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第305話 リードの症状
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僕達が村に到着すると先触れを出していたおかげでゴードンが出迎えにやってきた。なにやらゴードンと村で会うのが久々なような気がして、不思議な感覚だ。以前はこれが当り前だったのにな。
「ロッシュ村長。おかえりなさい。ご連絡は頂いてこちらで準備できる範囲でやらせてもらいました。オリバさんの故郷の方々についてはこちらで対処いたしますのでロッシュ村長はまっすぐ屋敷にお戻りください。エリスさん達が首を長くして待っておりますよ」
僕は頷き、後ろで列を作っているオリバの故郷の者たちの方を向いた。
「皆のもの。ここまでよく頑張ってくれた。ここが村だ。君たちを村をあげて歓迎する準備が出来ているようだ。ここからはここにいるゴードンが万事うまくやってくれる。皆はゴードンに従って行動してくれ。今後については、今度ゆっくりと話をしよう。まずはゆっくりと体を休め、旅の疲れを癒やしてくれ」
皆からどよめきのような声があり、安堵したような表情を浮かべるものが多かった。緊張の糸が切れたかのように力の抜けた表情をした者もいた。ここまで頑張ってくれたものだな。僕はゴードンにこれからのことを任せ、明日屋敷に来るように伝えた。
僕はシラーとオリバを連れて屋敷に向かうことにした。すでに夕暮れ時となっていたためか、屋敷からの出迎えはなかった。ちょっと寂しい。自警団には一部を残して解散を告げた。問題はないとは思うが、村外での活動をする際、必ず宿泊場所には自警団を配置することが習慣化してしまったため、村でも自警団に警護をしてもらうことになっている。
フェンリルのハヤブサは屋敷の定位置に戻っていき、僕達は屋敷に入った。一月ぶりだったが、何ら変わった様子もなかったが、いくらなんでも玄関に誰も来ないのはおかしいな。中に入っていくと、居間にも誰もいない。一体どういうことだ?
僕達が屋敷内を探索しようとすると皆の私室がある一角から誰かドアを開けた音が聞こえてきた。その後からこちらに向かってくる足音が聞こえ、姿を現したのはマグ姉だった。少し疲れたような表情を浮かべながら、僕達の姿を見て驚いた様子だった。
「びっくりした!! とにかく、良かったわ。すぐに来てちょうだい」
そういって、僕の手をグイグイ引っ張っていく。この部屋はリードの部屋だな。マグ姉に促されるままに部屋に入ると苦しそうにしているリードがベッドの上にいた。僕は動転して、すぐにリードに歩み寄った。手を握ると汗ばんでいて、体調が悪そうだ。こういう時は回復魔法を……。ふと、周りを見渡すとシェラの姿もあった。シェラがいるのに回復魔法を掛けないわけがない。つまり意味がないということだ。そうであれば、マグ姉の薬か。マグ姉に聞いたが、芳しい答えが返ってこなかった。
「私も考えられる薬を上げてみたんだけど、効果がなかったのよ。これ以上投与すればお腹の赤ちゃんに影響が出てしまうかも知れないわ。正直、お手上げよ」
なんてことだ。魔法も薬も役に立たないなんて。こんなに苦しんでいるのに何もしてやれないのか。僕はリードの手を握り、なんとか苦しみが和らぐように願っているとシェラが僕の方に手を置いてきた。
「旦那様。リードはおそらくエルフ特有のものです。私達よりもエルフのほうが詳しいと思いますよ」
なるほど。その通りだ。僕はすぐに身支度を整えエルフの里に向かおうとしたが、シェラに止められてしまった。僕は少し苛立ちのある顔を浮かべシェラを見つめた。
「そんなに慌てなくてもエルフの里にはすでに人をやっていますから。もう少しで連絡が入るはずですから、少し待ちましょう。旦那様は外から返ってきたばかりなのですから少しは身ぎれいにしてきてください。そちらの女性もご一緒に入浴してくるといいですよ」
そちらの女性とはオリバのことだ。オリバはこのような状況では前に出ることはなく、神妙な態度をしている。確かに僕達の姿はお世辞にも綺麗とは言えない。僕はシェラの言うことに従って入浴することにした。ただすぐに部屋に戻りたかったので、露天風呂に入ることにした。
