きっと昔は

山茶花

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オリジンヌソルからの脱出

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「母さん!やっぱり俺は耐えられんないよ!」

「馬鹿な事言ってるんじゃないよ、いいから洗濯物とってこいビビり息子が」


非常に辛辣であるが、これが本当の母親だろうか?

いや今はそんなことはどうでもいいんだ。


この間、ついに俺らが住む第1空中都市オリジゾンヌが悲鳴をあげた。
理由は人間で言うところの大動脈が詰まり穴が開いた事にある。

パイプが詰まる事はよくあったが穴が開いた事は初めてで、浮遊する為の機関が一瞬止まりちょっと高度が下がってしまった。


必ず都市に1人は居る技術者(これが大変な呑兵衛である)が、まるで破れた衣服へアップリケを縫い付ける感覚で直したのだが未だにオイルが漏れ出ているのだ。

非経済的であるし、このままじゃいつ落ちてもおかしくないのに町の人はみんなこの母の様な反応をする。


…俺は間違ってないぞ(多分)


何にせよ、せめてボロは兎も角心臓部の強化はせねばなるまいと思って勉強しようとしたが、古人が遺した資料は呑兵衛が無くしてしまったそうな。


「あんなんなくてもよォ俺ァ天才だからよォ?
ちゃちゃっと直せちまう訳だから要らねぇのよォ!どうだ坊主ゥ尊敬しろっ!」


軽蔑すんぜ呑んだくれジジィが…。


…ごほんっ

まぁ、こんな調子だから俺が代表して都市を出て行き心臓部の改善を頼んでくる。

そして俺も技術者になり、何時までも平和に暮らせるように知識を持って帰ってくるって決めた。


アバヨ、母さん…俺は旅に出るよ。


こっそり貯めた小遣いとスクラップを集め作った小船に、1週間分のメシと水と着替えを詰め込んで飛び立つ。


暫くは帰ってこれないだろうなァ…。



「こらっ!仕事もせずにどこ行こうってんだい?!このクソガキが!!」

「やべっ、見つかった!」
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