爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
248 / 408

第247話 ゴードンと振り返ろう 前半

しおりを挟む
 ゴードンが再び屋敷を訪れてきた。昨日の話の続きをするためだ。今回は二人だけでの話となる。まずはゴードンの話を聞くことになった。話を聞くだけでもゴードンは優秀な男であることが分かる。ゴードンを街に残し頼んだ仕事は、新たに増えた移住者の対応だ。食料の確保、住居の確保、そのための物流の調整だ。それだけでも大変な仕事であることが容易に想像ができる。

 しかし、ゴードンはそれを難なくこなしているのだ。僕には到底真似出来ない事柄だろう。しかも、街の実質的な責任者であるロドリスと相談して、鉱山開発のための人員を確保し、先発隊をすでに送り届けているというのだ。予定では、数カ月後には鉱山の開発が始められるというのだ。すでに手が加えられている鉱山なので、すぐに成果が期待できるらしい。今は村近くの鉱山からとれる鉄にほとんど依存している状態だが、それが解消できれば物流の点から、開発の効率を上げることができる。

 新規の移住者については、健康状態は皆良好になり、三村と二村への移住はほとんど完了し、あとは送られてくる資材で住居を作れば良いという状態にはなっているようだ。これならばなんとか、春の作付けの為の畑を作れるだろうな。ただ、問題がないわけではない。

 僕が考えている問題があるとすれば、すぐに連絡が来るはずだ。それは川の氾濫だ。雪解けの時期になれば当然川の水位は上昇する。僕達が開発を進めている場所は殆どが川沿い、それも下流域にある。そのため水位が急に上昇すれば、瞬く間に周囲に洪水を発生させるだろう。そうなれば、畑を作っても収量を期待することはできなくなるだろう。

 堤防の設置は、公国の領地が広がり、農地を拡大する上でも喫緊の課題の一つとなっている。しかし、ラエルの街でさえ最低限の堤防しか設置しておらず、氾濫を心配しなくてもいいのは村だけなのだ。ゴードンもその事を十分に理解しているため、各村や街ではできる限りの堤防を設置をしてもらうことになっている。なんとか今年の、せめて春だけでも乗り切ることが出来ればいいのだが。急激に暖かくなるようなことがないことを祈るのみだな。

 それとモナス達が二村に無事に入ったことの報告を受けた。気がかりだったことが問題なく進んだことにホッとしていた。モナスはオーレック騎士爵領の領主の娘だ。人口が五百人ばかりと小さな村を何とか維持していたが、家畜用の飲水に毒が混ざるようになってから、代々の土地を離れ、公国に来ることになったのだ。その際に、牛の飼育技術に長けているものが多くいたため、二村に作った牧場を引き継いでもらい、公国に牛の飼育を導入することが出来るようになったのだ。

 「それにしても、モナス様が来たときにはびっくりしましたぞ。大量の牛と大人数を連れて、街に入ってきた時は騒然となったものです。しかも、私が目当てと知った時はどうなるものかと思っていましたが、持参していた手紙を拝見してようやく安心したものです」

 それは悪いことをしたな。モナスより先に誰かを使いにやるべきであったが、僕達はサノケッソの街を目指さなければならなかったし、余分に人を割く余裕がなかったのだ。確かに、大量の牛が流れ込んできたら驚くことは容易に想像が出来るな。少し面白いが。

 さて、ゴードンからの報告はこんなものか。ゴードンが街にいてくれたおかげで物流も大いに改善されたと聞いた。やはり、物流を管理するものがいるといないとでは大違いなのだな。サノケッソの街にもはやく物流統括の支店を作ってやらねばなるまい。といっても、サノケッソの街はすでに大きな街だ。必要とする物資は食料くらいなものだから、混乱は起こりにくいだろうな。

 次は僕がゴードンに説明する番だ。説明と言うかやるべきことと言ったほうがいいかも知れないが。まずはサノケッソの街で新たな移住者を見つけた話から先にしたほうがいいだろう。三つの部落で約一万人の移住者を公国で受け入れることになった。

 「ロッシュ村長は、行く先々で移住者を発見する稀有な特技でもお持ちなのですかな?」

 とゴードンは笑っていたが、僕もそんな気がしていたのだ。僕が少し考えている素振りをしていると、ゴードンは僕に失礼なことを言ったのではないかと思ったみたいで謝罪をしてきた。

