爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第303話 オリバが戻ってきた

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 僕は街で残されていた堤防の設置と貯水池の構築、それと水路の接続などの仕事をシラーと共に終わらせることにした。水田周りのあぜ道の整備を住民が総出で行なったことで綺麗に区画させた水田地帯を作ることが出来た。冬から春先にかけて公国内の河川に堤防を築き、それの副産物でできる水田が大きく広がったおかげで米の生産が思った以上に期待できるようになった。

 僕達が工事がほぼ完了しようとした時に、元連合領からの移住民の第一陣が街に到着した。第一陣には建築関係に長けたものが優先的に移住が認められた。彼らの仕事はとにかく今後やってくる十万人規模の住民を受け入れるための住宅を建設することにある。

 そして、ゴードンの方から吉報がやってきた。オーレック領の鉱山の発掘が始まったというものだ。オーレック領は王国内でも随一の鉱石発掘量を誇っていたのだが、物流の構築がどうしてもできずに放置された悲しい土地なのだ。そこに対して七千人の人を送り、鉱山開発を進めてもらうことにしたのだ。物流については、北の街道の整備が半分しか終わっていない。

 オーレック領からサノケッソの街の向かうルートは、整備が完了しているのだが街に向かうルートは未だ馬車一台しか通れない細い道だ。しかも起伏が激しく、鉱石のような重量のあるものを運ぶにはとても耐えられるものではないだろう。それでも、鉱山開発が始まったと言っても一年近く出ないこともよくある話だ。今日明日という話ではないため、北の街道の整備はしばらく後になる予定だ。

 更にもう一つ。北の街道で偶然見つけた燃える石、石炭が露出している場所近くに村の建設が始まったというものだ。石炭は今後の公国において必要となる重要資源の一つだ。特に鉄の加工をするためにはこれ以上のない資源となる。今は木炭でなんとかなっているが、現状の消費量を支えるのが限界で今以上の量産は難しいというのだ。その代替として利用されるのが石炭ということになる。

 ここには元連合領の騎士爵領から五千人が移住している。彼らは元連合領で鉱石発掘を主要な産業としており、鉱山開発の熟練者が多数いる。公国では稀有な存在だ。石炭は露出しているおかげで、おそらく発掘が始まればすぐに物流に乗せなければならないだろう。しかし、石炭をそのまま使うということはしない。コークスと言われるものに変えなければならない。そのための設備が必要となるのが……どうやるんだろうか?

 こういうことはスタシャに相談するのがいいだろうな。村に戻ったら聞いてみるか。

 南の地での工事が全て完了し終えた頃、オリバがようやく戻ってきた。数日で戻るという話だったが、一月近くも戻ってこなかったのだ。

 「オリバ。連絡もしないで一体どこに行っていたのだ?」

 「申しわけありません。ロッシュ様。私も身を固めるので、その報告を父にしてまいりました」

 「何!? フェンシ団の頭領が生きていたのか!! それは良かったな。僕もぜひとも会いたいものだ」

 しかし、オリバの表情はそれほど明るいものではなかった。

 「そうではありません。故郷に戻り、父の墓の前で、です。フェンシ団の顛末を伝えに行ったついでですが。やはり故郷の皆もフェンシ団の顛末を気になっていたみたいで」

 「そうか。早合点をしてしまった。すまない。しかし、故郷に行くというのならなぜ一言、言ってくれなかったのだ。心配するではないか」

 「私の最後の旅ですから。なんとなく気ままにしたかったのです。心配させたことはお詫びしますが」

 悪びれる様子もないな。まぁ、無事ならばいいか。それよりも気になることがある。後ろにいる人たちは誰だ? 見渡す限り、五百人はいそうだな。しかも、何人か肌が浅黒い者も見える。なんとなく、分かるんだが……。

 「全員、故郷の者たちです。私がロッシュ様の婚約者になると聞いたら是非公国に帰属したいと言うので連れてきました。もしかして、良くなかったですか?」

 別に悪くはないのだが、オリバの行動力には驚かされるな。

 「オリバの故郷のものならば受け入れぬわけにはいかないが……問題はないだろうな? この者たちが故郷からいなくなれば困るものも多いのではないか?」

 「ご心配には及びません。ここにいるのが故郷にいた全員なのですから。困るものなどいるわけがありません」

 「そうか……」

 ここにいる者たちを見ると、痩せている者が多く、着ている服もボロばかりだ。まずは食事を取らせたほうがいいだろう。オリバには荷を下ろしたら、すぐに炊き出しの準備を手伝うように命じた。オリバはハッとした様子ですぐに屋敷に入っていった。

 「この中で代表者はいるのか?」

 すると集団の中からボロを着た壮年の女性が近寄ってきた。この女性が代表者ということか。

 「僕はロッシュだ。この公国で主をしている。よくぞ、公国にやってきた。君らを歓迎することを約束しよう。さて、君たちにこれから食事を用意しようと思っている。食事の用意を手伝えるものがいたら名乗り出てくれ。すまないが、手伝ってもらうことになる」

