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第83話 決着
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ライクさんの使った法術は、前衛組の疲労度を回復させる物だったらしく、武器を振り回し続けて腕に力が入らなくなっていた俺達に、再びあの化け物 (以後『ゴリゾンビ』と呼ぶ)と戦う力を与えてくれた。
ティリティアの法術は説明も無いし、効力が体感できてもいないので、その効果は未だ不明だ。今は彼女を信じて魔剣を持つ手に力を込める。
「怯むな! 全員で斬りかかって細かい肉片にしてしまえば良い。弓矢部隊は奴の頭を狙え!」
ゴルツさんの指示が飛ぶ。『頭』と言ってもそこに目鼻や口がある訳ではなく、多くの肉片が寄り集まっているだけの部位でしかない。
あそこに急所となる脳等の神経中枢があるか? と問われれば、かなり疑問ではあるが、今はそんな事をいちいち考えている暇はない。
前衛組に先駆けて弓矢隊の一斉射がゴリゾンビの頭部に集中する。文字通り矢衾になるゴリゾンビの頭だが、致命的なダメージがある様には見えないな……。
びゅうっ!
一斉射からワンテンポ遅れて一本の風切音が鳴った。そこで放たれた矢は、その威力を以てゴリゾンビの頭の上半分を見事に吹き飛ばした。
見れば鬼マッチョに変身したモンモンの持つ鉄弓からの攻撃だった。弓は引き絞れば絞るだけその威力を増す。鬼族として他の戦士に見劣りしない今のモンモンならばこそ、これだけの威力を出せたのだろう。
モンモンは飛龍戦の時も卓越した射撃センスを見せていた。慣れない鉄弓もクロニアの指導で予想よりも上達していたみたいだ。
モンモンの見せた圧倒的火力に冒険者達は一時騒然となるが、悲しい事に頭の半分を吹き飛ばされても一瞬怯んだだけで、ゴリゾンビの戦闘力は衰える事なく、大木の様な腕を振るって前衛組を蹂躙せんとしている。
脚を斬っても頭を潰しても痛痒が見受けられない敵。何度も言うが、このままでは俺達がスタミナ切れになって徐々に削られるだけだ。
ゴルツさんやライクさんらも何か抜本的な対抗策がある訳でも無さそうだ。何か… 何か考えないと……。
『蛇』の時もガス状の敵に物理攻撃が通用しなかった。それを打開したのはショウの持つ聖剣だったが、今回は俺やショウが斬っても即座に再生してくる。
恐らくはショウが両断した『謎の石』、その欠片がまだ生き残っていて、ゴリゾンビの体内で部分的にでもゾンビを複製し続けている。そのせいで外からは無限に回復している様に見えるのでは無かろうか?
もしそうならば、ゴリゾンビの核とも言うべき体内の謎の石を破壊できれば、勝機があるかも知れない。が、問題はその『核』がどこにあるのか皆目見当もつかない事にある。
頭とか心臓とか、そんな単純な配置ではない事は、先程のモンモンの攻撃からも明らかだ。であるならば、もう「ゴリゾンビの再生よりも多くダメージを与えて、力技で核を暴き出す」しか無くないか…?
