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お買い物
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電車に乗って1時間ほど。私はみんなで梅田の駅前に来ていた。
街には多くの人がいて賑わっている。
「ほんとにこんな場所にそんな怪しい店があるの?」
「超常課のビルだって普通に街中にあるじゃない」
そういえばそうだった。
「昔はもっとひっそりしてたらしいけど、現代は外国から入ってきた偽装用の術のおかげで問題無くなったわ」
歩いていくうちに、私達は普通の雑居ビルの前に着いた。とは言っても見た目はガラス張りだし綺麗で、雰囲気としては書店とかが入ってそうな感じ。
もっとこう、一般の人が近寄らなさそうな不思議な雰囲気かと思ってた。ちょっとテンションが下がる。
一階に入ると薬局や食料品店が入っていた。
「これは普通のお店?」
「えぇ。これはね。さ、エレベーターに乗りましょ」
チン
エレベーターに乗り込むと、乃愛ちゃんはポチポチっと2つもボタンを押した。さらに閉めるボタンを3連打する。
「ちょっと、遊んじゃダメだよぉ」
「違う違う。これが正しいやり方なんだって」
そのまま3、5階と上ったと思うと、降りずに2階を押した。
閉まりかけるドアを一度開くボタンで開けると、再び閉めるボタンを押す。エレベーターは指示に従っており始めた。
4階、3階、2階。
私達は順調に下っていく。しかしエレベーターは2階には停まらなかった。
「通り過ぎちゃったよ?」
「これで合ってるから大丈夫やって。見といてー」
1階。そしてそこも……通り過ぎた。3分経つけどエレベーターは動きっぱなし。
「ねぇ。まだ着かないの?」
「大丈夫だって。これ時間がかかるのだけ不便だからどうにかならないかなー」
乃愛ちゃんは呑気にそう言った。
さらに時間が経って、やっとエレベーターが止まった。自動音声が告げる。
「到着いたしました。0階です」
ドアが開く。私は人の多さに圧倒された。その辺の駅ビルより混んでる気がする。
「正直もっとスカスカだと思ってた」
「そこら辺にこっち側の店が無いくてみんな集まるからやなー。隠さなきゃあかん分、場所も限られとるし。超常課でも代わりの場所を探そうと議論にはなっとるらしいんやけど……いつまで経っても全く変わらへんわ」
「へー。にしてもこんな所良く作ったね。この辺って地下鉄も通ってるし大丈夫なの?」
「心配いらへんよ。なんたってここは中間世界の中に作られた場所やからね」
「え、前に向こう側の世界に取り込まれる可能性とか言ってなかった?」
そこからは明里ちゃんに代わって乃愛ちゃんが説明を引き継いだ。
「言ったね。理由は覚えてる?」
「扉経由や、中にいる超常存在から漏れ出る異界側の霊力の影響で向こう側に取り込まれる……だっけ?」
「だいせいかーい」
「勉強になります。先生」
横を見ると、明里ちゃんがスマホでメモを取っていた。
「いや、あんたはむしろ教える側でしょ。なんで教わってるのよ」
「ふ……常に初心を忘れないようにしようと思ってね」
「知識まで初心に戻しちゃダメでしょーが」
「2人は仲良いんだね。じゃあ話を戻すよ。ここは特別で、中間世界を作り出した超常存在が異界側に逃げ出して、そのまま扉を閉じたんだよね」
「なるほど。それで向こう側から霊力は流れ込んでこなくなると」
「そうそう。それを知った私たち陰陽師や超常課とか他にも色んな人達で協力して、頑張って大量の霊力を流して地球側に取り込んだの。最初は中間世界の研究に使われてたんだけど、ある程度進んでからはこうして一般に公開されたって訳」
へ~。そりゃ簡単に広げる訳にはいかないのも納得だね。
両側の店は流石のおどろおどろしさを醸し出している店から、一見普通のお店に見せる物まで色々ある。
行き交う人も様々。今まで見た事の無い謎の鳥を肩に乗せてる人とすれ違った。
鳥は10円玉に書いてある観光地のモチーフになってるやつと似ているように見える。まさかね。
反対側の通路に目を向けると、謎のローブを羽織った少女が店を通り過ぎる所だった。
こっち側と反対側の通路の間は吹き抜けになっていて、数階分下方に見える最低階には虹色の果物(だと思う)がなった低木と茂みで構成された庭園がある。
これだよこれ。私が見たかったのは。
目を輝かせてキョロキョロしてると、高橋さんが微笑んだ。
「気に入った? なら私も誘ったかいがあったわ。最初に明里を連れてきた時を思い出すわ」
「うん。私丸一日でもここにいれるよ。ところで高橋さんって明里ちゃんよりも前から、ここで仕事してるんだね」
「まぁね」
話しているうちにも様々な店を見かけた。
今横にあるのは、カエルのホルマリン漬けとか泡立つ虹色の液体が展示されている店。この店は嫌だなぁ。
「あ、着いた着いた」
へーここなんだ。私やっぱ外で待ってて良い?
