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第328話 船大工
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温泉旅行から帰ってきてからしばらくのこと。忍びの里から報告がやってきた。テドの同僚が王国内で見つかったという報告だった。まずは話を整理しよう。新村で船大工をしているテドはかつて王国内に工房を構え、王国のために船を作っていたのだ。しかし、船の需要がなくなり、船大工として食べることが出来ず工房内では二つの意見に割れた。
新興の食料が豊富と言われている公国に向かう一派と王国に頼る一派だ。当時は公国とは名乗っておらず、存在するかも怪しいというほど小規模な領土に過ぎないと言う認識だ。今にして思えば。、テドはよく公国に身を寄せようと決意したものだな。意見が分かられた二つの団体は、それぞれ東西に別れて旅を始めた。それから王国に向かった者達の音信は途絶えてしまった。
テドは前々より別れた船大工達を呼び寄せることに積極的だった。僕にも何度も頼み込んで来たのだが、当時は諜報機関もなく、熟練の斥候部隊もない。ましてや忍びの里の存在すら知らなかった。そのような状況では僕に出来ることは何もなかった。
しかし状況は一変した。特に忍びの里との交流が大きい。このおかげで王国内の情報が飛躍的に早く手に入れることが出来るようになったからだ。僕はテドからの依頼についても忍びの里の者たちには伝えていたが、その連絡はしばらくなかった。それが今回、報告が上がってきたのだ。これが良い予兆なのか、悪い予兆なのかは分からない。
話を報告に戻そう。忍びの里によると、船大工達は王国の造船所で働いているというのだ。何をやっているのかと言えば、当然、造船作業だ。テドが言うには彼らの技術は非常に高く、大型船を作らせれば王国でも随一の腕を持っているというのだ。テドが言うのだから、そこは間違いないだろう。となると、彼らの希望が叶い、王国での活路を見出したということか。ならば、こちらに連れてくるということは難しいだろうな。
僕が早合点をしていると、報告をもたらしてくれた者が待ったを掛けて来た。どうやら、船大工達は王国に対してかなり不満を持っている様子だそうだ。というのも、彼らが造船所で働き出したのは最近のことらしい。それまでは何度も王国に掛け合っても、全く相手にされず相当ひもじい思いをしていたようだ。
そんな彼らにようやく脚光を浴びる出来事があった。王国が造船業に乗り出すということだ。目的はまだ分からないが、とにかく造船を急がせているようだ。そのため、船大工達が駆り出され昼夜を問わず作業をさせられているようだ。
彼らとて一流の職人だけに昼夜を問わずというのは然程不満はないらしいが、待遇がとにかく酷いようだ。粗末な食事と未来の保証が全く無いところだ。しかも船大工たちにも家族がいるのだが、王国の常套手段が使われていた。人質として隔離されているというのだ。忍びの里からの報告はそこまでだった。
王国は相変わらず卑劣な行いをする。しかし、そのおかげで有能な者たちが王国から見切りを付けやすくなっている。船大工という貴重な人材を大事に扱わない国に未来はないな。僕は自警団に、すぐにテドを呼び出すように命令し、忍びの里には引き続き情報収集を頼んだ。その時、ひとつだけ頼みごとをした。公国への帰属の意志の確認だ。それだけが今、分かればいい。
さて、どうなることやら。テドは次の日早くにやってきた。相当急いでやってきたのか、顔が酷いことになっているな。僕はテドにあらかたの事情を話すことにした。
「奴らが無事でよかった。しかし、なんてゲスな国なんだ。ロッシュ公、奴らをなんとか救い出してやれないでしょうか? この通りです。なんとかご尽力いただけませんか」
そういって、テドは深々と頭を下げた。テドの前々からの頼みだ。無下にするわけがない。
「頭を上げてくれ。テドにそうしてもらうために来てもらったのではない。すでに船大工たちには手のものを常に付けている。家族についてもこちらで把握している。後は彼らが公国に来る意志があるかだ」
「そんな悠長な。来る意志があるに決まっているじゃないですか。この間に奴らに何かあったらどうするんです!!」
