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第271話 連合の移住準備
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僕はロイド子爵達との間で、北部諸侯連合を公国に併合する取り決めを作ることにした。まずは、北部諸侯連合の領土はすべて公国に帰属し、元連合領内に居住している者たちは公国に移住することとした。元連合領内に残った者はすべて公国に帰属しない者と見做す。
つまり、元連合領内の住民には、公国に帰属するか否かを決めさせることにしてある。僕には、連合領を将来はともかく、短期的に開拓する意志はない。だから、残りたい者はそのまま居住を認めている。もちろん、公国からの支援は一切ない。
ここまで決まると、とりあえず一区切りだ。具体的な移住先などの決定は今すぐ決める必要性はないが、それは領主がいる場合だ。公爵領と伯爵領についてはすぐに移住を開始しなければならない。領主のいない領土ほど危険な場所はない。どのような暴動が発生するか分からない。今は王国軍の動きがわからない以上、鎮圧に時間を掛けるわけにはいかないのだ。
「ロイド子爵。公爵領と伯爵領の住民はどんな様子だ?」
「公爵領と伯爵領については、我らの兵が入り、一応は落ち着いている状況ですが、領主が不在と分かるとどうなるか分かりませんな。一応は、代々領主を務めていた一家ですから、その存在感は無視するのは難しいでしょう」
それもそうだな。なかなか難しい問題だ。クレイのように血族のつながりで統率をするという手段も使うのも出来ないだろう。僕が悩んでいると、ナックル子爵が話しかけてきた。
「イルス公。何を悩んでいるか、なんとなく察します。あまりお考えにならずとも、公爵領と伯爵領の住民を説得する方法は簡単だと思います」
ほお。ナックル子爵がなにやら解答を持ち合わせているようだな。
「食料です。食料を住民に配ればいいのです。もちろん、全員分を用意するのは大変でしょうから炊き出しなどで少量でもいいので提供してあげてください。そして、食料は公国に行けば、腹いっぱい食べれると言えばいいのです。そうすれば、住民の中で領都に残るものはほぼいないでしょう。それほど、住民たちは飢えているんです」
そういえばそうだ。僕が見た公爵領の領都民の姿を思い出した。領都の美しい景色の中で異色のような者たちがそこいらにいたことを。男女問わず、すべてのものがやせ衰え、生気を感じさせられない目を持ち、周りに一切興味を示すようなこともなかった。そういった者たちに、食料を与え、公国に希望があるように示せばよいとナックル子爵は言っているのだな。
「ナックル子爵。その助言に従い、住民たちの説得を進めてもらいたい。食料についてはこちらが責任を持って準備させよう。サリル!」
サリルが一歩前に出て、僕の側に寄ってきた。これから頼まれることの仕事の大きさに多少怯んでいる様子があったが、決意に溢れた目をしていた。
「よいか。公爵領と伯爵領で25万人もの人口がある。その者たちに、粥一杯でもいい。とにかく食料を配るのだ。その量だけでも、サノケッソの街にある食料の殆どが無くなってしまうだろう。それでも構わない。備蓄を全て開放せよ。合わせて、村に問い合わせて、余剰分を全て北に集めるように指示をしろ。食料は春の作付けで作れば良い」
「畏まりました。すぐにサノケッソの街に戻り、準備いたします。炊き出しの要員に、グルドさんの兵を使わせてもらいたいのですが、許可をいただけないでしょうか」
僕はグルドの方に顔を向けると、あまりいい顔をしていなかった。おそらく、今後の王国軍の事を考えてのことだろう。すると、ロイド子爵以下、元連合の領主が手を上げ、自分の部下を使うように頼み込んできた。僕はそれを許可した。
「それはありがたい。公国のものがウロウロするよりも連合の領主が動いてくれたほうが混乱は少ないだろう。とにかく、迅速に対応をしてもらいたい。僕としては、王国が到着する前に公爵領と伯爵領の住民の移動を開始したいと思っている」
すると、ガムドが僕に質問してきた。気になることは分かっている。住民たちの移住先についてだ。
「当面は、今作っている城塞都市への移住をしてもらうつもりだ。あの辺りはサノケッソの街まで平地が広がっていて、開拓には適している。水も豊富で、肥沃な土地だ。生産量も期待できる」
ガムドは僕の言ったことには特に異論はなかったようだ。むしろ、移動先が分かったので、移動の方法に頭を痛めているようだ。25万人の移動ともなると、簡単なことではないだろう。しかし、これを任せられるのはガムドしかいない。
一応は公爵領と伯爵領の移住については、サリルとガムド、それに連合の領主達で取り組むことになった。次は、気絶している公爵と伯爵の子飼い五千人についてだ。
「ロイド子爵。彼らは公爵と伯爵に対して忠誠は篤かったのか? 僕は彼らと公爵達との関係について無知だ。彼らも連合の住民だ。貴殿らの約定に従い公国に受け入れる事を考えているが、間接的に僕が主を奪ったようなものだ。恨んでいるものもいるかも知れない。そのような者たちを受け入れても良いものだろうかと悩んでいる」
僕がそういうと、ロイド子爵が不思議そうな顔をしていた。
「なんともイルス公は不思議な方だ。そのような弱点を敵だったものにすぐに晒すとは。私が未だ敵だったら、それを利用して公国に被害を与えるでしょう」
ロイド子爵はそれから少し笑った。なにやら皆が頷いていたが、僕には全く理解できなかった。わからないから聞くのに不思議なことなどあるのか?
