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第20話 絶望の闇
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俺達が落とされたのは、落とし穴のあった部屋から7~8m下の部屋みたいだった。なにぶん灯りがなくて視界がほぼゼロの状態だから、現況を確認するのも容易ではない。
今分かるのは脛が浸かる位までの水が流れている場所だと言う事だけだ。
俺はバリアのおかげで無傷のままだけど、他の仲間はそうはいかなかったらしい。
真っ暗の中、いきなり建物の3階ないし4階相当の高さから落とされたんだ。無事でいる方が奇跡だろう。
現に女達の苦痛から来る呻き声がいくつか聞こえてきた。
「お前達、無事か? 怪我とかしてないか?」
無事じゃないだろうが、怪我の度合いを知る為に俺はみんなに向けて声を掛けた。
最悪ティリティアさえ無事なら、ある程度は魔法で怪我の治療が出来るはずだ……。
「私は落ちた時に肩からいってしまった。多分左肩が脱臼している。あと右脚も多分折れている…」
「アタイはちょっとヤバいかも… 両膝を強く打って捻挫か膝を割ったか…? それより右目と尻にゴブリンの矢を受けちまってね… 多分矢に奴らの糞が塗られている。このままじゃ『震え病』になって死んじまうかもな…」
俺は濡れずに済んだ荷物の中から火口箱(火打ち石と着火剤のおがくず)と予備の松明を取り出し火を点けた。これでもこの世界に来て何日も野宿しているからな、その程度は慣れたもんだ。
松明の明かりが部屋を照らす。落とされた上の部屋と同じ位の広さで、足元には動物の骨や果物のタネ等、ゴブリン達はゴミ捨て場として活用している様だった。
洞窟というよりも鍾乳洞だな。地下の川は更に何処かへと流れが続いている。
落とし穴は既に塞がれていて、直接上に戻る道は無さそうだ。
俺以外は全員重傷だ。特にベルモは複数の矢傷があり、そこに塗られていた『毒』によって病気の危機に見舞われていた。ベルモの言う『震え病』ってのは恐らく俺達の世界で言う『破傷風』の事だろう。
とりあえず2人の状況は分かった。ティリティアが魔法で治せるようなら治して貰って……。
「あれ? ティリティアはどこだ…?」
ティリティアの姿が見えない。落とされる直前まで一緒にいたのは間違い無いが、落ちてから彼女の声を聞いていない。
「ティリティア様は落とされる寸前に後ろからゴブリンに連れ去られた。ゴブリンに囲まれて射掛けられた時に私はティリティア様を守ろうと後ろを向いた。その時にティリティア様は奴らに口を塞がれて闇に消えていった…」
クロニアは肩の痛みと主君の娘を守れなかった慚愧とで、顔を歪ませながら呟いた。
えー、ヤバいじゃん。ティリティア無しでこの状況から生還できる可能性はかなり低いんじゃないのか…?
ティリティアは心配だが、とにかく今動けるのは俺だけだ。学校の保健体育の授業でちょっと習った程度の知識しか無かったはずだが、何故か頭の中に怪我の治療法が自然に浮かび上がってくる。これも聖剣の『どんな無理難題も解決できる知能と知識が与えられる』って特典かな?