すぐに湯が沸き、足早に露天風呂に入った。シラーもオリバも一糸纏わぬ姿で入浴している。いつもならば、二人に裸姿に心躍るものだが、そんな気分にはなれない。オリバもシラーもよく分かっているのか、一言も話さずに旅塵を落としていく。体が温まり、すぐに出ようとすると屋敷のほうが騒がしくなった。どうやらエルフの里に向かっていたものが戻ってきのだろう。
二人には先に行くことを告げ、着替えを素早く済ませ足早に部屋に向かうとミヤとミコト、オコトが立っていた。どうやらこの三人がエルフの里に行っていたようだ。ミヤも身籠っているのに無理をする。ミヤが僕の姿を見るとちょっと安心したような表情を浮かべ、エルフの里からの伝言を伝えてくれた。
「エルフの里でリリに会ってきたんだけど。今のままでは子供に影響が出るかも知れないって。エルフの里でリードを受け入れる事ができるらしいわ。それで……」
僕はミヤの言葉を聞いて居ても立ってもいられなかった。すぐにリードをエルフの里に連れていかなければ。苦しそうにしているリードを担ぎ、皆の制止を振り切り、エルフの里に向かっていくことにした。その後ろにシラーが付いてきた。服は汚れたもので、髪は濡れたままだ。僕が急いで出ていったので慌てて付いてきたんだろう。済まないな。僕はハヤブサに跨り、エルフの里に急行した。
エルフの里に到着するとすぐにリリの屋敷に案内するエルフがやってきた。案内してくれるエルフはリードの姿を見て、温かい目線を向けてきた。どうも緊迫した状況になっているのは僕だけのようだ。もしかして、僕が考えているような状況ではないのか? 少し落ち着きを取り戻し、リードの姿を見ると未だに苦しそうな顔を浮かべていた。やはり、緊迫しているではないか。
リリの屋敷に着くと、中を案内するエルフに変わったがそのエルフもリードに視線を向けると温かな目をしていた。何がなんだかわからないな。とにかくリリに会えば分かることだ。リリが待っているという応接室に到着するとリリが僕達を歓迎してくれた。リリのお腹も見ないうちに大きくなっている。
「我が君。久しぶりじゃの。先程、ミヤと人間が二人見えたが、急がなくて良いと伝えたはずなんじゃが」
どういうことだ?
「リードの症状はエルフの出産前によくあるものじゃ。別に病気でもないし、放っておけば勝手に治るものじゃ。一応薬も手渡したはずなんじゃが……その顔だと、知らずに飛び出してきたというわけじゃな。なんともリード思いの我が君じゃ。リードは幸せ者じゃな」
……思い起こせば、確かにミヤは何かを続けて言おうとしていたな。なんという不覚。恥ずかしすぎて逃げ出したくなるよ。
「まぁ折角来たんじゃ。ゆっくりとしていくがよい。妾もこの体ゆえ、どこにも行けずに暇を持てましていたところなのじゃ。そうだ。前から一ヶ月経っているから取り出していくか?」
魔石のことか? それは願ってもないことだ。魔石を使いたい場面は無限にある。ただ量が限られている事もあって歯がゆい思いを何度もしてきた。ふと、スタシャのことを思い出した。そういえば、スタシャもことあるごとに魔金属を催促してくるが、同じような思いだったのだろうか。今度からはもっと優しく接してやろう。与える量は変えないけど。
僕はリードを案内されたベッドに横たえると、リリの付き人のエルフがリードに薬を与えている。何の薬かは分からないが、リードの症状をかなり抑えている様に感じた。久々に見た静かな寝顔を見て、僕はホッと安堵した。付き人がリードを看病してくれると言うのでリリのもとに向かった。
魔石取りはいつものようにリリの私室で行われる。なんで、私室でやる必要があるのかを聞くと結構な真顔で答えられた。
「そんなもの、秘め事のようで気分が乗るからに決まっておるじゃろ」
そうか。リリも随分と茶目っ気があるもんだな。てっきり、秘密を隠すためとか考えちゃったけど、考えてみたらエルフの里内で隠す必要性もないのか。僕はいつものようにベッドに横になり、魔石を取り出してもらう。眠りにつく前にリリから、おお、ということを聞こえたのが最後だった。
