爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第397話 連合軍の戦い

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 フェンリルは休みなく王国に向かって疾走していく。その間に公国軍が設置した拠点が等間隔にあった。そこに立ち寄るとある程度最新の情報を手にすることができる。公国軍は快進撃で王国を丸裸にする段階まで時間がかかることはなかった。ライル率いる第一軍は、南方より王国に侵入し、海軍が占拠した港に最も近い街を最初に拠点にした。

 それからの第一軍の動きは王国貴族の切り崩しだ。序盤は王国貴族たちは王都からの救援があることを期待し、徹底抗戦の構えを見せていた。しかし、いくら待っても王都からの救援どころか連絡すら来なかったようだ。それは第一軍が常に人の出入りを確認していたから分かるようだ。それまで第一軍も動きを控え、説得を中心に行うことを是とする方針で動いていた。それが功を奏したのか、しばらくしてから王国貴族は白旗を上げ、降伏をした。

 第一軍はさらに先に進み、同じような方法で説得を続けた。最初こそ抵抗を見せていた王侯貴族だが徐々に王都を見限る勢力が増え始め、次第に王国貴族の方から降伏の使者を送りつけてくるほどだった。そのため第一軍はほとんど損耗もなく進軍を続け、王都の眼前に迫ることに成功したというのだ。

 一方、北から王国に侵入したグルド率いる第二軍も同様に説得を中心とした攻略を進めていた。しかし、北方は王都からの距離が遠いため、救援の見込みが最初から薄いことからすぐに降伏に応じる貴族が多かった。第二軍はさらに進み、当初の目標である南方の港からの兵站路の確保という命題を難なくクリアしてしまった。

 第二軍はその兵站路を王国軍に攻撃されることを最も恐れたため、一旦そこに拠点を建設し、その場所を中心として王国貴族の攻略に乗り出したのだ。それでも王都の動きは全く無く、王国貴族はやはり第二軍を前にして降伏をする者が後を絶たなかった。

 そして第二軍も王都の眼前に進軍を始めてから、すぐに到達することに成功した。降伏してきた王国貴族は実に公国に従順だった。それは公国が軍事力を持って強引に歩を進めるようなことをせずに、なるべく街や村、人に危害を加えずに進んだことが印象を悪くしないで済んだおかげだろう。さらに住民たちは満足な食料を食べていなかったことが散見されたので、第一軍と第二軍共に住民への食料支援を行ったのだ。そのため、港に展開している公国海軍の補給線は何度も海を往復することになった。

 ニード率いる第三軍は王都より五十キロメートルほど離れたところに拠点を作ることにした。ここは南方の港と北方に展開している第二軍の兵站路のちょうど真ん中に位置する。ここさえ守り続ければ、第二軍が飢えることはないのだ。次々と通る荷車に第三軍から護衛を付けることにした。

 王国の住民の食料への欲は非常に強く、暴動すら起きそう雰囲気が出てきたらしい。ここまで順調に進軍を続けていただけに、この暴動に危機感を募らせた公国軍は食料を欲しがるものには無条件で食料を配る方針に切り替えたのだ。そして、合わせて暴動を扇動した者やそれに加わったものには重い罰を課すことをなったようだ。これらは全て公国軍の将軍たちに与えられた権限内のことだ。

 そのおかげで王国民は一気に沈静化し、むしろ反王国という感情が否応なく高まっていった。そのため軍に対して協力的な王国民が数多く出てきて、物資運搬のための馬を提供するものや運搬に従事するものなど様々な形で公国に対して協力を惜しまなかった。

 降伏した王国貴族とて例外ではない。食料を提供された各領主達は公国に感謝をし、領兵を公国軍の傘下になることを申し出ることになった。ただ公国軍は断ったようだ。連携のとれない軍隊は烏合の衆のようなもので公国軍を弱体化する危険性がある。それでも領主達は何かの形で返そうと、兵站路の道普請を始める次第だった。

