「そういえば、二人の子供のための物を揃えないといけないな。二人は何か要望とかないか? 冬の間に揃えられる物は揃えておいたほうが良いだろう」

 僕がそう言うと、二人が急にクスクスと笑いだした。僕は不審に思っていると、どうやら、赤ちゃん用の道具は二人が時間を見つけては準備をしていたようで、今となってはほとんど出来上がっているようだ。リードが家具を用意したり、エリスが子供用の服を作ったりと分業しながらお互いの子供のために作っていたようだ。僕の出番はなさそうだ。僕が少し落ち込んでいると、エリスがロッシュ様には子供の名前を付けてもらいますからね、と念を押された。

 この世界に来て、命名するのは何度目だろうか? それでも自分の子供となるとまた格別なんだろうが……冬の間にでも考えておくか。たしか、屋敷の書庫に命名に関係する書籍が確かあったはずだ。そんなことを話しながら、畑に向かった。

 畑に到着した僕達は、エリス達を木陰で休ませ、僕だけは畑に入っていった。すでに種まきの作業は始まっており、順調に進んでいるように見えた。村人に紛れて、ゴードンを見つけたので近づいていって声をかけた。

 「やあ、ゴードン。遅くなった。手伝いに来たが、僕の出番は少なそうだな」

 「ああ、ロッシュ村長。おはようございます。街からの応援もあったので、なんとか予定通り終わらせることができそうです。とにかく、今年は面積が多いですからね。ただ、農業に携われる村人も随分と少なくなってしまったので、来年は少し工夫をしなければ、面積をこれ以上広げることは難しそうですな」

 確かにゴードンの言うとおりだ。街の人達の衣食住を支えているのは村の人達だ。そのため、農業以外の産業に村人を振り分けてしまっているため、農業を専業としている人数はかなり少なくなってしまっている。当面は街から人を入れることを考えなければならないだろうが、なんとか工夫できなかを考えなければな。

 僕は、一日中畑に入り、種を撒き続けた。今年は、小麦の種も手に入ったので、少ない面積だが栽培することが出来た。小麦粉が手に入れば、料理の種類も格段に増えることだろうな。エリスにその話をしたら、僕が知っている小麦粉を使った料理を教え、それを全てメモに取っていたな。

 数日で作業が終わりを迎え、僕の手伝いも不要になってしまった。空いた時間に、魔牛牧場に顔を出し、肥料の様子やトマトの様子を確認していた。すると、以前頼んでおいたことについて、進展があったようなのだ。頼んでおいたこととは、ドワーフの件だ。ゴブリンに聞き出すことを頼んでいたことだが、どうやらゴブリンはドワーフの居場所を知っているというのだ。ミヤの眷族がわざわざゴブリンの女王のところまで出向き確認したので信用度は高いとのことだ。

 ドワーフがいるとされる場所は、ゴブリンの女王の勢力圏から南西に向かったところのようだ。ドワーフは鉱物資源が豊富なところに居を構えることが多いらしく、ゴブリンとはしばしば鉱脈を巡って争いが起きているようなのだ。ゴブリンは勝てた試しがなく、いつも優良な鉱脈を前に指を咥えていることが多いみたいだと女王が愚痴のようにこぼしていたようだ。とにかく、場所が見つかったことは僥倖だ。冬になれば、自由に行動できる時間が増える。その間に行くのが望ましいだろう。

 引き続き、ゴブリンと連絡を取り合うことを眷族に頼み、僕は屋敷へと戻っていった。屋敷についた時はすっかり暗くなっていた。屋敷に入ると、ゴードンが僕の帰りを待っていたみたいだ。なにやら、ゴードンの表情が明るいな。この時期に来るということは……

 「ロッシュ村長。お待ちしていました。実は、今回来たのは……」

 僕は、ゴードンの言葉を遮り、ゴードンに対してニヤリと笑った。

 「分かっている。収穫祭の件だな。ゴードンはそんな表情をするのは決まって祭りに関することだ。で、いつやるんだ?」

 「おお。さすがはロッシュ村長。相変わらず祭りになると、人が変わったようになりますな」

 お前もな、と二人で怪しくにやけていると、マグ姉が僕達の間に入ってきた。

 「なに、二人して気持ち悪い顔をしているのよ。ちょっと収穫祭のことで相談があるんだけど。収穫祭と同時に結婚式をやりたいのよ。もう冬でしょ? 時間がないから、一緒にやってしまいたいのよ。どうかしら?」

 僕は急に結婚式の話が始まったので、少し驚いたが、考えてみるとマグ姉の考えは素晴らしいな。今年の結婚式は、僕達だけではなく、村人で新たにカップルになった人達も参加することになっている。折角なら村人皆に祝ってもらいたいもんな。そうなると、祭りの日にやるのが理に適っている。いろいろ考えていると、楽しくなってくるな。

 「マグ姉の考えは良いと僕は思うぞ。折角だから、二日に分けて行うくらいに盛大にやろうじゃないか。一日目は結婚式で、二日目は収穫祭だ。夜通し祝いっぱなしの祭りになるぞ。どうだ?」

