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停滞アパート 1
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「にゃんなの~?」
完全にリラックスムードに入っていた乃愛が眠そうに聞いてくる。でも状況を説明すると、目を覚ましたようでアプリをチェックし始めた。
ちなみに彼女は、前の繁華街での出来事の後に私と同じように超常課と契約していた。
こんな入りやすくて情報の保護とか大丈夫なのかって不安に思ったけど、正規職員じゃなきゃスパイする意味もないし、元々こういう仕事に携わっていて秘密の漏洩の心配が無いから手続きが早かったと高橋さんが教えてくれた。
「この位置だったら、次の駅で降りて車を借りるのが1番早そうね」
と、いうわけで数十分ほどで現地に到着。既に警察が付近を通行止めにしていた。
「もうこんな準備が終わってるんだ。数十分前に通知が来たにしては早くない?」
疑問を口に出すと、近くにいた交通誘導員の格好をした人が近付いてきた。胸ポケットから超常課の職員証を見せてきたから、今回の事件の担当者か何かなんだと思う。
「到着が早くて助かります。簡単に今分かっている事の説明をしますね。とはいっても分かっている事は少ないですが」
申し訳なさそうな顔をしながらも、担当者は話を続ける。
「ここはとある企業の社員寮ですが、敷地全体が中間世界になってます。特に入るための条件はなく、普通に立ち入る事が出来ます。住民の姿は見えませんが、生活音が時たま聞こえるので未だに中に取り残されていると見られています」
続いて近くの街頭に設置されている監視カメラの映像から、住民は25人ほど取り残されている予想だと言われた。今まで私が関わってきた超常存在とは比べ物にならない数だね。
「外部から建物を見た場合は特になんの異常も見られません。しかし敷地内から見ると、本来の階数よりも1つ多いらしいです。また、建物に入らなければ何かが起こったりする事は無いようですね。今のところ分かっている事は以上です。特に心霊スポットだったり、噂があったりという事は無いので、どのような思念が影響しているのか分かりませんね。」
「結構建物以外の事は詳しく分かっているんですね」
「えぇ。実はあなた達の前に、職員を合計2人派遣されているんです。彼らの報告でそこまでは分かったのですが、両方とも建物に入ってからは帰ってきてません。電波も通じないので、何が理由でそうなっているかは分かりません」
そういって、その職員はもう一度謝ってきた。その上で私たちに確認してくる。
「説明は以上です。あなた達は正規職員ではありませんし、現在のところ緊急性はありません。よってあなた達には本事案への協力を断る権利があります。確認ですが、協力の意思に変わりはありませんか?」
私は振り返って3人の顔を見る。
「早く行こや!」
「もちろん協力するわ」
「困ってる人がいるなら仕方ないよね。私もオッケー」
誰も反対する人はいなかった。もちろん私も。
「はい。是非とも協力させてください」
建物入り口に置かれているフェンスがどかされて、私達は中に入った。実際に敷地に入ると景色が変わる。夜は心地の良い青空に変わり、街の騒々しさは消えた。
蒸し暑さは消えて、春や秋の1番ちょうど良い時期の寒くも暑くもない、気持ちのいい気温に変わった。びっくりしているとそよ風が吹く。風に吹かれて、敷地内に生えている木々がサァァァァと音を立てた。
「なんか変な感想だけど……私ここ好きかも」
「分かる。悪影響さえ無ければここに住みたいくらいやわ」
あんまり良くない事なんだけど、やっぱり少し緊張が緩んじゃった。そのまま敷地を歩いたけども本当に何も起こらない。
「なぁ、もう夜遅いし明日の講義飛んじゃわん?」
明里ちゃんは雑談まで始めた。めんどくさいからって授業飛ぶなんて、また高橋さんに怒られるよ?
