爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第134話 結婚式と収穫祭④

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 なんとか、シェラを宥めて会場の中心に向かっていった。村人の殆どが会場に集まっていて、夜通し飲んでいることもあって、未だに熱気は冷めていないようだ。このまま、夜に突入していくのだろうな。ちらっと、遠目にミヤが樽の側に陣取り、眷族に酌をさせて優雅に飲んでいた。今年は、吸血鬼達も参加しているのか。村人も、遠巻きにしているものの、嫌悪感みたいのはなさそうだ。きっと、ルドが吸血鬼の評判を高めてくれたおかげだろう。

 僕達は、ゴードンのいる主賓席の方に向かっていった。そこに僕の席があるようだからな。エリスとシェラには自由に行動していいと伝えたが、二人とも共に来てくれるようだ。主賓席にいる人達は、この村を実質的に運営している者達だ。年齢層が高く、亜人が半分以上を占めている。もちろん、ライルもその一員だがまだ見えていないようだ。

 「ロッシュ村長。お出でになって頂けましたか。昨晩から、ロッシュ村長の妻になられる方の噂で持ちきりでしたよ。あれほどの美女を侍らす村長を妬まないものなどおりませんでしたよ。もちろん、当日の村長の独特な雰囲気に当てられた女性も多かったみたいですな。是非、モテる秘訣なんぞを聞かせてもらいたいものですな」

 ゴードンがこんな軽口を言うのは珍しいことだな。相当気分が良いようだ。それに、妻達が褒められて喜ばない夫はいない。僕はニヤけながら、ゴードンにモテる秘訣を授けた。その噂が村人に広まったのか、普段着にスーツを着込む男が増えた。僕のスーツにはカリスマ+がついているおかげだったが、普通のスーツだと、ただの浮かれた人になってしまうことは言うまでもないだろう。

 「ゴードン。なかなか気分が良いようだな。祭りの会場を見たが、いい雰囲気だ。今年も成功と言ってもいいだろう。夜は何か催しをやったりするのか? 結局、僕は祭りの相談には参加できなかったんだ。教えてくれるんだろ?」

 「そのお言葉を聞けて、嬉しく思います。準備してきた甲斐があったというものですな。夜は、ちょっと風変わりのことをしたいと思って、鍛冶工房のカーゴさんに無理を言って、作ってもらったんですよ。先代がまだ存命の時に一度だけ見たことがあったものなのですが。それは花火というものらしいのです。ロッシュ村長は幼少の頃に見たことがあると思いますが」

 花火だと? 花火ということは、火薬が既に存在するというのか。信じられないな。ただ、もしかしたら僕の知っている花火と全く違うものだという可能性もある。今までだって、そんな勘違いを何度もしてきたのだ。僕はゴードンに僕の知っている花火を説明した。

 「ええ。その通りです。ただ、花火に色が付いているとか、形が様々に変わるとか、その辺りはよく分かりませんが、上空に打ち上げた火薬玉を炸裂させて、その火花を見て楽しむものというは間違いありません。幼少の頃一度しか見ていないのに、構造まで理解しているとは、恐れ入ります」

 やはり、火薬が存在していたのだ。どうやって、作っているのか、是非とも聞き出したいところだ。火薬があれば、鉱山開発に住民を使って効率的に行うことが出来る。今まで、広げることが難しかった問題が解決できるかもしれないのだ。カーゴか。彼女なら、主賓席にいてもおかしくないだろうに。僕が見回したが、姿を見つけることは出来なかった。ゴードンに聞くと、さきほどまでいたと言うので、会場内を探し歩くことにした。エリスとシェラを連れて、歩いてミヤのもとに向かった。まだ、挨拶もしていなかったからな。

 ミヤと眷族の周りは独特な雰囲気を醸し出していた。魔酒の樽がいくつも転がっており、その側からどんどん運びこれていく。眷族達も酒が強いのか、魔酒を浴びるように飲んでいるのだ。何人かは魔酒にトマトジュースを混ぜて、美味しそうに飲んでいた。あとで、もらうか。