「それについても問題ないでしょう。子飼いで大切にされていたのは事実ですが、彼らも人質を取られてただけの偽りの忠誠心でしたから。家族を開放すれば、イルス公国に恨みを持つどころか感謝をしてくれましょう。人質は、公爵領と伯爵領の郊外に幽閉されております。我々もその事実を知ったのは、公爵の屋敷でその事実を記した報告書を見たからなのです」
本当に公爵と伯爵はとんでもない奴らだ。王弟もそうだが、人質を取らなければ人を使うことが出来ないのだろうか。もっとも、後ろ暗いからこそ裏切りが怖いのだろうが。僕は、人質開放と子飼い五千人の対応についてはロイド子爵に委ねることにした。
残すはナックル子爵だ。
「ナックル子爵。貴殿には公爵領と伯爵領で軍を編成してもらいたい」
ナックル子爵は申し訳無さそうな顔をしていた。
「イルス公。軍を編成をするのは出来るとは思いますが、使い物になるかは分かりませんが。なにせ、公爵と伯爵は子飼いの者以外は扱いが酷かったですから。体力を失ったものたちも多いかと」
僕もその話は聞いた。しかし、今は兵として訓練を受けた者が一人でも必要なのだ。その者たちには、この連合領に住む者たちを守ってもらう必要がある。逃げる手助けでもいい。とにかく、そういう役割を担うものが一人でも必要なのだ。それには、軍の訓練を受けたものが適している。
「分かりました。おそらく二万人ほどは編成出来ると思います。彼らには元連合領の護衛任務を与えましょう。彼らにも食料の配給をお願いします」
僕はハトリに食料の手配を頼み、連合領の護衛を任せられる二万人の兵を作ることが出来た。これで、王国軍に集中することができそうだ。僕はハトリを呼んだ。すぐに僕の目の前に現れた。
「王国軍の動きについて、何か変化はあったか?」
「新たな動きは見られません。王国軍はまだ連合内での動きについて把握はしていないのでしょう。それと併せて報告があります。公爵と伯爵を発見することが出来ました。どうやら、王国軍の方向に逃げているようです。命令をしていただければ、捕縛なり暗殺なり、可能ですが」
どうしたものだろうか。王国軍は公爵と呼応する形で動いていると思われる。公爵と王弟との間の取り決めだけを見れば、そうとしか考えられない。だとすれば、王国軍と公爵が合流すれば、作戦が失敗したと気付くだろう。そうなれば、連合へ攻め込む利点は薄いはずだ。僕が連合から脱出している可能性が大きいからだ。
撤退を決めてくれれば、それで安心だ。しかし、攻めてくるとなると対応しなければならない。すでに連合に住む民は公国の民だ。全力で守らなければならない。王国軍は五万人程度だと言う。一方、我が軍は、グルドの兵五千人、領土護衛の兵を除いて、一万五千人で対応しなければならない。子飼いの五千人も加わってくれれば心強いが、今は期待は出来ないだろう。
僕は皆に各自の持ち場に付いてもらうことにした。混み合っていた空間が一気に人がいなくなり、僕とミヤだけが残った。
「ロッシュはどうするつもりなの? サノケッソの街まで戻る?」
「いや、僕は元公爵領の領都に向かうつもりだ。ロイド子爵が言うのに、病気が蔓延していると言うからな。僕の回復魔法を使って治すつもりだ。そういえば、シェラにも手伝ってもらいたいが、シェラはどこにいるんだ?」
すると、シラーがやってきた。
「シェラさんは、サノケッソの街に置いてきました。私達の速度について来れないですし、こう言っては何ですけど、戦場では役に立たないですから」