「いいわね。今まで毎回出席してきたし、明日くらいは休んじゃってもいっか」
嘘やん。
「ちょっとちょっと。高橋さんがそんな事言うなんて珍しいね」
「まぁ私もたまにわね」
そんな事もありつつ、私達はついに建物内に入った。さっきまで感じてた心地よさがより一層強まった気がする。
こんな所に危険なんて無さそうだし、さっさと仕事終わらせて帰りたいなぁ。
仕事がめんどくさく感じてきて、参加希望したことを少し後悔した。
「さっきから各部屋のドアノブひねっても全然開かないね。何しても中にいる人からの反応はないし」
チャイムを押しながら乃愛がそう言った。確かにさっきからみんなでノックしたり呼びかけても返事も何もない。
増えた分を合わせて5階のうち既に4階。階段を登ったけど、特に今までと違う部分は無かった。
この超常現象を起こしてる奴も見つからないし、どうしよっかな。
そんな事を考えていると、後ろでドアが閉まる音がした。
振り返ると、最後尾を歩いていた明里ちゃんが消える。そしてさっきまで空白だった表札に、大川の2文字が浮かび上がってきた。
「明里~どうしたの~?」
高橋さんが呼びかけるも返事はない。私がドアをこじ開けようとした所で、今度は横から扉を閉める音が聞こえる。
次は高橋さんが消えた。驚いていると、さらに横の部屋に乃愛が入っていくのが見える。
引き止めも間に合わなくて、乃愛は扉の向こう側に消えていった。2人の名前がそれぞれの部屋の表札に表示される。
早く助けないと……なんで助けないといけないんだろ。
これを解決してもお金をもらって、大学に戻ってまた仕事をして。卒業したらその後はずっと仕事続き。
どこに行っても人間関係に気を遣わないといけないし、もうすぐテスト期間だし。
それに比べて、ここはこんなに気持ちいい。なんか急にここが魅力的に思えてきた。
乃愛の部屋の横の部屋の表札はまだ空白。ちょっと見てみるだけ。部屋の中の調査もしなきゃいけないしね。
なぜか警戒心は湧かなかった。私は今も閉じ込められている友達や住民、彼らの事を心配する家族、仕事の責任感や明日の大学の事も全て忘れて、部屋への誘惑に任せてドアを開けた。
完全にリラックスムードに入っていた乃愛が眠そうに聞いてくる。でも状況を説明すると、目を覚ましたようでアプリをチェックし始めた。
ちなみに彼女は、前の繁華街での出来事の後に私と同じように超常課と契約していた。
こんな入りやすくて情報の保護とか大丈夫なのかって不安に思ったけど、正規職員じゃなきゃスパイする意味もないし、元々こういう仕事に携わっていて秘密の漏洩の心配が無いから手続きが早かったと高橋さんが教えてくれた。
「この位置だったら、次の駅で降りて車を借りるのが1番早そうね」
と、いうわけで数十分ほどで現地に到着。既に警察が付近を通行止めにしていた。
「もうこんな準備が終わってるんだ。数十分前に通知が来たにしては早くない?」
疑問を口に出すと、近くにいた交通誘導員の格好をした人が近付いてきた。胸ポケットから超常課の職員証を見せてきたから、今回の事件の担当者か何かなんだと思う。
「到着が早くて助かります。簡単に今分かっている事の説明をしますね。とはいっても分かっている事は少ないですが」
申し訳なさそうな顔をしながらも、担当者は話を続ける。
「ここはとある企業の社員寮ですが、敷地全体が中間世界になってます。特に入るための条件はなく、普通に立ち入る事が出来ます。住民の姿は見えませんが、生活音が時たま聞こえるので未だに中に取り残されていると見られています」
続いて近くの街頭に設置されている監視カメラの映像から、住民は25人ほど取り残されている予想だと言われた。今まで私が関わってきた超常存在とは比べ物にならない数だね。
「外部から建物を見た場合は特になんの異常も見られません。しかし敷地内から見ると、本来の階数よりも1つ多いらしいです。また、建物に入らなければ何かが起こったりする事は無いようですね。今のところ分かっている事は以上です。特に心霊スポットだったり、噂があったりという事は無いので、どのような思念が影響しているのか分かりませんね。」