気がつくと、ベッド横にある椅子に持たれているリリがいた。初めて見るリリの寝顔に僕はつい凝視してしまった。こうやってみるとリードと変わらない普通の女性のようだ。とても1000歳を超えているとは信じがたい。魔族という種族の性質に驚くばかりだ。僕があまりにも凝視しているせいか、リリが目を覚ました。
「我が君。目覚めるのが早かったの。まだ三十分と経っていないではないか。以前は二時間近く目覚めなかったのに、いやはや我が君の体は不思議なことばかりじゃな」
そういってリリは前回よりも少し大きな魔石を僕に渡してきた。僕がその魔石をどのように使うか思案を巡らせていると、リリはため息を付いた。
「我が君は能天気じゃな。この魔石の大きさは人間としては異常な大きさじゃ。しかも成長速度が早すぎる。このまま行けば、人間という枠を超えてしまうかもしれん。心配にはならんのか?」
そんなことを言われても僕は目の前の魔石を見ても何も感じない。人間の枠を超えると言われても、ふむ……僕はリリに告白をすることを決意した。もしかしたら、原因は前世があるという特異性があるからかもしれない。僕が話し始めるとリリは最初こそ驚いていたが、ふむふむと頷いて静かに聞いていた。
「そういうことがあるんじゃな。余人ならば信じぬだろうが、妾は合点がいった。我が君の命の脈動が明らかに人間のものではない。妾は知らぬが神にも通ずるものがあるのやも知れぬ。我が君ならば、妾と共に生きるのにふさわしいのやも知れぬな。とはいえ、我が子が育ってからのことじゃがな。我が君には待ってもらわねばならぬが百年や二百年は簡単に待ってくれるじゃろ?」
僕が告白した内容にその返しをしてきたのはリリが初めてだ。僕の寿命がかなり長いようなことを言ってきたが、とても信じられないな。悩ましいことをいってくれるな。とはいえ、リリと共に暮らす未来が何百年後に待っているという思えば、嬉しいか。僕は生きているか分からないから無責任にも、リリに待っているぞと告げた。
リリはなんだかすごく嬉しそうにありがとう、と告げるだけだった。それからしばらく僕はエルフの里に滞在した。リードはここにいる限り落ち着きを保つことが出来るし、なによりも戻った時に症状が戻るのを見たくなかったからだ。数日が経った時、僕は相変わらずリリと共に話をしていると、リードに付いてくれていたエルフが僕達のところにやってきた。若干、不安を感じながらもそのエルフを見つめると、出産の兆しがあります、とだけ告げてきた。
「ロッシュ村長。おかえりなさい。ご連絡は頂いてこちらで準備できる範囲でやらせてもらいました。オリバさんの故郷の方々についてはこちらで対処いたしますのでロッシュ村長はまっすぐ屋敷にお戻りください。エリスさん達が首を長くして待っておりますよ」
僕は頷き、後ろで列を作っているオリバの故郷の者たちの方を向いた。
「皆のもの。ここまでよく頑張ってくれた。ここが村だ。君たちを村をあげて歓迎する準備が出来ているようだ。ここからはここにいるゴードンが万事うまくやってくれる。皆はゴードンに従って行動してくれ。今後については、今度ゆっくりと話をしよう。まずはゆっくりと体を休め、旅の疲れを癒やしてくれ」
皆からどよめきのような声があり、安堵したような表情を浮かべるものが多かった。緊張の糸が切れたかのように力の抜けた表情をした者もいた。ここまで頑張ってくれたものだな。僕はゴードンにこれからのことを任せ、明日屋敷に来るように伝えた。
僕はシラーとオリバを連れて屋敷に向かうことにした。すでに夕暮れ時となっていたためか、屋敷からの出迎えはなかった。ちょっと寂しい。自警団には一部を残して解散を告げた。問題はないとは思うが、村外での活動をする際、必ず宿泊場所には自警団を配置することが習慣化してしまったため、村でも自警団に警護をしてもらうことになっている。
フェンリルのハヤブサは屋敷の定位置に戻っていき、僕達は屋敷に入った。一月ぶりだったが、何ら変わった様子もなかったが、いくらなんでも玄関に誰も来ないのはおかしいな。中に入っていくと、居間にも誰もいない。一体どういうことだ?