そう考えて一旦仮面の魔道士(リーナ)の元まで飛び退く。
「ゴリゾンビの体内で魔力的な集中を感知できないか? 多分そこにコアがあって、弱点になっているはすだ」
確証は無い。ただそれくらいしか攻略法が思い付かないのだ。そこまでやってもしも失敗したら『打つ手無し』として撤退するしかないだろうな……。
「やってみる…」
いつの間にか神官用の法衣を纏ったチャロアイトも横に来てリーナ共々感知魔法を使っていた。こんな時だが服装や雰囲気が変わると、ちょっとそそられる物がある。言ってる場合では無いが。
前線ではゴルツさんやショウを始めとして、多数の冒険者が少しでもゴリゾンビにダメージを与えるべく斬ったり突いたりしているが、やはり芳しい効果は出ていない。
逆に不用意にゴリゾンビに近寄った冒険者が、奴の振り回す長い腕に叩かれて蹴散らされ(殴り散らされ?)ている始末だ。
「う~ん、中にそれっぽい反応はあるんだけど、手足を含めて体中を忙しく駆け巡っているわね…」
チャロアイトが感知魔法の結果を教えてくれた。なるほど、小賢しい真似をしやがる… だがコアがあるなら手段もあるさ……。
「それならその動いているコアを光か何かでマーキング出来ないか? あとは俺が何とかする」
俺はチャロアイト達の返事も聞かずに今度はモンモンの所へ移動する。さっきのレーザーポインターみたいな魔法があるなら、俺の提案も実行可能なはずだ。もし出来ないなら出来ないまでも魔道士2人で知恵を出して考えて見せろ。
モンモンはアンバーと共に効果があるのか無いのかすら判然としない援護射撃をひたすら続けていた。
「おい、モンモン! 次に俺が動いたら、あいつの光っている部分にその矢をお見舞いしてやってくれ!」
モンモンは「はぁっ?」と急な指示に目を白黒させている。まぁ無理もない。ただのんびり説明している時間は無いんだ。
再び前線へと跳び戻る。後方に回復部隊がいるとしても、回復が追いついていないのか、冒険者達は1人また1人とゴリゾンビの打撃にやられて数を減らしている。このままでは本当にジリ貧になって全滅してしまう……。
時を待つ1秒1秒が何時間にも感じられる。早く… 早く「光」を当ててくれ……。
俺の祈りが届いたのか、リーナからまた光の魔法が発せられる。今度はゴリゾンビの体のあちこちを這う小虫の様に心細い光だ。
「そう… それで… ここだぁっ!」
光がゴリゾンビの左腕に当たった所で、俺は奴に飛び掛かり連続の斬撃をかました。
四肢のどこかにコアが入り込めば、その動きは腕なり脚なりの中だけに限られる。モンモンも狙いやすくなるはずだ。
ゴリゾンビの左腕の切断は成功し、大きな音と共に巨木の様な腕が地面に落ちる。光の魔法は今、腕の肘の辺りに当たっている。
その時、体に大きな衝撃を受けた。ゴリゾンビの残った右腕の攻撃が、剣を降ろして隙の出来た俺に直撃したのだ。
ゴルツさんの全身の骨を砕いたその力は、俺の体をいとも簡単に吹き飛ばした。
だが俺の受けたダメージは存外に少ない模様だ。あれだけの衝撃すら受け止める魔剣のバリア凄いな… いや違う。ゴリゾンビの攻撃が当たる瞬間、俺の体が一瞬だけ仄赤く光った気がする。恐らくあの光はティリティアの魔法による加護だ……。
ティリティアの魔法が無かったら、もっと酷い怪我をしていた可能性は高い。ありがとうティリティア、愛してるぜ。
よし『機』は作った、モンモン、お前の火力でコアを本体から引き剥がしてくれ。俺の魔剣では奴にトドメが刺せない、ショウが一太刀入れる隙を作ってくれ……。
モンモンの方を向き直ると、モンモンは今まさに引き絞った矢を放つ瞬間だった。放たれた矢は正確にコアの部分に命中… しなかった……。
矢はわずかに逸れてコアの10cmほど横に着弾、コア周囲の肉片を吹き飛ばしコアを露出させた物の、コア自体には命中せず、瞬く間に肉片の再生が始まろうとしていた。
くそっ、失敗か… モンモンが射撃センスあると言っても弓矢の腕はまだ素人に毛が生えたレベルでしか無かった。今から飛び掛かり俺が剣を振るって、ゴリゾンビが再生しきる前にコアを弾き出せるだろうか…?