たしかにな。シェラは回復魔法は使えるが、攻撃能力は皆無だ。その判断は正しいな。しかし、今はその力が必要なのだ。僕はシラーにシェラを呼んでくるように頼んだ。それと引き続き、ミヤの眷属には王国軍の脅威が去るまではここに滞在してもらうことにした。
僕はミヤと眷属たちを連れ、公爵領の領都で治療を開始した。その後にシェラも合流して、治療速度を上げることが出来た。最初は疑っていた領民も回復することが分かると続々と治療にやってきた。公爵領だけでも数千人もの病人がおり、その全てを治療するのに数日を要した。それから伯爵領に移動して、同様に治療を進めていた。
すると、ロイド子爵から嬉しい知らせがやってきた。公爵の子飼いの兵五千人が公国への帰属を望んでいるというのだ。しかも、王国軍の進軍を阻止する為の軍にも参加してくれるようだ。家族を人質に取られ、公爵への怒りに満ちあふれている様子で士気が異常に高いらしい。
方々で炊き出しも行われて、少しずつ荷物をまとめて移動を開始する者も出始めていた。ガムドとサリルが仕事を開始したようだ。それからも僕は治療を続けていると、ナックル子爵から兵をまとめ上げ、街の護衛任務を開始したと言う。今は、公爵領と伯爵領の移住者を手伝っていると言う。この調子なら、王国軍が到着する前に何とかなりそうだ。
しかし、そんなに順調にいくものではないらしい。予想より早く、王国軍がこちらに向かっているというのだ。ハトリが報告しに来た。
「ロッシュ殿。我らも知らない経路を使われたようで、思ったよりも早くこちらに到着しそうです。おそらく数日といったところでしょう。それに、公爵と伯爵は王国軍に血祭りにあげられたようです」
つまり、元連合領内の住民には、公国に帰属するか否かを決めさせることにしてある。僕には、連合領を将来はともかく、短期的に開拓する意志はない。だから、残りたい者はそのまま居住を認めている。もちろん、公国からの支援は一切ない。
ここまで決まると、とりあえず一区切りだ。具体的な移住先などの決定は今すぐ決める必要性はないが、それは領主がいる場合だ。公爵領と伯爵領についてはすぐに移住を開始しなければならない。領主のいない領土ほど危険な場所はない。どのような暴動が発生するか分からない。今は王国軍の動きがわからない以上、鎮圧に時間を掛けるわけにはいかないのだ。
「ロイド子爵。公爵領と伯爵領の住民はどんな様子だ?」
「公爵領と伯爵領については、我らの兵が入り、一応は落ち着いている状況ですが、領主が不在と分かるとどうなるか分かりませんな。一応は、代々領主を務めていた一家ですから、その存在感は無視するのは難しいでしょう」
それもそうだな。なかなか難しい問題だ。クレイのように血族のつながりで統率をするという手段も使うのも出来ないだろう。僕が悩んでいると、ナックル子爵が話しかけてきた。
「イルス公。何を悩んでいるか、なんとなく察します。あまりお考えにならずとも、公爵領と伯爵領の住民を説得する方法は簡単だと思います」
ほお。ナックル子爵がなにやら解答を持ち合わせているようだな。
「食料です。食料を住民に配ればいいのです。もちろん、全員分を用意するのは大変でしょうから炊き出しなどで少量でもいいので提供してあげてください。そして、食料は公国に行けば、腹いっぱい食べれると言えばいいのです。そうすれば、住民の中で領都に残るものはほぼいないでしょう。それほど、住民たちは飢えているんです」
