【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

文字の大きさ
155 / 257
第六章 St.Anger

脱出―⑨―

しおりを挟む
「あらあら……“”、が気に入ったみたいね」

 ロックは天から聞こえる声へ向いた。

 空中に純金の頭と銀の肩をした魔人に抱えられる薄桃色のパンツスーツの女――三条。

 その顔は以前から見たポーカーフェイスと違い、どこか愉悦に浸っている様だった。

 彼女の眼下で、“金色の嬰児”――“チキンブロウ”――が鶏頭の右手をかざしている。

 その背後には、白い少女が浮いていた。

 金色の嬰児は、青白い炎の宿った右手の嘴を振り回す。

 腕から放たれた炎の雨が、ロックの周りにも降り注いだ。

 ロックは、ダグラスの右肩にめり込んだ翼剣を抜くために、蹴飛ばす。

 腕の長さほどの間合いが生じ、足元に落ちた青白い炎が立ち上がった。

 ロックに突き飛ばされた“スコット決死隊”のダグラスが炎に覆われる。

 ロックは、青白い炎の大元である巨大な嬰児に目を向けた。

 苔色の疾風となったブルースが二振りのショーテルの斬撃を、“金色の嬰児”の右脚に放った。

 “金色の嬰児”が前のめりに倒れると、砂塵を纏ったサミュエルの大鎌の一撃が左脚を捉える。

 両脚を失った嬰児の、雑賀を覆う肋骨の檻が地面に接触。

 だが、“金色の嬰児”が鶏の頭の右手を上げ、上体を起こす。

 ロックは駆け、跳躍した。

 順手で頂砕く一振りクルーン・セーイディフによる地球上で考えられる分子配列で硬い物質を再現した刃の一撃を見舞うと、巨大な嬰児の後頭部を抉る。

 這いずる嬰児の額が、土瀝青アスファルトに叩きつけられた。

 巨大な嬰児は、強襲したロックを左手から寝返りを打ち、振り払う。

 剛腕の風に吹かれ、ロックは吹っ飛んだ。

 彼の身体を運ぶ風に、

 巨大な“黄金の嬰児”の顔と左腕に、爆炎が三発。

 一平の両手の拳に付けられた銃口から放たれた“爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”による、炎の榴弾だ。

 しかし、黄金の嬰児はロック達の攻撃に煩わしさを覚えたのか、両腕を上下させる。

 一平の炎の榴弾をかき消しながら、青白い炎を右の鶏頭に光を込めた。

「させない!!」

 龍之助の矛槍が、“蒼海の翼スキアハン・ナ・マラ・ゴラマ”による”加圧水流ウォータージェット”の一撃が青白い炎の宿る鶏頭の右手を貫いた。

 ロックが追い打ちを仕掛けようとすると、嬰児から溢れた炎に道を塞がれる。

 炎を避けて、回り道を取った。

 ロックの目の前の巨大な嬰児の金色の皮膚の表面に、それを見下ろす三条が映る。

 その三条を赤い炎が覆った。

 炎は、薄い雄牛の口から吐き出ている。

 雄牛は、月夜を背にシャロンが駆る滑輪板スケートボードの下から出ていた。

「アレは何!? あの赤ん坊の化け物の“ウィッカー・マン”――」
 シャロンの三条への詰問は、彼女の守護者である純金頭の魔人の右腕に遮られた。

 右の剛腕からの一撃が炎をかき消し、薄い雄牛を貫く。

 シャロンの滑輪板スケートボードにぶつかる寸前、光弾が純金頭の放った銀色の拳激をかき消した。

「シャロン、離れて!!」

 サキの蒼色の片刃の付いた軽機関銃を構え、三条を狙う。

 蒼白い光の弾丸が、三条と純金頭の魔人へ放たれた。

「……それは、私でなく…… に聞いた方が分かりやすいと思いますよ?」

 サキの攻撃を避けながらの三条の回答に、シャロンは困惑する。

 当の龍之助も眉を顰めた。

「さて……ので、?」

 三条の目線が炎と瓦礫の向こう側に向けられ、ロックの眼の前から常闇に姿を消した。

 困惑する龍之助の眼前で、“金色の嬰児”――“チキンブロウ”が両腕で上体を起こす。

「私の大切な人を……傷つけて、街にいられなくさせて……私たちが、何をしたのよ!?」

 雑賀の慟哭に呼応するように、左手と、手をなくした右腕で這いながら、龍之助に突進。

 龍之助は眼鏡の奥の蒼い右眼で凝視しながら、金色の嬰児と対峙する。

 彼の右眼に“チキンブロウ”、その背後に“白い少女”が映った。

 そして、右手の鶏頭は龍之助の放った一撃で破壊されていたが、

 右腕の嘴の形をした槌が、龍之助に振り下ろされる。

「龍之助!!」

 一平が龍之助の前に出て、両手を交差させる。

 “磁向防スキーアフ・ヴェイクター”が、金色の鶏の鉄槌を受けた。

「何もしなかったからだ……何もせず、!」

 一平が“チキンブロウ”の鶏の頭を“爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェ”の爆轟の衝撃波で跳ね返す。

 彼の膂力も合わさった衝撃が、一帯に突風として吹き荒れた。

 右拳を振りかざした“チキンブロウ”が、大きく仰け反る。

 サキの守護者である“命熱波アナーシュト・ベハ”が鶏冠ガレアを纏う“ヴァージニア”の弓から放たれた矢が、あばら骨に覆われる雑賀の前に向かう。

 結晶の鏃が、“チキンブロウ”の前で炸裂。

 もう一人のサキの“命熱波アナーシュト・ベハ”の守護者――“ライラ”――が弾ける結晶から現れる。

 金色の嬰児の首を、右手の光の剣で切り裂いた。

 声にならない雑賀の叫び声が轟く。

 胸部に囚われる雑賀の眼に青白い炎が宿り、“チキンブロウ”はサキに鶏の拳を振り下ろした。

 サキが跳躍して雑賀の怒りの表れとも言える金色の鉄槌を躱す。

 ロックは、“チキンブロウ”の顔面に、”翼剣“ブラック・クイーン”を逆手に構えた。

 剣の切っ先から“迷える者の怒髪ブイル・アブァラ”による噴進ジェット火炎で斬り上げ、額を割る。

 “黄金の嬰児”がロックの斬撃の衝撃で、大きく後退。
 しかし、尚も上体を起こしながら、這い進む。

「私達は……――!!」

「それなら、、私達に近づいて! 地自労そっち側に引き込もうとした!! 結局、だけよ!!」

 雑賀の泣き言に、サキは“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”の片刃を突き出して、断罪した。

 サキの得物から放たれる蒼白い光が矢となり、金色の嬰児の顔と肩を貫く。

 しかし、下がるどころか、“チキンブロウ”は、立ち上がった。

「なら、!! 彼だけじゃない、!!」

「喧しい!! おいて、挙句にを棚に上げてんじゃねぇよ!!」

 “爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェ”を手甲型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ライオンハート”による爆轟の拳を一平が突進する金色の嬰児の胴に叩き込んだ。

 “金色の嬰児”が両足を浮かせ、大きく仰向けに倒れる。

 しかし、青白い炎が“チキンブロウ”の右の鶏の中で獰猛な煌きを放っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...