「テド。勘違いするなよ。公国は常に帰属の意志を確認してきた。それは責任を持たせるためだ。それがあるゆえ、皆が一丸となった公国のために貢献しているだと思っている。意志の確認は絶対条件なのだ。それとも何かあった時、テドが責任を取るか?」
テドは悔しそうに歯噛みしていたが、何も言い返してこなかった。
「そう慌てなくてもいい。さっきも言ったが、こちらで情報を抑えている。何かあれば、その時だ。一応、意思が確認されたときの話をしよう。こちらとしては全力で救い出すつもりだ。といっても大規模な軍を動かすことは王国を無駄に刺激することになる。今は王国との交戦は避けなければならない」
テドは、じゃあ……と僕に詰め寄るように声を出してきた。それを制止し、話を続けた。
「公国の全力はなにも軍事だけではないぞ。隠密に長けた者たちもいるのだ。彼らに仕事を任せるつもりだ。最後の手段として軍を出すこともあるが。おそらく、隠密部隊だけでも成功率は非常に高いだろう」
「そんな者が公国に。いや、驚きました。それならば安心してお任せします。それで……もし進展があったら私に話を……」
「ああ、分かっている。逐一伝えよう。それでいいか?」
テドは感謝を告げて、屋敷を後にした。それから更にしばらくすると、帰属の意思ありという報告がもたらされた。僕はハトリを呼び出した。それにオコトとミコトにも話を聞いたほうがいいな。
「三人共、急に呼び出して済まない。実は王国から人を救出してほしいのだが、その仕事を里に一任しようと思う」
それから今まで得た情報を三人に伝えた。
「どうだ? 成功しそうか?」
それに対して口を開いたのはミコトだった。ハトリとオコトが黙っているところを見るとミコトが最も詳しいのだろう。
「ロッシュ殿。この作戦については、どれほど本気で当たる予定ですか?」
「もちろん全力だ。彼らの一人も欠けずに公国を上げて支援するつもりだ」
「それならば、成功率は非常に高いと思います。ただ、里は諜報に長けたものが多いので脱出させることはさほど難しくはないでしょう。しかし、王国内から公国までの移動が難しいです。それを軍に手助けしてもらえばいいと思います」
やはり軍を出さなければならないか。僕は地図をテーブルの上に広げた。里の尽力でどの程度の場所まで逃げられるかを聞くと、ミコトはすぐに地図上の一点を指差した。やはり、そこまでか。王国が実効的な支配をしている場所というのはかなり狭いのだ。その境界となる場所に峠がある。そこまでは比較的逃げ隠れする場所が豊富で、地理に明るい里の者たちならばなんとか逃げ切ることができる。峠までは。それからは視界が広がり、隠れる場所が少ない。そこで追撃を受けたら終わりだ。
とにかく軍を動かすということになればガムドの知恵が必要だな。三人には礼を言って解散することにした。代わりにやってきたガムドに今回の一件について相談することにした。
「なるほど。船大工の救助ですか。それは公国にとってはなんとしても成功させたいところですな。分かりました。すぐに第一軍のライル将軍と相談をして軍を派遣する準備を整えさせましょう。頃合いについては、追って連絡をいただければ」
なんとすぐに軍を派遣することで決まった。これが公国軍か。僕は忍びの里にハトリを通じて、救出作戦を開始してもらった。それから僕からガムドに軍の権限が移り、軍の方でも作戦が開始された。
二週間。その間にすべてが決着していた。結論から言えば、船大工達とその家族は無事に公国に辿り着くことが出来た。予定していた峠で軍が船大工達と合流し、夜を徹して行軍を続けたそうだ。王国軍の影は一切なかったというのだ。それについては安心したのだが、王国の動きがないというのが不気味な印象を受けた。
忍びの里の報告では、救出する際に造船所を大量の火薬で爆破したらしい。しかも、家族が隔離されている場所も同時に。そのおかげで周囲は混乱を極めたらしく、王国軍への連絡がかなり遅れたらしい。さらに、駐留軍の交代で連絡部隊がいない時期を狙ったとはさすが忍びの里といったところだ。
全ての働きのおかげで、王国軍が動くまでに多くの時間を稼ぐことができようだ。公国軍が峠からかなり離れてから、ようやく造船所跡に到着する体たらくだったようだ。ただ、その中で嫌な報告があった。王国軍の軍備に変化があったようでクロスボウが多くの兵に配備されていたというのだ。
