爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第146話 戦後処理②

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 亜人達は、僕達の姿を見て、戦う姿勢を取ったまま、じっと睨み合う展開になっていた。しかし、亜人達の姿は酷いものだな。ボロ切れのような服を一枚羽織っているだけではないか。裸足でいるものもいるし、足首に鎖を付けられていたのだろうか、跡がくっきりと残っているものもいた。ガムド子爵が言っていた王都の実情は本当のようだな。

 そういえば、王弟が入っていると思っていたカゴに入っていた亜人は無事にいるだろうか。思い起こせば、美しい人だったな。青い髪と青い瞳で虎を思わせるような耳と尻尾がなんとも気高く感じたな。ボロをまとっていたが、ちゃんとした服を着させれば、どれほど美しいか。

 そんなことを考えていると、亜人達に動きが見えた。後方の方から声を聞こえ、亜人達の列が割れ始めた。奥の方から馬に乗った将軍然とした女性の亜人がこちらに向かってきた。それに従うように、馬の後ろを数名の屈強な亜人が付いている。徐々に近づいてくる女性を見て、先程助けた女性の面影が重なった。しかし、同一人物とはどうしても思えないな。助けた亜人は、ビクビクとしていてか弱い感じであったが、近づいてくる亜人は明らかにたくましく、自信に満ち溢れているように見える。

 近づいてきた亜人は、僕達と一定の距離を保って止まった。しばらく、将軍然とした亜人は僕をじっと見つめている。ライルがすぐに声を上げる。

 「オレはイルス公国より来たライルという。こちらにいるのが、公国の主、ロッシュ公だ。我々は、ここにいる者たちの代表者に会いたいが、そなたがそうか?」

 しばらく沈黙が流れた後、馬に乗っていた女性が馬から降り、こちらに向かってきた。僕とは肌が触れ合いそうになるほど近づいてきた。ライルが止めに入ろうとしていたが、僕はそれを止めたのだ。やはり、先程助けた女性に似ているせいか、どうも知らない間柄のように感じないのだ。

 僕をじっとこちらを見てから、その女性は一歩下がり、僕に話しかけてきた。

 「私は、ここにいる者たちの代表として話が出来る。ロッシュ公の話を伺いましょう」

 僕は頷き、クロスボウ隊に会談の場を設けるように命令した。しばし待っている間、代表のものと話をすることにした。

 「先程、助けていただいてありがとうございます。私、クレイといいます。あの後、すぐにこの場所に向かい、皆を戦争に加わらないように説得していたのです。幸い、戦争での私達の被害はありませんでした。これも、ロッシュ公がすぐに私を救い出してくれたおかげです。感謝してもしきれません」

 話がどんどん進んでいるが、ついていけない。

 「ちょっと待ってくれ。確認したいのだが、クレイはあのときの亜人なのか? 正直言って、一緒の人だとは思えないのだが。あの時は、わざと気弱なふりをしていたのか?」

 クレイは不思議そうな顔をしていたが、そういえばと、きれいな宝石を取り出し、僕に手渡してきた。僕が、一度、彼女の顔を見てから、手渡された宝石を見た。これは、たしかに、亜人に手渡したものだ。僕が作ったものだから見間違うわけがない。しかし、どうゆうことだ?

 「私はロッシュ公に助けられた者で間違いないです。その宝石では証拠にはならないですか?」

 要領を得ないが、クレイを信じることにしよう。そんなことを話していると、会談の準備が出来たようで、そちらに移動することにした。テントに入った。こっちからは僕とライルが。向こうはクレイと屈強な男が参加することになった。

 「さて、自己紹介させてもらおう。僕の名前はロッシュ。横にいるのは、戦闘の指揮を一任しているライルだ。今回は会談に応じてくれたことに感謝する。無益な血が流れなかったことは、僕としては嬉しいことだ」

 「こちらこそ、戦いで血が流れなかったことは嬉しい限りです。私は、クレイ=レントーク。レントーク王家の第二王女……だったと言うべきですか。私は、アウーディア王国に人質として送られましたから」

 そういうと隣に座っている屈強な男がクレイに向かって大声で叫び始めた。

 「何をおっしゃいます!! 姫様こそが、レイトーク王家の正当な後継者ではありませんか。このような境遇に姫様を置くとは…・・あの卑劣な奴らを許せん!!」

 「よい!! ドゥア。ロッシュ公の前だぞ。少しは慎め!! ロッシュ公。部下が粗相をしました。深くお詫び申し上げます」

 クレイが僕に向かって頭を下げてくる。ドゥアは、一呼吸遅れたが、僕に不承不承という感じで頭を下げてきた。それにしても、レイトーク王家か……なるほどな。たしか、西の方にそんな王家があったという記憶くらいしかないが。王家か。どう接すればいいか分からなくなってきたな。こんな時に、ルドかマグ姉がいれば心強かったんだが。