「結構建物以外の事は詳しく分かっているんですね」
「えぇ。実はあなた達の前に、職員を合計2人派遣されているんです。彼らの報告でそこまでは分かったのですが、両方とも建物に入ってからは帰ってきてません。電波も通じないので、何が理由でそうなっているかは分かりません」
そういって、その職員はもう一度謝ってきた。その上で私たちに確認してくる。
「説明は以上です。あなた達は正規職員ではありませんし、現在のところ緊急性はありません。よってあなた達には本事案への協力を断る権利があります。確認ですが、協力の意思に変わりはありませんか?」
私は振り返って3人の顔を見る。
「早く行こや!」
「もちろん協力するわ」
「困ってる人がいるなら仕方ないよね。私もオッケー」
誰も反対する人はいなかった。もちろん私も。
「はい。是非とも協力させてください」
建物入り口に置かれているフェンスがどかされて、私達は中に入った。実際に敷地に入ると景色が変わる。夜は心地の良い青空に変わり、街の騒々しさは消えた。
蒸し暑さは消えて、春や秋の1番ちょうど良い時期の寒くも暑くもない、気持ちのいい気温に変わった。びっくりしているとそよ風が吹く。風に吹かれて、敷地内に生えている木々がサァァァァと音を立てた。
「なんか変な感想だけど……私ここ好きかも」
「分かる。悪影響さえ無ければここに住みたいくらいやわ」
あんまり良くない事なんだけど、やっぱり少し緊張が緩んじゃった。そのまま敷地を歩いたけども本当に何も起こらない。
「なぁ、もう夜遅いし明日の講義飛んじゃわん?」
明里ちゃんは雑談まで始めた。めんどくさいからって授業飛ぶなんて、また高橋さんに怒られるよ?
「いいわね。今まで毎回出席してきたし、明日くらいは休んじゃってもいっか」
嘘やん。
「ちょっとちょっと。高橋さんがそんな事言うなんて珍しいね」
「まぁ私もたまにわね」
そんな事もありつつ、私達はついに建物内に入った。さっきまで感じてた心地よさがより一層強まった気がする。
こんな所に危険なんて無さそうだし、さっさと仕事終わらせて帰りたいなぁ。
仕事がめんどくさく感じてきて、参加希望したことを少し後悔した。
「さっきから各部屋のドアノブひねっても全然開かないね。何しても中にいる人からの反応はないし」
チャイムを押しながら乃愛がそう言った。確かにさっきからみんなでノックしたり呼びかけても返事も何もない。
増えた分を合わせて5階のうち既に4階。階段を登ったけど、特に今までと違う部分は無かった。
この超常現象を起こしてる奴も見つからないし、どうしよっかな。
そんな事を考えていると、後ろでドアが閉まる音がした。
振り返ると、最後尾を歩いていた明里ちゃんが消える。そしてさっきまで空白だった表札に、大川の2文字が浮かび上がってきた。
「明里~どうしたの~?」
高橋さんが呼びかけるも返事はない。私がドアをこじ開けようとした所で、今度は横から扉を閉める音が聞こえる。
次は高橋さんが消えた。驚いていると、さらに横の部屋に乃愛が入っていくのが見える。
引き止めも間に合わなくて、乃愛は扉の向こう側に消えていった。2人の名前がそれぞれの部屋の表札に表示される。
早く助けないと……なんで助けないといけないんだろ。
これを解決してもお金をもらって、大学に戻ってまた仕事をして。卒業したらその後はずっと仕事続き。
どこに行っても人間関係に気を遣わないといけないし、もうすぐテスト期間だし。
それに比べて、ここはこんなに気持ちいい。なんか急にここが魅力的に思えてきた。
乃愛の部屋の横の部屋の表札はまだ空白。ちょっと見てみるだけ。部屋の中の調査もしなきゃいけないしね。
なぜか警戒心は湧かなかった。私は今も閉じ込められている友達や住民、彼らの事を心配する家族、仕事の責任感や明日の大学の事も全て忘れて、部屋への誘惑に任せてドアを開けた。
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