魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
82 / 120

第83話 決着

しおりを挟む
 ライクさんの使った法術は、前衛組の疲労度を回復させる物だったらしく、武器を振り回し続けて腕に力が入らなくなっていた俺達に、再びあの化け物 (以後『ゴリゾンビ』と呼ぶ)と戦う力を与えてくれた。

 ティリティアの法術は説明も無いし、効力が体感できてもいないので、その効果は未だ不明だ。今は彼女を信じて魔剣を持つ手に力を込める。

「怯むな! 全員で斬りかかって細かい肉片にしてしまえば良い。弓矢部隊は奴の頭を狙え!」

 ゴルツさんの指示が飛ぶ。『頭』と言ってもそこに目鼻や口がある訳ではなく、多くの肉片が寄り集まっているだけの部位でしかない。
 あそこに急所となる脳等の神経中枢があるか? と問われれば、かなり疑問ではあるが、今はそんな事をいちいち考えている暇はない。

 前衛組に先駆けて弓矢隊の一斉射がゴリゾンビの頭部に集中する。文字通り矢衾やぶすまになるゴリゾンビの頭だが、致命的なダメージがある様には見えないな……。

 びゅうっ!

 一斉射からワンテンポ遅れて一本の風切音が鳴った。そこで放たれた矢は、その威力を以てゴリゾンビの頭の上半分を見事に吹き飛ばした。

 見れば鬼マッチョに変身したモンモンの持つ鉄弓からの攻撃だった。弓は引き絞れば絞るだけその威力を増す。鬼族オーガとして他の戦士に見劣りしない今のモンモンならばこそ、これだけの威力を出せたのだろう。

 モンモンは飛龍ワイバーン戦の時も卓越した射撃センスを見せていた。慣れない鉄弓もクロニアの指導で予想よりも上達していたみたいだ。

 モンモンの見せた圧倒的火力に冒険者達は一時騒然となるが、悲しい事に頭の半分を吹き飛ばされても一瞬怯んだだけで、ゴリゾンビの戦闘力は衰える事なく、大木の様な腕を振るって前衛組を蹂躙じゅうりんせんとしている。

 脚を斬っても頭を潰しても痛痒ダメージが見受けられない敵。何度も言うが、このままでは俺達がスタミナ切れになって徐々に削られるだけだ。

 ゴルツさんやライクさんらも何か抜本的な対抗策がある訳でも無さそうだ。何か… 何か考えないと……。

『蛇』の時もガス状の敵に物理攻撃が通用しなかった。それを打開したのはショウの持つ聖剣だったが、今回は俺やショウが斬っても即座に再生してくる。

 恐らくはショウが両断した『謎の石』、その欠片がまだ生き残っていて、ゴリゾンビの体内で部分的にでもゾンビを複製し続けている。そのせいで外からは無限に回復している様に見えるのでは無かろうか?

 もしそうならば、ゴリゾンビのコアとも言うべき体内の謎の石を破壊できれば、勝機があるかも知れない。が、問題はその『核』がどこにあるのか皆目見当もつかない事にある。

 頭とか心臓とか、そんな単純な配置ではない事は、先程のモンモンの攻撃からも明らかだ。であるならば、もう「ゴリゾンビの再生よりも多くダメージを与えて、力技でコアを暴き出す」しか無くないか…?

 そう考えて一旦仮面の魔道士(リーナ)の元まで飛び退く。
 
ゴリゾンビやつの体内で魔力的な集中を感知できないか? 多分そこにコアがあって、弱点になっているはすだ」

 確証は無い。ただそれくらいしか攻略法が思い付かないのだ。そこまでやってもしも失敗したら『打つ手無し』として撤退するしかないだろうな……。

「やってみる…」

 いつの間にか神官用の法衣を纏ったチャロアイトも横に来てリーナ共々感知魔法を使っていた。こんな時だが服装や雰囲気が変わると、ちょっとそそられる物がある。言ってる場合では無いが。

 前線ではゴルツさんやショウを始めとして、多数の冒険者が少しでもゴリゾンビにダメージを与えるべく斬ったり突いたりしているが、やはり芳しい効果は出ていない。
 逆に不用意にゴリゾンビに近寄った冒険者が、奴の振り回す長い腕に叩かれて蹴散らされ(殴り散らされ?)ている始末だ。

