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第27話 疑惑と野望
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~クロニア視点
「ねぇクロニア、貴女は勇者様の事をどう思っているの…?」
ラモグの門を通り抜け銀麦亭への道すがら、ティリティア様の斬り込む様ないきなりの一言に、私の全身は動きを止めてしまった。
「ど、『どう』とは…? 彼は旅を続ける仲間であって、それ以上でもそれ以下でもないかと…」
「冗談はおよしなさい。貴女ほどの人が、そんな軽いお付き合いの男性相手にあんなに淫らな姿を晒す訳が無いでしょう?」
さすがにこれは看過できない。衆目のある場所でそんな事を言い触らされたら、私だけでなく叔父の権威にも傷が付きかねない。
「ティ、ティリティア様こそ往来でその様なはしたない発言はご自重下さい!」
「…いいえ、せっかくの良い機会だから女同士じっくり話し合いましょう」
ティリティア様の目はどっしりと座っている。彼女の幼い頃からよく知っている、これは何を言っても聞かない顔だ。
「いや、『じっくり』と申されましても、我々にはすべき事がありますし、あの男を放置したままでまた何か問題を起こされても困るので、早急に用事を済ませて帰りたいのですが…」
「半刻くらい平気でしょう。馬に揺られて脚が痛いので座ってお話ししたいわ… あ、あそこの茶屋で良いでしょう」
そう言ってティリティア様は1人ですたすたと、食堂兼酒場といった雰囲気の店に入って行ってしまった。
☆
「ねぇクロニア、わたくしは別に責めている訳でもイヤらしい興味本位で聞いている訳でも無いの。前にも言った様にわたくしは自分から彼に『抱いて欲しい』とお願いしました。でも貴女や、恐らくはベルモさんも違うのでしょう…?」
テーブルに付くが早いか、ティリティア様は一息つく間も与えずに質問を再開してきた。一応周りに他のお客さんも数人いるので、互いの顔を近づけて内密話の様相を呈してしまっている。
「あの勇者様は… その、容貌、体格、性格と正直に申し上げて、とても男性としての魅力に溢れている方にはお見受けできません。それなのに何故貴女の様な、昔から真面目で貞淑な方が無防備に身を任せる事になったのですか?」
確かにその辺りに関しては未だに自分自身でも不可解なままだ。私も初めの印象は『武装は大仰だが頼りない感じの世間擦れしていない若者』でしかなかった。
だが部下のヘッケラーとの模擬戦の後、彼に掴みかかった時に私の中で唐突に彼を愛おしく思う気持ちが溢れ出して、気が付けばその日のうちに体の関係を持っていた。
「それは… 私にも分かりません… あの男に触れられると全身が快感に包まれて何も考えられなくなってしまって…」
私はそれまで男性との性体験はおろか、恋愛らしい恋愛もしてこなかった。なので私のこの感覚が世間一般の娘と比べて、正しいのか誤っているのかすらも判断がつかない。
「それはわたくしも同じ… あの方に貫かれながら抱き締められたら、もう至上の悦びと言えますものね…」
夢見る様にうっとりと話すティリティア様。その気持ち、とてもよく分かります。
それが故かどうなのか、私の体は麻薬の様にあの男を求めて止まない。2日も抱かれない日が続くと、気が狂いそうになる程に体が火照って仕方がない。
「でもだからこそ怪しさが増すのです。貴女は彼に口説かれた訳では無いのでしょう? しかも無理矢理という訳でも無い… きっとあの方は魔道や媚薬の類で女性を魅了する事が可能なのでは無いかしら…?」
その可能性は私も考えなくは無かった。しかし魔法や薬学の知識もなく、ずっと男所帯で暮らし『娘』としての経験の薄い私では検証手段に欠け、更に彼から貰える快楽によって『それでも良いかな』と思考停止してしまっていたのだ。
