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第31話 新たな仲間、新たな舞台へ

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「お兄さんと戦士のお姉さんは、前に森の集落に来た事があったから顔は知ってたんだけど、町の外で会った時お兄さん顔を半分隠していたから分からなかったんだよ。そんで町中でお姉さんと一緒に現れたからやっと気付いたって寸法さ!」

 このモンモンというガキは放っておくと1人で延々と喋り続けるタイプの様だ。まずは物の道理を教える所から始めなければならないのだろうか? 全く……。

「全く、ベルモの奴も厄介な人物を送り付けて来たものだ。確かに腕は良さそうだが、こんな『子供』を…」

 俺の思考を読んだのか、クロニアがモンモンを評じる。確かにベルモの所なら盗賊技能の持ち主は結構な数が居たはずだ。なのによりにもよって来たのがモンモンこいつとは、ベルモの悪意を感じざるを得ない。

「でも妙ですわよね… あの面倒見の良いベルモさんが、こんな『何も知らなそうな』可愛らしい子を寄越してくるなんて…?」

 ティリティアの言いたい事はうっすらだが分かる。俺達のパーティはベルモを含む全員が肉体関係にある。その事情を熟知しているベルモが、『そんな所』にわざわざ子供を送り込んでくるのは不自然すぎる。
 
 このモンモンという子供も是非仲間に入れてやってくれ、という意味なのか、子供の目に付く所で『そういう行為』は慎めよ、という意味なのか…? 普通に考えれば後者だが……。
 
 何よりモンモンには計らずも既に手を触れてしまっているのだから、とっくに聖剣の魔力で俺の虜になっているはずなのだが、今の所モンモンは潤んだ瞳で俺を見つめてきたり、露骨に体を擦り付けてきたりはしていない。

 これもイメッタを含む過去4人の女達には見られなかったリアクションだ。ベルモには通用したのだからオーガにも効くはずだし… もしかして聖剣の魅了は子供には効かないとかなのかな?

「なぁモンモン、つかぬ事を聞くがお前さん何歳いくつだ?」

 もし年齢で聖剣の効果の違いがあるのなら、今後の為にもその辺りはキチンと把握しておきたい所だ。

「ボク? ボクは数えで14歳だよ。でも森で一番素早くて腕が良いのはボクだからね? 子供だと思って舐めてると…」

「まぁ、わたくしと1歳ひとつしか違いませんの?」

 ティリティアが驚きの声を上げる。『数え歳』って事は満で言うならモンモンが13、ティリティアが14なのか……。

 そうすると聖剣の魔力は14歳以上から効果があるって事なのかな? それともそんな単純な話でも無いのかも…?

 ちなみに…?
 
「な、何だ? ニヤけた顔で私を見て。私は20歳はたちだ、これで良いか?」

 あまり重要ではなかったがクロニアの年齢も把握した。
 
 まぁ、それはそれとしてモンモンをどう扱うべきだろうか? これまで何も考えずに3~4人でイチャイチャベタベタグチョグチョしてきたから、その枠外に人が入る事を想定していなかったのは、少なからず失態と言えるだろう。

「でもベルモ姐さんに『お兄さん達の仲間になれ』って言われて凄~く嬉しかったんだよ? お兄さんがあの化け物熊を倒してくれたおかげで、森の中で安全に狩りや採取が出来る様になったから、ボクの力で恩を返せるなら何でも言ってね!」

 話を聞く限り、俺達に対して悪意がある訳では無さそうで、性根の悪い子ではない。ただ考え無しに動く癖があるみたいなので、その辺を含めて厄介払いされてきた感は否めない。

「まぁ差し当たって俺達のふところに手を出さないと約束してくれないか? 金が要る時に財布が無いのはとても困る」

「イヤだなぁ、まるでボクが見境なしに泥棒しているみたいな言い方は止めてよ。ちょっと借りただけで盗んだ訳じゃないよ!」

 そういう自覚が無いから言ってるんだけどなぁ… まぁ自覚が無いからこそ言ってもピンと来ないのかも知れない。とりあえずこの場は諦めよう。

「ところでモンモンさんは、体に変調はございませんの? 勇者様を前に妙に熱っぽいとか動悸がするとかは…?」

 一見今の事態に関連の無さそうなティリティアの言葉に俺がドキリとしてしまう。これはつまり『俺が触れた』事によって女性を魅了するカラクリを既にティリティアが察している、という意味とも受け取れる。
 
 クロニアも質問の意図を理解しているのか、無言のまま頷いている。もしかして俺の聖剣の力が女達にバレているのか?
 これってもしバレたら『下劣な手段で女を誑かした』としてクロニア達から軽蔑される案件では無かろうか? いや、軽蔑で済む位ならラッキーなんだろうなぁ……。

「へ? 何で? 至って通常通りだよ? お兄さんは強くてカッコいいとは思うけどね」

 モンモンの答えは以上だ。やはり魅了された形跡は見受けられない。聖剣の効力に年齢制限があるのか、俺達の知らない別の理由があるのかは、まだ分からないけどね……。

「ま、まぁモンモンに関しては大体分かったよ。お、追手の衛兵が来ないとも限らないから、今は急いで後の話は野営の時にでもするとしよう…」

 あまりティリティアに突っ込んだ話をされたくなかった俺は、旅を急ぐ振りをして無理矢理に歓談を中止させた。
 クロニアやティリティアが聖剣の秘密を知った時にどういう態度に出てくるかで、俺も対処方法を考えておく必要が出てきた訳だ。

 状況が状況だから、もう二度とラモグの町に出向く事は無いだろうな。何だかんだで銀麦亭の女将さんとか世話になった。礼の一言も言っておきたかったが、それは叶いそうに無いだろうな……。

 ☆

「そんで慌ててラモグから出てきたみたいだけど、ボク達は何処へ向かっているのかな?」

 慌てた理由の半分はモンモンおまえにあるのだから、もう少しわきまえて欲しい所だが、ゴチャゴチャ言って「えー? 何でさ?」とか質問攻めが始まっても煩わしいだけなのでスルーする。

「これより我々が向かうのは王都である『バルジオ』の街だ。そこで冒険者として、魔物を狩るなどして生計を立てていく予定だ」

 クロニアが代わりに答えてくれた。モンモンの相手は面倒くさいから、もうクロニアに全部任せようかなぁ…?

「へぇ王都! そりゃドキドキワクワクの大冒険が待っている予感がするね!!」

 その辺は俺も同意だ。転生して後、ここまで本当にバタバタで状況に流されるだけだったから、王都ではもう少し選択肢に余裕のある人生を送りたいと切に願う。
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