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第78話 結論
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「はぁ、結婚… ですか…?」
大司教の言葉に、ティリティアは顔を赤らめて俺の方をチラチラと見てくる。何だ? こんなデリケートな問題を俺に答えさせようという考えなのか?
そんな事を考えていたら、大司教様の鋭い視線が俺に向いた。
「君の考えはどうなのだい? ティリティア様の身分を知りながら関係を持って、子供が出来てから知らぬ存ぜぬ、では通じないよ?」
大司教様の目がマジだ。俺の保身の為にもこの人は敵に回したくないし、のらりくらりと答えて躱せる相手でも無い。
「あの、その… 俺もちゃんと責任を取るつもりでは、います… ただ流れ者の俺と貴族のティリティアでは身分が釣り合わないので、今は少しでも出世しようと冒険者稼業に精を出している状況です…」
俺の答えを聞いてティリティアの顔がパァと明るくなる。ここまでで嘘はついていない。
この国は冒険者の身分が認められていて、ランクの高い冒険者は貴族にだってなれる。現に今の国王や目の前の大司教様は、元冒険者からの成り上がりなのだ。
「現在なんとか4点冒険者にまで上がれたので、あと2回ほど任務をこなせば最高ランクに上がれるはずなんです…」
ティリティアと結婚するのが嫌な訳じゃない。ただ「今はまだその時ではない」という話だ。加えてゾンビ大量発生で「そんな場合じゃない」というのもある。
「なるほど… 君に関する調査はチャロアイトから王へ報告が上がっていて、その内容は私も伝え聞いている。君はその… 本当に別の世界とやらから来た『異世界人』だというのかね…?」
おっと、そのネタはチャロアイト以外の仲間たちはまだ話していない情報だ。その証拠に隣のティリティアは不思議そうな顔で俺を見つめている。
当初は仲間達に不信感を持たせない為に敢えて素性を隠していたのだが、今となっては俺が異世界人だろうと、それが理由で離れていく奴らではないと信じられる。
ここは好い機会だから、ティリティア達にも俺の素性を共有しておいてもらう方が得策だろう。
「この世に在ってはならないその背の魔剣を始め、君の周りでは不思議な事件が多発しすぎている。王を含む私の昔の仲間の半数は君を『世界を滅ぼそうと遣わされた魔神の尖兵』と考えている…」
だろうな… 謁見の時にもビシバシ悪意の視線を感じたし、王の口からもそう言われた。
なによりチャロアイトは「そういう事態」が起きた時に、俺を殺す為の刺客としてパーティに送り込まれているのだ。
そして今日の話の神様絡みのアレコレで、俺も同じ考えに到ったよ……。
最初に出会った女神は『アイトゥーシア』と自称していたが、この世界に来て教わったアイトゥーシア神は慈悲深い婆さんの姿をとっており、俺が会ったムチムチプリンのお姉さんでは無かった。つまりあれは嘘だったんだな。
まぁ神様だから色んな姿になれて当然なのかも知れないが、清貧と貞淑を旨とするアイトゥーシア教会の教義が、俺の前で乱れに乱れた色情女神から出てくるとは、とてもじゃないが信じられない。
まぁ、あの女の司る力が『淫奔』とやらなら、全てに納得できる仕掛けだよな……。
俺は恐らく、女神アイトゥーシアと敵対する神々の用意した魔剣を持たされてこの世界に派遣されてきた。
あのアイトゥーシアを騙るエセ女神の思惑だと、俺は「自由に生きた」結果、富と権力と女を求めて暴れまわり、世界に混乱をもたらす存在になると想定されていたのだろう。
それに合わせて『蛇』だのゾンビだのが次々と現れて、俺の暴虐を後押しする計画だったのだと考えられる。
そう考えるとガドゥの存在も、邪神の駒という事で間違いないだろう。ガドゥは封じられた神、一般人には知り得ない『ドゥルス』の名を出してきた。恐らく奴は『ドゥルス』の信者、或いは神官級のエージェントの可能性が高い。