森の鬼であるベルモも当初は敵であったが、無様な命乞いにも見えた彼との接触を機会に、急激に態度を軟化させている。確かに不自然だ。
「言われてみれば確かに妙な点ばかりです… どうしましょうティリティア様? やはりあの男を自由にさせておくのは危険、一般人と大体的に接触する前に拘束して投獄するべきでしょうか…?」
「落ち着きなさいクロニア。あの出鱈目に強い人を、わたくし達なんかでどうやって拘束とか投獄なんてできましょう?」
慌てる私と対称的に、ティリティア様は『全てお見通し』とばかりに落ち着き払ってお茶を口にしている。
「しかし…」
「彼には何もしません、出来ません…… ね、クロニア。彼には途轍も無い価値があります。一騎当千の戦闘力を持ちながら心は弱く、全ての女性を傅かせる魅力と精力を持ちながら女性との外交には消極的。こんな逸材、封じたり世に放ったりするのは論外でしょう…」
ティリティア様の目が怖い。ほんの数日前のあどけない少女の希望に満ちた光ではなく、宮廷の権謀術数に長けた悪徳貴族の光を放っている。
「わたくし達で彼を正確に導く事が出来れば、この国を… いえ、この世界全体すらも意のままに治める事さえ可能と考えますわ」
何も言えずに萎縮している私を他所に、ティリティア様は楽しげに独演会を続けている。
「クロニア、貴女とわたくしで彼をこの国の王にしてあげましょうよ。正妻の地位が欲しいなら譲って差し上げますわ。次の王位は順当に『産まれた順番で』良いわよね…」
もしかしてティリティア様はかなり早い段階でそんな事を考えていたのだろうか? そう言えばティリティア様の合流後は彼が果てる時はほぼ必ずティリティア様の中だった。
私もベルモも妊娠の可能性を考えて、自らの中に出されるのは拒否こそしないものの歓迎していなかったのだが、その事も含めてティリティア様の手の内だったとでも言うのだろうか…?
目には暗い炎を灯しつつ、無垢な美少女の表情のまま周到な国家反逆計画を語る幼馴染に、私は宿屋に盗賊を迎えに行く事も忘れて呆然としてしまっていた……。
「ねぇクロニア、貴女は勇者様の事をどう思っているの…?」
ラモグの門を通り抜け銀麦亭への道すがら、ティリティア様の斬り込む様ないきなりの一言に、私の全身は動きを止めてしまった。
「ど、『どう』とは…? 彼は旅を続ける仲間であって、それ以上でもそれ以下でもないかと…」
「冗談はおよしなさい。貴女ほどの人が、そんな軽いお付き合いの男性相手にあんなに淫らな姿を晒す訳が無いでしょう?」
さすがにこれは看過できない。衆目のある場所でそんな事を言い触らされたら、私だけでなく叔父の権威にも傷が付きかねない。
「ティ、ティリティア様こそ往来でその様なはしたない発言はご自重下さい!」
「…いいえ、せっかくの良い機会だから女同士じっくり話し合いましょう」
ティリティア様の目はどっしりと座っている。彼女の幼い頃からよく知っている、これは何を言っても聞かない顔だ。
「いや、『じっくり』と申されましても、我々にはすべき事がありますし、あの男を放置したままでまた何か問題を起こされても困るので、早急に用事を済ませて帰りたいのですが…」
「半刻くらい平気でしょう。馬に揺られて脚が痛いので座ってお話ししたいわ… あ、あそこの茶屋で良いでしょう」
そう言ってティリティア様は1人ですたすたと、食堂兼酒場といった雰囲気の店に入って行ってしまった。
☆
「ねぇクロニア、わたくしは別に責めている訳でもイヤらしい興味本位で聞いている訳でも無いの。前にも言った様にわたくしは自分から彼に『抱いて欲しい』とお願いしました。でも貴女や、恐らくはベルモさんも違うのでしょう…?」
テーブルに付くが早いか、ティリティア様は一息つく間も与えずに質問を再開してきた。一応周りに他のお客さんも数人いるので、互いの顔を近づけて内密話の様相を呈してしまっている。