ついにこの時が来てしまったのか。王国もクロスボウの有効性に気付き、生産を始めてしまったか。クロスボウ自体は然程難しい作りをしているわけではない。大量生産されるのも時間の問題だろう。やはり新兵器の開発を急がなければ。王国に対する兵器の優位性が崩れてしまう。
船大工達は現在、ラエルの街で休養を取っていると言うので僕も向かうことにした。その際にテドにも来るように伝えた。
ラエルの街に到着すると、ゴーダが出迎えてくれて、すぐに案内をしてくれた。すす汚れなのか、真っ黒な顔をした職人が30人ほど。そして少しやつれ、怯えている家族が30人ほどだ。僕はゴーダに食事の用意をしてもらい、彼らの汚れを落としてもらうことから始めてもらった。その間にテドとチカカがやってきた。
「お、おまえら!! よく無事で」
「おお、頭だ。お久しぶりです。あっしらはこのとおり元気ですぜ」
テドと船大工達は抱き合うくらい近づき、手を握りあった。すると、テドが僕を紹介し始めた。よく考えたら僕は名乗りをしていなかったな。
「こちらがお前たちを救ってくれた公国の主、ロッシュ公だ。おまえら、頭が高いぞ」
「このガk……坊っちゃんが」
そんなことを口々に出しながら船大工達は頭を下げ始めた。
「皆のもの頭を上げてくれ。君たちは公国への帰属の意志を明確にしてくれた。それに応えるのが主の務めと思っている。だが、それに報いるだけの成果を君たちに望んでいる。これからは公国の造船所で貢献をしてくれることを期待しているぞ。どうだ? やってくれるか?」
しかし、船大工達はあまりいい顔はしなかった。僕にはなんとなく分かっている。
「王国ではかなり不当な扱いを受けていたと聞いている。造船所で働くならば、テドと同じ待遇で扱おう。それでどうだ?」
そういうと条件の内容も聞かずに、了承してくれた。なんとなく船大工たちの性質と言うか、性格が分かってきた。彼らはとにかく皆で一つなのだ。誰かが突出することを嫌うような気がする。
「テド。勝手に話を進めてしまってすまなかったが、これで良かったか?」
「勿論ですとも。こいつらが無事で、これから一緒に仕事が出来れば何だっていいんです。こいつらとはいつだって同じ釜の飯を食ってきた仲なんですから。家族のために散り散りになってしまいましたが、これからは公国で一つになります」
船大工達は喝采を上げ、皆の再会を喜びあった。公国に船大工が増え、大型船の増産態勢に入ることになった。
新興の食料が豊富と言われている公国に向かう一派と王国に頼る一派だ。当時は公国とは名乗っておらず、存在するかも怪しいというほど小規模な領土に過ぎないと言う認識だ。今にして思えば。、テドはよく公国に身を寄せようと決意したものだな。意見が分かられた二つの団体は、それぞれ東西に別れて旅を始めた。それから王国に向かった者達の音信は途絶えてしまった。
テドは前々より別れた船大工達を呼び寄せることに積極的だった。僕にも何度も頼み込んで来たのだが、当時は諜報機関もなく、熟練の斥候部隊もない。ましてや忍びの里の存在すら知らなかった。そのような状況では僕に出来ることは何もなかった。
しかし状況は一変した。特に忍びの里との交流が大きい。このおかげで王国内の情報が飛躍的に早く手に入れることが出来るようになったからだ。僕はテドからの依頼についても忍びの里の者たちには伝えていたが、その連絡はしばらくなかった。それが今回、報告が上がってきたのだ。これが良い予兆なのか、悪い予兆なのかは分からない。
話を報告に戻そう。忍びの里によると、船大工達は王国の造船所で働いているというのだ。何をやっているのかと言えば、当然、造船作業だ。テドが言うには彼らの技術は非常に高く、大型船を作らせれば王国でも随一の腕を持っているというのだ。テドが言うのだから、そこは間違いないだろう。となると、彼らの希望が叶い、王国での活路を見出したということか。ならば、こちらに連れてくるということは難しいだろうな。
僕が早合点をしていると、報告をもたらしてくれた者が待ったを掛けて来た。どうやら、船大工達は王国に対してかなり不満を持っている様子だそうだ。というのも、彼らが造船所で働き出したのは最近のことらしい。それまでは何度も王国に掛け合っても、全く相手にされず相当ひもじい思いをしていたようだ。
