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第2話:反転ロボット【短編】

にゅっと、白い手が……!

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 黄金の部屋にトランスポートしてみると、誰もいなかった。

 ポポが、腕時計型のパソコンを操作すると、奥の壁がくるりと回転してコンピューター室が現れた。
 
 そこには、大型の機械や、無数のノート型パソコンが並び、ガタン、ゴトンと音を立てている。

 中央の机に親コンピューターが置かれていた。ポポは、さっそく親コンピューターの前に座ってキーボード操作をはじめる。

 ロビンは扉の前に立ち、王は窓の近くに立って、侵入者しんにゅうしゃにそなえて見張っていた。

 ポポは、あっと驚いた。親コンピューターの設定がすっかり変わっているのだ。ヒューマンロボットのプログラムの心をあやつる部分が、みごとに反転されていた。夢中になってキーボードを叩いていると、ふいに、両脚をグイとにぎられる。
 
 ぎょっとして下を見ると、白い腕がにゅっとつき出し、それがポポの脚をつかんでいた。

 イスの下からパピーが、ひょいと、顔をのぞかせた。

「ここに来るのは、計算ずみ。オマチシテイマシタ」
 パピーは、じっーとポポを見る。まばたきは、しない。

 そして、ものすごい力で、ポポを床に引きずり込んでねじ伏せた。両手でグイグイと首をめてくる。ポポは苦しさのあまり足をばたつかせ、イスをけ飛ばした。
 
 騒ぎを聞きつけて王とロビンがけつけた。王は、パピーをポポから引き離し、パピーの顔を一発なぐりつける。

 ポポは、美しい眉を、ひそめた。
「わたしは、世界一美しいロボットよ。自慢の顔に触らないで!」と、王の顔を何発もなぐり返す。

 王は、魔法の杖を取りだし、パピーに光りのビームで応戦する。
 一筋の光線が、パピーの腕にあたり火花を散らした。すると、パピーは、指先から十本のビームを出して王に浴びせた。目もくらむような光線が、王の身体を包み、王は、バッタリと床に倒れてしまった。

 おどろいたロビンは、手から光りのビームを出そうとした時、「やめろ!ロビン」とポポが親コンピューターの画面を見ながらさけんだ。

「百倍返しだ!攻撃されると、”百倍にしてやり返すプログラム”が組み込まれている。これは……まさに『かわいさ余って憎さ百倍』ってことだ」


 パピーは、ロビンに気がついた。
 ニヤリと冷たいみを浮かべ十本の指をロビンに向けた。

 次の瞬間、炎のようなビームで、ロビンの目の前は真っ赤になった。と、同時に王がロビンに飛びついた。自分の身体でロビンを包むようにして床に伏せた。

 その時、パピーの動きがピタリと止まった。炎のビームも消えている。

 「ふーう。やっとパピーの神経回路を止めました。もう、動きません」

 ポポは、くいいるようにパソコンを見ながら「他のロボット達の、初期化がうまくいかない。なんとか元に戻さないと……」


「お父さん!」
 王の身体の下になっていたロビンは、抜け出して王の顔をのぞき込む。

「わしは、もうダメじゃ。後を頼む」
 王は、震える手でロビンの手をにぎりしめた。

 「ノアと、幸せにくらすんだぞ」
 そう言い残すと、王は眠るように静かに目を閉じた。
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