 「ミヤ。相変わらず、すごいな。これ、全部ミヤが飲んだのか?」

 「あら。ロッシュ。昨晩は盛り上がったかしら。シェラも随分とロッシュと距離を縮めることが出来たみたいね。今日は本当に良い日だわ。好きなだけ魔酒を飲める日なんて今日だけなんて、おかしいわよ。そうよ!! このまま、毎日祭りを続けましょう。それがいいわ」

 周りの眷族達もやたらとテンシャンが高く、盛り上がっている。何が、毎日だ。そんなことをしたら、誰も働かなくなるだろう。ミヤの酒好きには困ったものだ。それにしても、ミヤはどんだけ飲めば酔いつぶれるんだ? さて、そろそろカーゴを探しに行くか。エリスとシェラに声をかけようとしたが、シェラが大皿になみなみと注がれた魔酒をコクコクと小気味よく飲んでいた。大皿が空になって、初めてシェラは皿から口を話した。惚れ惚れするほどの飲みっぷりだ。少し頬が朱に染まってシェラが僕の方を向いた。

 「旦那様。この魔酒と酒はなんと甘美な味がするのでしょう。すごく気に入りましたわ。私はもう少しミヤさんとここで飲んでいくので、旦那様は探しものをしてきてくださいな」

 どうやらシェラが魔酒の虜となってしまったようだ。魔酒の恐ろしさを僕は知っている。シェラには、酒は程々にな、と伝え、エリスとカーゴを探すために会場内を歩き始めた。今年からは料理は大量に出すのではなく、一角に食事するスペースを作り、注文で作っているようだ。これなら、無駄な食材が出なくて良いな。村人は、どちらかというと食い気より飲み気だから、その方が合っているようだ。ラーナさんの食堂の従業員もかなり増えたようで、夜通しでも食事を提供できるだけの態勢になっているようだ。村も徐々に便利になっていっているのだと実感できる時だな。

 「ロッシュ様。何か食事でもしていきますか? 最近、ラーナさんの食堂でも甘味を取り扱うようになったんですよ。それが評判で、ロッシュ様から教わったレシピを元に、いろいろと派生したお菓子があるんですよ。実は、私も開発に協力しているんですよ」

 エリスはいろいろとやり始めているんだな。最初の頃は、あまり人と接する事が好きではなかったのだが。

 「食事は後にしよう。さっき、胃薬……いや、食事を摂ったばかりだからな。そのお菓子とやらは楽しみにとっておこう」

 エリスが少し残念そうな顔をしたのを見逃さなかった。

 「いや、やっぱり食べよう。すまないが、エリス。お菓子の注文をしに行ってくれないか? 僕はもうしばらく、カーゴを探すよ。見つかる頃にはお菓子も出来上がっている頃だろう。そしたら、一緒に食べないか?」

 エリスが喜色を浮かべ、ハイ、と返事をして食事をするスペースの方に向かっていった。さて、カーゴはどこにいるかな。すると、包丁などの家事用具が並んでいる一角を見つけた。どうやら、鍛冶工房が開いている展示場のようだ。その片隅、弟子と何やら相談をしているカーゴの姿をあった。

 「カーゴ。久しぶりだな。ちょっと、聞きたいことが会って探していたんだ」

 「村長、久しぶりです。私も見せたいものがあるから会いたかったんですよ。聞きたいこととはなんですか?」

 僕は火薬のことについて聞いた。特に製法についてだ。この実用化は今後の村運営に重要なことだ。

 「製法は分からないです。実はスタシャさんから試験的に使えないかと頼まれたものを花火に加工しただけですから」

 そうか、スタシャか。僕は少し複雑な思いをしながら、カーゴの話を聞いた。

 「前に言っていた兵器開発のことで、試作機が出来たから見せようと思っていたんです。もっとも随分前に出来ていたので、何度も改良を加えてありますから、原型は無くなっていますけど。これから、どうですか? 花火が打ち上がるまでにまだ時間があるので、工房まで足を運んでくれると助かるんですが」

 ついに兵器が出来上がったか。僕が緊急性を要するとして頼んでものだ。何を置いても見に行かなければならないだろう。僕は、カーゴの弟子にエリスへ伝言を頼み、カーゴと共に工房へ向かった。
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