「う~ん、中にっぽい反応はあるんだけど、手足を含めて体中を忙しく駆け巡っているわね…」

 チャロアイトが感知魔法の結果を教えてくれた。なるほど、小賢しい真似をしやがる… だがコアがあるなら手段もあるさ……。

「それならその動いているコアを光か何かでマーキング出来ないか? あとは俺が何とかする」

 俺はチャロアイト達の返事も聞かずに今度はモンモンの所へ移動する。さっきのレーザーポインターみたいな魔法があるなら、俺の提案も実行可能なはずだ。もし出来ないなら出来ないまでも魔道士2人で知恵を出して考えて見せろ。

 モンモンはアンバーと共に効果があるのか無いのかすら判然としない援護射撃をひたすら続けていた。

「おい、モンモン! 次に俺が動いたら、あいつの光っている部分にその矢をお見舞いしてやってくれ!」

 モンモンは「はぁっ?」と急な指示に目を白黒させている。まぁ無理もない。ただのんびり説明している時間は無いんだ。

 再び前線へと跳び戻る。後方に回復部隊がいるとしても、回復が追いついていないのか、冒険者達は1人また1人とゴリゾンビの打撃にやられて数を減らしている。このままでは本当にジリ貧になって全滅してしまう……。

 時を待つ1秒1秒が何時間にも感じられる。早く… 早く「光」を当ててくれ……。

 俺の祈りが届いたのか、リーナからまた光の魔法が発せられる。今度はゴリゾンビの体のあちこちを這う小虫の様に心細い光だ。

「そう… それで… ここだぁっ!」

 光がゴリゾンビの左腕に当たった所で、俺は奴に飛び掛かり連続の斬撃をかました。
 四肢のどこかにコアが入り込めば、その動きは腕なり脚なりの中だけに限られる。モンモンも狙いやすくなるはずだ。

 ゴリゾンビの左腕の切断は成功し、大きな音と共に巨木の様な腕が地面に落ちる。光の魔法は今、腕の肘の辺りに当たっている。

 その時、体に大きな衝撃を受けた。ゴリゾンビの残った右腕の攻撃が、剣を降ろして隙の出来た俺に直撃したのだ。
 ゴルツさんの全身の骨を砕いたその力は、俺の体をいとも簡単に吹き飛ばした。

 だが俺の受けたダメージは存外に少ない模様だ。あれだけの衝撃すら受け止める魔剣のバリア凄いな… いや違う。ゴリゾンビの攻撃が当たる瞬間、俺の体が一瞬だけ仄赤く光った気がする。恐らくあの光はティリティアの魔法による加護だ……。

 ティリティアの魔法が無かったら、もっと酷い怪我をしていた可能性は高い。ありがとうティリティア、愛してるぜ。
  
 よし『機』は作った、モンモン、お前の火力でコアを本体から引き剥がしてくれ。俺の魔剣では奴にトドメが刺せない、ショウが一太刀入れる隙を作ってくれ……。

 モンモンの方を向き直ると、モンモンは今まさに引き絞った矢を放つ瞬間だった。放たれた矢は正確にコアの部分に命中… しなかった……。
 
 矢はわずかに逸れてコアの10cmほど横に着弾、コア周囲の肉片を吹き飛ばしコアを露出させた物の、コア自体には命中せず、瞬く間に肉片の再生が始まろうとしていた。

 くそっ、失敗か… モンモンが射撃センスあると言っても弓矢の腕はまだ素人に毛が生えたレベルでしか無かった。今から飛び掛かり俺が剣を振るって、ゴリゾンビが再生しきる前にコアを弾き出せるだろうか…?

 駄目で元々、剣を構えて踏み込もうとする俺の顔の横を何かが高速で飛び過ぎた。

 は再生した肉片に覆われようとしていたコアに見事命中し、コアだけをゴリゾンビの肉体から弾き飛ばしたのだ。

「ショウーっ!!」

 俺の叫びでショウも全てを理解したらしい。一気にコアに駆け寄って小さな破片を十文字に切り裂く。
 コアの消滅を蹶起けっきにゴリゾンビは蒸発する様に煙を上げ、次第にその巨体は消滅していった。

 俺達の勝利だ……。

 急造の作戦が的中してホッと胸を撫で下ろす。一息ついた所で、先程の矢の出所を確かめるべく後方に目を遣ると、野伏レンジャーのアンバーが俺に向けてサムアップをしていた。

 さすが最高ランクの5点冒険者、いい仕事してくれるよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...