そんな彼らにようやく脚光を浴びる出来事があった。王国が造船業に乗り出すということだ。目的はまだ分からないが、とにかく造船を急がせているようだ。そのため、船大工達が駆り出され昼夜を問わず作業をさせられているようだ。
彼らとて一流の職人だけに昼夜を問わずというのは然程不満はないらしいが、待遇がとにかく酷いようだ。粗末な食事と未来の保証が全く無いところだ。しかも船大工たちにも家族がいるのだが、王国の常套手段が使われていた。人質として隔離されているというのだ。忍びの里からの報告はそこまでだった。
王国は相変わらず卑劣な行いをする。しかし、そのおかげで有能な者たちが王国から見切りを付けやすくなっている。船大工という貴重な人材を大事に扱わない国に未来はないな。僕は自警団に、すぐにテドを呼び出すように命令し、忍びの里には引き続き情報収集を頼んだ。その時、ひとつだけ頼みごとをした。公国への帰属の意志の確認だ。それだけが今、分かればいい。
さて、どうなることやら。テドは次の日早くにやってきた。相当急いでやってきたのか、顔が酷いことになっているな。僕はテドにあらかたの事情を話すことにした。
「奴らが無事でよかった。しかし、なんてゲスな国なんだ。ロッシュ公、奴らをなんとか救い出してやれないでしょうか? この通りです。なんとかご尽力いただけませんか」
そういって、テドは深々と頭を下げた。テドの前々からの頼みだ。無下にするわけがない。
「頭を上げてくれ。テドにそうしてもらうために来てもらったのではない。すでに船大工たちには手のものを常に付けている。家族についてもこちらで把握している。後は彼らが公国に来る意志があるかだ」
「そんな悠長な。来る意志があるに決まっているじゃないですか。この間に奴らに何かあったらどうするんです!!」
「テド。勘違いするなよ。公国は常に帰属の意志を確認してきた。それは責任を持たせるためだ。それがあるゆえ、皆が一丸となった公国のために貢献しているだと思っている。意志の確認は絶対条件なのだ。それとも何かあった時、テドが責任を取るか?」
テドは悔しそうに歯噛みしていたが、何も言い返してこなかった。
「そう慌てなくてもいい。さっきも言ったが、こちらで情報を抑えている。何かあれば、その時だ。一応、意思が確認されたときの話をしよう。こちらとしては全力で救い出すつもりだ。といっても大規模な軍を動かすことは王国を無駄に刺激することになる。今は王国との交戦は避けなければならない」
テドは、じゃあ……と僕に詰め寄るように声を出してきた。それを制止し、話を続けた。
「公国の全力はなにも軍事だけではないぞ。隠密に長けた者たちもいるのだ。彼らに仕事を任せるつもりだ。最後の手段として軍を出すこともあるが。おそらく、隠密部隊だけでも成功率は非常に高いだろう」
「そんな者が公国に。いや、驚きました。それならば安心してお任せします。それで……もし進展があったら私に話を……」
「ああ、分かっている。逐一伝えよう。それでいいか?」
テドは感謝を告げて、屋敷を後にした。それから更にしばらくすると、帰属の意思ありという報告がもたらされた。僕はハトリを呼び出した。それにオコトとミコトにも話を聞いたほうがいいな。
「三人共、急に呼び出して済まない。実は王国から人を救出してほしいのだが、その仕事を里に一任しようと思う」
それから今まで得た情報を三人に伝えた。
「どうだ? 成功しそうか?」
それに対して口を開いたのはミコトだった。ハトリとオコトが黙っているところを見るとミコトが最も詳しいのだろう。
「ロッシュ殿。この作戦については、どれほど本気で当たる予定ですか?」
「もちろん全力だ。彼らの一人も欠けずに公国を上げて支援するつもりだ」
「それならば、成功率は非常に高いと思います。ただ、里は諜報に長けたものが多いので脱出させることはさほど難しくはないでしょう。しかし、王国内から公国までの移動が難しいです。それを軍に手助けしてもらえばいいと思います」
やはり軍を出さなければならないか。僕は地図をテーブルの上に広げた。里の尽力でどの程度の場所まで逃げられるかを聞くと、ミコトはすぐに地図上の一点を指差した。やはり、そこまでか。王国が実効的な支配をしている場所というのはかなり狭いのだ。その境界となる場所に峠がある。そこまでは比較的逃げ隠れする場所が豊富で、地理に明るい里の者たちならばなんとか逃げ切ることができる。峠までは。それからは視界が広がり、隠れる場所が少ない。そこで追撃を受けたら終わりだ。
