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〈神様たちの井戸端会議❶〉

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 天使の見習いがテーブルの上に、温かい紅茶とスコーンを用意してくれる。二人ほぼ同時にイスにドサリともたれ掛かった。

〈はぁ…………疲れたねぇ……〉

〈ふぅ…………疲れたよぉ……〉

 いつもなら喜んで飛びつくスコーンにも手をつけない。見習い天使はなにか粗相をしたかと、心配しながら二人をチラチラと覗いている。

〈ふぅ。なんとか無事転生完了。バレなくて良かったよー。しかし純愛だね~〉
 
〈ホントだよねー。見付かったら今度こそ、僕たち消されてたかも。純愛に免じて許してくれたのかも。なんちゃっててね〉

〈正直追加のお願いにビクビクしたけど、無理難題じゃなくて良かったよ。来世は必ずいろはちゃんの伴侶にしろ!とか言われたら、どうしようかと心配したよ〉

 〈そうそう。運命を結び付けるだけは、僕たちでも出来ないからね。ストーカーモドキにも言われなくて良かった。どちらもマトモなヤツだったわけだ。まあ腐れた魂は、例えミスで殺しても救わないからね。即刈るよ〉

〈そりゃそうだ。神だってばんのうじゃないんだよ。まあこれ聞かれたらヤバイけど。ねえ。確か彼が第一発見者でしょ?愛する人の死がトラウマになっちゃったんだね。看取るのが辛いから必ず先に逝きたいか~〉

 〈看取りたくないから愛を諦める。やはり純愛だね~〉

 〈つまり追加の願いは、クレハに長生きして欲しいで良い訳ね。まあ寿命で死ぬなら、クレハの方が間違いなく後だよ。だから僕達の神の加護と祝福付けちゃおう。これで病気も怪我も事故も殆ど無し。有っても加護で守られるから大事には到らないし、祝福で直ぐに完治に治癒だ。一応絶対防御も付けとこう〉

 〈それなら万全だね。でも彼がクレハの幸せを見届ける前に死んだら可愛そうだよ。彼にも同じの付けようよ。寿命なら間違いないからサービスだよ。でもそれなら伴侶候補の医者にも付けるべき?〉

 〈あのストーカー擬きには要らないよ。自分で何とかしちゃいそうだ。でもそうだね。彼にはサービスしちゃおう。僕達を見分けてくれたし気に入ったよ〉

 〈だよね~。僕も気に入ったよ。だからスペシャルプレゼントしちゃわない?〉

 〈何か良いの有るの?〉

 彼の転生した市政のギルドマスターは、実は蒼白の魔術師だ。しかしアプリ版での彼は名のりを上げていない。特に隠してた訳ではない。誰にも聞かれなかったし、わざわざ言わなかっただけ。

 〈一応、アプリではそう言う設定だよね。別に魔術四天王うんねんは、恋愛ゲームの本編には絡まないし、ストーリー的にも関係無い事だからね。でも彼なら、クレハがピンチで必要になれば絶対に名乗るよね?〉

 〈彼らが転生した世界は、あの物語と似てはいるけど違う世界。そして住む者達にはそれぞれ意思が有り、決して物語通りには進まない。ストーリー補整や強制力と言うものも働かない。あの物語は基本の話なんだ。だからアプリなんてのもごっちゃになってる。つまり将来を選び掴むのは本人なんだ。彼の知ってるエンディングは数ある可能性の一部。それは理解してるみたいだけど、充分な理解ではない。確かにアプリではバッドエンドはなかった。でもゲームじゃなくて現実だ。バッドエンドも有りうるんだ。先に転生した医師に見せた未来視もその一つ〉

 〈だからね。彼が蒼白の魔術師だと名乗らずを得なくなったらプレゼントしちゃおう。クレハがギルマス溺愛の軟禁ルート解放ね。世話焼きおかんにクレハが惚れちゃうけど、ギルマスは親代わりだからと答えてはくれない。思い余って襲っちゃう。最後はほだされ激甘ルートね〉

 〈それってクレハが襲うの?彼大丈夫?〉

 〈だからね。彼にはさらにおまけで、医者とクレハと同じ絶倫付けちゃう。これで彼らも朝までラブラブね〉

 〈ねぇ。僕もおまけして良い?二人でのラブラブは、必ず一緒にイケちゃう祝福ね。先に逝くのが嫌なら一緒にイケば良いじゃん〉

 〈確かに。先にイカれるのも嫌なんだよね。ニヤリ〉

 〈〈僕達だってやられるだけじゃないもんね~〉〉

 僕達の追加の祝福も喜んでね~。気付いた時には捕まってるだろうけどね。ストーカーも頑張れ~。僕達ストーカー押しだったけど、大分傾いちゃったな。どうなるかな~。

 〈〈楽しみだね~〉〉

 〈ねぇ。頭使いすぎて甘いものが欲しくなちとちゃった。天使さーん! スコーンのジャムたけど、ビンごとちょうだい〉

 〈あー! それならラズベリージャム一瓶と、イチゴジャムも一瓶ちょうだい。ツプツブまるごと果実入り、特大瓶詰めのヤツね。そんなにどうするのかって? 食べるに決まってるじゃない。天使はジャムを美肌パックにでも使うわけ? 蜂蜜じゃないんだから、気持ち悪いこと言うな! ジャムを食べる以外になにするのさ!〉

 〈…………〉

 〈そうだよ! 紅茶にもたっぷり入れちゃおう。やはり疲れると糖分が欲しくなるよね〉

 天使の見習いは慌てて、ジャムを瓶ごと貰いに走る。

 〈あーちょっと待ってー! スコーン一人三個じゃ足りません! 追加と缶入りクッキーもよろしく。ケーキがあればケーキも追加ね。クッキーには、ジャム挟んで食べちゃおうっと〉

 見習い天使に我が儘ざんまいの双子神。二人を探し回るこの世界を創世した転生神が、足音を早目刻々と近付いて来ます。

 二人の頭に巨大な雷が落ちるまであと少し。

 知らぬは本人たちばかりなり……

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