【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬

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第1章・婚約破棄は自由の翼。

戦闘準備は情報の擦り合わせ。

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きらびやかな王宮の一室。今晩は王宮主催の舞踏会。現在18才になる皇太子様が、魔法大国で有る隣国と和平を結んで来た。その祝賀パーティーにあたる。この様な正式な夜会では、パートナー同伴が条件となる。夫婦は勿論、婚約者がいる場合はお相手のエスコートが必要。お相手が居ない場合は親族や知人にパートナーを頼む。

私エリザベートは、勿論皇太子様のエスコートを受ける。正直気が重い。皇太子様は一切喋らない。私の話に返事のみ。しかも、ああ。そうだな。うん。こんな感じだけ。正直これて好かれてるとか、絶対に思えない。私の胸と腰だけ何じゃ無いの?そこばかり見て俯いてるし。しかしこれでも、外交ではやり手の男らしい。各国の姫君や令嬢を、その甘いマスクと言葉でとりこにしてるそうだ。

甘いマスク?確かに美形ですわね。甘い言葉?私は聞いた事もございませんわ。因みに私、王子に誕生日のプレゼントを戴いた事もございません。私は毎年キチンと差し上げております。差し上げないと、王子の侍従から催促がくるんですよ。

プレゼントは、私が刺繍をしたハンカチですわ。何でも婚約者が刺繍をしたハンカチを持ち歩くと、仕事運が上昇するとか。また魔物討伐の際にもお守りになるとか?

それって単なるげん担ぎよね。でも催促が来るから毎年贈る。去年は1ダーズ箱詰めにして送りました。お父様がハンカチだけかと煩いので、1度マーガレットブランドの男性用品を贈りましたの。新作のペア寝間着だったのだけど、男性用だけをハンカチと一緒に贈りました。そうしたら!次からはペアで贈れと、侍従から催促の指示が来ましたのよ!何故ペアで必要なんですの?父が無言で贈れと威圧をかけてきます。仕方無いから、以降はペアで贈っております。ガウンにパジャマにスリッパにマグカップ。まさか仕舞っておいてるのかしら?

お陰様で苦手な刺繍が上手くなりましたよ!

そんなに気に入ってるのかしら?

どちらを?

刺繍ハンカチを?それともペアの片割れを?

まさか嫌がらせ?

嫌だわ。マリエンヌの言ってた人形に着せたりはしてないわよね?それは幾らなんでも怖すぎるわ。

まあ良いわ。忘れるのが吉よ。

妹は先日の件も有り、弟をパートナーとしている。弟は身内で婚約者は出席しないからね。実は妹のマリエンヌは、大商会のロジャースと婚約した。但し彼は今晩の夜会では裏方にいるので、妹のパートナーとして出席はしていない。

侯爵子息をチラリと覗き見する。ローズマリーと来てるわ。此方はまだ王家に婚約を認められてないそう。落ちぶれてるとはいえ、侯爵家嫡子に男爵家では家格が低すぎる。男爵家自体に大して貢献や国に対する影響が無いからね。身分差別だと喚こうと、絶対王制のこの国では仕方無いの。だから私だって我慢してる。我慢が出来ぬならロジャースの様とマリエンヌの様に、己達で道を開くしかない。それを成し遂げたロジャースを、私は信用に値する男だと感じている。

騎士団長(仮)と、魔術師長(仮)も婚約者同伴。しかし此方は女性陣より親を通し王へ、既に破談申し立て中との事。女性からの破談申し立ては滅多には有り得ない事。しかし親が認めている。それだけ我慢なら無いのだろう。しかしやはり、此方もまだ破談は認められていない。その為婚約者のお2人は嫌々参加の様だ。

さあ今晩はどんなショーが始まるのかしら?侯爵様が楽しいショーを開催してくれるそう。ではでは、私達も楽しみましょう。

*****

流石に大商会の客間ね。高級な設えだけど、何処かの様に毒々しい華美さが無い。趣味が良いわね。出されたお茶も中々のお品。高級品では無いけど、希少で卸し先を選ぶと言われる茶葉だわ。ロジャースってば気合いが入ってるじゃ無いの。