そういえばそうだ。僕が見た公爵領の領都民の姿を思い出した。領都の美しい景色の中で異色のような者たちがそこいらにいたことを。男女問わず、すべてのものがやせ衰え、生気を感じさせられない目を持ち、周りに一切興味を示すようなこともなかった。そういった者たちに、食料を与え、公国に希望があるように示せばよいとナックル子爵は言っているのだな。
「ナックル子爵。その助言に従い、住民たちの説得を進めてもらいたい。食料についてはこちらが責任を持って準備させよう。サリル!」
サリルが一歩前に出て、僕の側に寄ってきた。これから頼まれることの仕事の大きさに多少怯んでいる様子があったが、決意に溢れた目をしていた。
「よいか。公爵領と伯爵領で25万人もの人口がある。その者たちに、粥一杯でもいい。とにかく食料を配るのだ。その量だけでも、サノケッソの街にある食料の殆どが無くなってしまうだろう。それでも構わない。備蓄を全て開放せよ。合わせて、村に問い合わせて、余剰分を全て北に集めるように指示をしろ。食料は春の作付けで作れば良い」
「畏まりました。すぐにサノケッソの街に戻り、準備いたします。炊き出しの要員に、グルドさんの兵を使わせてもらいたいのですが、許可をいただけないでしょうか」
僕はグルドの方に顔を向けると、あまりいい顔をしていなかった。おそらく、今後の王国軍の事を考えてのことだろう。すると、ロイド子爵以下、元連合の領主が手を上げ、自分の部下を使うように頼み込んできた。僕はそれを許可した。
「それはありがたい。公国のものがウロウロするよりも連合の領主が動いてくれたほうが混乱は少ないだろう。とにかく、迅速に対応をしてもらいたい。僕としては、王国が到着する前に公爵領と伯爵領の住民の移動を開始したいと思っている」
すると、ガムドが僕に質問してきた。気になることは分かっている。住民たちの移住先についてだ。
「当面は、今作っている城塞都市への移住をしてもらうつもりだ。あの辺りはサノケッソの街まで平地が広がっていて、開拓には適している。水も豊富で、肥沃な土地だ。生産量も期待できる」
ガムドは僕の言ったことには特に異論はなかったようだ。むしろ、移動先が分かったので、移動の方法に頭を痛めているようだ。25万人の移動ともなると、簡単なことではないだろう。しかし、これを任せられるのはガムドしかいない。
一応は公爵領と伯爵領の移住については、サリルとガムド、それに連合の領主達で取り組むことになった。次は、気絶している公爵と伯爵の子飼い五千人についてだ。
「ロイド子爵。彼らは公爵と伯爵に対して忠誠は篤かったのか? 僕は彼らと公爵達との関係について無知だ。彼らも連合の住民だ。貴殿らの約定に従い公国に受け入れる事を考えているが、間接的に僕が主を奪ったようなものだ。恨んでいるものもいるかも知れない。そのような者たちを受け入れても良いものだろうかと悩んでいる」
僕がそういうと、ロイド子爵が不思議そうな顔をしていた。
「なんともイルス公は不思議な方だ。そのような弱点を敵だったものにすぐに晒すとは。私が未だ敵だったら、それを利用して公国に被害を与えるでしょう」
ロイド子爵はそれから少し笑った。なにやら皆が頷いていたが、僕には全く理解できなかった。わからないから聞くのに不思議なことなどあるのか?
