51 / 60
第47話 奴隷商、鍛冶師を手にする
しおりを挟む
オーレック領、最大の鉱山にやってきていた。
「ここが有名なプレミア鉱山か……」
といっても、ただの坑道にしか見えないから有り難みはほとんどない。
強いて言うなら……
狭い坑道で美女に囲まれた、この状態こそが有り難いと言える。
でも、なんで、こんな人選なんだ?
採掘隊を編成しようと仲間の下に言ったが、野盗共が言ったんだ。
「あっしらは暗いところと狭いところが苦手なんですわ」
信じられなかった。
結局、手を上げたのはヨル達だけだった。
マギーを入れて、12人だけの掘削隊。
しかも、僕以外が女性……。
「童貞をお捨てになったのですね」
「……ああ。それがどうした?」
「いえ、素敵ですよ」
……よく分からないやつだな。
まぁ、ヨルの事を理解できたことは一度もないから、気にしないでおこう。
僕達は坑道をどんどん突き進んでいく。
もちろん、先頭はマギーだ。
この坑道は熟知している……はずだ。
「マギー。今はどこに向かっているんだ?」
「ちょっと、黙ってて! えっと……ここにいるのよね?」
地図を食い入るように見つめ、ブツブツと話すマギー……。
なんだか、不安になってきたな。
とはいえ、今のところ、一本途。
迷うはずがないよな。
「マギー、一旦休憩しよう」
「……そうね。一回、頭を整理しましょう」
いちいち、怖いことを言うなよ。
といっても、鉱山のことを一番詳しいのはマギーだ。
信じよう……
「マギー、一つ聞いてもいいかな?」
「なにかしら?」
今回の目的はアダマンタイトの採掘だ。
この鉱山かどうかは分からないが、オーレック領ではかつて数度、採掘されている。
だが、そのアダマンタイトそのものを見たことがないのだ。
元王族ですら見たことがない幻の金属。
それを採掘するのは困難極まることは間違いない。
だが、可能性があるとしたら、マギーの土魔法だ。
彼女の魔法でアダマンタイトだけを抽出する。
金を採掘したときのように……
「どうやって、採掘するつもりなんだい?」
「アダマンタイトを知らないから……直接は無理なのよね」
それが大きな問題。
結局、アダマンタイトの情報を手に入れられぬまま、ここにやってきているのだ。
未知の金属をどうやって探すか……
「だから、普通のやり方をしましょう」
それって……
「これよ!」
マギーの手に握られているのはツルハシだった。
これで掘る……のか?
僕は戦慄が走った。
こんなツルハシでちまちまと掘って……
長い王国史で数度しかお目見えしてこなかった金属を見つけろ、と?
その瞬間、不可能を覚悟してしまった。
でも、引き返すわけにはいかない。
あのドワーフは領地経営になくてはならない存在。
引き入れるためには、どうしてもアダマンタイトを手に入れなければならないのだ。
「ヨル!! 覚悟は出来ているな?」
「もちろんです」
……結局、見つからなかった。
やはり、ツルハシで掘り進めながら見つけるとのは不可能だ。
いや、もっと掘れば……あったかもしれない。
僕達の間に得体のしれない連帯感が生まれ、ヨルとは友情を感じ始めていた。
それが今回の収穫だったのだろう。
「ごめんなさい! 私、簡単に採れると思っていたの」
「いいんだ。僕の方こそ、無理を言って。今回は無理だったけど、いつかは……」
僕は誓ったんだ。
必ず、アダマンタイトを……いや、ツルハシを極める男になると……
だが、ドワーフはどうする?
諦めるしかないか?