まずはベルモに刺さった矢を抜いて傷口を水筒の水で洗う。足元の川の水は鉱物や細菌で汚染されている可能性があるので今は使えない。水筒の水は一応前もって煮沸してあるから、最低限の洗浄は出来たと思う。更にベルモの荷物の中にあった酒を一口含み、傷口に吹き掛けて消毒した。
次にクロニアだが、腕を引っ張って無理矢理関節を嵌め、彼女のマントの裾を切って三角巾にして腕を吊った。
骨折はゴミの中から添え木に使えそうな骨があったので縛って固定する。応急処置は出来たが、それでもしばらくは安静にする必要がある。
最低限だが今できる精一杯の処置をした。ティリティアを救出してこれれば、治癒魔法によって更なる回復が見込めるかも知れないが……。
「我々の事はもう良い… お前は早くティリティア様を助けに行け!」
「そうだな。ゴブリンがあのお姫様に何するか考えただけで気分が悪くなる…」
2人の言葉に焦燥感を高めながら俺は川の下流へと走って行った。
下流へ走ったのは、上流へ向かっても行き止まりになる可能性が高かった為だ。下流なら何処か外へと続いている可能性もある。今いる場所から上に上がれないのであれば、外からさっきの入り口に入り直す等、別の道を探るしか無いからな… 無事でいてくれよティリティア……。
☆
狭い鍾乳洞、ぬめついて滑る川底、手にした松明が儚げに照らし出す壁面が永遠に続く様に思えた頃、俺は外に続く出口に到達した。
ここからまた廃坑の入り口まで戻るのは難儀だが、ティリティアの命が掛かっている。疲れなんか気にしていられなかった。
どちらにしても仲間3人がこの廃坑の中で俺の助けを待っているんだ、休んでなんかいられない……。
☆
外に出て時間にして30分ほど、俺はようやく廃坑の入り口まで戻ってきた。落とし穴に落とされてから怪我の処置や鍾乳洞の探索等も含めて諸々で1時間強といった所か。ティリティア、無事ていてくれよ……。
今度は廃坑の入り口に見張りのゴブリンが2匹立っていた。見張りと言いつつ、疲れ切った表情で眠そうだ。俺は聖剣を抜いて奇襲をかけ、だらけた2匹を瞬時に斬り殺した。
廃坑に入ってすぐに聞こえたのは女の叫び声。時間的に他から女を攫ってくる余裕は無かったはずだ。多分、いやきっとティリティアの声だろう。
松明を掲げながら俺は走った。予備の松明と火口箱も濡れない様に油紙で包んで持ってきた。また水の魔法で不意打ちされても、どうにか対処できると思う。
ティリティアの叫び声は断続的に続いており、俺が走るに従って段々と近付いていくのが分かる。もうすぐだ。
女の叫び声とは別にゴブリンどものざわめく声も聞こえてきた。複数の、恐らく10匹前後が集まっている。
先程の落とし穴のあった広間が近付く。今度はゴブリンが明かりを点けている様で、通路に光が漏れ出ている。
俺は聖剣を抜き広間に飛び込んだ。
そこで見たのは多数のゴブリンに囲まれて、丸裸のまま部屋の中央に脚を大きく広げた体勢で上から吊るされていたティリティアだった……。
今分かるのは脛が浸かる位までの水が流れている場所だと言う事だけだ。
俺はバリアのおかげで無傷のままだけど、他の仲間はそうはいかなかったらしい。
真っ暗の中、いきなり建物の3階ないし4階相当の高さから落とされたんだ。無事でいる方が奇跡だろう。
現に女達の苦痛から来る呻き声がいくつか聞こえてきた。
「お前達、無事か? 怪我とかしてないか?」
無事じゃないだろうが、怪我の度合いを知る為に俺はみんなに向けて声を掛けた。
最悪ティリティアさえ無事なら、ある程度は魔法で怪我の治療が出来るはずだ……。
「私は落ちた時に肩からいってしまった。多分左肩が脱臼している。あと右脚も多分折れている…」
「アタイはちょっとヤバいかも… 両膝を強く打って捻挫か膝を割ったか…? それより右目と尻にゴブリンの矢を受けちまってね… 多分矢に奴らの糞が塗られている。このままじゃ『震え病』になって死んじまうかもな…」
俺は濡れずに済んだ荷物の中から火口箱(火打ち石と着火剤のおがくず)と予備の松明を取り出し火を点けた。これでもこの世界に来て何日も野宿しているからな、その程度は慣れたもんだ。
松明の明かりが部屋を照らす。落とされた上の部屋と同じ位の広さで、足元には動物の骨や果物のタネ等、ゴブリン達はゴミ捨て場として活用している様だった。
洞窟というよりも鍾乳洞だな。地下の川は更に何処かへと流れが続いている。
落とし穴は既に塞がれていて、直接上に戻る道は無さそうだ。
俺以外は全員重傷だ。特にベルモは複数の矢傷があり、そこに塗られていた『毒』によって病気の危機に見舞われていた。ベルモの言う『震え病』ってのは恐らく俺達の世界で言う『破傷風』の事だろう。
とりあえず2人の状況は分かった。ティリティアが魔法で治せるようなら治して貰って……。
「あれ? ティリティアはどこだ…?」
ティリティアの姿が見えない。落とされる直前まで一緒にいたのは間違い無いが、落ちてから彼女の声を聞いていない。
「ティリティア様は落とされる寸前に後ろからゴブリンに連れ去られた。ゴブリンに囲まれて射掛けられた時に私はティリティア様を守ろうと後ろを向いた。その時にティリティア様は奴らに口を塞がれて闇に消えていった…」
クロニアは肩の痛みと主君の娘を守れなかった慚愧とで、顔を歪ませながら呟いた。
えー、ヤバいじゃん。ティリティア無しでこの状況から生還できる可能性はかなり低いんじゃないのか…?