「ブライアン。正直に答えなさい。貴方はまだなの?それともローズマリーに既に攻略されたの?侯爵子息は攻略済みよ。父親と親子丼ですって。」

「姉さん!女性がそんな言い方!」

「なら上品に言えば良いの?これでもオブラートに包んでるつもりよ。しっかりと童○なの?喰われたの?ヤったのか?と聞かれたい?」

・・・・・。

「可哀想だから止めとけ。既に5人共に喰われてる。私が調査済みだ。マリエンヌ前世のゲームの話で言うなら、既に5人攻略済みなんだ。だから隠れキャラの私が早々に出てきている。そしてヒロインに出会い惚れて、アバズレ花嫁を強奪に行くんだよな。しかしそれは絶対に無い。」

言いきるじゃ無い。それだけマリエンヌを愛してる訳ね。

「よっ!男前!でも心配だから一応これあげるわ。ほら!ブライアンにもよ。このヘタレ野郎が!」

・・・・・。

「己で離脱出来たんだ。少しは加減してやれよ。」

「加減してるわよ?だからこその魔道具じゃない。それには状態異常耐性魔法を付加したわ。神経操作系は勿論、毒や麻痺にも効果が有る。ある程度の怪我等も、異常と見なし治癒してくれる。勿論欠損は治癒魔法で無ければ無理よ。だから過信はしないで。」

「姉さん…。」

「お前それは…。」

「お姉さまそれはチート過ぎます!」

「チート○?」

「お姉さま!やはり前世を覚えてるのでは?それはお菓子の名前です。懐かしのスナック菓子!」

マリエンヌー。苦しいわー。胸ぐらつかんでグイグイしないでー。チート○がスナック菓子?なにそれ知らんがな。

「ハッ。ごめんなさい。つい。チートと言うのは、この世で有り得ない力を持つ事を言います。私は普通の学生でした。だから知識も大して有りません。しかし大商会の創始者の様に歴史の先生だったりしたら?武器や兵器を作る科学者だったら?私の前世には魔法は有りませんでした。しかし科学が発展し、一瞬で国をも滅ぼす様な兵器を産み出す事も出来ました。これらはこの世界に広めるべきでは無い…。」

ロジャースがポンっと頭を叩く。

「その辺は創始者の日記を読め。我々に伝わる方にも、キチンと記載されてる。必要以上は広めるなとな。マリエンヌの料理やグッズは幸せを広めてる。だから大丈夫。エリザベートがチートと言うのは私も納得だ。どちらかと言うと規格外だけどな。」

「ゲームの中での私達3人は、全く交流が無かったの。でもお姉さまは私を何時も助けて話を聞いてくれた。だからもしかして?と考えていたの。そうよね。そんなに都合が良い訳は無いなよね。」

「それを言うならエリザベートより、ローズマリーの方が怪しいだろ?ゲームとやらを知らぬなら、何故学園に存在もしないマリエンヌを虐めの犯人に仕立てあげたんだ?侯爵子息は既に己に入れ込んでる。わざわざ虐めの犯人にしたて、派手に婚約破棄をする必要は無い筈だ。まあ単に婚約者が、慰謝料と支度金を惜しんだからかもしれないけどな。」

多分侯爵子息は後者ね。此方を貶めて非を此方に擦り付けた。そして多分ローズマリーには、マリエンヌと同じゲームの記憶がある。

「ローズマリーにゲームとやらの記憶が有るなら、ハーレムエンドとやらを狙ったのかしら?」

「お姉さま?多重婚の無いこの世界では、ハーレムエンドは実現できませんわ。」

「正式にはでしょ?愛人や恋人なら可能よ。実際にロジャースがここに居るんだから、5人皆と関係を持った訳よね。其々が結婚しても、互いに納得して付き合えば良いだけ。つまり只の節操なしの淫乱って訳よ。」