ゴブリン退治に行った先でガドゥと鉢合わせしたのも、きっと偶然ではない。あそこのゴブリンは明らかに組織的に訓練されていて、雑魚モンスターの割に妙に強かった。
もしガドゥが来たるべき戦争に備えてゴブリン達を訓練していたのならば、ガドゥがあの場所にいた事とゴブリンが強かった事、更にガドゥとゴブリンが敵対していなかった事などの説明が一気に付く。
そして『蛇』と戦った時、『蛇』は俺に「我らは共に『ガラド』の使徒」だと言っていた。あの時は意味が分からなかったが、今となってはおぞましい現実に胃が逆流しそうだ……。
加えて『蛇』の毒が俺には効かなかった事も、「魔剣を持つ者は同類」と見做されたから。
そして勇者ショウの聖剣で『蛇』が討たれた時に『蛇』のエネルギーが俺に注ぎ込まれたのは、『蛇』が避難場所を求めて魔剣に逃げ込んだのだろう。
まぁ『蛇』の発生はその封印である『熊』を、俺が事情を知らずに倒してしまったのが原因なので、多分に偶然の要素が強いかも知れないが……。
考えれば考えるほど、俺の正体は『邪神の尖兵』で、この世界を統べるアイトゥーシア教会、引いては社会の敵という結論に整合されていく。俺が王や大司教らの立場なら、即座に殺してしまった方が良手だと思うだろうな……。
だがハッキリ言って俺はこの世界を滅ぼしたいとか、アイトゥーシア教会を潰したいとかは微塵も思っていない。「女に囲まれてのんびりスローライフ、時々無双」が出来ればそれで十分幸せなんだ。大それた野望なんかは始めから持ち合わせていないんだ……。
ましてや子供が出来て結婚すら視野に入っているのに、それをわざわざ壊したい、などと思うはずがない。
「俺の背負っている物が『魔剣』だと言うのは理解しました。そしてその力の源も… でも俺はこの世界が好きです。関わってきた人間で誰一人として死んで欲しいなんて思った人は居なかった。元の世界の方がよっぽど地獄だった…」
これは嘘偽りの無い本心だ。もしアイトゥーシアと敵対する神々がティリティアやクロニア達を殺そうとするのならば、俺は全力でそいつらと戦うだろう。
ただそれとは別に、イジメられっ子で誰からも愛されない、完全に心が死んでいた俺を、この手の聖剣(いや、魔剣か…)とあの女神によって、やり直しをさせてくれた点では本気で感謝している。是々非々だ。
たとえ悪い神様でも、俺の魂を救ってくれた存在には変わりない。出来れば殺したくはない。それも偽り無い本心だ。
「ふむ… とにかく君のその気持ちは明日からの仕事で証明してもらうしか無いですな。現地には私とゴルツ… あ、全身鎧の鬼族の彼が向かいます。彼は君の素性を一番怪しんでいますから、努々手を抜いたりしない様に…」
ゴルツさんてのは、恐らく謁見の時に居たやたらゴツい鬼族だよな。その佇まいだけでも王様より強そうだったが、迂闊な行動をしたら後ろからバッサリ斬られそうだ……。
という訳でまずは任務優先、結婚その他もとりあえず保留だ。全てはゾンビ退治ウェーブ2をクリアしてからだな。
☆
大司教との話も終わり、解散の流れになった所でティリティアが口を開いた。
「大司教様、実は私どもの仲間が『蛇』の毒で大変苦しんでおります。魔道に頼った妖しい薬よりも、大司教様の御力で彼女を癒やしては頂けませんか…?」
おっとそうだった。ベルモの治療の件も頼もうと思っていて忘れていた。
もし大司教がベルモを治せるなら、効果の怪しい例の薬を使わずに済み、安心できる。ティリティアさんグッジョブだ。
「その話も聞き及んでいます。そしてその方は聖女であるホムラさんでも治せなかったとも… 彼女で無理なら私でも無理だと思いますよ…?」
そう答えた大司教の顔は今日一番曇っていた……。
大司教の言葉に、ティリティアは顔を赤らめて俺の方をチラチラと見てくる。何だ? こんなデリケートな問題を俺に答えさせようという考えなのか?