駄目で元々、剣を構えて踏み込もうとする俺の顔の横を何かが高速で飛び過ぎた。
それは再生した肉片に覆われようとしていたコアに見事命中し、コアだけをゴリゾンビの肉体から弾き飛ばしたのだ。
「ショウーっ!!」
俺の叫びでショウも全てを理解したらしい。一気にコアに駆け寄って小さな破片を十文字に切り裂く。
コアの消滅を蹶起にゴリゾンビは蒸発する様に煙を上げ、次第にその巨体は消滅していった。
俺達の勝利だ……。
急造の作戦が的中してホッと胸を撫で下ろす。一息ついた所で、先程の矢の出所を確かめるべく後方に目を遣ると、野伏のアンバーが俺に向けてサムアップをしていた。
さすが最高ランクの5点冒険者、いい仕事してくれるよ。
ティリティアの法術は説明も無いし、効力が体感できてもいないので、その効果は未だ不明だ。今は彼女を信じて魔剣を持つ手に力を込める。
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あそこに急所となる脳等の神経中枢があるか? と問われれば、かなり疑問ではあるが、今はそんな事をいちいち考えている暇はない。
前衛組に先駆けて弓矢隊の一斉射がゴリゾンビの頭部に集中する。文字通り矢衾になるゴリゾンビの頭だが、致命的なダメージがある様には見えないな……。
びゅうっ!
一斉射からワンテンポ遅れて一本の風切音が鳴った。そこで放たれた矢は、その威力を以てゴリゾンビの頭の上半分を見事に吹き飛ばした。
見れば鬼マッチョに変身したモンモンの持つ鉄弓からの攻撃だった。弓は引き絞れば絞るだけその威力を増す。鬼族として他の戦士に見劣りしない今のモンモンならばこそ、これだけの威力を出せたのだろう。
モンモンは飛龍戦の時も卓越した射撃センスを見せていた。慣れない鉄弓もクロニアの指導で予想よりも上達していたみたいだ。
モンモンの見せた圧倒的火力に冒険者達は一時騒然となるが、悲しい事に頭の半分を吹き飛ばされても一瞬怯んだだけで、ゴリゾンビの戦闘力は衰える事なく、大木の様な腕を振るって前衛組を蹂躙せんとしている。
脚を斬っても頭を潰しても痛痒が見受けられない敵。何度も言うが、このままでは俺達がスタミナ切れになって徐々に削られるだけだ。
ゴルツさんやライクさんらも何か抜本的な対抗策がある訳でも無さそうだ。何か… 何か考えないと……。
『蛇』の時もガス状の敵に物理攻撃が通用しなかった。それを打開したのはショウの持つ聖剣だったが、今回は俺やショウが斬っても即座に再生してくる。
恐らくはショウが両断した『謎の石』、その欠片がまだ生き残っていて、ゴリゾンビの体内で部分的にでもゾンビを複製し続けている。そのせいで外からは無限に回復している様に見えるのでは無かろうか?
もしそうならば、ゴリゾンビの核とも言うべき体内の謎の石を破壊できれば、勝機があるかも知れない。が、問題はその『核』がどこにあるのか皆目見当もつかない事にある。
頭とか心臓とか、そんな単純な配置ではない事は、先程のモンモンの攻撃からも明らかだ。であるならば、もう「ゴリゾンビの再生よりも多くダメージを与えて、力技で核を暴き出す」しか無くないか…?