 「すこし口が軽くなってしまいましたな。ロッシュ村長が困っている者たちを救っているのは事実です。だからこそ、困っている人がロッシュ村長に集まってくるのかも知れませんな。まさに世界を救う救世主の如き行いと言えますな」

 まぁ、その辺にしておこう。徐々に変な方向に進み始めそうで怖い。僕はただの人間だ。シェラから頼まれたというのもあるが、自分ができることをやっているに過ぎない。それによって救われている者たちも、今では誰かを助けるために一生懸命働いているのだ。決して僕だけの力で皆を救っているわけでないのだ。

 僕は話を戻し、その一万人の移動先について説明することにした。領内の住民全てを難民とした男爵家の者たちには、元オーレック騎士爵領に入ってもらい、開拓と共に鉱山開発をしてもらうことになっている。それが約七千人の規模となる。といっても、農地の開墾はともかく、鉱山については全くの素人だ。とても開発を行えるものではない。そのためにも、街から鉱山開発の技術者を元オーレック領に派遣してもらう必要がある。

 「鉱山が増えることは喜ばしいことですな。しかし、街近辺の鉱山開発に着手すらしていません。そちらの方を優先的に現状進めていますから、元オーレック領については技術者の派遣は若干遅れるかも知れません。一応、鉱物資源の在庫は未だ潤沢にありますから、緊急性はないと考えております」

 ふむ。元オーレック領については、再び僕は向かう予定がある。その際に鉱脈までの道を開拓するのも手だと思っている。その際に、シラーに鉱山開発の指導をしてもらえば、派遣されてきた技術者も指導がしやすくなるだろう。

 「オーレック領に何かあるので?」

 その通りだ。元オーレック領にはアウーディア石がある可能性が非常に高いのだ。それを採掘するためにも今一度行かねばならないのだ。どうせなら、開発が進む前に掘りに行ったほうがいいだろう。ゴードンも納得してくれたようだ。

 残りの二つの部落についても話を進めよう。一つは昨日出てきた公爵領から来た者たち、約三千人についてだ。この者たちにはラエルの街に来てもらうことになっている。単純にラエルの街の労働力不足を補うためだ。といっても、公爵領の者たちのほとんどが老人と子供だ。そのため、簡単な農作業を中心にと考えていたのだが、高い学歴を持っていることがわかり、急遽、教師として働いてもらうことにしたのだ。

 そして、最後の一つが異色だ。魔族と亜人の混血のみがいる部落だ。彼らの希望で魔の森に住んでもらうことにしたのだ。今現在、魔の森で開墾している畑をそのまま管理してもらうことになる。魔族の血が混じっているせいか、戦闘能力が人間や亜人に比べてかなり高いことが伺え、魔の森でも十分に生活ができるほどらしい。そのため、魔の森の畑の管理人にうってつけなのだ。

 「そのような者たちがいようとは、いやはや世界は広いですな。私の知らないことがまだまだありそうですな。しかし、魔の森の畑を管理してくれるのは有り難いことですな。あの畑は一年中作物を取ることが出来ますが、村の畑に比べるとやや収量に劣るところがありますからな。冬以外使いみちがなかったところでした」

 ゴードンの言うとおりなのだ。魔の森の畑は冬こそいいが、それ以外の季節は大して使いみちがないのだ。いちいち警護をしてもらわなければならず、収量もさほどでもない。移住者が急遽増えてしまったために作ったはいいが、今年だけのものとなっていたかも知れなかったのだ。そこに警護のいらない管理人が入ってくれるとなれば、話は別だ。

 これで移住者の話は以上だ。次はグルドの一件か。しかし、ライルやガムドと共に話をしたときにグルドの話には触れている。ゴードンもその辺りは十分に承知しているだろう。

 「私でもグルド将軍のことは知っておりました。まさか公国で、グルド将軍の名を聞くとは思ってもいませんでしたよ」

 グルドってそんなに有名人だったのか。僕はなぜ知らないのだ? 転生前のロッシュに聞いてみたいところだな。まぁ、話が少なくすんで助かる。まだあるんだぞ。ただ、もう昼だ。昼食を食べてから話の続きをしよう。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...