僕達が屋敷内を探索しようとすると皆の私室がある一角から誰かドアを開けた音が聞こえてきた。その後からこちらに向かってくる足音が聞こえ、姿を現したのはマグ姉だった。少し疲れたような表情を浮かべながら、僕達の姿を見て驚いた様子だった。
「びっくりした!! とにかく、良かったわ。すぐに来てちょうだい」
そういって、僕の手をグイグイ引っ張っていく。この部屋はリードの部屋だな。マグ姉に促されるままに部屋に入ると苦しそうにしているリードがベッドの上にいた。僕は動転して、すぐにリードに歩み寄った。手を握ると汗ばんでいて、体調が悪そうだ。こういう時は回復魔法を……。ふと、周りを見渡すとシェラの姿もあった。シェラがいるのに回復魔法を掛けないわけがない。つまり意味がないということだ。そうであれば、マグ姉の薬か。マグ姉に聞いたが、芳しい答えが返ってこなかった。
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「旦那様。リードはおそらくエルフ特有のものです。私達よりもエルフのほうが詳しいと思いますよ」
なるほど。その通りだ。僕はすぐに身支度を整えエルフの里に向かおうとしたが、シェラに止められてしまった。僕は少し苛立ちのある顔を浮かべシェラを見つめた。
「そんなに慌てなくてもエルフの里にはすでに人をやっていますから。もう少しで連絡が入るはずですから、少し待ちましょう。旦那様は外から返ってきたばかりなのですから少しは身ぎれいにしてきてください。そちらの女性もご一緒に入浴してくるといいですよ」
そちらの女性とはオリバのことだ。オリバはこのような状況では前に出ることはなく、神妙な態度をしている。確かに僕達の姿はお世辞にも綺麗とは言えない。僕はシェラの言うことに従って入浴することにした。ただすぐに部屋に戻りたかったので、露天風呂に入ることにした。
すぐに湯が沸き、足早に露天風呂に入った。シラーもオリバも一糸纏わぬ姿で入浴している。いつもならば、二人に裸姿に心躍るものだが、そんな気分にはなれない。オリバもシラーもよく分かっているのか、一言も話さずに旅塵を落としていく。体が温まり、すぐに出ようとすると屋敷のほうが騒がしくなった。どうやらエルフの里に向かっていたものが戻ってきのだろう。
二人には先に行くことを告げ、着替えを素早く済ませ足早に部屋に向かうとミヤとミコト、オコトが立っていた。どうやらこの三人がエルフの里に行っていたようだ。ミヤも身籠っているのに無理をする。ミヤが僕の姿を見るとちょっと安心したような表情を浮かべ、エルフの里からの伝言を伝えてくれた。
「エルフの里でリリに会ってきたんだけど。今のままでは子供に影響が出るかも知れないって。エルフの里でリードを受け入れる事ができるらしいわ。それで……」
僕はミヤの言葉を聞いて居ても立ってもいられなかった。すぐにリードをエルフの里に連れていかなければ。苦しそうにしているリードを担ぎ、皆の制止を振り切り、エルフの里に向かっていくことにした。その後ろにシラーが付いてきた。服は汚れたもので、髪は濡れたままだ。僕が急いで出ていったので慌てて付いてきたんだろう。済まないな。僕はハヤブサに跨り、エルフの里に急行した。
エルフの里に到着するとすぐにリリの屋敷に案内するエルフがやってきた。案内してくれるエルフはリードの姿を見て、温かい目線を向けてきた。どうも緊迫した状況になっているのは僕だけのようだ。もしかして、僕が考えているような状況ではないのか? 少し落ち着きを取り戻し、リードの姿を見ると未だに苦しそうな顔を浮かべていた。やはり、緊迫しているではないか。
リリの屋敷に着くと、中を案内するエルフに変わったがそのエルフもリードに視線を向けると温かな目をしていた。何がなんだかわからないな。とにかくリリに会えば分かることだ。リリが待っているという応接室に到着するとリリが僕達を歓迎してくれた。リリのお腹も見ないうちに大きくなっている。
「我が君。久しぶりじゃの。先程、ミヤと人間が二人見えたが、急がなくて良いと伝えたはずなんじゃが」
どういうことだ?