そんな事を考えていたら、大司教様の鋭い視線が俺に向いた。
「君の考えはどうなのだい? ティリティア様の身分を知りながら関係を持って、子供が出来てから知らぬ存ぜぬ、では通じないよ?」
大司教様の目がマジだ。俺の保身の為にもこの人は敵に回したくないし、のらりくらりと答えて躱せる相手でも無い。
「あの、その… 俺もちゃんと責任を取るつもりでは、います… ただ流れ者の俺と貴族のティリティアでは身分が釣り合わないので、今は少しでも出世しようと冒険者稼業に精を出している状況です…」
俺の答えを聞いてティリティアの顔がパァと明るくなる。ここまでで嘘はついていない。
この国は冒険者の身分が認められていて、ランクの高い冒険者は貴族にだってなれる。現に今の国王や目の前の大司教様は、元冒険者からの成り上がりなのだ。
「現在なんとか4点冒険者にまで上がれたので、あと2回ほど任務をこなせば最高ランクに上がれるはずなんです…」
ティリティアと結婚するのが嫌な訳じゃない。ただ「今はまだその時ではない」という話だ。加えてゾンビ大量発生で「そんな場合じゃない」というのもある。
「なるほど… 君に関する調査はチャロアイトから王へ報告が上がっていて、その内容は私も伝え聞いている。君はその… 本当に別の世界とやらから来た『異世界人』だというのかね…?」
おっと、そのネタはチャロアイト以外の仲間たちはまだ話していない情報だ。その証拠に隣のティリティアは不思議そうな顔で俺を見つめている。
当初は仲間達に不信感を持たせない為に敢えて素性を隠していたのだが、今となっては俺が異世界人だろうと、それが理由で離れていく奴らではないと信じられる。
ここは好い機会だから、ティリティア達にも俺の素性を共有しておいてもらう方が得策だろう。
「この世に在ってはならないその背の魔剣を始め、君の周りでは不思議な事件が多発しすぎている。王を含む私の昔の仲間の半数は君を『世界を滅ぼそうと遣わされた魔神の尖兵』と考えている…」
だろうな… 謁見の時にもビシバシ悪意の視線を感じたし、王の口からもそう言われた。
なによりチャロアイトは「そういう事態」が起きた時に、俺を殺す為の刺客としてパーティに送り込まれているのだ。
そして今日の話の神様絡みのアレコレで、俺も同じ考えに到ったよ……。
最初に出会った女神は『アイトゥーシア』と自称していたが、この世界に来て教わったアイトゥーシア神は慈悲深い婆さんの姿をとっており、俺が会ったムチムチプリンのお姉さんでは無かった。つまりあれは嘘だったんだな。
まぁ神様だから色んな姿になれて当然なのかも知れないが、清貧と貞淑を旨とするアイトゥーシア教会の教義が、俺の前で乱れに乱れた色情女神から出てくるとは、とてもじゃないが信じられない。
まぁ、あの女の司る力が『淫奔』とやらなら、全てに納得できる仕掛けだよな……。
俺は恐らく、女神アイトゥーシアと敵対する神々の用意した魔剣を持たされてこの世界に派遣されてきた。
あのアイトゥーシアを騙るエセ女神の思惑だと、俺は「自由に生きた」結果、富と権力と女を求めて暴れまわり、世界に混乱をもたらす存在になると想定されていたのだろう。
それに合わせて『蛇』だのゾンビだのが次々と現れて、俺の暴虐を後押しする計画だったのだと考えられる。
そう考えるとガドゥの存在も、邪神の駒という事で間違いないだろう。ガドゥは封じられた神、一般人には知り得ない『ドゥルス』の名を出してきた。恐らく奴は『ドゥルス』の信者、或いは神官級のエージェントの可能性が高い。
