爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
367 / 408

第366話 進軍開始

しおりを挟む
 目的地に着いた。ただ、ここがどこで、どちらの方角に何があるのかさっぱり分からない。それほど周りは深い森しか見ることが出来ない。年輪を見れば方角が分かると言われているが、あれは嘘だ。まぁとにかく目的地というのだから目的地なのだろう。ここに拠点を築くために、先ずは周囲の木の伐採から始めることにした。

 なるほど。アロンが言っていたように確かに巨木ばかりが連ねらている。僕とルードが風魔法で伐採している横でシラーが土魔法で整地をしていく。一日の作業だけで三万人が寝泊まりできるほどの場所を確保することが出来た。兵士達は設営には手慣れているのか、瞬く間にテント街が作られていく。ただ、水の確保に問題があった。周りは森で囲まれているくせに水場が殆どないのだ。一応は軍でも井戸を掘る訓練がされているため井戸掘りを試したが、この辺りは恐ろしく堅い岩盤があるようで、それを破らない限り井戸水の確保は難しそうだ。

 それでもシラーの手にかかれば、いとも簡単に岩盤をぶち抜き、清らかな水が地下から染み出してきた。こうやって、一つずつ拠点の問題を解決していく。大量の木材の使い途を考えるために、木材置き場に向かった。

 ふむ。それにしてもこの辺りの土は実に素晴らしいな。土をひと握りしてみた。考えてみたら、この地にやってきてから荒廃した土地を一切見ていない気がするな。開けた農地というのが存在しないから気付かなかっただけか? いや、そんなわけがない。今まで見てきた荒廃した土地は一目瞭然だ。握れば砂のように手の中から流れていく。草すら生えず、樹木もみるみる枯れていく。一体どういうことなんだ?

 すると、近くでシェラがハンモックに揺られながら寝ていた。どこで手に入れたんだ? それよりも僕はシェラに近づき、思った疑問を聞いてみることにした。質問をすると、すごく面倒な顔をしながらあくびをして、身を起こした。しかし、ハンモックが暴れて落っこちてしまった。落ちたシェラを引き起こし、適当な切り株に座らせた。

「痛たた。アウーディア石について聞きたいの? そもそも石にどういう効果があるか覚えている?」

 石の効果? それは荒廃した土地が蘇る便利な効果だ。しかし、シェラはいい顔はしない。違うのか?

「違うわよ。あの石は土地の力を維持するために力を貸してくれるものよ。例えば……」

 シェラは分かりやすく説明するために地面に絵を描いていく。土地の力を百とした場合、何もしなければその力は維持される。しかし、土地の力を使うと目減りする。それが農業だ。農業は土地の力を目に見えない小さな量だが、確実に消耗させていく。そして、土地の力は消耗した分回復しようとする。それでも消耗量が回復量を上回れば、荒廃へと進む。

 石は土地の回復量を極限まで上げてくれる。そこまでは、僕も理解している。しかし、話は土地の回復量は極限まで高まるが、土地の力は下がってしまうそうだ。百あった土地の力も九十、八十と下がっていく。これを回避するために、堆肥をいれたり肥料をいれたりすると土地への負担は少なくなり、消耗量は著しく少なくなるようだ。

 アウーディア王国では、石の存在については広く知られているわけではなかったが、土地が豊かであることにかまけて土地を豊かにする方法を考えることを放棄し、土地の荒廃を早めていた。アウーディア石の効果が無くなって、荒廃してしまった場所は、そもそも土地の力が著しく低下してしまってた場所なのだ。

「なるほど。この辺りが豊かなのは人が土地に手を付けていないからか。そうなると、木の伐採はどうなるんだ?」

「それは分からないですね。ただ、土地を豊かにする方法が取られていると考えるべきね。公国も石の効果がなくなれば瞬く間に荒廃した土地になるでしょう。アウーディア石が王国にやってきて以降、ずっと搾取を続けてきたんですから。でも旦那様が来てから、土地が豊かになるような方法が施されるようになりましたから、今後数百年も続ければ石がなくても豊かな土地を維持できるようになるでしょう」

 数百年……人間の感覚では無限にも感じるような途方もない時間だ。それにしても初めて聞く話だったな。しかし、未来の公国の民が飢えない方法を見出すことは出来たな。土地を豊かにすること。そのための方法を公国に広め、皆が共有することが重要だ。シェラとはそれからも話していたが、昼寝の邪魔をしていたことに気付いて、その場を去ることにした。

 僕が戻ろうとすると、クロスボウの訓練をしている一団が見えた。どうやら、ガモンが率いるサントーク王国軍が新たな兵器であるクロスボウの訓練をしているようだ。僕は訓練を指揮しているガモンに近づくと、ガモンは訓練を続けさせたまま僕に体を向けた。