「それについても問題ないでしょう。子飼いで大切にされていたのは事実ですが、彼らも人質を取られてただけの偽りの忠誠心でしたから。家族を開放すれば、イルス公国に恨みを持つどころか感謝をしてくれましょう。人質は、公爵領と伯爵領の郊外に幽閉されております。我々もその事実を知ったのは、公爵の屋敷でその事実を記した報告書を見たからなのです」
本当に公爵と伯爵はとんでもない奴らだ。王弟もそうだが、人質を取らなければ人を使うことが出来ないのだろうか。もっとも、後ろ暗いからこそ裏切りが怖いのだろうが。僕は、人質開放と子飼い五千人の対応についてはロイド子爵に委ねることにした。
残すはナックル子爵だ。
「ナックル子爵。貴殿には公爵領と伯爵領で軍を編成してもらいたい」
ナックル子爵は申し訳無さそうな顔をしていた。
「イルス公。軍を編成をするのは出来るとは思いますが、使い物になるかは分かりませんが。なにせ、公爵と伯爵は子飼いの者以外は扱いが酷かったですから。体力を失ったものたちも多いかと」
僕もその話は聞いた。しかし、今は兵として訓練を受けた者が一人でも必要なのだ。その者たちには、この連合領に住む者たちを守ってもらう必要がある。逃げる手助けでもいい。とにかく、そういう役割を担うものが一人でも必要なのだ。それには、軍の訓練を受けたものが適している。
「分かりました。おそらく二万人ほどは編成出来ると思います。彼らには元連合領の護衛任務を与えましょう。彼らにも食料の配給をお願いします」
僕はハトリに食料の手配を頼み、連合領の護衛を任せられる二万人の兵を作ることが出来た。これで、王国軍に集中することができそうだ。僕はハトリを呼んだ。すぐに僕の目の前に現れた。
「王国軍の動きについて、何か変化はあったか?」
「新たな動きは見られません。王国軍はまだ連合内での動きについて把握はしていないのでしょう。それと併せて報告があります。公爵と伯爵を発見することが出来ました。どうやら、王国軍の方向に逃げているようです。命令をしていただければ、捕縛なり暗殺なり、可能ですが」
どうしたものだろうか。王国軍は公爵と呼応する形で動いていると思われる。公爵と王弟との間の取り決めだけを見れば、そうとしか考えられない。だとすれば、王国軍と公爵が合流すれば、作戦が失敗したと気付くだろう。そうなれば、連合へ攻め込む利点は薄いはずだ。僕が連合から脱出している可能性が大きいからだ。
撤退を決めてくれれば、それで安心だ。しかし、攻めてくるとなると対応しなければならない。すでに連合に住む民は公国の民だ。全力で守らなければならない。王国軍は五万人程度だと言う。一方、我が軍は、グルドの兵五千人、領土護衛の兵を除いて、一万五千人で対応しなければならない。子飼いの五千人も加わってくれれば心強いが、今は期待は出来ないだろう。
僕は皆に各自の持ち場に付いてもらうことにした。混み合っていた空間が一気に人がいなくなり、僕とミヤだけが残った。
「ロッシュはどうするつもりなの? サノケッソの街まで戻る?」
「いや、僕は元公爵領の領都に向かうつもりだ。ロイド子爵が言うのに、病気が蔓延していると言うからな。僕の回復魔法を使って治すつもりだ。そういえば、シェラにも手伝ってもらいたいが、シェラはどこにいるんだ?」
すると、シラーがやってきた。
「シェラさんは、サノケッソの街に置いてきました。私達の速度について来れないですし、こう言っては何ですけど、戦場では役に立たないですから」
たしかにな。シェラは回復魔法は使えるが、攻撃能力は皆無だ。その判断は正しいな。しかし、今はその力が必要なのだ。僕はシラーにシェラを呼んでくるように頼んだ。それと引き続き、ミヤの眷属には王国軍の脅威が去るまではここに滞在してもらうことにした。
僕はミヤと眷属たちを連れ、公爵領の領都で治療を開始した。その後にシェラも合流して、治療速度を上げることが出来た。最初は疑っていた領民も回復することが分かると続々と治療にやってきた。公爵領だけでも数千人もの病人がおり、その全てを治療するのに数日を要した。それから伯爵領に移動して、同様に治療を進めていた。
すると、ロイド子爵から嬉しい知らせがやってきた。公爵の子飼いの兵五千人が公国への帰属を望んでいるというのだ。しかも、王国軍の進軍を阻止する為の軍にも参加してくれるようだ。家族を人質に取られ、公爵への怒りに満ちあふれている様子で士気が異常に高いらしい。
方々で炊き出しも行われて、少しずつ荷物をまとめて移動を開始する者も出始めていた。ガムドとサリルが仕事を開始したようだ。それからも僕は治療を続けていると、ナックル子爵から兵をまとめ上げ、街の護衛任務を開始したと言う。今は、公爵領と伯爵領の移住者を手伝っていると言う。この調子なら、王国軍が到着する前に何とかなりそうだ。
しかし、そんなに順調にいくものではないらしい。予想より早く、王国軍がこちらに向かっているというのだ。ハトリが報告しに来た。
「ロッシュ殿。我らも知らない経路を使われたようで、思ったよりも早くこちらに到着しそうです。おそらく数日といったところでしょう。それに、公爵と伯爵は王国軍に血祭りにあげられたようです」
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