ティリティアは心配だが、とにかく今動けるのは俺だけだ。学校の保健体育の授業でちょっと習った程度の知識しか無かったはずだが、何故か頭の中に怪我の治療法が自然に浮かび上がってくる。これも聖剣の『どんな無理難題も解決できる知能と知識が与えられる』って特典かな?
まずはベルモに刺さった矢を抜いて傷口を水筒の水で洗う。足元の川の水は鉱物や細菌で汚染されている可能性があるので今は使えない。水筒の水は一応前もって煮沸してあるから、最低限の洗浄は出来たと思う。更にベルモの荷物の中にあった酒を一口含み、傷口に吹き掛けて消毒した。
次にクロニアだが、腕を引っ張って無理矢理関節を嵌め、彼女のマントの裾を切って三角巾にして腕を吊った。
骨折はゴミの中から添え木に使えそうな骨があったので縛って固定する。応急処置は出来たが、それでもしばらくは安静にする必要がある。
最低限だが今できる精一杯の処置をした。ティリティアを救出してこれれば、治癒魔法によって更なる回復が見込めるかも知れないが……。
「我々の事はもう良い… お前は早くティリティア様を助けに行け!」
「そうだな。ゴブリンがあのお姫様に何するか考えただけで気分が悪くなる…」
2人の言葉に焦燥感を高めながら俺は川の下流へと走って行った。
下流へ走ったのは、上流へ向かっても行き止まりになる可能性が高かった為だ。下流なら何処か外へと続いている可能性もある。今いる場所から上に上がれないのであれば、外からさっきの入り口に入り直す等、別の道を探るしか無いからな… 無事でいてくれよティリティア……。
☆
狭い鍾乳洞、ぬめついて滑る川底、手にした松明が儚げに照らし出す壁面が永遠に続く様に思えた頃、俺は外に続く出口に到達した。
ここからまた廃坑の入り口まで戻るのは難儀だが、ティリティアの命が掛かっている。疲れなんか気にしていられなかった。
どちらにしても仲間3人がこの廃坑の中で俺の助けを待っているんだ、休んでなんかいられない……。
☆
外に出て時間にして30分ほど、俺はようやく廃坑の入り口まで戻ってきた。落とし穴に落とされてから怪我の処置や鍾乳洞の探索等も含めて諸々で1時間強といった所か。ティリティア、無事ていてくれよ……。
今度は廃坑の入り口に見張りのゴブリンが2匹立っていた。見張りと言いつつ、疲れ切った表情で眠そうだ。俺は聖剣を抜いて奇襲をかけ、だらけた2匹を瞬時に斬り殺した。
廃坑に入ってすぐに聞こえたのは女の叫び声。時間的に他から女を攫ってくる余裕は無かったはずだ。多分、いやきっとティリティアの声だろう。
松明を掲げながら俺は走った。予備の松明と火口箱も濡れない様に油紙で包んで持ってきた。また水の魔法で不意打ちされても、どうにか対処できると思う。
ティリティアの叫び声は断続的に続いており、俺が走るに従って段々と近付いていくのが分かる。もうすぐだ。
女の叫び声とは別にゴブリンどものざわめく声も聞こえてきた。複数の、恐らく10匹前後が集まっている。
先程の落とし穴のあった広間が近付く。今度はゴブリンが明かりを点けている様で、通路に光が漏れ出ている。
俺は聖剣を抜き広間に飛び込んだ。
そこで見たのは多数のゴブリンに囲まれて、丸裸のまま部屋の中央に脚を大きく広げた体勢で上から吊るされていたティリティアだった……。
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