爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第166話 王国軍からの追っ手

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 ガムド子爵の妻子と第二王子であるガドートスを救援隊と共に公国へ出発してもらうことにした。彼らには当面の食料を手渡し、先に行っている荷車隊と合流した時の手紙を預けることにした。そこには、次の合流地点と救助隊、新たに加わった三人の身元を保証することが認めてある。次は、クレイ達との合流だ。救助隊が言うには、王都の北部から迂回する形で東に向かっているはずだから、北に移動すれば、発見できるだろうと言っていた。僕達は北につながる道に沿って移動を開始した。

 道中、僕の横にミヤがしっかりと付いており、後ろにシェラ、その周りを眷族達が囲っている。僕にとっては、完璧な防御陣地だ。僕らは、軍の真ん中に位置する場所にいる。すると、先頭を歩いているライルがこちらに向かってきた。どうやら、亜人達を発見したようだ。周りは王国兵の姿はないと言うので、僕はホッとした。すぐに近づき、クレイと会うことにした。

 僕達が近づくと、クレイは止まれと亜人達に指示をすると、しばらくかかったが移動が止まった。クレイが僕の方に近づいてきて、礼を言ってきた。

 「ここまで来ていただけるとは助かりました。道に不案内なもので、どこを進めばよいか不安に思っていました。とりあえず、レントーク王国からの人質は全員確認いたしました」

 僕は頷き、無事でよかったと素直に喜んだ。クレイが適任だったとしても、送り出してから不安な気持ちはずっと拭えないでいた。本当に無事でよかった。僕らが再会を喜んでいると、ライルが横から話に割り込んできた。

 「お話中申し訳ないが、話は後にしてくれ。敵の動きが読めない以上、ここで長居は危険だ。とりあえず、敵の勢力圏外に出るまでは、一気に進もう。レントークの亜人達はロッシュ公を先頭とする一軍と共に先を進んでくれ。オレも一軍を率いて、後ろにつこう」

 クレイと僕は頷き、公国軍を反転させ、ライル軍を作り、後方に置くことにした。クレイには、亜人達を早く歩かせるように頼み、僕達は先を急いだ。と言っても、亜人達の様子を見るに、食事をまともに与えられていない様子で、手足に傷を負い、頬がコケるほどに痩せている。これでは、無理をさせても子供の歩速にしかならないだろう。それでも、一歩々々、先に進むことだけを考えて、前進していく。

 なんとか、夜が明けるまで歩き続け、幸いにも敵にも遭遇しなかった。王都近郊に送り込んだ斥候からも王都の動きがないという報告が来ている。さらに、周りにも伏兵などが確認できないということで、皆、人の方?に戻ってきていた。僕もライルも、追手の危険はあらかた回避できたと思い、日が昇る頃、初めての休息を取ることにした。鍛えられた兵士たちは、この程度の行軍で音を上げるものなど一人もいなかったが、レントークの奴隷亜人はそうはいかなかった。夜通しの行軍によって、心身に極度の疲れが出ているようで、少しの休息では回復は難しい状況だった。

 僕とシェラは、怪我を負った者を治療を施し、治療班はマグ姉が作った体力回復薬を飲ませ、食事を取らせた後、休息を与えた。そのおかげで、幾分、体力に余裕が出てくる者が出始めたので、行軍を再開することになった。しかし、日の出に開始した休息だが、出発できたのは昼前になっていた。この遅れがどのような自体を招くのか想像も付かなかった。

 僕達は順調に公国へ近づいていった。回復魔法と回復薬、それに温かい食事によって、気力と体力を取り戻したおかげで、進む速度も随分と早くなっていた。この調子だと、夜にはあの温泉がありそうな峠にさしかかるだろう。ライルが言うには、あの辺が王都の勢力圏の境界線となるだろうということだ。そこまで行けば、この逃避行も終わりが見えてくるということか。このまま、何事もないと良いが。

 しかし、そんな期待が無情にも破られてしまう。敵の動向を気にしていた王都の方角からではなく、北の方から大軍がこちらに向かっているのが見えた。その数は、分からない。ライルは、3万人、つまり、こっちの十倍の兵力の敵がいると言っていた。十倍……しかも、この場所は身を隠すところがまったくない平原だ。ここでの戦はまずい。まずは、レントークの奴隷亜人達をなんとか峠まで行ってもらわなければならない。そのために、僕達が敵を足止めしなければ。

 「クレイ!! いいか。とにかく、休ませることなく、この先の峠に向かって進んでくれ。そこで、荷車たちと合流できるはずだ。彼らと合流したら、公国へ向かって進むんだ。僕達は、なんとか王国軍を足止めして、時間を稼ぐ。かならず、生きて帰るから、信じて先に進んでくれ」

 そういうと、クレイは涙を流し、一言、ご武運を、といい奴隷亜人たちと先に進んで行った。これでよかったんだ。ライルの方に振り向き、作戦を相談することにした。

 「王国軍は、おそらく昨日、北門から出ていった王国軍に間違いねぇな。軍容と数からは判断できる。くそっ、ガムド子爵は王国軍を引きつけきれなかったみたいだ。この周りには身を隠すところはねぇから、クロスボウによる遠距離攻撃の一斉攻撃で、相手を怯ませている隙に撤退をする。しかし、この兵力差だと、すぐに相手は盛り返すだろう。だから、繰り返し、攻撃と逃げをすることになる。今、取れるのはそれだけだ。幸い、こっちにはクロスボウが三千もある。相手を十分に怯ませられるだろう。それと、ロッシュ公はクレイさんと共に先に行ってくれ。あんたをここで失うわけにはいかないんだ」

 僕はライルにフッと笑い、僕が行かないことは分かっているだろ? と言うと、ライルは呆れたような表情となった。どうしようもない大将だな、と言って。ミヤも諦めているのか止めることはなかった。側にいたシェラも特に何も言わなかったが、一言、ぼそっと呟いた。

 「ないなら、作ればいいのに」

 ん? よく聞き取れなかったが、シェラ、どういう意味だ? と僕は聞き返した。

 「先程、身を隠す場所がないと言っていましたけど、旦那様なら簡単に出来るじゃないですか。ここは、どんと大きな壁を作ってみては良いのではないですか?」

 うん、その通りだ。僕はすっかり、今の武器と兵でなんとか対処しなければならないと思いこんでいた。皆もその手があったか、と手を叩いていた。しかし、デカイ壁は難しいが、身を隠せる場所か……相手の武器は剣と弓。とりあえず、考えるのは弓への対処か。白兵戦になれば、終わりだ。そうなると、相手の弓攻撃によるこちらの損耗が問題となる。弓の矢は放物線を描くから、壁が頭の位置より高くなければ意味がないな。攻撃のしやすさを考慮すると、矢を射出する穴が付いた壁ということになるな。

 イメージが湧いてきたな。早速、穴が空いて、十人ほど隠れられる壁をかぶらないように、土魔法で組み上げていく。壁はなるべく薄く、堅く練り上げるように、僕は魔力回復薬を飲みながら、完成をさせていった。ようやく完成して、配置に着いた頃、王国軍は問答無用と言った様子で一気にこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 戦場が草原で、遮るものがないため、王国軍は広く展開して、相手を蹂躙するかのように前進してきた。騎馬隊も連れいている。なんと分厚い陣容なのだ。しかし、こちらには三千のクロスボウがある。王国軍を十分に引きつけ、一斉に射撃を開始した。それも短時間で連射をしてくるのだ。突撃してきた王国兵は、次々と倒れ始め、すぐに、進軍を停止し、相手も弓兵による斉射を始めた。

 しかし、こちらには矢を防ぐための壁があり、弓が一射する時間に三射することができる。さらに、相手には矢を防ぐ壁がない。こちらの矢が面白いように当たり、ついには弓兵を守るために大型の盾を持つ兵が壁となった。これには閉口した。さすがのクロスボウでも、相手の大型の盾を破ることは出来ない。こちらの唯一の攻撃手段を絶たれてしまったかに見えたが、ライルがすかさず、号令を出すと、数本の色違いの矢がすーっと縦に吸い込まれていき、盾の後ろにいた弓兵、更に後ろにいた兵、更に後ろ……と次々と倒れていった。貫通矢、凄すぎだろ!!
 
 これには、さすがの敵側は怯み、弓兵による攻撃を諦め、再度突撃をしてくるという愚行を行ったのだ。打ち破れればよいが、クロスボウ三千の矢嵐の前では簡単に近づくことすら難しいだろう。当り前のように突撃してくる者は次々と打倒されていく。

 やがて、突撃は止められ、大型の盾の者を再び前に出し、じりっじりっと近づいてくる戦法に切り替えてきた。これは非常にマズイ。相手は貫通矢が然程ないことに気付いたようだ。ライルが貫通矢を放って、王国兵が倒れていっても、近付いてくるのを止める様子がない。徐々に距離が近づく。クロスボウの矢は相手にダメージを与えない。このままでは……。
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