「リードの症状はエルフの出産前によくあるものじゃ。別に病気でもないし、放っておけば勝手に治るものじゃ。一応薬も手渡したはずなんじゃが……その顔だと、知らずに飛び出してきたというわけじゃな。なんともリード思いの我が君じゃ。リードは幸せ者じゃな」
……思い起こせば、確かにミヤは何かを続けて言おうとしていたな。なんという不覚。恥ずかしすぎて逃げ出したくなるよ。
「まぁ折角来たんじゃ。ゆっくりとしていくがよい。妾もこの体ゆえ、どこにも行けずに暇を持てましていたところなのじゃ。そうだ。前から一ヶ月経っているから取り出していくか?」
魔石のことか? それは願ってもないことだ。魔石を使いたい場面は無限にある。ただ量が限られている事もあって歯がゆい思いを何度もしてきた。ふと、スタシャのことを思い出した。そういえば、スタシャもことあるごとに魔金属を催促してくるが、同じような思いだったのだろうか。今度からはもっと優しく接してやろう。与える量は変えないけど。
僕はリードを案内されたベッドに横たえると、リリの付き人のエルフがリードに薬を与えている。何の薬かは分からないが、リードの症状をかなり抑えている様に感じた。久々に見た静かな寝顔を見て、僕はホッと安堵した。付き人がリードを看病してくれると言うのでリリのもとに向かった。
魔石取りはいつものようにリリの私室で行われる。なんで、私室でやる必要があるのかを聞くと結構な真顔で答えられた。
「そんなもの、秘め事のようで気分が乗るからに決まっておるじゃろ」
そうか。リリも随分と茶目っ気があるもんだな。てっきり、秘密を隠すためとか考えちゃったけど、考えてみたらエルフの里内で隠す必要性もないのか。僕はいつものようにベッドに横になり、魔石を取り出してもらう。眠りにつく前にリリから、おお、ということを聞こえたのが最後だった。
気がつくと、ベッド横にある椅子に持たれているリリがいた。初めて見るリリの寝顔に僕はつい凝視してしまった。こうやってみるとリードと変わらない普通の女性のようだ。とても1000歳を超えているとは信じがたい。魔族という種族の性質に驚くばかりだ。僕があまりにも凝視しているせいか、リリが目を覚ました。
「我が君。目覚めるのが早かったの。まだ三十分と経っていないではないか。以前は二時間近く目覚めなかったのに、いやはや我が君の体は不思議なことばかりじゃな」
そういってリリは前回よりも少し大きな魔石を僕に渡してきた。僕がその魔石をどのように使うか思案を巡らせていると、リリはため息を付いた。
「我が君は能天気じゃな。この魔石の大きさは人間としては異常な大きさじゃ。しかも成長速度が早すぎる。このまま行けば、人間という枠を超えてしまうかもしれん。心配にはならんのか?」
そんなことを言われても僕は目の前の魔石を見ても何も感じない。人間の枠を超えると言われても、ふむ……僕はリリに告白をすることを決意した。もしかしたら、原因は前世があるという特異性があるからかもしれない。僕が話し始めるとリリは最初こそ驚いていたが、ふむふむと頷いて静かに聞いていた。
「そういうことがあるんじゃな。余人ならば信じぬだろうが、妾は合点がいった。我が君の命の脈動が明らかに人間のものではない。妾は知らぬが神にも通ずるものがあるのやも知れぬ。我が君ならば、妾と共に生きるのにふさわしいのやも知れぬな。とはいえ、我が子が育ってからのことじゃがな。我が君には待ってもらわねばならぬが百年や二百年は簡単に待ってくれるじゃろ?」
僕が告白した内容にその返しをしてきたのはリリが初めてだ。僕の寿命がかなり長いようなことを言ってきたが、とても信じられないな。悩ましいことをいってくれるな。とはいえ、リリと共に暮らす未来が何百年後に待っているという思えば、嬉しいか。僕は生きているか分からないから無責任にも、リリに待っているぞと告げた。
リリはなんだかすごく嬉しそうにありがとう、と告げるだけだった。それからしばらく僕はエルフの里に滞在した。リードはここにいる限り落ち着きを保つことが出来るし、なによりも戻った時に症状が戻るのを見たくなかったからだ。数日が経った時、僕は相変わらずリリと共に話をしていると、リードに付いてくれていたエルフが僕達のところにやってきた。若干、不安を感じながらもそのエルフを見つめると、出産の兆しがあります、とだけ告げてきた。
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