とにかく軍を動かすということになればガムドの知恵が必要だな。三人には礼を言って解散することにした。代わりにやってきたガムドに今回の一件について相談することにした。
「なるほど。船大工の救助ですか。それは公国にとってはなんとしても成功させたいところですな。分かりました。すぐに第一軍のライル将軍と相談をして軍を派遣する準備を整えさせましょう。頃合いについては、追って連絡をいただければ」
なんとすぐに軍を派遣することで決まった。これが公国軍か。僕は忍びの里にハトリを通じて、救出作戦を開始してもらった。それから僕からガムドに軍の権限が移り、軍の方でも作戦が開始された。
二週間。その間にすべてが決着していた。結論から言えば、船大工達とその家族は無事に公国に辿り着くことが出来た。予定していた峠で軍が船大工達と合流し、夜を徹して行軍を続けたそうだ。王国軍の影は一切なかったというのだ。それについては安心したのだが、王国の動きがないというのが不気味な印象を受けた。
忍びの里の報告では、救出する際に造船所を大量の火薬で爆破したらしい。しかも、家族が隔離されている場所も同時に。そのおかげで周囲は混乱を極めたらしく、王国軍への連絡がかなり遅れたらしい。さらに、駐留軍の交代で連絡部隊がいない時期を狙ったとはさすが忍びの里といったところだ。
全ての働きのおかげで、王国軍が動くまでに多くの時間を稼ぐことができようだ。公国軍が峠からかなり離れてから、ようやく造船所跡に到着する体たらくだったようだ。ただ、その中で嫌な報告があった。王国軍の軍備に変化があったようでクロスボウが多くの兵に配備されていたというのだ。
ついにこの時が来てしまったのか。王国もクロスボウの有効性に気付き、生産を始めてしまったか。クロスボウ自体は然程難しい作りをしているわけではない。大量生産されるのも時間の問題だろう。やはり新兵器の開発を急がなければ。王国に対する兵器の優位性が崩れてしまう。
船大工達は現在、ラエルの街で休養を取っていると言うので僕も向かうことにした。その際にテドにも来るように伝えた。
ラエルの街に到着すると、ゴーダが出迎えてくれて、すぐに案内をしてくれた。すす汚れなのか、真っ黒な顔をした職人が30人ほど。そして少しやつれ、怯えている家族が30人ほどだ。僕はゴーダに食事の用意をしてもらい、彼らの汚れを落としてもらうことから始めてもらった。その間にテドとチカカがやってきた。
「お、おまえら!! よく無事で」
「おお、頭だ。お久しぶりです。あっしらはこのとおり元気ですぜ」
テドと船大工達は抱き合うくらい近づき、手を握りあった。すると、テドが僕を紹介し始めた。よく考えたら僕は名乗りをしていなかったな。
「こちらがお前たちを救ってくれた公国の主、ロッシュ公だ。おまえら、頭が高いぞ」
「このガk……坊っちゃんが」
そんなことを口々に出しながら船大工達は頭を下げ始めた。
「皆のもの頭を上げてくれ。君たちは公国への帰属の意志を明確にしてくれた。それに応えるのが主の務めと思っている。だが、それに報いるだけの成果を君たちに望んでいる。これからは公国の造船所で貢献をしてくれることを期待しているぞ。どうだ? やってくれるか?」
しかし、船大工達はあまりいい顔はしなかった。僕にはなんとなく分かっている。
「王国ではかなり不当な扱いを受けていたと聞いている。造船所で働くならば、テドと同じ待遇で扱おう。それでどうだ?」
そういうと条件の内容も聞かずに、了承してくれた。なんとなく船大工たちの性質と言うか、性格が分かってきた。彼らはとにかく皆で一つなのだ。誰かが突出することを嫌うような気がする。
「テド。勝手に話を進めてしまってすまなかったが、これで良かったか?」
「勿論ですとも。こいつらが無事で、これから一緒に仕事が出来れば何だっていいんです。こいつらとはいつだって同じ釜の飯を食ってきた仲なんですから。家族のために散り散りになってしまいましたが、これからは公国で一つになります」
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