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第181話 ロドリスとの会合 その1
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亜人達の受け入れの相談が終わり、ルドには街と村作りに必要な技術者をラエルの街に戻って集めてもらい、ゴードンには資材の量産と運搬の準備をいてもらい、ライルには亜人の代表者であるロドリスの仲介と自警団の再編成をしてもらい、新たに作られる街や村に駐屯してもらう人員を選抜してもらい、クレイには新村から現在常駐している技術者を村や街作りに割いてもらうための調整を各々行ってもらうことにした。
僕は、魔の森の畑の管理やフェンリルのハヤブサと遊んだりして、ロドリスとの会合までの間、時間を潰すことになった。その間に気付いたこと、というか確信したことがある。やはり、ハヤブサは僕の言葉を完全に理解しているようだ。僕が指示した方向にしっかりと向かっていくし、何かを話しかけると返事をするのだ。それに、僕の空耳と思っていた言葉を度々聞くようになっていた。フェンリルの調教を任せているククルもハヤブサが話している声を聞いてかなり興奮していたが、なぜ話すのか全くわからないらしい。
それに答えが出ないまま、ロドリスとの会合の日となった。会う場所は、ラエルの街の壁の中にある会議室だ。やはり、雪の中を無理して出てきただけあって、初老のロドリスはかなり疲労している様子だった。数日、休憩をしてから会議をしようという話にはなったのだが、ロドリスはすぐにでも、というのでロドリスが到着した日に会談を行うことにした。今回は、ロドリスの他に、若い男女の亜人が二人従ってきたようだ。
「ロドリス。雪の中、よく来てくれた。分かってはいたが、早く伝えたほうが良いだろうと思ってな。ところで、その二人は護衛か?」
僕の言葉にロドリスは恐縮しきった様子で、恭しく頭を下げた。後ろに控えている若い亜人二人もロドリスのマネをするように頭を下げた。しばらくして、ロドリスは頭を上げ、寒くて口が動きにくいのか、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「この度は遅くなってしまって申し訳ありませんでした。お呼びして頂きまして、これ以上の喜びはありません。最後までロッシュ公を信じて本当に良かった。この二人は、私の友人の子供です。今回は謝罪に来たいといいまして連れてきた次第です」
遅くなったとは感じなかったが。それにしても、謝罪? お礼というなら話は分からなくはないが。僕が首を傾げていると、二人は前に出てきて、先程よりも深く頭を下げ、申し訳ありませんできた、と声を揃えて謝罪してきた。確かに、謝罪だな。しかし、まずは何についてかを説明してもらいたいものだ。僕はロドリスに視線を送ると、理解したのか説明を始めた。
「実は、私達の恥ずかしい部分をお聞かせするのですが。私がロッシュ公より話を頂いて、皆にそのことを伝えたのです。ところが、この二人の父親が、私の古くからの親友なのですが、ロッシュ公を信用できないと言い出しまして。それが、私達を二分するほどの騒ぎになったのです」
当然そうなるだろうな。私も逆の立場なら、疑う方に回っている気がするな。ロドリスのほうが変わっていると言えるだろう。しかし、それが謝罪ということか? それならば、何の問題もない気がするが。
「続きがありまして、この二人はロッシュ公からの狼煙に我々の中で唯一気付いたのですが、あろうことか父親と相談した上で秘密にしようとしたのです。なんでも、自分たちの間違いを認めることが出来なかったようです。私が、親友の態度がおかしかったので、問い詰めたら、そう吐いたのです。私はそれから急に出発する準備をして、遅らせならばやって参ってきた次第です。この二人は秘密にしたことでロッシュ公の下に到着が遅れたことを謝罪に参ったのです」
「なるほどな。話がやっと見えてきたぞ。そういうことであるならば、僕が二人の謝罪を受け入れるつもりはないぞ」
僕がそう言うと、二人の顔色が一気に悪くなっていった。どうやら、僕が二人を許さないのではないかと思ったのだろう。
「言い方が悪かったな。僕から二人に言えるのは気にするなということだけだ。疑うのも理解できるし、この二人が秘密にしたのも、それは君たちの問題であって僕の知るところではないと思う。それに、遅れたのが問題ならば、僕は聞かされるまでそれに気付いていなかったから、謝罪されるいわれはないということだ。二人はどうやら無駄足になってしまったようだな」
僕が笑い、二人はキョトンとしたような顔をしていたが、僕が言ったことを理解することが出来たのか、ぱっと明るくなった。しかし、その直後にまた暗い顔に戻っとしまった。全く、忙しい二人だな。僕は、他に何か心配事があるのかと聞くと、男の方が答えた。
「実は、僕の父が責任を感じまして、私達の前から姿を消してしまったのです。おそらく、自責の念に耐えられなかったのでしょう。私達には何も相談もしませんでしたから。ロッシュ公がここまで寛大な心を持っていてくださっているとわかっていれば、父もいなくなることはなかったのですが」