 「滅相もございません。急に押しかけてきた我らに食事を施してくれるなど、ご迷惑ではないでしょうか」

 「迷惑など、気にすることはないぞ。君らは公国の民となったのだ。それとも食事を取りたくないというのであれば無理にとは言うつもりはないが……」

 その女性は恐縮した様子で頭を下げてきた。どうやら僕の言葉は嫌味に聞こえてしまったかも知れない。そこまで恐縮されるとは。

 「すまなかったな。そんなつもりはなかった。とりあえず、人数を出してくれ」

 そう言っていると、オリバが屋敷から戻ってきた。

 「あら? まだこんなところにいたんですか? それに……お母さん。ロッシュ様と何を話していたの?」

 なに? この女性がオリバの母親だと。確かに目元が似ている気もするが。僕はオリバの母親に向き直した。

 「気付かなかったとはいえ、申しわけなかった」

 「お気になさらないでください。親と呼べるようなことは何もしてやれませんでしたから。むしろ、オリバには世話をかけっぱなしで」

 そういうとオリバの母が急に涙を流し始めた。オリバの顔を見ても苦笑いをするだけだ。とにかく、食事だ。腹が満たさされば、それだけで幸福を満喫できるものだ。僕はすぐに炊き出しの準備に取り掛かった。食材は屋敷にあるものをすべて出し、足りないものはシラーに調達をお願いした。

 五百人分というのは相当な量だが、餓えているものに大量の食事は厳禁だと聞いたことがある。体への負担が大きいからのようだ。そのため、米で作った粥を作りそれを振る舞うことにした。最初は米という未知なる食べ物に抵抗を示していたものもいたが、やはり空腹には勝てないのか、瞬く間に用意していた粥が全て平らげてしまった。

 それでも足りないというものには追加で炊き出しを行い、それを皆が満足するまで続けられた。結局、数時間も費やすことになったが、彼らの体調を考えればこれでも性急だったかも知れない。腹を満たした者たちは屋敷の庭先に横たわり、眠りにつくものが出ていた。余程疲れていたんだろうな。これには、オリバも僕に謝罪をしてきたが、仕方がないことだろう。しかし、庭先に五百人もの人を置いておくわけにはいかないな。

 「オリバとオリバの母上。今後について話し合いをしたいから屋敷に入ってくれ」

 二人は頷き、屋敷の応接室に案内をした。するとオリバの母親が真っ先にお礼を言い始めた。だが、僕はその言葉を止めさせた。

 「その礼は不要だ。皆には公国の民になるという意志があると聞いたからこそ、食事を提供したに過ぎない。それに無償というわけではない。知っての通り、公国では働くことを義務としている。衣食住はその対価だ。だから、今後しっかりと公国のために働いてくれさえすれば、それでいい。まずはそこを理解してくれ」

 それでもお礼しようとする気持ちが収まらないのか、言葉には出さないが頭を下げることをやめる気がないようだ。困ったものだ。とりあえず、話を進めよう。

 「さて、今後についてだが五百人と言ったが、皆に特技のようなものはないか? 農業が得意とか、鉱石採掘が得意とか。なんでもいいのだ」

 「そうですね。私達の村では獣の革を王都に卸していました。そのため、革をなめす職人なら多くいます。それと人数は少ないですが、革製の靴を作れるものもいます。試しに作ってみたところ、王都で評価され随分と作らせていただきました」

 靴、だと!? それは本当か!! 大人気なく僕は身を乗り出して、詰問してしまった。オリバにも確認したところ、どうやら本当のようだ。それは素晴らしい。こんな形で職人が公国にやってきてくれるとは。しかし、と付け加えてきた。

 何でも王都からの靴の仕事が無くなってから十年近く経つようで、職人の腕もかなり落ちてしまっているというのだ。革をなめす職人も同様のようだ。たしかに、普通に生活するのに革製品というのはさほど使うものではないからな。あれば、便利というものに過ぎない。

 素材は獣と言っていたな。獣か……もしかして、魔獣でも大丈夫かな? 魔獣ならば狩りが容易だし、一頭から取れる量が多い。もちろん、狩りにはフェンリルを使うつもりだ。

 「どうであろう。皆で村に来る気はないか? 強制はするつもりはない。この辺りは移住したばかりの者たちだけだ。君らからすれば、ここのほうが住みやすいかも知れない。しかし、村のほうが素材を手に入れやすい。しかも、革のなめしというのは狩りをしてからなるべく早いほうがいいと聞いたことがあるが?」

 「その通りです。狩られた獣をすぐに処理をしなければ、良い革を取ることは出来ません……分かりました。皆にも伝え、ロッシュ公のご意向に従いたいと思っております」

 村に革の職人集団がやってくる。これでもう一つ公国の特産品を増やすことが出来たな。オリバもとても嬉しそうな表情だった。これからは母親と近くで暮らせることが嬉しいのかも知れないな。

 「オリバ。この者たちを連れてきてくれたことを礼を言うぞ。そして、明日には村に向かうぞ。ここでの仕事は全て終わってしまったからな」

 それについてオリバは難色を示してきた。

 「ロッシュ様。即断即決で即行動というのは素晴らしいと思いますが、皆は憔悴しきっているのでとても長旅には耐えられそうにありません。しばらく街で休養を取ってからではいけないでしょうか?」

 「それについては問題ない。すでに船を用意してもらっている。船ならば村などあっという間だぞ」

 船? と言いたげな表情で首を傾げていた。そして次の日、僕達は三村から船に乗り五百人と共に村に向かった。
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