佐渡島のあやかし(第3話)など 短編集

あさのりんご

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5章

矢座

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 ルビーは、縛られている人達をじろりとにらみつけると、満足そうにイスに腰を下ろした。
「明日は、火あぶりの刑を実況中継じっきょうちゅうけいしよう。
 王と王子が、炎に巻かれて、もがき苦しむ様子をニースで流すのだ。
 グリーン国の村人は、すぐさま降伏こうふくするに違いない。なにしろ臆病おくびょうな連中だ。
 ジャク、お前は、助けてやる。そのかわり、ゴールデン国で、新しい薬を作れ。
 成功しなければ、皆と同じ火あぶりの刑に処す」

ジャク先生は、じろりと目をむいた。
「薬を作れと命令するのだな。いったいなんの薬だ?」

「恋におちる薬だよ。
 心をあやつることは、どんな魔法使いも出来ないからねぇ~。
 恋に落ちる媚薬びやくを作れば、大儲おおもうけが出来る。この研究のためには、ゴールデン国にも医者が必要だ。だからお前の命は助けてやる」

「ふーむ。その薬なら大昔からあるぞ。矢の先に愛の薬を塗ってあるのじゃ。愛の矢を受けたものは、たちまち恋に落ちてしまう。人間は、すでに紀元前1200年頃に、キューピーッドが放つ愛の矢を見つけていた。けれど、それは、はるか遠い夜空にまたたいていて、だれも手にした者はいない」

「夜空にキューピットの矢だと?出まかせ言うな」

「いやいや、うそじゃない。ゴールデン国の夜空は、ネオンサインが主役。星くずなど、だれも見向きもしないから、知らないのだ」

 ジャク先生は、病室にある、丸く突き出したバルコニーへ出て天をあおいだ。
「見てごらん。小さな星の集まり”天の川”の中に、矢があるぞ」とルビーを手招きした。

ルビーの目は千里眼。炎のように燃える目で、たちまちキューピットの矢を見つけ出した。
「あたしが取ってくる!」
ルビーは、魔法の杖をホーキに変えると、一目散に夜空に飛び立った。

高く、高く、高く。誰よりも高く。
 
あの矢があれば、今度こそ、私にもロマンスがやって来るーーー
ライバルが先回りして取ってしまう。急ごう。

ルビーは、夜空を飛び続けた。

    バリバリーーー

 突然、耳をつんざくような爆音ばくおんがして、ルビーの体が粉々にくだけた。ルビーは、ちいさな赤い星屑になって夜空に舞い散ったのだ。
 
 ルビーが星になった……

 ロビンは、矢座の下に散らばる赤い星屑を見つめていた。気がつけば、手に巻かれていたロープは消え、ロボット兵もいなくなっていた。

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