 そんな感じで着実に王国の領土に公国の旗が立っていく。

 西に目を向けると、レントーク・サントーク軍、総じて西軍は公国軍に呼応するような形で同時に進軍を開始した。距離としては公国より近く、王都までの道のりでの障害が少ない。ただ、王国の西部は山間の土地で、開拓に向かないため道がとにかく狭い。大軍を擁した西軍もこの狭い道には難儀しているようで、結局公国よりやや遅れて王都に到達したようだ。

 王都には北、南、西にと囲むように連合軍が布陣している。僕がいる拠点ではそこまでの情報しか分からなかった。僕達は休憩を終わらせ、再びフェンリルを走らせた。拠点をいくつか通過し、もっとも戦場に近い拠点に到着し、最新の情報を手にすることが出来た。

 ついに王国軍が動き出したようだ。総勢五十万人の大群だ。この数が王都に入っていたと考えると王都の広さを想像するのが難しくない。おそらく都でもそれだけの人員を収容しておくのは難しいだろう。王国の外壁の扉が開いたと思ったら、多くの兵士がまっしぐらに公国軍に向かって攻撃を開始したらしい。

 当初は王国軍の攻撃を想定していなかった公国軍はすぐに反攻するということが出来なかったらしい。それでも統制の取れた公国軍は王国軍が到達する前までには防御の態勢に移行することができた。王国軍はとにかく兵数が多いが、兵の練度が低く、士気がないようだ。王国軍の攻撃が一旦弱まるところを、公国軍がすかさず反撃を加えると手応えもなく王国軍はすぐに撤退を開始してしまったようだ。それは公国軍にぶつかってきた王国軍だけではない、西軍に当たってきた王国軍も同じだったようだ。

 王国軍はすぐに王都に戻ってしまったようだ。それからも数度、王国軍は出陣をして連合軍に攻撃を仕掛けるがその都度反撃され、数を少しずつ減らしていったようだ。

 ……まずいな。これ以上王国軍を追い詰めるようなことがあれば、王弟がどのような行動に出るか分からない。早く連合軍と合流しなければ。休憩も半ばに再び出発した。連合軍の司令室は目と鼻の先だ。

 司令室に着くと、すぐに衛兵に止められたが僕を認識するとすぐに司令室に案内してくれた。司令室は大きなテントの中にあるようだ。テントのドアを開けると、三将軍が顔を揃えていた。ライル、グルド、アロンだ。

 真っ先に声を掛けてきたのはライルだ。

「ロッシュ公!! 随分と早い到着だな。そんなに王都が陥落する姿を見たかったのか? 残念ながらすぐに陥落というのは難しそうだ。意外と王都の壁が堅いんだ。でも何度か当たれば破れるだろうよ。今も総攻撃の命令を下そうとしていたところだ」

「待て!! その攻撃をすぐに止めろ。今は王都を刺激しないほうがいいだろう」

「なにがあったんだ?」

 僕はカミュを呼び出した。その姿を見て驚かないものはいないだろう。ここにいる三人はカミュの恐ろしさを肌で感じた者たちだ。自然と三人は身構えた。

「今は大丈夫だ。彼女はカミュだ。知ってのとおり魔族だ。今は……」

 僕が言おうとするとライルが感嘆したような声を上げた。

「ロッシュ公の女にしちまったのか。いつもながらの手際。その魔族を味方に入れれば、千人力だ。もしかして、それを見せつけるために急いでやってきたのか?」

 なんだ? いつもの手際って。

「そうではない。カミュ、説明してくれ」

 カミュはなんとも面倒くさそうな顔をしていたが、ライルに僕の女と言われたときにちょっと嬉しそうな顔をしたのが忘れられない。カミュはライル達に説明していると、ライルはテーブルを叩きつけた。