「ロッシュ公。クロスボウという兵器は使えますな。普通、新たな武器を兵に与えても、一人前にするには長い年月をかけて訓練するものですが、このクロスボウはたった数時間でかなりの精度になりましたぞ。これならば、すぐに実戦投入できます。最初は兵たちも剣以外の武器を持つことに抵抗があったのですが、今ではすっかり自分の武器にしています」

「それは良かった。公国軍も訓練ではクロスボウはすぐに使えるようになった。しかし、実戦では兵が恐れをなして十分に武器を使いこなせなかった。その点ではサントーク軍は大丈夫だな。どの者も肝が座っていそうだな」

「ハッハッハ。その通りです。この者共は敵地のど真ん中でも恐れを抱かずに戦うことが出来ます。それこそがサントーク軍の真骨頂で。さらにクロスボウも手に入れた我が軍は……戦いが始まるのが今から楽しみです」

 んん。ガモンが戦闘狂のような顔になってきたな。そういえば、聞きたいことがあったのだ。

「話は変わるが、サントーク王国は木材が特産だな? どのように収穫をしているのだ?」

「ええ。サントークでは森を休ませるために数年、数十年と点々と場所を変えながら伐採をしていきます。休ませている土地には山から集めた腐葉土を与えたり、間伐材を灰にして撒いたりしていましたな。その方が木の成長が早いような気がすると言うので昔からそのようにしています」

 やはりそのような農法が浸透していたのか。土地が豊かになる方法をもう少し考えなければならないな。拠点で初めての夜をおくり、翌朝から材木都市までの道を作る作業にそなえた。この道が出来次第、七家軍と公国軍が動き出す。

「ニード将軍とガモン将軍。これから僕は道を作る。一週間後に王国軍と戦うことになるだろう。それまでに軍を仕上げておいてくれ。この時間を有意義に使ってくれ」

 二人は「承知しました」と声を揃えて言った。シラーとルードを連れて道普請を始めた。この道は七家軍が通る道になるため、それなりの広さが必要だ。しかも隠密性も重要になるので、移動時に音が出ないよう、地面を固く均していかなければならない。そのため、ルードに木の伐採を頼み、シラーに道を均す作業を、僕が均された地面を固く締める作業をすることにした。

 三人の作業は実に息のあったものだった。予定している道は長さは五十キロメートルだ。直線的にはそれほどないのだが、途中に山がそびえており迂回する必要がある。坑道も検討されたが、シラーに止められた。その山が火山だったからだ。坑道なんて掘ったら、火山性ガスに襲われるかも知れないと脅されてしまった。

 一週間という時間はあっと言う間に過ぎ去り、やや小高い位置から材木都市を見下ろすことが出来る場所に到達することが出来た。僕達が通ってきた場所には、幅三メートルほどの道が延々と続いていた。伐採された木材は道端に置かれ、壁のようになっていた。

「シラーとルード。ようやく完成したな。僕達が拠点に戻れば、戦争となる。シラーには僕の護衛として側にいてもらうつもりだ」

「もちろんです。ご主人様と離れるなんて絶対にしませんよ。襲いかかる敵兵がいれば、地獄を見せてやります」

 相変わらず頼もしいな。さて、ルードが不満顔だ。

「ルードは済まないが拠点に待機だ。エリスとシェラの護衛をしてもらいたい。ドラドも付けるつもりだ。今回の戦で誰も傷つかずに終わらせるつもりだ。そのためにはシェラの回復魔法が必要となるのだ。よろしく頼むぞ」

「分かりました。ロッシュ殿の頼みとあれば聞かないわけにはいきません。エリスさんとシェラさんは必ず私がお守りいたします」

 僕達は作った道を戻り、拠点にたどり着いた。すでに戦いの準備は万全の様子だ。号令が出れば、出陣できるだろう。全軍隊列を崩さずに待機している状態だ。僕は改めて、一同を集めた。

「道がようやく完成した。この道を通れば材木都市の背後に回ることができる。王国軍も油断しているのか警備も手薄のようだった。これならば作戦も上手くいくだろう」

 これから七家軍と公国軍が北部と中部の境界線まで共に進み、七家軍が材木都市に向け攻撃を開始する。それに対して、王国軍が迎撃を開始したと同時に、七家軍は拠点に向け撤退する。その途中で王国軍と公国軍が衝突する算段だ。その間に七家軍は、新たに作った道を使って材木都市に隠密裏に移動をし、材木都市を攻略することが作戦となる。

 これが成功すれば、七家軍はレントーク王国が備蓄していた食料を手にすること出来、戦局を有利にすすめることが出来るのだ。長期戦になれば、七家軍が有利となる。それを信じて、僕達は作戦通りに行動を開始することにした。
 
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...