魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
37 / 120

第38話 難易度5

しおりを挟む
「遅いよ! 2人でどっかの暗がりでイチャイチャしてたのかと思ったよ!」

 冒険者匠合ギルドに戻るやいなやモンモンに噛みつかれた。確かに帰り道でアイトゥーシア教会の事を色々とティリティアから教えてもらいながら歩いていたが、さすがに天下の往来でいかがわしい事はしない。まぁ普段よりは遅い到着になってしまったのは間違いないが。

「10枚ほど依頼書はあったのだが、あらかた他の冒険者達に持っていかれてしまったよ。まさかとは思っていたが、本当に争奪戦なんだな…」

 やつれたクロニアが話に入ってきた。多分争奪戦とやらに破れたのだろう。
 掲示板に残っていた依頼書はあと3枚。『ゴブリン退治』『外壁補修工事』そして『山賊団の壊滅』だった。

 ゴブリンと外壁は常に置かれている様な物なので(誰かが受注してもすぐ同様の依頼が貼られる)気にしなくても良いが、最後の山賊団というのは少し気になる。なぜなら……。

「あら、山賊退治なんてゴブリンと大差ない仕事と思いましたがこれは…」

「ええ、この依頼の難易度は『5』、先の翼竜ワイバーン退治でも難易度は『3』でした…」

「めちゃくちゃ強い山賊が出てくるって事なのかなぁ…?」

 掲示板を前に各々が所見を述べる。確かにこれが難易度『2』とかなら、何の疑問も抱かず普通に山賊退治という雰囲気なのだろうが、さすがに最高難易度『5』は不穏すぎる。

「依頼主の話によれば、その依頼は魔道士絡みなのだそうです。なので高い難易度と相まって皆さん遠慮されてますね…」

 受付のお姉さんに話を聞くと『そういう事』らしい。それ以上の情報は『依頼を受けた上で依頼主に直接聞いてくれ』だそうだ。

「明らかに怪しいな。どちらにしてもまともな依頼ではないぞ?」

「そうですわね… 魔法使いには関わらない方が得策ですわ…」

 クロニアとティリティアから意見が出る。そして彼女らの視線が俺に集中した。俺に何らかの『決断』を求めているのだ。

 まずクロニアの言う『怪しい』だが、依頼書だけでは情報量が少なすぎて何とも判断がつかない。
 魔道士絡みと言っても、魔道士が山賊を率いているのか、魔道士が集団で山賊化しているのかでは状況がまるで変わってくる。
 更に依頼を出す側としても、リスキーな情報は伏せておきたいだろうに、なぜわざわざ『山賊退治』と銘打って依頼を出したのか? 魔道士が敵ならば『魔道士退治』となるのが自然だし、難易度や報酬が高いのも頷ける。

 何かの人を引き込むための罠の可能性は? いやいやそれならもっとシンプルで効果的な集め方がいくらでもある。

 そもそもティリティアの言う様に「魔道士とは関わるな」が一般常識となっている世界で、それを掲げて依頼書を出してくるのは、よほど切羽詰まっているのか、よほど裏があるかだろう。

 確かにこんな所でわざわざ火中の栗を拾いに行く必要など……。

「でも装備でお金使っちゃったから生活費が苦しいんじゃないの? それに魔法使いなら特別な『お宝』を持っている可能性もあるよ! それはちょっと見てみたいかな…?」

 …モンモンの指摘ももっともだ。パーティの強化に繋がる魔法のアイテムとかがあれば、今後の活動において有用なのは間違いない。
 クロニア達の視線は俺に集中したままだ。視線から感じる感情はクロニアが「中立」、ティリティアが「消極的反対」、モンモンが「賛成」だな。
 
 もし仮に魔法使いと敵対するにしても、今後ずっと避けて通れるほど甘い世界でも無いだろうし、『魔法使いは何が出来て何ができないのか?』は早いうちに見極めておきたい。

 あとは『難易度5』という点だ。クロニアの言う様に、前回のワイバーン退治の難易度は『3』だった。あれでもそれなりに苦戦したのだから、更に2段階上の任務の危険度は如何ほどの物か想像もつかない。
 仮に俺が聖剣の力で無双できたとしても、周りのメンバーに累が及ぶようでは困る。今回はゴブリン戦と同様の集団相手だし、俺の手が回らない所で、まだ装備の更新が済んでいないクロニアにティリティアとモンモンの2人を守れというのも酷な話だろう……。

 それにモンモンではないが、今は何よりふところ具合が乏しい、という喫緊の問題も残っている。現状の所持金では明日いっぱいの宿泊まりで底をつく計算になる。
 また明日の分の依頼書を頼りにしても良いのだが、明日確実に割よく稼げる依頼書が貼り出される保証は無い……。

 さて、どうしたものかな…?

「ねぇ、迷うようならいっそコインで決めたら?」

 考え込む俺を面白がる様にモンモンが10モア(1カイ=100モア)貨を投げてきた。
 飛んできたコインを受け取りしばし考える。無駄に悩むくらいなら運を天に任せるのもアリかも知れない。

「そうするか。では表なら『受ける』、裏なら『見送り』で…」

 俺は預かったコインを指で弾いた。

 ☆

「初めまして。わたくしは『王立冒険者支援協会』のイクチナ・バリガと申します」

 依頼主の所へ詳しい話を聞きに行くと、年の頃はクロニアより少し上くらいの、腰まで伸ばした綺麗な銀髪でガラス細工の様に線の細い、儚げながらもとても美しい女性が出迎えてくれた。
 依頼主はまさかの冒険者匠合ギルドそのものだった訳だが、このイクチナさんという荒事に無縁そうなお姉さんも『ただの事務員』という雰囲気ではない。ギルドの責任者、或いは幹部といった立場なのだろう。

 まぁうちにも勘当されたとはいえ侯爵令嬢のティリティア様がおられる訳だから、冒険者と一言で言っても色んな人がいるのは確かだよな……。

「依頼の詳細を教えてくださいませ」

 ティリティアが先頭に立ち質問をする。イクチナさんと俺との間を塞ぐように位置をずらしたのは、俺とイクチナさんを接触させないようにする為だろうか?

「かしこまりました。実は…」

 それからの状況説明ブリーフィングは比較的簡単に終わった。
 ざっくり言うと『輸送中の魔法の宝具が山賊に奪われてしまったので、それを取り返したい』との事だ。

「ただ、くだんの宝具は一般の人達から見て『売って換金しよう』といった芸術的に価値を認める物ではありません。にも関わらず持ち去られたのは理由があるはずです。例えば相手方に魔道士がいるとか…」

 イクチナさんは低血圧っぽい喋り方で淡々と説明をしてくる。

「宝具を見極めて見つけられるのは私だけなので、現場には私も同行します。私は殴り合いの戦闘は出来ませんので、私の護衛も同時にお願いします」

 なるほどね。臨時とはいえ美人の加入でまたパーティが賑やかになるな。クロニアとティリティアは何だか渋い顔をしているけど、まぁ気にしなくても良いよな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...