「あの勇者様は… その、容貌、体格、性格と正直に申し上げて、とても男性としての魅力に溢れている方にはお見受けできません。それなのに何故貴女の様な、昔から真面目で貞淑な方が無防備に身を任せる事になったのですか?」
確かにその辺りに関しては未だに自分自身でも不可解なままだ。私も初めの印象は『武装は大仰だが頼りない感じの世間擦れしていない若者』でしかなかった。
だが部下のヘッケラーとの模擬戦の後、彼に掴みかかった時に私の中で唐突に彼を愛おしく思う気持ちが溢れ出して、気が付けばその日のうちに体の関係を持っていた。
「それは… 私にも分かりません… あの男に触れられると全身が快感に包まれて何も考えられなくなってしまって…」
私はそれまで男性との性体験はおろか、恋愛らしい恋愛もしてこなかった。なので私のこの感覚が世間一般の娘と比べて、正しいのか誤っているのかすらも判断がつかない。
「それはわたくしも同じ… あの方に貫かれながら抱き締められたら、もう至上の悦びと言えますものね…」
夢見る様にうっとりと話すティリティア様。その気持ち、とてもよく分かります。
それが故かどうなのか、私の体は麻薬の様にあの男を求めて止まない。2日も抱かれない日が続くと、気が狂いそうになる程に体が火照って仕方がない。
「でもだからこそ怪しさが増すのです。貴女は彼に口説かれた訳では無いのでしょう? しかも無理矢理という訳でも無い… きっとあの方は魔道や媚薬の類で女性を魅了する事が可能なのでは無いかしら…?」
その可能性は私も考えなくは無かった。しかし魔法や薬学の知識もなく、ずっと男所帯で暮らし『娘』としての経験の薄い私では検証手段に欠け、更に彼から貰える快楽によって『それでも良いかな』と思考停止してしまっていたのだ。
森の鬼であるベルモも当初は敵であったが、無様な命乞いにも見えた彼との接触を機会に、急激に態度を軟化させている。確かに不自然だ。
「言われてみれば確かに妙な点ばかりです… どうしましょうティリティア様? やはりあの男を自由にさせておくのは危険、一般人と大体的に接触する前に拘束して投獄するべきでしょうか…?」
「落ち着きなさいクロニア。あの出鱈目に強い人を、わたくし達なんかでどうやって拘束とか投獄なんてできましょう?」
慌てる私と対称的に、ティリティア様は『全てお見通し』とばかりに落ち着き払ってお茶を口にしている。
「しかし…」
「彼には何もしません、出来ません…… ね、クロニア。彼には途轍も無い価値があります。一騎当千の戦闘力を持ちながら心は弱く、全ての女性を傅かせる魅力と精力を持ちながら女性との外交には消極的。こんな逸材、封じたり世に放ったりするのは論外でしょう…」
ティリティア様の目が怖い。ほんの数日前のあどけない少女の希望に満ちた光ではなく、宮廷の権謀術数に長けた悪徳貴族の光を放っている。
「わたくし達で彼を正確に導く事が出来れば、この国を… いえ、この世界全体すらも意のままに治める事さえ可能と考えますわ」
何も言えずに萎縮している私を他所に、ティリティア様は楽しげに独演会を続けている。
「クロニア、貴女とわたくしで彼をこの国の王にしてあげましょうよ。正妻の地位が欲しいなら譲って差し上げますわ。次の王位は順当に『産まれた順番で』良いわよね…」
もしかしてティリティア様はかなり早い段階でそんな事を考えていたのだろうか? そう言えばティリティア様の合流後は彼が果てる時はほぼ必ずティリティア様の中だった。
私もベルモも妊娠の可能性を考えて、自らの中に出されるのは拒否こそしないものの歓迎していなかったのだが、その事も含めてティリティア様の手の内だったとでも言うのだろうか…?
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