「もう一度、お酒を持っていったらどうかしら?」
それはいい考えだが、難しいだろうな。
話を聞いた限りでは、ギガンスというドワーフは酒飲み放題で勧誘されたらしい。
その酒がイルス領にはない。
未だに物流もないので、他から入手することも事実上不可能だ。
酒で勧誘は無理があるだろう。
だからこそのアダマンタイトだったのだが……
「ごめんなさい」
「本当に気にしないでくれ。別の方法を考えればいいんだ」
別の方法……
そんなものがあればいいんだけど。
いや、待て。
僕は奴隷商となって、金で人を買うことに慣れ過ぎてしまっていた。
なぜ、物で人を釣ろうとしていたのだ。
僕はすっかり心まで奴隷商に成り下がっていた。
そう……前までの僕だったら……
「ギガンス! どうか、僕の領地に来てくれないか!!? あなたの能力がどうしても欲しいんです!!」
僕はギガンスに頭を下げていた。
これでダメなら、諦めがつく。
「ダメじゃな」
「なぜ!? 理由を教えて下さい!」
「分かりきったことを聞くな。この地には酒がある。それも無限の。それだけだ」
くっ……やっぱりダメか。
「石狂いのドワーフ!」
シェラがなんで、ここに。
出来るだけ会わせたくなかったのに。
「おまえは……エルフか?」
「腐った目。エルフ以外にどうして見える?」
ダメだ。
これでは交渉は決裂してしまう。
「おお! 懐かしいなぁ。その言い方」
ん? なんだか、険悪な雰囲気とは程遠い感じが……
「ところで、お前さんはここで何をしているんだ? まさか、こんな坊主の尻を追っかけているわけであるまい?」
「尻、いらない。種が欲しい」
「ガッハッハ。エルフらしいのぉ。だが、お前さんが認めた男か。そんないい男か?」
ジロジロと見られて、鼻で笑われることに若干イラッとした……
今は我慢だ。
「彼はイルス。それで十分」
「ちょっと待て。今、なんと言った?」
「彼はイルス。ロッシュ=イルス」
「お主がイルス……じゃと?」
あれ? 名乗っていなかったか?
「ああ。僕はイルス領当主だ。もっとも、今は名ばかりだけどな」
領地に一歩も足を踏み入れたことがない領主など聞いたこともない。
それに領地は未開の地。
頭が痛い問題だ……。
「坊主」
「はい?」
なんだろう。
ギガンスの雰囲気が変わった?
「お前は儂を望むのか?」
「もちろんだ。あなたの力がどうしても欲しい」
じっと目を瞑り、観念したかのように首を振った。
「酒のない暮らしか。少々……いや、かなり辛いが坊主に従おう。これが……古からの掟なのだから」
掟……?
何を言っているんだ?
イルス……その名前を聞いて、ギガンスは態度を変えた。
この名前に何の意味があるというのだろうか……。
「ここが有名なプレミア鉱山か……」
といっても、ただの坑道にしか見えないから有り難みはほとんどない。
強いて言うなら……
狭い坑道で美女に囲まれた、この状態こそが有り難いと言える。
でも、なんで、こんな人選なんだ?
採掘隊を編成しようと仲間の下に言ったが、野盗共が言ったんだ。
「あっしらは暗いところと狭いところが苦手なんですわ」
信じられなかった。
結局、手を上げたのはヨル達だけだった。
マギーを入れて、12人だけの掘削隊。
しかも、僕以外が女性……。
「童貞をお捨てになったのですね」
「……ああ。それがどうした?」
「いえ、素敵ですよ」
……よく分からないやつだな。
まぁ、ヨルの事を理解できたことは一度もないから、気にしないでおこう。
僕達は坑道をどんどん突き進んでいく。
もちろん、先頭はマギーだ。
この坑道は熟知している……はずだ。
「マギー。今はどこに向かっているんだ?」
「ちょっと、黙ってて! えっと……ここにいるのよね?」
地図を食い入るように見つめ、ブツブツと話すマギー……。
なんだか、不安になってきたな。
とはいえ、今のところ、一本途。
迷うはずがないよな。
「マギー、一旦休憩しよう」
「……そうね。一回、頭を整理しましょう」
いちいち、怖いことを言うなよ。
といっても、鉱山のことを一番詳しいのはマギーだ。
信じよう……
「マギー、一つ聞いてもいいかな?」
「なにかしら?」
今回の目的はアダマンタイトの採掘だ。
この鉱山かどうかは分からないが、オーレック領ではかつて数度、採掘されている。
だが、そのアダマンタイトそのものを見たことがないのだ。
元王族ですら見たことがない幻の金属。
それを採掘するのは困難極まることは間違いない。
だが、可能性があるとしたら、マギーの土魔法だ。
彼女の魔法でアダマンタイトだけを抽出する。
金を採掘したときのように……
「どうやって、採掘するつもりなんだい?」
「アダマンタイトを知らないから……直接は無理なのよね」
それが大きな問題。
結局、アダマンタイトの情報を手に入れられぬまま、ここにやってきているのだ。
未知の金属をどうやって探すか……
「だから、普通のやり方をしましょう」
それって……
「これよ!」
マギーの手に握られているのはツルハシだった。
これで掘る……のか?