父親が来ないのに疑問を持っていたが、それで子供の二人がここに来たというわけか。それは心配にもなろう。僕は、二人に父親を捜索するための人をできるだけ出すことを約束し、ロドリスにも亜人たちから捜索に当たるように頼んだ。ロドリスは、僕を疑った者を助けに行くことに躊躇していたらしく、僕が指示を出したことをとても喜んでくれた。これで話は終わ……ってないな。何も終わってなかった。
「さて、ロドリス。話がかなり脱線してしまったが、本題に移ろうと思う。今回呼び出したのは、食料の目処が立ったからだ」
その言葉を聞いて、ロドリスはもとより付き添いの二人も驚ききっている表情だ。それもそうだろう。外は大雪が降り、とても作物を作るなんて出来る時期ではない。それ故に、疑うものも出てきたのであろうな。
「どうやって食料を用意したかは、追々話していくことにしよう。今大事なのは、食料が用意できたことで、お前たち亜人を受け入れることが出来るということだ」
すると、ロドリスが僕の言葉に割り込むような感じで話し始めた。かなり思い詰めたような表情だったので、僕は話を聞くことにした。
「それで、ロッシュ公が受け入れてくださるのは、何人なんでしょうか? 私達は未来のある子供だけでも受け入れてくれれば本望でございます。老人達はなんとか森で暮らしてみせますよ」
そういうことか。やはり、色々と考え、悩んでいたのだろうな。僕もロドリスと会った時、確信があることが何一つなかったから曖昧な表現をしてしまったのだ。それが、この表情に繋がっているのか。
「僕の言葉が至らなかったせいで、悩ませてしまったようだな。心配するな。全員だ。全員を受け入れよう。確か三万人いるといっていたが、間違いないか?」
「た、たしかに三万人と言いました。信じられません。まだ、あれから一月くらいしか経っていないのに、三万人を養えるだけの食料を用意できるというのですか。ロッシュ公は一体、何者なんですか」
何者と言われてもな。ただのロッシュとしか答えようがないな。ただ、ロドリスは勘違いをしているので訂正をしておかなければ。
「ロドリス。間違っているぞ。正直にいえば、まだ用意は出来ていない。収穫が見込めるところまで来ているというところか。それに三万人分ではなく、五万人分を見込んでいる。だから、もう少し増えても問題がないだろうな」
ロドリスは開いた口が塞がらないのか、呆然とした顔でこちらを見ていたが、ふと、我に返って、急に涙を流し始めた。これで救われると、何度も何度も口にしていた。付き添いの二人も相当な苦労があったのか、必死に涙を我慢している様子だった。僕は、彼らに飲み物を出すように会議室にいる自警団の団員に頼んだ。それから、お茶を飲みながら、彼らが落ち着くのを待った。
僕は、魔の森の畑の管理やフェンリルのハヤブサと遊んだりして、ロドリスとの会合までの間、時間を潰すことになった。その間に気付いたこと、というか確信したことがある。やはり、ハヤブサは僕の言葉を完全に理解しているようだ。僕が指示した方向にしっかりと向かっていくし、何かを話しかけると返事をするのだ。それに、僕の空耳と思っていた言葉を度々聞くようになっていた。フェンリルの調教を任せているククルもハヤブサが話している声を聞いてかなり興奮していたが、なぜ話すのか全くわからないらしい。
それに答えが出ないまま、ロドリスとの会合の日となった。会う場所は、ラエルの街の壁の中にある会議室だ。やはり、雪の中を無理して出てきただけあって、初老のロドリスはかなり疲労している様子だった。数日、休憩をしてから会議をしようという話にはなったのだが、ロドリスはすぐにでも、というのでロドリスが到着した日に会談を行うことにした。今回は、ロドリスの他に、若い男女の亜人が二人従ってきたようだ。
「ロドリス。雪の中、よく来てくれた。分かってはいたが、早く伝えたほうが良いだろうと思ってな。ところで、その二人は護衛か?」
僕の言葉にロドリスは恐縮しきった様子で、恭しく頭を下げた。後ろに控えている若い亜人二人もロドリスのマネをするように頭を下げた。しばらくして、ロドリスは頭を上げ、寒くて口が動きにくいのか、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「この度は遅くなってしまって申し訳ありませんでした。お呼びして頂きまして、これ以上の喜びはありません。最後までロッシュ公を信じて本当に良かった。この二人は、私の友人の子供です。今回は謝罪に来たいといいまして連れてきた次第です」
遅くなったとは感じなかったが。それにしても、謝罪? お礼というなら話は分からなくはないが。僕が首を傾げていると、二人は前に出てきて、先程よりも深く頭を下げ、申し訳ありませんできた、と声を揃えて謝罪してきた。確かに、謝罪だな。しかし、まずは何についてかを説明してもらいたいものだ。僕はロドリスに視線を送ると、理解したのか説明を始めた。