 「気にしなくていい。そちらの事情はよく分かっていないが、ここにいる亜人達の様子を見れば、想像を絶するようなことを起こっていることは分かっているつもりだ。僕は、その窮状から少しでも君たちを救いたいと思っている。もちろん、それなりに対価をもらうことになるだろうが。どうだろうか? クレイ姫」

 「クレイでいいです。姫という身分は捨てたつもりですから。無礼を承知で、ロッシュ公に伺いますが、何故、我らを救うなどとおっしゃるのですか? その真意を聞かなければ、話をすすめることは出来ません」

 その言葉を聞いて、ライルが少し苛立ちを感じたようだった。

 「もっともだ。この戦の勝者である僕が、君たちに対して救うなどと言葉を口にすることに疑問を持つのは不思議ではない。理由は決まっている。クレイ、君が美しいからだ」

 真剣な空気が、少し白けたような感じになった。クレイも少し顔を赤らめたが、すぐに真面目な顔に戻って、僕を睨んできた。

 「冗談は程々にお願いします」

 冗談ではないのだが……

 「冗談のつもりではないのだが。僕は……そうだな。領地経営していく中で、種族ということだけを理由に迫害する王国が許せなくなった。ということだな」

 なにやらクレイが唖然とした顔になっているな。隣のドゥアという者もか。ライルは、少し笑っているように見える。変なことを言ったかな?

 「そんな思いつきみたいな理由で我らを救うとおっしゃるのですか? こう言っては何ですが、正気を疑いますよ。ロッシュ公が相手にしているのは、アウーディア王国なんですよ? 敵に回して、タダで済むと思っているのですか?」

 ああ、そういうことか。結局ところ、僕がどこまでやるのかを聞き出したいということか。話が見えてくれば、答えは簡単だ。

 「やってみなければ分からないが、僕は領民に降りかかる火の粉は全力で取り除くつもりだ。それは王国であろうとだ。もし、亜人達が戦争に参加をしていれば、容赦なく攻撃を加えていただろう。それだけの話だ」

 「どうやら、ロッシュ公に亜人達を託すに足りるだけの信頼はありそうですね。私の質問に応えていただいてありがとうございます。話を続けてください」

 あとは事務的な話があるだけだった。とりあえず、亜人達の武装を解除してもらい、公国に帰属の意志がある者だけを公国が引き取ることにした。クレイからは、人間と亜人の扱いについてを明文にすることを約束させられたが、それ以外は不満はないようだった。詳細は、ゴードンを交えて話し合いということで決着した。しかし、クレイから帰属する意志のある者について、悩みがあるようだった。

 「ロッシュ公。実は、我らの全ては公国への帰属を望んでいるだろう。王国に戻りたいものなどいるはずもない。しかし、王国に人質を取られているものはそうはいかないだろう。だから、その者たちには、王国にたどり着くだけの食料を分けてもらえないだろうか? 虫のいい相談だとは思うが」

 やはり、亜人達は人質を取られていたというのは正しかったようだな。

 「なるほどな。それについては、クレイの頼みを聞き届けよう」

 僕が了承するとは思ってもいなかったみたいで、クレイは嬉しさ半分と疑い半分といった様子だった。その後、僕が、しかし、と続けると、落胆の色の顔が濃くなっていった。

 「しかし……そう落胆するな。クレイにとって、決して悪い話ではない。実は、人質を救助するために人を既に王都に送り込んでいる。運が良ければ、亜人達の家族達を救助できるかもしれないぞ。その結果が分かるのは、一ヶ月後だ。それまで、帰属について結論を保留にしても良いぞ」

 「そ、そこまで考えてくれて頂けたとは。そこまでしていただいて甘えるわけにはいきません。私が説得して、全員を必ず帰属させてみせます。必ずや、我ら一同、ロッシュ公と公国にお役に立ってみせます!!」

 かなり期待をされてしまっているな。この人質救出作戦は失敗に終わらせるわけには行かなくなったぞ。街に戻ったら、作戦を練り直さなければならないな。一万五千人分の人質って……何人いるんだ?
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