魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第15話 衛兵隊

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 俺とクロニアとベルモの3人は森を離れラモグの町を経由して、クロニアの所属する衛兵隊の本部に出頭する事になった。土産として例の熊の手の半分を持ってきている。
 ラモグの町で少し休憩して(まだ長時間の乗馬はキツいんだ)、そのついでに『やろうやろう』と思っていながら先送りになっていたイメッタさん関係の宝飾品を換金した。

 こういった物を扱う古物商は、町には表通りの高級そうな店と裏通りの怪しい雰囲気の店があるのだが、どちらが良いかとベルモに相談した所、迷わず「裏通りにしときな」と返ってきた。

 あまり深く考えずに言われた通りに裏通りに行ったが、この時ベルモにではなくクロニアに相談していたら、彼女は表通りを勧めたであろうし、その後のイベントも大きく変わっていた事だろう……。

 ちょうど腹も減って来たので、『戦果も上げたし金も入って美味い物でも食っていくか』と思ったが、この町では最初にお世話になった高級宿の銀麦亭でも美食にはあまりこだわっていなかった。

 まぁでもそれは仕方ない事なのだ。機械化された流通網を持たないこの世界の人達は、『手の届く所にある』材料や調味料でやりくりするしか無い。そしてそれらも常にあるとは限らない、という中世~近世の常識で生きている。「食えるだけ有り難いと思え」な世界だ。

 ☆
  
「おや、生きてたのかい坊や。衛兵に連れて行かれたって聞いたから心配してたんだよ? 女2人も連れてるなんて一体何があったんだい?」

 銀麦亭の女将さんの心配事は俺の安否よりも俺の連れ2人に強く傾いていた。

「色々とあったんだよ。これで適当に3人前頼む」

 テーブルに30カイ程を広げる。俺が初めて来た時に10カイでメインの料理2品と酒が出てきた。なので3人ならこの金額で相応の料理は食べられるだろう。味はともかく。

 宿に来て、たらふく飲み食いしたら上の部屋で『ご休憩』したくなったが、まだ陽も高いし宿の女将さんに女達の嬌声を聞かせるのも何だかとても恥ずかしい。母親の居る時に自宅に彼女を連れ込んだらこんな気分になるのかも知れないなぁ……。

 とりあえずこの場は食事だけして先を急ごう、という話になった。クロニアは色々な理由で急ぎたがっていたし、ベルモが留守のままだと留守番している盗賊達が痺れを切らせて暴走する可能性もある。まぁ悪さしそうな奴らは大体俺が昨夜の余興でぶっ飛ばしている訳だけれども。

 ☆
 
 衛兵隊の本部はラモグの町から馬で1時間半ほど川沿いに進んだ場所にあるらしい。道中に木造の建物の脇にいくつか大きめのテントが並んでいる場所があった。
 
 銀麦亭の女将さんが教えてくれたそここそが『湯屋』で、川の水を沸かしてテントの中にある浴槽に給仕さんがお湯を運んでくれるらしい。そしてテントの中で風呂に入って体を流す訳だけれど、クロニアによるとその際に追加料金で女給仕さんに体を洗ってもらうオプションもあるそうだ。更に追加料金でもっと濃厚なサービスも受けられるらしい。

 なるほど、この世界のお風呂屋さんはマッサージと風俗を兼ねている訳なんだねぇ。今度時間が空いたら行ってみるとしよう。濡らした布で体を拭くだけよりも、やはり日本人なら風呂に入って手足を伸ばしたいんだよね。

 ☆

「俺が衛兵隊長のジュガス・バーフェートだ。馬賊討伐の報告は聞いている。にわかには信じがたい話だが、クロニアの証言もある事だし大枠は信用しよう。で、話の続きがあると聞いているが?」

 衛兵隊の本部、会議室の様な場所に通されて、現れたのは40代前半くらいの年齢のオジサンだった。髪型はオールバックで立派な顎髭を蓄え、鎖帷子を着たマッチョマン、肌の色はクロニア同様浅黒く、日焼けじゃなくて元からそういう民族っぽい感じ。
 ていうか『バーフェート』って名字からしてクロニアの親戚じゃないのかな?

「はい。ベルモこの者の一党が森を根城に開拓と狩猟、また採取した木材、毛皮や肉の商売を希望しております。またその見返りとして森の怪物や野盗を退治したり、有事の際の戦力として傭兵業も割安で請け負ってくれるそうです」

 クロニアが説明を続ける。ジュガスさんは机に両肘を立てながら敵を見る様な鋭い視線でクロニアを見つめていた。
 怖い上司にずっと睨まれながら健気に説明を続けるクロニアのメンタルも強いよな。俺なら5秒でゴメンナサイしてる。

クロニアおまえからの話で無かったら即座に却下な事案だが、彼らは本当に信用出来るのか…?」

 ジュガスさんの問いに一瞬クロニアの息が詰まる。ちらりと俺とベルモの方を見遣り、大きく息を吸って何かを決意した目で、
 
「この命に代えてもっ!」

 と宣言した。これが『命を掛けて信頼する』なのか『問題が起きたら命を掛けて対処する』という意味なのかは分からない。前者なら嬉しいけど、クロニアとベルモの関係性を考えたら後者も十分にあり得るんだよなぁ。その証拠に女2人で無言のまま視線をバチバチ戦わせているし……。

「ふむ、ならば新たな任務だ。彼らにはお前が同行して監督しろ。そして開拓や商売、傭兵契約という内政面の話は俺では受けられない。紹介状を書いてやるから侯爵の館の政務官に話を通しておくように」

「はいっ!」

 ジュガスさんがクロニアに次々と指令を伝えてくる。クロニアの担保付きだが、とりあえずは信用されたみたいでひと安心だ。
 そしてジュガスさんの視線が俺に固定される。睨まれただけで失禁しそうなほど怖い。

「そこの君、模擬戦で兵士ヘッケラーに怪我を負わせた件は、クロニアから『事故』であったと報告が上がっている為に不問とする。あとは君の武勇のおかげで任務が果たせたらしいな。未熟な姪だが、これからも支えてやって欲しい」

「あっ、はい…」

 この怖いオジサンはクロニアの叔父さんなのか。『厳粛な軍人一家』とかそんな感じなのかね? あとはすっかり忘れていたなヘッケラーさん。俺が言うのもナンだけど、酷い事になってなければ良いけどねぇ……。

 ☆

 ジュガスさんとの用件が済んで、俺達の次の目的地は領主様のお屋敷だそうだ。最初は野良の冒険者稼業から始める覚悟だったけど、何だかんだで上位の顧客を確保出来ている気がする。ホント聖剣様々だな、うん。
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