いや、雰囲気は好きだけどホルマリン漬けは流石にちょっと苦手なんだよね。
「どうしたん? 扉開けといたるから早く入りーよ」
「う、うん。ありがとう」
断れなかった……。店の名前は「タタリ薬品」と書いてあった。まさに雰囲気にピッタリって感じの名前だね。
内装はいわゆる魔女小屋っぽい感じをイメージしているのかな。
レジ裏には色んな薬品が入っているんだろうビンが並んでる。乃愛ちゃんと高橋さんは文房具置き場のような場所に行ってそれぞれ目当ての物を買ったりしていた。
「優香ちゃんは何か買うん?」
「うーん、そもそも何があるか分からないんだよね」
「そかそかー。私のオススメはこれかな。急速疲労回復薬。飲んでから1時間は体の疲労を感じなくしてくれるよ。代わりに3時間後に反動が来るけど。怪力を使う時に役に立つかも」
「そんなんもあるんだね。効果も分かりやすいし買ってみようかな……いくら?」
「えっとねー、3万円だって。まぁ薬品系は高いし仕方ないね」
「さ、さ!?」
たったの5錠で? そう思ったけど、最近振り込まれた報酬を考えたらまぁ異常な額じゃないか。物は試し。
今日はもう時間も無いし、今度ゆっくり見にこようかな。
街には多くの人がいて賑わっている。
「ほんとにこんな場所にそんな怪しい店があるの?」
「超常課のビルだって普通に街中にあるじゃない」
そういえばそうだった。
「昔はもっとひっそりしてたらしいけど、現代は外国から入ってきた偽装用の術のおかげで問題無くなったわ」
歩いていくうちに、私達は普通の雑居ビルの前に着いた。とは言っても見た目はガラス張りだし綺麗で、雰囲気としては書店とかが入ってそうな感じ。
もっとこう、一般の人が近寄らなさそうな不思議な雰囲気かと思ってた。ちょっとテンションが下がる。
一階に入ると薬局や食料品店が入っていた。
「これは普通のお店?」
「えぇ。これはね。さ、エレベーターに乗りましょ」
チン
エレベーターに乗り込むと、乃愛ちゃんはポチポチっと2つもボタンを押した。さらに閉めるボタンを3連打する。
「ちょっと、遊んじゃダメだよぉ」
「違う違う。これが正しいやり方なんだって」
そのまま3、5階と上ったと思うと、降りずに2階を押した。
閉まりかけるドアを一度開くボタンで開けると、再び閉めるボタンを押す。エレベーターは指示に従っており始めた。
4階、3階、2階。
私達は順調に下っていく。しかしエレベーターは2階には停まらなかった。
「通り過ぎちゃったよ?」
「これで合ってるから大丈夫やって。見といてー」
1階。そしてそこも……通り過ぎた。3分経つけどエレベーターは動きっぱなし。
「ねぇ。まだ着かないの?」
「大丈夫だって。これ時間がかかるのだけ不便だからどうにかならないかなー」
乃愛ちゃんは呑気にそう言った。
さらに時間が経って、やっとエレベーターが止まった。自動音声が告げる。
「到着いたしました。0階です」
ドアが開く。私は人の多さに圧倒された。その辺の駅ビルより混んでる気がする。
「正直もっとスカスカだと思ってた」
「そこら辺にこっち側の店が無いくてみんな集まるからやなー。隠さなきゃあかん分、場所も限られとるし。超常課でも代わりの場所を探そうと議論にはなっとるらしいんやけど……いつまで経っても全く変わらへんわ」
「へー。にしてもこんな所良く作ったね。この辺って地下鉄も通ってるし大丈夫なの?」
「心配いらへんよ。なんたってここは中間世界の中に作られた場所やからね」
「え、前に向こう側の世界に取り込まれる可能性とか言ってなかった?」