 「夜通し祝いっぱなしとはいいですな。ロッシュ村長には頭が下がりますな。そうなると計画を練り直さねばなりませんな。食事の手配や結婚式の参加者の調整も必要ですな。これは忙しくなりそうだ。衣装の方はどうなさいますか? 服飾店のトールさんに頼む予定ですが、間に合うかどうか分からなくなってきましたな」

 衣装か。僕はともかく女性にとって結婚式のときの衣装は格別だろう。村で衣装の制作を頼めるのはトールしかいないから僕達もそうするつもりだ、とゴードンに言おうとしたら、ミヤはやってきた。久しぶりに見た気がするが、随分と疲れている様子だ。一体何をしていたんだ?

 「ロッシュ。話を聞いていたわ。結婚式の衣装は服飾店に頼む必要はないわ。私が全て用意したから」

 そういって、ミヤは部屋に一旦戻って、一着のドレスを持ってきた。それを僕に手渡してきた。これは魔力糸から紡ぎ出された上質な生地のドレスだ。そして、デザインが素晴らしい。袖を通さなくても分かるほど、洗練された技術が伺える。そうか、これはミヤが魔法で作ったドレスなんだろう。前に、服を魔法で作ろうと思うと、複雑になればなるほど魔力の消費が激しいと聞いたことがある。このドレスなんか、どれだけの魔力を消費したか。しかも、全て用意とは、エリス、リード、マグ姉、それと自分の分ということか。最近顔を出さなかったのは、これを作っていたからなのか。

 「ミヤ、気付いてやれなく済まなかったな。これ、すごく凄いぞ。早く、これに袖を通したミヤ達を見てみたいものだな。というわけだ。ゴードン。トールの方には村人の分だけをお願いしておいてくれ」

 ゴードンは承知しましたと言って、急ぎ気味で屋敷を飛び出していった。予定変更で急に忙しくさせてしまったな。僕が手にしたドレスをミヤは、まだ途中だからといって取られてしまった。触り心地が最高に良かったからもう少し触っていたかったが。すると、マグ姉がすこし真剣な表情になって、質問してきた。

 「ロッシュ。シェラさんのことで確認したいんだけど、ロッシュはシェラさんにも指輪を渡しているのよね? ということは、結婚式に参加するってことでいいのかしら?」

 え⁉ 確かに指輪はわたしてあるが、そういう意味で渡したわけではないから、参加しないんじゃないか? 僕は、マグ姉の質問を否定しようとすると、シェラが静かに部屋の隅に居て、間に入ってきた。いつの間に入ってきたんだ?

 「わたしもロッシュと結婚したいです。この世界では、私にとってロッシュは全てです。そのロッシュが他の女性に取られてしまうのは我慢できません。ですから、私も結婚式に参加させてください」

 僕は呆気にとられて、何も言えずにいると、マグ姉が呆れた顔でシェラに話しかけた。

 「素直じゃないわね。ロッシュが好きだから結婚したいって言えばいいじゃない。傍から見たら丸わかりなんだから。私もそのつもりで準備していたから、安心していいわ」

 話がついていけない。僕がシェラの方に顔を向けると、少し顔を赤くして恥ずかしそうに俯いているシェラがいた。事実を受け止めるのにかなり時間がかかったが、僕はシェラの気持ちに応えなくてはいけない。すっと立ち上がり、シェラの前に立った。

 「僕の事をそうゆう風に想ってくれることはすごく嬉しかったよ。シェラは女神で、恋愛の対象ではないと自分を抑えていたけど、本当はシェラを好きになっていたんだ。だから、君と結婚できることはすごく嬉しいよ。ずっと、これからもずっと一緒にいよう」

 そういうと、シェラは顔を真っ赤にして、小さな声でハイと返事をすると恥ずかしくなってしまったのか、自分の部屋の方に小走りで去って行った。僕はシェラの後ろ姿を見て、自分の言ったことを思い出して恥ずかしくなっていた。

 「そういえばさ、ロッシュに私達ってああ言う言葉ってかけてもらってない気がするんだけど」

 ミヤがそういうと、そういえば、とマグ姉が同意して、エリスとリードも便乗してきた。ミヤ達はどちらかというと結婚式を強引に薦めてきたから、言う雰囲気じゃなかったからだと思うんだけど。しかし、そんな言い訳は通用しなかったようで、結局、一人一人に改めて、僕の方からプロポーズをすることになった。恥ずかしすぎる。

 「ミヤは、シェラの分の衣装を作るのは間にあうのか? なんならシェラの分だけはトールに頼むけど」

 「あら、ロッシュはシェラだけ仲間はずれにするつもりかしら? 大丈夫よ。シェラの分もしっかりと作ってあるから。シェラは結婚式に参加するって確信があったから」

 結局、シェラの気持ちに気付いていなかったのは僕だけだったのか。ショックだ……。 
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