「くそっ!! また魔族か!! しかも大量だと? 一体、何の冗談だ。オレ達がここまで王都を追い詰めているっていうのに。で? ロッシュ公はどうするつもりなんだ?」

「魔族を召喚される前に王弟を押さえる。今はそれしか方法はない」

「押さえるって言っても、王都はあの通り堅い壁に守られているんだぜ……もしかしてミヤの譲ちゃん達の力を使うのか?」

「それしかないだろ? といっても僕は王城の地理に詳しくない。だから、これからやってくるルド達の到着を待ってから潜入を開始する。それまでは連合軍を動かさずに包囲を続けてくれ」

「そりゃあ、構わないぜ。ただ急に動きを止めると、却って向こうの不審を抱かせないか? とりあえず小さく当たるように軍を動かしてみよう。そうすれば、しばらく時間稼ぎをしても向こうに不信感を持たせないだろうよ」

 ライルの言う通りだ。その方法が良さそうだ。

 僕達はルドが到着するまでの間にやるべきことをやろう。

「シラー、力を貸してくれ」

「もしかして……?」

「その通りだ。王城までの地下道を作る。それがもっとも敵に悟られずに潜入する方法だろう。ただ王都内は井戸が大量にあるはずだ。それらを回避しながら進まなければならない。それにはシラーの嗅覚が頼りだ。よろしく頼むぞ」

「はぁい」

 シラーはいつもの通り、気が抜けた感じだ。とても戦場にいるような雰囲気ではない。するとカミュも手を上げてきた。

「穴を掘るの? だったら私も手伝うわ。土魔法は得意な魔法の一つよ」

 魔法の一つ? つまり他にも魔法が使えると? するとミヤが間に入ってきた。

「不思議だけど、カミュは魔法に関しては天才的な子よ。複数の魔法が使えるだけじゃなくて、古代魔法にも精通しているわ」

「不思議とは失礼ね。私は魔神の魔力の研究をしている過程で色々と使えるようになったのよ。あの王城にあった神石だって私の魔法で制御したんだから。魔神の魔法は本当に万能よね」

「ちょっと待って」

 そういって話しに加わってきたのはシェラだ。

「神石ってアウーディア石のこと? それを制御? 貴女が? 信じられないわね」

「信じるも何も、現に制御できてるじゃない? あれは土地に力を与えるものでしょ? それを王都周辺に制御するだけの簡単なものだったわよ」

 シェラは考え込みながら、カミュに対して猜疑的な目を向けていた。

「あの石は貴女が考えているほど単純なものではないわよ。でも今のところは何もなさそうだし……だとしたら、貴女は本当の天才ということね。私は制御するために全ての力を使ってしまったから」

「えっ!? 貴女も制御できたの?」

 シェラはそれには答えずに土を見ながら考え事をしていた。カミュはちょっとつまらなそうにしていた。

「カミュ。本当に手伝ってくれるのか? それだったら助かるんだが」

「やった。じゃあ、すぐにやりましょ。地下道を作るんでしょ? だったら……」

 カミュが言うと、爆音を鳴らして大穴を開けてしまった。

「さあ、ここから潜って穴を掘りましょ」

 するとシラーがカミュに怒鳴りつけた。

「さあ、じゃないですよ。何、いきなり穴を開けてるんですか!! 誰もここから掘るなんて言ってないですよね? ここは王城からの距離も遠いし、地盤も緩いし。とても地下道を掘るのに適した場所じゃないんです。それにあんな爆音を鳴らしたら、敵に察知されるじゃないですか!! いいですか? 土魔法はもっと繊細なものなんです」

 急にシラーが土魔法講義をカミュにしだした。カミュはちょっと反省した顔を見せたが、シラーの講義が面白いのか、会話に花が咲いていた。

 とにかくシラーと心配なカミュと共に穴を掘り進めることにした。カミュはかなり際どい事ばかりあったが、天才は名ばかりではなく、経験を積むとどんどん上達していった。おかげでルド達が到着する頃には王城までの地下道を作ることに成功したのだった。
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