そこからは明里ちゃんに代わって乃愛ちゃんが説明を引き継いだ。
「言ったね。理由は覚えてる?」
「扉経由や、中にいる超常存在から漏れ出る異界側の霊力の影響で向こう側に取り込まれる……だっけ?」
「だいせいかーい」
「勉強になります。先生」
横を見ると、明里ちゃんがスマホでメモを取っていた。
「いや、あんたはむしろ教える側でしょ。なんで教わってるのよ」
「ふ……常に初心を忘れないようにしようと思ってね」
「知識まで初心に戻しちゃダメでしょーが」
「2人は仲良いんだね。じゃあ話を戻すよ。ここは特別で、中間世界を作り出した超常存在が異界側に逃げ出して、そのまま扉を閉じたんだよね」
「なるほど。それで向こう側から霊力は流れ込んでこなくなると」
「そうそう。それを知った私たち陰陽師や超常課とか他にも色んな人達で協力して、頑張って大量の霊力を流して地球側に取り込んだの。最初は中間世界の研究に使われてたんだけど、ある程度進んでからはこうして一般に公開されたって訳」
へ~。そりゃ簡単に広げる訳にはいかないのも納得だね。
両側の店は流石のおどろおどろしさを醸し出している店から、一見普通のお店に見せる物まで色々ある。
行き交う人も様々。今まで見た事の無い謎の鳥を肩に乗せてる人とすれ違った。
鳥は10円玉に書いてある観光地のモチーフになってるやつと似ているように見える。まさかね。
反対側の通路に目を向けると、謎のローブを羽織った少女が店を通り過ぎる所だった。
こっち側と反対側の通路の間は吹き抜けになっていて、数階分下方に見える最低階には虹色の果物(だと思う)がなった低木と茂みで構成された庭園がある。
これだよこれ。私が見たかったのは。
目を輝かせてキョロキョロしてると、高橋さんが微笑んだ。
「気に入った? なら私も誘ったかいがあったわ。最初に明里を連れてきた時を思い出すわ」
「うん。私丸一日でもここにいれるよ。ところで高橋さんって明里ちゃんよりも前から、ここで仕事してるんだね」
「まぁね」
話しているうちにも様々な店を見かけた。
今横にあるのは、カエルのホルマリン漬けとか泡立つ虹色の液体が展示されている店。この店は嫌だなぁ。
「あ、着いた着いた」
へーここなんだ。私やっぱ外で待ってて良い?
いや、雰囲気は好きだけどホルマリン漬けは流石にちょっと苦手なんだよね。
「どうしたん? 扉開けといたるから早く入りーよ」
「う、うん。ありがとう」
断れなかった……。店の名前は「タタリ薬品」と書いてあった。まさに雰囲気にピッタリって感じの名前だね。
内装はいわゆる魔女小屋っぽい感じをイメージしているのかな。
レジ裏には色んな薬品が入っているんだろうビンが並んでる。乃愛ちゃんと高橋さんは文房具置き場のような場所に行ってそれぞれ目当ての物を買ったりしていた。
「優香ちゃんは何か買うん?」
「うーん、そもそも何があるか分からないんだよね」
「そかそかー。私のオススメはこれかな。急速疲労回復薬。飲んでから1時間は体の疲労を感じなくしてくれるよ。代わりに3時間後に反動が来るけど。怪力を使う時に役に立つかも」
「そんなんもあるんだね。効果も分かりやすいし買ってみようかな……いくら?」
「えっとねー、3万円だって。まぁ薬品系は高いし仕方ないね」
「さ、さ!?」
たったの5錠で? そう思ったけど、最近振り込まれた報酬を考えたらまぁ異常な額じゃないか。物は試し。
今日はもう時間も無いし、今度ゆっくり見にこようかな。
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