「実は、私達の恥ずかしい部分をお聞かせするのですが。私がロッシュ公より話を頂いて、皆にそのことを伝えたのです。ところが、この二人の父親が、私の古くからの親友なのですが、ロッシュ公を信用できないと言い出しまして。それが、私達を二分するほどの騒ぎになったのです」
当然そうなるだろうな。私も逆の立場なら、疑う方に回っている気がするな。ロドリスのほうが変わっていると言えるだろう。しかし、それが謝罪ということか? それならば、何の問題もない気がするが。
「続きがありまして、この二人はロッシュ公からの狼煙に我々の中で唯一気付いたのですが、あろうことか父親と相談した上で秘密にしようとしたのです。なんでも、自分たちの間違いを認めることが出来なかったようです。私が、親友の態度がおかしかったので、問い詰めたら、そう吐いたのです。私はそれから急に出発する準備をして、遅らせならばやって参ってきた次第です。この二人は秘密にしたことでロッシュ公の下に到着が遅れたことを謝罪に参ったのです」
「なるほどな。話がやっと見えてきたぞ。そういうことであるならば、僕が二人の謝罪を受け入れるつもりはないぞ」
僕がそう言うと、二人の顔色が一気に悪くなっていった。どうやら、僕が二人を許さないのではないかと思ったのだろう。
「言い方が悪かったな。僕から二人に言えるのは気にするなということだけだ。疑うのも理解できるし、この二人が秘密にしたのも、それは君たちの問題であって僕の知るところではないと思う。それに、遅れたのが問題ならば、僕は聞かされるまでそれに気付いていなかったから、謝罪されるいわれはないということだ。二人はどうやら無駄足になってしまったようだな」
僕が笑い、二人はキョトンとしたような顔をしていたが、僕が言ったことを理解することが出来たのか、ぱっと明るくなった。しかし、その直後にまた暗い顔に戻っとしまった。全く、忙しい二人だな。僕は、他に何か心配事があるのかと聞くと、男の方が答えた。
「実は、僕の父が責任を感じまして、私達の前から姿を消してしまったのです。おそらく、自責の念に耐えられなかったのでしょう。私達には何も相談もしませんでしたから。ロッシュ公がここまで寛大な心を持っていてくださっているとわかっていれば、父もいなくなることはなかったのですが」
父親が来ないのに疑問を持っていたが、それで子供の二人がここに来たというわけか。それは心配にもなろう。僕は、二人に父親を捜索するための人をできるだけ出すことを約束し、ロドリスにも亜人たちから捜索に当たるように頼んだ。ロドリスは、僕を疑った者を助けに行くことに躊躇していたらしく、僕が指示を出したことをとても喜んでくれた。これで話は終わ……ってないな。何も終わってなかった。
「さて、ロドリス。話がかなり脱線してしまったが、本題に移ろうと思う。今回呼び出したのは、食料の目処が立ったからだ」
その言葉を聞いて、ロドリスはもとより付き添いの二人も驚ききっている表情だ。それもそうだろう。外は大雪が降り、とても作物を作るなんて出来る時期ではない。それ故に、疑うものも出てきたのであろうな。
「どうやって食料を用意したかは、追々話していくことにしよう。今大事なのは、食料が用意できたことで、お前たち亜人を受け入れることが出来るということだ」
すると、ロドリスが僕の言葉に割り込むような感じで話し始めた。かなり思い詰めたような表情だったので、僕は話を聞くことにした。
「それで、ロッシュ公が受け入れてくださるのは、何人なんでしょうか? 私達は未来のある子供だけでも受け入れてくれれば本望でございます。老人達はなんとか森で暮らしてみせますよ」
そういうことか。やはり、色々と考え、悩んでいたのだろうな。僕もロドリスと会った時、確信があることが何一つなかったから曖昧な表現をしてしまったのだ。それが、この表情に繋がっているのか。
「僕の言葉が至らなかったせいで、悩ませてしまったようだな。心配するな。全員だ。全員を受け入れよう。確か三万人いるといっていたが、間違いないか?」
「た、たしかに三万人と言いました。信じられません。まだ、あれから一月くらいしか経っていないのに、三万人を養えるだけの食料を用意できるというのですか。ロッシュ公は一体、何者なんですか」
何者と言われてもな。ただのロッシュとしか答えようがないな。ただ、ロドリスは勘違いをしているので訂正をしておかなければ。
「ロドリス。間違っているぞ。正直にいえば、まだ用意は出来ていない。収穫が見込めるところまで来ているというところか。それに三万人分ではなく、五万人分を見込んでいる。だから、もう少し増えても問題がないだろうな」
ロドリスは開いた口が塞がらないのか、呆然とした顔でこちらを見ていたが、ふと、我に返って、急に涙を流し始めた。これで救われると、何度も何度も口にしていた。付き添いの二人も相当な苦労があったのか、必死に涙を我慢している様子だった。僕は、彼らに飲み物を出すように会議室にいる自警団の団員に頼んだ。それから、お茶を飲みながら、彼らが落ち着くのを待った。
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