でも皇太子と弟は既に抜けてる。

「僕はもう惑わされないよ!だからハーレムエンドは絶対に無い!」

「ですね。皇太子様も有り得ない。あの方も意外に一途だからな。」

ふーん。何に一途なのかしらね?私の胸と腰ですか?何だかムカつくわー。しかもローズマリーとしたんだ?攻略済みってそういう事じゃない。

・・・・・。

「食べまくってブタになってやろうかしら?あら良い考えかも。」

「何を考えたらそう言う言葉が出るんだ?」

「常識を考えたんですよ?私が不貞をしたら首が飛びます。でも皇太子様の不貞は見て見ぬふりをせねばならない。確かにローズマリーもボンキュッボンです。そんなに括れがお好きならば、私がブタになればボンキュッボンは無くなる。婚約破棄になるのでは?」

「お前な…。」

「お姉さま!何なら協力致します。婚約を破棄されたら、ダイエットをしましょう。私もお手伝いしますわ。」

「姉さん…。無駄な努力は止めようよ。皇太子様は胸と腰だけが好きなんじゃないと思うよ。僕には理解できないけど。」

「そうだ。無駄な抵抗はよせ。そのボディにその顔が乗ってるから気に入ってるんだ。ブタになったら即時に監禁されるぞ。毎日オヤツ抜きの上、ベッドで激しい運動だ。それが1番痩せるし、既成事実で20才まで待たずに結婚出来る。お前はスッポンポンで監禁され、ベッドの上で婚姻証書にサインをさせられたいのか?」

オーノー。何で私はこんな体と顔に生まれて来たのよ。恐るべし皇太子…。しかし何故そこまで執着されるのかが解らない。怖いよう。恐ろしいよう。うるうる目でロジャースを見上げて見る。フィと視線をそらされた。続けてブライアンを…。おい!後ろ向いてるんじゃない!

ひ…酷いわ…。

「でもローズマリーと関係したんでしょ?ならこれから私が悪役令嬢とやらのルートへ行くかも!よし!祝賀パーティーでツンツンしてやろう。焼きもちも盛大に妬いてやろう。皇太子よ。ローズマリーの掌で踊るのだ!」

ゴイン!

痛たたたた…。なっ何するのよ!

「余計な事はするな。昨日私はローズマリーに会った。どうやら間違いは無さそうだぞ。」

ローズマリーが皇太子の祝賀パーティーに着用するドレスの注文が、侯爵家から大商会に入ったそうだ。その際ロジャースが、お針子達を連れて訪問した。すると、ローズマリーは大層驚いていたと言う。

まだ早い。ウェディングドレスのシルクの筈。でもハーレムエンドには出来なかった。もしかして皆とエッチしたから居るの?でもイケメンだわ。

等とブツブツ呟いていた。マリエンヌに話を聞いていたロジャースは、ゲームの事だと解ったそう。その後ローズマリーは侯爵子息を完全に無視し、ロジャースにべったりと張り付いていたそうだ。

「私が話した事もない旅先での仕入れの話を持ち出したり、苦労したのね。大変だったのね。1人での旅は寂しかったでしょ?私が貴方の寂しさを埋めてあげたいの。と、体を擦り付けて来ましたよ。皆さんはあれで落ちたのですか?下品極まりない女ですね。」

・・・・・。

ブライアン…。情けないが言う通りだ。おまえに怒る資格はない。

「ああ。マリエンヌ。私は大丈夫。あんな虫ケラ捻り潰して差し上げます。その会場が祝賀パーティーです。おバカな侯爵が嬉々として色々画策してますよ。男爵は侯爵の言う意味が解らずお困りの様ですが、侯爵は全く聞く耳も持たぬ様です。」

「対するローズマリーも矛盾は全て、私はヒロインだからね。この世界は私を中心に回るのよ。で自己完結です。マーガレットブランドの代表も、ヒロインに相応しいからしてあげるそうですよ。お譲りになりますか?」

私達は目を合わせる。これはもう戦うしかない。私達は力を合わせねばならない。先ずは知識の擦り合わせだ。

さあ。反撃の狼煙を上げよう。あわよくば…。国王から褒美を戴きたい。

その為になら、皇太子のエスコートも我慢できる筈。

ニヤリ。

頑張るぞー。

*****

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