そう考えて一旦仮面の魔道士(リーナ)の元まで飛び退く。
「ゴリゾンビの体内で魔力的な集中を感知できないか? 多分そこにコアがあって、弱点になっているはすだ」
確証は無い。ただそれくらいしか攻略法が思い付かないのだ。そこまでやってもしも失敗したら『打つ手無し』として撤退するしかないだろうな……。
「やってみる…」
いつの間にか神官用の法衣を纏ったチャロアイトも横に来てリーナ共々感知魔法を使っていた。こんな時だが服装や雰囲気が変わると、ちょっとそそられる物がある。言ってる場合では無いが。
前線ではゴルツさんやショウを始めとして、多数の冒険者が少しでもゴリゾンビにダメージを与えるべく斬ったり突いたりしているが、やはり芳しい効果は出ていない。
逆に不用意にゴリゾンビに近寄った冒険者が、奴の振り回す長い腕に叩かれて蹴散らされ(殴り散らされ?)ている始末だ。
「う~ん、中にそれっぽい反応はあるんだけど、手足を含めて体中を忙しく駆け巡っているわね…」
チャロアイトが感知魔法の結果を教えてくれた。なるほど、小賢しい真似をしやがる… だがコアがあるなら手段もあるさ……。
「それならその動いているコアを光か何かでマーキング出来ないか? あとは俺が何とかする」
俺はチャロアイト達の返事も聞かずに今度はモンモンの所へ移動する。さっきのレーザーポインターみたいな魔法があるなら、俺の提案も実行可能なはずだ。もし出来ないなら出来ないまでも魔道士2人で知恵を出して考えて見せろ。
モンモンはアンバーと共に効果があるのか無いのかすら判然としない援護射撃をひたすら続けていた。
「おい、モンモン! 次に俺が動いたら、あいつの光っている部分にその矢をお見舞いしてやってくれ!」
モンモンは「はぁっ?」と急な指示に目を白黒させている。まぁ無理もない。ただのんびり説明している時間は無いんだ。
再び前線へと跳び戻る。後方に回復部隊がいるとしても、回復が追いついていないのか、冒険者達は1人また1人とゴリゾンビの打撃にやられて数を減らしている。このままでは本当にジリ貧になって全滅してしまう……。
時を待つ1秒1秒が何時間にも感じられる。早く… 早く「光」を当ててくれ……。
俺の祈りが届いたのか、リーナからまた光の魔法が発せられる。今度はゴリゾンビの体のあちこちを這う小虫の様に心細い光だ。
「そう… それで… ここだぁっ!」
光がゴリゾンビの左腕に当たった所で、俺は奴に飛び掛かり連続の斬撃をかました。
四肢のどこかにコアが入り込めば、その動きは腕なり脚なりの中だけに限られる。モンモンも狙いやすくなるはずだ。
ゴリゾンビの左腕の切断は成功し、大きな音と共に巨木の様な腕が地面に落ちる。光の魔法は今、腕の肘の辺りに当たっている。
その時、体に大きな衝撃を受けた。ゴリゾンビの残った右腕の攻撃が、剣を降ろして隙の出来た俺に直撃したのだ。
ゴルツさんの全身の骨を砕いたその力は、俺の体をいとも簡単に吹き飛ばした。
だが俺の受けたダメージは存外に少ない模様だ。あれだけの衝撃すら受け止める魔剣のバリア凄いな… いや違う。ゴリゾンビの攻撃が当たる瞬間、俺の体が一瞬だけ仄赤く光った気がする。恐らくあの光はティリティアの魔法による加護だ……。
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よし『機』は作った、モンモン、お前の火力でコアを本体から引き剥がしてくれ。俺の魔剣では奴にトドメが刺せない、ショウが一太刀入れる隙を作ってくれ……。
モンモンの方を向き直ると、モンモンは今まさに引き絞った矢を放つ瞬間だった。放たれた矢は正確にコアの部分に命中… しなかった……。
矢はわずかに逸れてコアの10cmほど横に着弾、コア周囲の肉片を吹き飛ばしコアを露出させた物の、コア自体には命中せず、瞬く間に肉片の再生が始まろうとしていた。
くそっ、失敗か… モンモンが射撃センスあると言っても弓矢の腕はまだ素人に毛が生えたレベルでしか無かった。今から飛び掛かり俺が剣を振るって、ゴリゾンビが再生しきる前にコアを弾き出せるだろうか…?
駄目で元々、剣を構えて踏み込もうとする俺の顔の横を何かが高速で飛び過ぎた。
それは再生した肉片に覆われようとしていたコアに見事命中し、コアだけをゴリゾンビの肉体から弾き飛ばしたのだ。
「ショウーっ!!」
俺の叫びでショウも全てを理解したらしい。一気にコアに駆け寄って小さな破片を十文字に切り裂く。
コアの消滅を蹶起にゴリゾンビは蒸発する様に煙を上げ、次第にその巨体は消滅していった。
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