ゴブリン退治に行った先でガドゥと鉢合わせしたのも、きっと偶然ではない。あそこのゴブリンは明らかに組織的に訓練されていて、雑魚モンスターの割に妙に強かった。
もしガドゥが来たるべき戦争に備えてゴブリン達を訓練していたのならば、ガドゥがあの場所にいた事とゴブリンが強かった事、更にガドゥとゴブリンが敵対していなかった事などの説明が一気に付く。
そして『蛇』と戦った時、『蛇』は俺に「我らは共に『ガラド』の使徒」だと言っていた。あの時は意味が分からなかったが、今となってはおぞましい現実に胃が逆流しそうだ……。
加えて『蛇』の毒が俺には効かなかった事も、「魔剣を持つ者は同類」と見做されたから。
そして勇者ショウの聖剣で『蛇』が討たれた時に『蛇』のエネルギーが俺に注ぎ込まれたのは、『蛇』が避難場所を求めて魔剣に逃げ込んだのだろう。
まぁ『蛇』の発生はその封印である『熊』を、俺が事情を知らずに倒してしまったのが原因なので、多分に偶然の要素が強いかも知れないが……。
考えれば考えるほど、俺の正体は『邪神の尖兵』で、この世界を統べるアイトゥーシア教会、引いては社会の敵という結論に整合されていく。俺が王や大司教らの立場なら、即座に殺してしまった方が良手だと思うだろうな……。
だがハッキリ言って俺はこの世界を滅ぼしたいとか、アイトゥーシア教会を潰したいとかは微塵も思っていない。「女に囲まれてのんびりスローライフ、時々無双」が出来ればそれで十分幸せなんだ。大それた野望なんかは始めから持ち合わせていないんだ……。
ましてや子供が出来て結婚すら視野に入っているのに、それをわざわざ壊したい、などと思うはずがない。
「俺の背負っている物が『魔剣』だと言うのは理解しました。そしてその力の源も… でも俺はこの世界が好きです。関わってきた人間で誰一人として死んで欲しいなんて思った人は居なかった。元の世界の方がよっぽど地獄だった…」
これは嘘偽りの無い本心だ。もしアイトゥーシアと敵対する神々がティリティアやクロニア達を殺そうとするのならば、俺は全力でそいつらと戦うだろう。
ただそれとは別に、イジメられっ子で誰からも愛されない、完全に心が死んでいた俺を、この手の聖剣(いや、魔剣か…)とあの女神によって、やり直しをさせてくれた点では本気で感謝している。是々非々だ。
たとえ悪い神様でも、俺の魂を救ってくれた存在には変わりない。出来れば殺したくはない。それも偽り無い本心だ。
「ふむ… とにかく君のその気持ちは明日からの仕事で証明してもらうしか無いですな。現地には私とゴルツ… あ、全身鎧の鬼族の彼が向かいます。彼は君の素性を一番怪しんでいますから、努々手を抜いたりしない様に…」
ゴルツさんてのは、恐らく謁見の時に居たやたらゴツい鬼族だよな。その佇まいだけでも王様より強そうだったが、迂闊な行動をしたら後ろからバッサリ斬られそうだ……。
という訳でまずは任務優先、結婚その他もとりあえず保留だ。全てはゾンビ退治ウェーブ2をクリアしてからだな。
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おっとそうだった。ベルモの治療の件も頼もうと思っていて忘れていた。
もし大司教がベルモを治せるなら、効果の怪しい例の薬を使わずに済み、安心できる。ティリティアさんグッジョブだ。
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