爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
234 / 408

第233話 視察の旅 その37 不思議な集落

しおりを挟む
 温泉の休憩所を作らせているガムド達の建築熱が異常な高まりを見せ、元々は三箇所の温泉施設を作るだけで終わるはずだったのが、宿泊施設まで作られていた。ガムドが言うのに木材や石材が余っていたので、と言っていたが、余力でやるような仕事ではない。宿泊施設は、全三棟あり、その全てが倉庫然とした感じの外観だが、中は三階建てになっており、数人程度が宿泊できる部屋が相当数用意されていた。それが三棟分。ガムドは一体、ここをどういう場所にしようとしているのだろうか。

 「ロッシュ公。温泉というのは素晴らしいものですな。疲れは癒やされるし、なによりも温泉に浸かりながらの酒が格別で。これを是非とも公国中のものに伝えたいものですな。いやぁ、ここが人で溢れかえるのが待ち遠しいです」

 ガムドも温泉の魅力の虜になってしまったわけか。それならば、仕方ないな!! といいたいところだが、そうも言っていられない。なぜなら、この温泉地はサノケッソの街からもラエルの街からも遠く離れた陸の孤島。とても気軽に来れる場所でもないし、管理者もいないのだ。僕も勢いで作ってしまったこの温泉街と言ってもいい場所をどうするか、本気で頭を悩ませているところだ。

 街道整備は必要としても、やはり管理者だ。どんな建物でも管理をしなければ、すぐに痛みが出てしまう。ここまで皆が一生懸命作ったものを無下にするわけにはいかないからな。こういうときは、ガムドに相談してみよう。

 「私もそこまで考えが至りませんでした。たしかにロッシュ公の言うとおりですな。我々の中からこの温泉街の管理をするものを募集してみましょう。この場所をロッシュ公が捨てないとおっしゃっていただければ、募集に応じるものがいるはずです」

 僕はかなり不安を感じていた。やはり、こんな僻地に残されるのは嫌なものである。募集に応じる人が何人いるか、一人でもいればいいのだが……しかし、僕の想像はいい意味で裏切られた。なんと、募集には百名程度の人が応じてきたのだ。そのどれもが温泉の虜になってしまった者たちで、実はガムドもその一人になりかけていたらしい。なんとか、トニアに説得されて正気に戻ったみたいだが。

 募集に応じてくれるのは嬉しいのだが、相当な温泉好きであれば、ここは天国となり得るのだろうか? 僕にはよくわからない気持ちだった。とりあえず、募集に応じてくれた百名をここの管理人とすることにし、代表者を選出し、そのものにこの地を託すことにした。効果があるか分からないが、アウーディア石を僕の別荘に保管することにした。

 僕は、今日の晩を最後の晩にして、明日出発することを皆に告げた。すると、管理人の代表者から僕が不在の間に家具を作りたいと言ってきた。それはそうだろう。彼らもこれからここで生活をしなければならない。最低限の家具くらいは欲しいだろうな。僕は了承をして、森から切り出した木材とシラーが用意した石材を残していき、さらに魔法の鞄からありったけの綿糸と綿を取り出し、大工道具一式、裁縫道具、狩りをするための道具など生活に必要そうなものを一通り置いていくことにした。

 食料も百人が一ヶ月ほど食べられる量を置いていくことにした。この周辺で食料を調達することは難しいだろう。考えられるのは、かなり戻った湖くらいだ。とはいえ、ずっと食べ続けられるものではない。そうなると、一ヶ月以内にこの場所への物流を構築しておかなければならないな。ここからラエルの街まで一週間はかかるだろう。そう考えると、余裕はあるはずである。

 僕達は温泉街での最後の夜を過ごし、数日温泉に浸かったことで見違えるほど肌が美しくなったシェラとシラーと最後の夜を過ごし、ラエルの街に向け出発することになった。女性陣達があいかわらず荷馬車の隅に座っていた。僕が確認のために荷馬車を覗き込むと、ティアが僕に話しかけてきた。

 「ロッシュ様。ロッシュ様はすごいですね。こんな素敵な場所を短時間で作ってしまうなんて。お母様なんて、ずっと温泉に浸かっていたんですよ。そのおかげで肌もこんなにきれいになっちゃって。温泉がここまでいいものだなんて知りませんでした。これからももっと勉強させてください」

 僕は頷いて、感心していた。ティアの学び取ろうとする姿勢は本当に素晴らしいことだ。この精神が公国の子どもたちに伝われば、きっとおもしろい国になっていくだろうな。トニアも温泉街との別れが惜しそうな表情を浮かべていた。

 「ロッシュ公。是非とも、再びここに来られるようにしてください。温泉なしでは生きてはいけない体になってしまったかも知れません。肌が若返ったようで、夫もあんなに頑張ってくださいましたから」

 トニアが意味深にお腹を擦るような動作をしていたが、僕は見てみぬふりをした。ティアが少し顔が赤くなっているところを見ると、どうやらトニアが何を言っているのかが分かっているのだろう。うん、ちょっと気まずい雰囲気になってしまったが、トニアは気にすること無く自分の世界に入り込んでいるようだ。僕は、これからの予定を簡単に告げ、荷馬車から離れた。

 僕とシラーとで、温泉街が開発されている間に随分と坑道は掘り進められていた。途中、小さな鉱脈があったので採掘をしていたため、思ったよりは進められなかったが、坑道の途中に空間を作り、鉱物が山のように積まれている。いずれ、この辺りも開発をするようになるだろう。その時のためにここに備蓄しておいてもいいだろう。

 僕達は、坑道の続きを掘り進めることにした。この坑道が温泉街への物流の経路になることになったので、更に道幅を広くし、将来崩落が起こりそうな場所をシラーに指摘してもらい補強しながらの行動になったため、遅い動きとなってしまった。

 温泉街から20キロメートルほど坑道を掘っていくと、ボコッと聞いたことのある音が響いた。案の定、外に繋がったようだ。日が差し込み、僕は眩しい光に目を眩ましながら、外に出てみようとした。しかし、足を出しても地面を踏む感触がなかった。どうやら、足の踏み場のない崖の中腹だったみたいだ。なんとか、体を坑道の方に戻して、再び顔だけを外に出して周囲を伺うことにした。

 青空と山々が連なっている雄大な風景が広がっている中、眼下を見下ろすと不思議な、というかありえない風景が広がっていた。山と山に囲まれて本当に小さな開けた土地に家々が立ち並び、人が行き来している姿が見られたのだ。しかし、道らしい道はなく、どのようにして暮らしているのか全く理解できない様な場所だった。

 人はそれなりにいるだろうか。遠目のため、的確な情報を得ることが出来ない。とりあえず、接触するにしろ、回避するにしろ、ガムドに相談したほうがいいだろう。ガムドに相談すると、ガムドも崖から顔を覗き込み、眼下の様子を見ていた。

 「なるほど。確かに人がいますな。しかも、かなりの人数がいると見えますな。ここは、ラエルの街から見てもかなり近い場所となります。そのような場所に敵味方か分からない集落を放っておくことは好ましいとは言えないでしょう。まずは斥候を送り出し、情報を収集してみてはいかがですか?」

 ガムドの意見には一理あるな。たしかに、ラエルの街付近でそれなりの勢力の集団を放置する事は後に不安を抱える可能性がある。この勢力の規模であれば、今、同行してもらっている戦力でなんとかなるだろう。僕は斥候を送り出すことを許可を与え、その者が戻るまで、拠点を構え待機することにした。

 数時間で戻るはずの斥候は、一日経っても戻ることはなかった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...