奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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side エリス①

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私はエリス。

エリス=グレンジャと名乗っていた時期がありました。

それも昔の話。

生まれてすぐに父の浪費癖のせいで、男爵位を手放した。

親戚の子爵が次男に男爵位を譲りたいという理由で。

私達家族は、子爵からもらったお金でなんとか生活を続けていました。

だけど、父の浪費癖がまた始まってしまった。

生活費も底をつき、一家は離散。

幸い、私は勉強も出来たし、魔法の才能だってあったから親戚の子爵の家の預かりになった。

それから十年……。

王立学園に入学することが叶ったのです。

身分を失った私が、再び地位を戻す……

この学園を主席で卒業し、軍に入って、功績を積み上げていけば……。

そう思っていました。

だけど、王立学園は私にとっては辛い場所でした。

身分のない私は上級生や同級生に執拗なイジメを受けていました。

それでも卒業すれば……

「おい、脱げよ。下民」
「イヤです。なんで、こんなことをするんですか!」

学校裏で数人の上級生に囲まれていました。

今まではからかいの言葉や物を隠されたり……。

その程度は我慢できた。

だけど……

「金が欲しいんだろ? やるよ。だから、脱げって言ってんだ」
「イヤ! そんなのおかしいです!」

「うっせぇ奴だな。お前は黙って、俺らに抱かれていればいいんだよ。それが下民の当然の奉仕ってやつだろ?」
「イヤ……」

学校裏は常に人気のない場所。

私は諦め始めていました。

どうせ……誰も助けてくれない。

そんな時でした。

「お前たち、そこで何をしているんだ?」
「ああ!!? お前は……いえ、失礼しました。王太子殿下」

それがロッシュ様との出会いでした。

同じクラスだったのに、まさに高嶺の花だった王太子殿下。

話しかけることも恐れ多い相手。

それが向こうから……

でも、これ以上ない、最悪な出会い。

私の服は半ば脱がされ、ロッシュ様に全て見られてしまった。

「きゃあああ」

私はパニックになって、逃げ出してしまいました。

それから、その上級生たちはどうなったかは分かりません。

風のうわさで退学したと聞いたのは、それからずっと後でした。

「……あの、ありがとうございました」

意を決して、王太子殿下に話しかけることにしました。

考えてみれば、私を助けてくれたんだ。

そのお礼を……。

「君は……エリスさんだよね? 僕はロッシュだ。よろしく」

王太子が私の名前を覚えてくれていた。

それだけで雲にも届くほど浮かれてしまいました。

それから……

私とロッシュ様は時々、話すようになりました。

もちろん、身分差はよく分かっています。

相手は王国でもっとも偉いお方。

私はただの平民。

しかも、あとで知ったのですが、王太子殿下にはすでに約束されたお相手がいたのです。

マーガレット=オーレック。

オーレック公爵家の一人娘。

家格で言えば、王家についで二番目に強い。

とても太刀打ちできない……

そんな思いが過るようになっていました。

そう……私はいつの間にかロッシュ様をお慕いするようになっていました。

一度だけ、マーガレット様から話しかけられたことがありました。

「ねぇ、あなた」
「え? 私のことですか?」

それが初めての会話。

声は凛として、とても美しい方でした。

上級貴族としての品位もあり、萎縮してしまうほどに……

それに取り巻きの方の視線がとても怖かったです。

「ええ。最近、ロッシュと仲がよろしいみたいですけど……どういうつもりかしら?」
「どうって……」

なんて、答えればいいのか。

彼女の目は本当に真っ直ぐで……

「私、ロッシュ様に助けられたんです……その……」

言葉が続かなかった。

だけど、マーガレット様は何かを察してくれたのか……

「そう……貴女の気持ちはよく分かるわ。だけど、分かっているわね?」

私は所詮は平民。

王太子殿下と対等に話せるのは、同じ学園にいるから……

それだけの理由。

一歩、外を出れば、平伏する相手なんだと……

「はい。申し訳ありませんでした」
「分かっているなら、いいの。いい? 努力しなさい。誰にも負けないほど」

どう言う意味なんだろう?

だけど、とても包容力のある女性だと思いました。

マーガレット様が仰ったことの意味が全くわからないまま、時が流れていきました。

私はその時、必死になっていました。

数カ月後、王太子殿下主催の夜会が行われることを知ったのです。

その日は王宮に招待され、様々な方と交流できる日。

私の人生で一番大切な日です。

その日のために、主席を維持しなければならない。

そして、王太子殿下と少しの時間でも一緒に……

そんな淡い期待を胸に頑張っていました。

「お前が平民のエリスか?」

そう言う言葉は久しぶりに聞きました。

イジメてきた人たちが最初に言う言葉。

身構えながら、話しかけてきた人を見ると……

王太子殿下?

いえ、この人は……

「俺はガトートス=アウーディアだ。お前に頼みがあるんだが」

それが悪夢の始まりだったのかもしれません。

ですが、その時の私には……悪魔の囁きのように聞こえました。
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