僕は戦慄が走った。
こんなツルハシでちまちまと掘って……
長い王国史で数度しかお目見えしてこなかった金属を見つけろ、と?
その瞬間、不可能を覚悟してしまった。
でも、引き返すわけにはいかない。
あのドワーフは領地経営になくてはならない存在。
引き入れるためには、どうしてもアダマンタイトを手に入れなければならないのだ。
「ヨル!! 覚悟は出来ているな?」
「もちろんです」
……結局、見つからなかった。
やはり、ツルハシで掘り進めながら見つけるとのは不可能だ。
いや、もっと掘れば……あったかもしれない。
僕達の間に得体のしれない連帯感が生まれ、ヨルとは友情を感じ始めていた。
それが今回の収穫だったのだろう。
「ごめんなさい! 私、簡単に採れると思っていたの」
「いいんだ。僕の方こそ、無理を言って。今回は無理だったけど、いつかは……」
僕は誓ったんだ。
必ず、アダマンタイトを……いや、ツルハシを極める男になると……
だが、ドワーフはどうする?
諦めるしかないか?
「もう一度、お酒を持っていったらどうかしら?」
それはいい考えだが、難しいだろうな。
話を聞いた限りでは、ギガンスというドワーフは酒飲み放題で勧誘されたらしい。
その酒がイルス領にはない。
未だに物流もないので、他から入手することも事実上不可能だ。
酒で勧誘は無理があるだろう。
だからこそのアダマンタイトだったのだが……
「ごめんなさい」
「本当に気にしないでくれ。別の方法を考えればいいんだ」
別の方法……
そんなものがあればいいんだけど。
いや、待て。
僕は奴隷商となって、金で人を買うことに慣れ過ぎてしまっていた。
なぜ、物で人を釣ろうとしていたのだ。
僕はすっかり心まで奴隷商に成り下がっていた。
そう……前までの僕だったら……
「ギガンス! どうか、僕の領地に来てくれないか!!? あなたの能力がどうしても欲しいんです!!」
僕はギガンスに頭を下げていた。
これでダメなら、諦めがつく。
「ダメじゃな」
「なぜ!? 理由を教えて下さい!」
「分かりきったことを聞くな。この地には酒がある。それも無限の。それだけだ」
くっ……やっぱりダメか。
「石狂いのドワーフ!」
シェラがなんで、ここに。
出来るだけ会わせたくなかったのに。
「おまえは……エルフか?」
「腐った目。エルフ以外にどうして見える?」
ダメだ。
これでは交渉は決裂してしまう。
「おお! 懐かしいなぁ。その言い方」
ん? なんだか、険悪な雰囲気とは程遠い感じが……
「ところで、お前さんはここで何をしているんだ? まさか、こんな坊主の尻を追っかけているわけであるまい?」
「尻、いらない。種が欲しい」
「ガッハッハ。エルフらしいのぉ。だが、お前さんが認めた男か。そんないい男か?」
ジロジロと見られて、鼻で笑われることに若干イラッとした……
今は我慢だ。
「彼はイルス。それで十分」
「ちょっと待て。今、なんと言った?」
「彼はイルス。ロッシュ=イルス」
「お主がイルス……じゃと?」
あれ? 名乗っていなかったか?
「ああ。僕はイルス領当主だ。もっとも、今は名ばかりだけどな」
領地に一歩も足を踏み入れたことがない領主など聞いたこともない。
それに領地は未開の地。
頭が痛い問題だ……。
「坊主」
「はい?」
なんだろう。
ギガンスの雰囲気が変わった?
「お前は儂を望むのか?」
「もちろんだ。あなたの力がどうしても欲しい」
じっと目を瞑り、観念したかのように首を振った。
「酒のない暮らしか。少々……いや、かなり辛いが坊主に従おう。これが……古からの掟なのだから」
掟……?
何を言っているんだ?
イルス……その名前を聞いて、ギガンスは態度を変えた。
この名前に何の意味があるというのだろうか……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです
青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。
混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。
もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。
「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」
思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。
その時、見知らぬ声が響く。
「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」
これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる